ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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少し話を飛ばして第七席編です。




第72話 “ちんきゅーきっく”

豫州、汝南郡―――

 

「いま~ひ~ら~り~♪ひらひら~(はね)~ひろ~げ~♪千~年の~眠り目覚~め~ゆく~♪」

 

そのとある街にある、飛び切り大きく豪華な屋敷の広間で、一人の少女が歌っていた。

 

年齢は十歳前後で、床まで届く長い金髪をしており、先端が渦巻き状になっている。

後頭部に青いリボンをつけている。

 

歌はかなり上手い。

 

彼女こそが、豫州汝南郡の太守“袁術(えんじゅつ)公路(こうろ)”である。

 

時代(とき)は万華鏡~♪残像は宝石~♪」

 

周りでは楽女(がくじょ)達が琵琶、太鼓、胡弓を演奏している。

 

「悪戯~な雲に邪魔されても~♪ひ~と~り~じゃない諦め~ない~♪」

 

そして、少女の目の前で、他の官女達と異なる服装で青い髪を七三分けにした女性が、手を叩きながら一緒に歌っている。

 

こちらもかなり上手い。

 

彼女は“張勲(ちょうくん)”といい、袁術の保護者かつ教育者、そして袁術軍の大将軍かつ筆頭軍師である。

 

「き~ぼ~う~の空~へ~と~♪舞い上がれ♪ユ・メ♪蝶ひらり~♪」

 

歌い終え、袁術は可愛くポーズを決める。

 

「はァ~…さすが“美羽(みう)”様!お上手ですわ!」

 

「そうであろう!そうであろう!遠慮なくもっと褒めて良いのじゃぞ」

 

張勲は袁術の歌を褒め、褒められた“袁術”こと“美羽”はご機嫌になる。

 

「いっぱい歌ってのどがカラカラじゃ…。“七乃(ななの)”蜂蜜水を持ってまいれ!」

 

「は~い!直ちに!」

 

返事をして“張勲”こと“七乃”は広間を出て行こうとするが…

 

「そういえば献上品に桃の蜂蜜漬けがあったのう。あれも持ってきてたもう!」

 

「両方は駄目ですよ美羽様」

 

立ち止まり、追加の要望に保護者らしく注意する。

 

「どうしてじゃ!妾は両方欲しいのじゃ!」

 

「さっきおやつを食べたばかりじゃないですか。またこの間みたいに、お腹(ぽんぽん)痛くなったらどうするんですか?」

 

「ううっ…そ、それはイヤなのじゃ…」

 

「でしょう?だから蜂蜜水か桃の蜂蜜漬けか、どっちかにして下さい」

 

「うーん…どっちも捨てがたいのう…」

 

 

 

 

 

 

…で、迷った挙句…

 

「んく…んくっ…ぷはァ!やっぱり歌った後の蜂蜜水は最高じゃのう~♪」

 

装飾が施された大きめの器で、蜂蜜水を飲むのだった。

ちなみにこの時代、蜂蜜は高級品である。

 

「蜂蜜水を飲む美羽様の笑顔も最高ですよ~♪」

 

「そういえば七乃、今日は董卓のとこから誰か来るのではなかったか?」

 

「あ、はい。そろそろ到着してもいい頃なんですけど…どうしちゃったんでしょうね?」

 

「ま、来ぬなら来ぬで別に構わぬがの。その分妾の遊ぶ時間が増えるというものじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが袁術殿の治める街か…」

 

冀州を出発してから数日、ルフィ達は袁術の城下町に着いた。

 

「やっと着いたな!」

 

「ここに私の宝剣が…」

 

「しかし…領主のおひざ元にしては活気がないな…」

 

星の言う通り、昼間の大通りにも関わらず店はほとんど閉まっており、通行人も少ない。

 

「あまりいい政治がされていないのかもね~」

 

「まァ、あの袁紹の従妹って時点で、ロクな奴な気がしねェがな…」

 

「ゾロさん…いくら本当の事でもそこまでハッキリ…」

 

「うわ~!」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

…と、一人先に走って行った鈴々が声をあげた。

 

「でっかいキン〇マなのだー!」

 

…と、一軒の店先にあるパンダの置物の股間を指さして言う鈴々。

 

「おおーっ!でけーな!」

 

ルフィも面白そうに見る。

 

「こ、こら鈴々!そんなはしたないことを大声で言うな!」

 

