ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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先に謝っておきます。
白蓮ファンの皆様、ごめんなさい。




第69話 “白鳥”

そして日もだいぶ傾き始め…

 

『さァこれまで様々な競技で対決してきましたが、結果は百二十五対百二十五の同点!次の最終試合で決着が着きます!

最後の競技は一体⁉そして勝利の栄光と宝剣は、果たしてどちらの手に⁉』

 

「こうなったら、わたくしが出るしかありませんわね!」

 

袁紹組の席から、それまで全く出なかった麗羽が立ち上がる。

 

「最後の勝負は……袁家に代々伝わる、この白鳥の回しを締めての女相撲とします!」

 

そう言う麗羽は、前方に白鳥の首、左右の両腰に翼、尻の部分に尾羽が付いた回しを掲げる。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおーーーっ!」」」」」」」」」」

 

競技内容を聞きまたも観客、主に男性が盛り上がる。

 

「…愛紗」

 

またも愛紗の肩に手を置く星。

 

「だから当然のように私に振るな!お前が出ればいいだろ!」

 

「いや、実は私は『白鳥の回しを締めると死んでしまう病』でな…」

 

「誰のマネだその大嘘は!いや、言わなくてもわかるが!

あ!そうだ鈴々、ここはお前が…」

 

「お相撲は好きだけど白鳥の頭は…」

 

さすがの鈴々も嫌だったようだ。

 

「で、でしたら劉備殿…」

 

「母からの遺言で『財布のひもは締めても、白鳥の回しだけは締めるな』と…」

 

「劉備殿の母上はご健在であろう!

で、ではナミ殿、お金はお支払いしますから…」

 

「いやでも、相撲なら私や朱里ちゃんは出ない方が良いんじゃないの?」

 

「そうですね。私達には荷が重いと思います…」

 

またも自分の非力さを嘆く(?)朱里。

 

そんな様子を見て袁紹組は…

 

「相当もめてるな…」

 

「仕方ないよ…あの回しだもの…」

 

「あの回しは着けた瞬間に、何か大切な物が失くなるものね…」

 

(前々から思っていましたけど、どうしてこの回しの素晴らしさが理解できない方ばかりなのかしら…⁉)

 

再び、公孫瓚組の席にて…

 

「あきらめるのだ愛紗!」

 

「観念しろ!」

 

「ま、待て!」

 

鈴々と星が力づくで愛紗を出場させようとしている、その端…

 

(ここは私が出るべきか…?)

 

ほとんどの方から忘れられていたと思われる、白蓮が人知れず考え込んでいた。

 

(そうだ…今回の一件は、私にも責任がある!

それに白馬将軍の名にふさわい物をと作らせた、あの白馬の回し!今こそあれを使う時だ!)

 

…と、一人意気込む白蓮。

 

しかし、その時…

 

「いいからさっさと出る奴決めろ!残念だが女相撲である以上、おれとルフィは出られねェんだからな」

 

「ゾロ殿…嬉々として言っているような気がするのは、気のせいですか?」

 

「ほんとつまんねーよなー。にしてもいいなーあの回し、欲しー」

 

「「「「「「「「「「え゛?」」」」」」」」」」

 

ルフィの発言に、袁紹組の控え席や観客席からも疑問の声があがる。

 

「あら!あなたこの回しの素晴らしさがわかりますのね!

良いですわ!先ほど女相撲と言いましたが、特別にあなたの出場を許可しましょう!」

 

「え⁉ホントか⁉やったー!」

 

「ちょっと麗羽様!」

 

「何言ってるんですか⁉」

 

「いくら何でも男相手に相撲は…」

 

「何を言ってるんですの?いくら男性でも、あんな見るからに貧弱な輩に負けるワケないでしょう?」

 

「まァ確かに…」

 

「強そうには見えないね…」

 

「大丈夫…なんでしょうか?」

 

「そちらの方も、選手はその男で構わないですわね?」

 

「え、ええまァ…」

 

「袁紹さん達が良いなら…」

 

「それで良いのだ」

 

「いいからさっさと始めろ」

 

(ルフィなら負けることはないでしょうし…)

 

(本人がその気になっていますし…)

 

(袁紹殿、完全に墓穴を掘ったな…)

 

(え?私の出番は…?白馬の回しは…?)

 

「なーその回しよー、3つくれねェか?」

 

「?構いませんけど?」

 

こうして、袁紹対ルフィで相撲が行われることになった。

 

ちなみにルフィの出場が決まった時、観客席から多数、主に男性の舌打ちが聞こえたそうな…

 

 

 

 

 

 

数分後―――

 

土俵が用意され、白鳥の回しを着けた両選手が入場する。

 

そこで…

 

「ゾロ~!ナミ~!どうだ~⁉ボンちゃんのマネ~!じょ~う談じゃないわよ~う!」

 

ルフィは貰った回しの内、2つを頭から被り、首が左右の肩に来るように着けていた。

 

「あの…ボンチャンとは?」

 

「天の国にいた……戦友だな」

 

「大柄のオカマでオカマ口調で、ああいう風に白鳥の頭が付いていて、背中に“おかま道”って書かれた服を着ていたのよ」

 

「随分と個性的な方ですな…」

 

「私達を逃がすために、自分から囮役を買って出てくれたのよ…」

 

「良い戦友(とも)だったのですな…」

 

「うえ~ん!ボンちゃ~ん!」

 

その時のことを思い出したのか、大泣きするルフィ。

 

「あなた、覚悟はよろしくて?」

 

「ん……おお、いいぞ」

 

麗羽に呼びかけられ、ルフィは泣き止み構える。

 

『それでは……見合って見合って…』

 

「「…………」」

 

『はっけよーい…』

 

「「…………」」

 

『のこった!』

 

ドン!

ドゴォォォン!

 

『………へ?』

 

「「「「「「「「「「………え?」」」」」」」」」」

 

「…………」

 

陳琳の合図があった次の瞬間、麗羽ははるか後方に吹っ飛び、壁にめり込んでいた。

 

「「「れ、麗羽様ァーーーっ⁉」」」

 

「…ん?終わりか?」

 

『しゅ、終りょーう!最終対決はルフィ選手の勝利ということで、宝剣争奪戦は公孫瓚組の勝利ー!』

 

「「「「「「「「「「…お、おおおおおーーーっ!」」」」」」」」」」

 

こうして、最終試合が呆気なく終了し、宝剣争奪戦は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、麗羽の城の謁見の間にて―――

 

「えェっ⁉そ、その男がゾロさんとナミさんの頭目ーーー⁉」

 

「あんな馬鹿強い二人の頭目…」

 

「それじゃあ麗羽様が勝てる筈ないね…」

 

「荷物持ちとかだとばかり思ってたわ…」

 

全身包帯だらけになった麗羽をはじめ、猪々子達はルフィの正体を知り驚愕した。

 

「気持ちはわからなくもないな…」

 

「私も初めて知った時は驚いたからな…」

 

愛紗や星も、ルフィが船長である事や高い戦闘能力を有している事に驚愕した事があるため、麗羽達に共感していた。

 

「それで…麗羽」

 

「っ!」

 

「勝負は私達が勝ったんだ。約束通り宝剣を返してやってくれ」

 

白蓮が本題に入る。

 

「え、えーと…」

 

「?」

 

「じ、実はですね…」

 

 

 

 

 

 

「はァ⁉宝剣は無いってどういうことだ⁉」

 

「私から説明します…」

 

申し訳なさそうに真直が口を開く。

 

「実は先日、袁紹様の従妹である“袁術(えんじゅつ)”様の使いの“張勲(ちょうくん)”殿が参られまして…

 

 

 

 

 

『お久しぶりですわね“七乃(ななの)”さん。“美羽(みう)”さんは元気にしておりまして?』

 

『はい、それはもう元気すぎるくらいです』

 

『今日はどういったご用件で?』

 

『はい。風の噂で耳にしたのですが、麗羽様は素晴らしい宝剣を手に入れたとか』

 

『あら、もうそこまで有名になっているのですわね』

 

『はい。それで美羽様が、その宝剣に興味を持ちまして、良ければこの“馬鹿には見えない衣”と交換していただけないかと…』

 

そう言うと張勲は手元の箱を空ける。

しかし、中身は空である。

 

『?何もないではありませんの?』

 

『え⁉まさか麗羽様、この衣が見えないのですか⁉(※訳『麗羽様は馬鹿なのですか?』)』

 

『な、何を言っているのですか⁉見えてるに決まってるじゃありませんの!』

 

『そうですよね~♪この色、この手触り、豪華な刺繍♪これほどの物は、たとえ洛陽の市場であっても、簡単には手に入らないかと…』

 

張勲は衣を手に取るようなしぐさをしながら喋る。

 

『そ、そうですわね…ほ、本当に素晴らしいですわ…』

 

汗だくになる麗羽。

 

『い、猪々子!あなたもそう思いますわよね⁉』

 

『えっ⁉は、はい…本当に素晴らしいお召し物で…』

 

『それなら、これと宝剣を交換してくださいますね?』

 

 

 

 

 

その時、私も斗詩もその場にいなかったもので、止めることができず…」

 

(バカには…)

 

(見えない衣って…)

 

(それって絶対…)

 

(そういうことだな…)

 

(何故騙される…?)