顔を羞恥に染め注意する愛紗。

 

「そうだぞ鈴々、もっと遠回しな言い方があるだろう。“いん〇う”とか“ふ〇り”とか…」

 

「星さん…それは遠回しではないかと…」

 

「そうだな。“男の証拠”とかそれぐらいの段階まで下げねェと…」

 

「それ以前に、何であんなモンが堂々と大通りにあんのよ!」

 

ナミの言う事は最もである。

 

「ここは…土産物屋のようだな…」

 

鈴々が見つけた置物がある店の看板を見て、愛紗が呟く。

 

「そういえば出かける時、璃々にお土産を頼まれていたな」

 

「せっかくだし、入ってみない?」

 

「そうするか!」

 

ナミの提案により、一同は店に入った。

 

 

 

 

 

 

(…何アレ?)

 

そう思うナミの視線の先には、店の壁にかけられている金髪の少女が描かれたペナントらしき物があった。

金額は500万と無駄に高い。

 

店の中を見回してみると、同じ少女が描かれた物や“袁”、“蜂蜜”などの字が書かれた物が半分を占めている。

 

(誰が買うのよあんなの?)

 

「ふむ…」

 

愛紗は木刀や縄を物色している。

 

「な~んか面白れェのあるかな?」

 

「何だこりゃ?」

 

「ふむ…この壺、悪くないな…」

 

ルフィ、ゾロ、星は特にこれといった探し物もなく、店の棚全体を見ている。

 

「いろんな湯飲がありますね~」

 

「あ、これなんて可愛いかも」

 

朱里と桃香は湯飲の棚を見ている。

 

「でも、これくらいの大きさの方が使い勝手はいいんですよね」

 

そう言って朱里は、寸胴で底が蓋のような形をした湯飲を手に取る。

 

「朱里、湯飲ならこちらの方が良いのではないか?」

 

「へ?」

 

そう言う星の手には…

 

「はうっ⁉」

 

色っぽいポーズをした女性が描かれている湯飲があった。

 

「湯を注ぐと服が透けるらしいぞ?」

 

「せ、星さん…」

 

「へー面白れェなそれ!」

 

ルフィまで話に入って来た。

 

「それともこちらの子宝飴の方が良いか?」

 

「どうしてその手の物ばかり私に勧めるんですか⁉」

 

「美味そうだな~その飴!」

 

「「…………」」

 

何の下心もなく物色するルフィを複雑そうに見る2人だった。

 

「いろんな動物のがあるのだ!」

 

鈴々は動物のストラップを見ていた。

 

「これ、お守りになってるんですね」

 

商品の後ろにある看板を見て桃香が言う。

 

「えーっと…『鼠は子沢山で子孫繁栄』、『犬はワンワン吠えて病魔退散』、『猫は福を招いて商売繁盛』…動物によって効果が違うんですね」

 

「それじゃあ鈴々は、この前みたいにカゼをひかないように、犬のお守りを買うのだ!」

 

そう言って鈴々は犬のストラップを手に取る。

 

「それだったらお腹を出さないで寝るようにした方が、効果があると思うんですけど…」

 

苦笑いする朱里。

 

「あーっ!」

 

「「「⁉」」」

 

不意に何者かの声が響いた。

 

見ると明るい緑の髪を二つ縛りにし、制帽を被った少女がいた。

 

「それはねねが先に目をつけていたのですぞ!返すのです!」

 

そう言うと少女は鈴々からストラップをひったくる。

 

「何を言っているのだ!鈴々が先に持っていたんだから鈴々の物なのだ!」

 

すかさず奪い返す鈴々。

 

「まだお金は払っていないんだから、お前の物ではないのです!ねねが先にお金を払えば、ねねの物なのです!」

 

そう言って横取りしようとする少女。

 

「何をムチャクチャ言っているのだ!」

 

「そっちこそわがまま言うなです!」

 

「はわわ~!ケンカは駄目ですよ~!」

 

「どうした?」

 

「また鈴々が何かやらかしたのか?」

 

騒ぎを聞いてルフィ達もやって来た。

 

「いえ、今回は珍しく鈴々ちゃんの言い分が正しいんですけど…」

 

 

 

 

 

 

「…確かに今回は、鈴々の方が正論だな」

 

「きっと明日は雪か台風だな」

 

「先にお店と約束していたならともかく、してないなら買う権利は手に取った方にあるわね」

 

朱里から事の次第を聞き、愛紗、星、ナミはそう言った。

 