 

(どっちみち袁紹さんには見えないでしょうね…)

 

話を聞きゾロ、ナミ、愛紗、星、白蓮、朱里はあきれ果ててしまった。

 

「…って、ちょっと待て!それならどうして勝負をしようと…」

 

「だ、だって負けるなんて思っていなかったんですもの!あなた達が勝ったりするから悪いんですわ!」

 

「麗羽…!」

 

「わ、わかりましたわよ!先日お貸しした食料の件、帳消しにして差し上げますわ…。それで…」

 

「………おい麗羽、何か勘違いしていないか?」

 

「?勘違い?」

 

「宝剣を返して欲しいのは、私じゃなくて劉備なんだ!お前が詫びなきゃいけない相手は、こいつなんだぞ!」

 

「あ…!」

 

「謝罪の相手をちゃんと理解していない時点で、詫びる気が毛頭ないのは明らかだな」

 

「お前に騙されたせいで、鈴々達は丸一日時間をムダにしたのだ!」

 

「何の身分もない輩には、何もしても良いというのでしょうか?庶人の上に立つ人としてどうかと思いますよ?」

 

「そもそも、形として預かっている筈の物を勝手に他人に渡す事自体、どうかと思うが?」

 

「おれ達が勝ったのが悪いっていうなら、改めて勝負するか?今度は武術で…⁉」

 

「物を借りた負い目がある公孫瓚さんはともかく、私達は一方的な被害者なのよ?

だからちゃんと詫びをしなさい」

 

「ナミさん⁉目の形がおかしいですよ⁉」

 

「ううっ…」

 

愛紗、鈴々、朱里、星、ゾロ、ナミにも言われ、さすがに分が悪くなる麗羽。

 

しかしその時…

 

「パイパイちゃん、関羽さん達ももういいですよ」

 

「桃香⁉」

 

「しかし、劉備殿…!」

 

「そうよ!ちゃんと私達にも詫びをしてもらわないと!」

 

「だから目の形おかしいですよ⁉」

 

「まー劉備がいいって言ってんだから、良いじゃねェか」

 

「ちょ、ルフィまで…!」

 

「勝負面白かったし、ここでコイツに何言ったって剣は戻ってこねェんだしよ。誰だっけお前の従妹?」

 

「袁術です」

 

「さっさとその“ エンジュツ”の所に行った方がいいだろ?」

 

「それはそうですが…」

 

「袁紹さん」

 

「は、はい⁉何ですの?」

 

「袁術さんにはどこで会えますか?」

 

「み、美羽さんは…豫州汝南(じょなん)郡の太守をしておりますわ…」

 

「わかりました。それじゃあ私、そこへ行って袁術さんから直接宝剣を返してもらいます」

 

麗羽の目を真っ直ぐに見据えてそう言う桃香。

 

「そ、そうですの…」

 

豪傑のような迫力はないが、どこか威厳を感じるその姿に、麗羽は思わず尻込みした。

 

「で、でしたら…事情を書いた手紙をお渡ししますから、それを持って行かれると良いですわ…」

 

「ありがとうございます」

 

「それから…」

 

「?」

 

「今夜はもう遅いですし…わたくしの屋敷に泊まっていかれるといいですわ…」

 

「いいんですか?」

 

「はい…」

 

「ありがとうございます!」

 

「っ!三人とも!早く宴の支度をなさい!酒も食事も、最上の物を用意するのですよ!」

 

「「「はい!喜んで!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜、宴が開かれ…

 

「美味しいですね!」

 

「これはいい酒だな!」

 

「最上の物を用意するようにとのことでしたので」

 

「おはえらほのおほりはいほうらな~!(お前らこの踊り最高だなー!)

ほんほひにいっはへ~!(ホント気に入ったぜ~!)」

 

「ほうらろ~!(そうだろ~!)」

 

「ひんひんもらいうきなおな~!(鈴々も大好きなのだ~!)」

 

皆が盛り上がる中…

 

「それにしても…意外な組み合わせですな…」

 

「そうですね…」

 

そう言う愛紗と真直の視線の先には…

 

「そうなんですか…」

 

「ええ…そうなんですわよ…」

 

予想以上に仲良くなった桃香と麗羽がいた。

 

「昔から誰とでも仲良くなれる奴だとは思っていたけど…あれはもう才能だな…」

 

「ああいう、誰とでも距離を詰めようとする奴っているわよね…」

 

「いるな…」

 

そう言いつつ、自分達の船長を横目で見る2人。

 

「こんな感じですか?おーほっほっほ!」

 

麗羽の高笑いを真似する桃香。

 

「ええ!中々筋が良いですわねあなた!おーほっ…おおお……」

 

「わあああ⁉袁紹さん!重症なんですから、あまり動いちゃ駄目ですって!」

 

「あれ、悪影響になったりしないですか?」

 

「まァ桃香のことだから大丈夫だとは思うが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、城門前にて―――

 

「それでは、お世話になりました」

 

ルフィ達は猪々子、斗詩、真直に見送られ、出発しようとしていた。

 

「その…麗羽様が色々とすみませんでした…」

 

「いいよ。気にすんな」

 

「それで…袁紹殿の容態は?」

 

「昨夜の宴で悪化したらしく、しばらくは絶対安静だそうです…」

 

「まァ…その方がちょっと平和かもしれないけど…」

 

「文醜さん…さりげにひどいこと言いますね…」

 

(朱里よ…お主が言うか?)

 

「あの…これを…麗羽様が美羽様に書いたお手紙です」

 

「ありがとうございます」

 

「それから…公孫瓚殿に()()を渡すようにと…」

 

「?」

 

白蓮が真直から文を受け取り、広げてみると…

 

「これは…!」

 

「何なの?」

 

「食料を貸したことを帳消しにする証文だ…!」

 

「「「「「「「「!」」」」」」」」

 

「……麗羽様、根は良い人なんですよ」

 

「確かに…私も付き合い長いからわかるが、根っからの悪党ではないんだよなァ…あいつ…」

 

「そういえば、公孫瓚殿は袁紹殿と真名で呼び合っておりましたな」

 

「ああ。少なくとも()()()()()()()()()をしてもいい相手だって、互いにそう思っているからな」

 

「城下町も活気があって、よく治まっているみたいでしたね…」

 

「そういや翠の奴も、暴君ではないって言ってたな」

 

「はい。ちょっと困ったところはありますけど、領民や家来を大切にするお方ですし…」

 

「ですから、私達もなんだかんだ言ってお仕えしているんです」

 

「そうですね。理論上正しいことをして性根が腐っている人より、多少困ったところがあっても、根が良い人の方が良いかもしれないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一行は城を出発し…

 

「それじゃあ、ここでお別れだな」

 

白蓮は幽州に戻るため、州境の道で別れることになった。

 

「公孫瓚殿、今回はお世話になりました」

 

「なに、大したことじゃない。それじゃあ桃香、道中気をつけてな。宝剣を無事取り戻せるよう、祈っているぞ」

 

「うん、ありがとう」

 

桃香は白蓮の手をとり。

 

「パイパイちゃんも元気でね」

 

「白蓮だからな!もう間違えるなよ!」

 

そう言い残すと、白蓮は去って行った。

 

「それでは、我らも行くとしよう」

 

愛紗がそう言うと…

 

「……あの、皆さん…」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

桃香がみんなに向き直り、口を開く。

 

「ここから豫州までは、かなりの長旅になります。そこまで皆さんにご同行してもらうのは悪いですし、ここからは私一人で…」

 

「今更水臭いですよ」

 

桃香の言葉を遮る朱里。

 

「乗りかかった舟というものだ」

 

「最後まで付き合うわよ」

 

「おれ達もおれ達で、旅をする目的はあるしな」

 

「気にすんなって」

 

「そうなのだ!旅は道連れ…よは……ヨワ…」

 

「“弱気な気分を吹っ飛ばせ”だ」

 

「そうだったのだ!」

 

「…って、それじゃあ意味が通じないだろ…」

 

「「「「「「「はははははっ!」」」」」」」

 

「…ありがとうございます。それじゃあ、改めてよろしくお願いします!」

 

こうして一行は南下し、豫州を目指すのだった。

 

 




白蓮さん、アニメよりも影が薄くなってしまいました。
白蓮さんの活躍は、終盤までお待ちください。


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