自分が正論だと認められてよほど嬉しいのか、鈴々は胸をはっている。

 

「ぐぬぬ…」

 

「……あのう、お店の人にもう一つ同じものが無いか、訊いてみませんか?」

 

少女の様子を見て、桃香が提案する。

 

 

 

 

 

 

「あいにく、そちらの品は店頭に出ているだけですね。次の入荷もいつになるか…」

 

「はァ…」

 

在庫がないと知り、少女は肩を落とす。

 

「残念だったが、あきらめるしかないようだな…」

 

「まァそうがっかりするな。人生は一期一会、出会いもあれば別れもある」

 

「おい、それ慰めになってねェぞ…」

 

「お、お前なんか…」

 

少女は肩を震わせ…

 

「「「「「「「「?」」」」」」」」

 

「お前なんかアライグマにおへそ洗われて風邪ひいちゃえなのです~!」

 

「「「「「「「「っ⁉」」」」」」」」

 

そう大声で怒鳴り、店から飛び出して行った。

 

「うにゃ~…」

 

大声をまともにくらった(?)鈴々はふらつく。

 

「……何だアイツ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一行は買い物を済ませて店を出た。

 

「鈴々、せっかく買った木彫りの犬、なくさないようにするのだぞ」

 

「わかったのだ」

 

「孔明ちゃんは何を買ったの?」

 

「私は最初に手に取ったあの湯飲を買いました。薬湯を飲むのにいいかと思って…」

 

「そういえば、ルフィさんも何か買っていたみたいですけど…」

 

「ああ、これだよこれ」

 

そう言ってルフィが取り出したのは…

 

「はわわっ⁉」

 

「る、ルフィ殿…」

 

「そ、それは…」

 

「璃々のお土産によ。飴ならあいつ喜ぶだろ?」

 

先ほど星が朱里に勧めていた子宝飴だった。

 

「ど、どうする?」

 

愛紗、ナミ、桃香、星、朱里は急きょ顔を寄せて話し合う。

 

()()は子供に恵まれるように祈るための物だから、本来は悪い物では…」

 

「…っていうか、何も言わなければただの飴で通るんじゃ…?」

 

「それもそうですね…」

 

「じゃあ、そうしましょう」

 

「どうしたお前ら?」

 

「何やってんだ?」

 

「内緒話はずるいのだ」

 

「い、いえ!何でもありませぬぞ!」

 

「「「?」」」

 

「そ、それより…そろそろ昼食にしましょう!」

 

「よっしゃー!メシだー!」

 

「やったーなのだー!」

 

(((((単純(バカ)で良かった…)))))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一件の店の、通りに面したテラス席で食事をとる事にした。

 

「随分と高いわね~…」

 

「きっと税の取り立てが厳しいんでしょうね」

 

「この饅頭や餃子も、(にら)や葱でかさ増ししているようだな…」

 

「肉が全然ねェな…」

 

そんなことを言いながら食事をしていると…

 

「ん?」

 

「…………(じゅる)」

 

一番通りに近い席に座っていたルフィの背後に、いつの間にか大型犬を連れた赤い髪の女性が、よだれを垂らして立っていた。

 

女性は瞬き一つせず、卓上に並べられた料理を見ている。

 

「……食うか?」

 

何となくルフィは、女性にニラの饅頭を一つ手渡す。

 

「……いいの?」

 

「肉じゃねェから別にいいぞ」

 

「……食べる」

 

女性は饅頭を受け取り、皮の部分をちぎって犬にあげ、自分も食べ始める。

 

「…むぐ…むぐ」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

一同は黙ってみていたが、やがて愛紗が…

 

「…よかったら、もっと食べるか?」

 

そう言って饅頭が山盛りになった皿を差し出す。

 

「…むぐ…んくっ」

 

女性は両手で饅頭を手に取り、頬をパンパンに膨らませて食べだす。

 

「…餃子も食べるか?」

 

続いて鈴々が餃子の皿を差し出し…

 

「…これも美味しいですよ」

 

「麻婆豆腐はいかがですか?」

 

桃香と朱里も皿を差し出す。

そして…

 

「…メンマなんてどうだ?」

 

「「「星がメンマを他人(ヒト)にあげたァーっ⁉」」」

 

普段なら絶対にありえない光景にルフィ、ゾロ、ナミは驚愕する。

 

「…あむ…むぐ…もぐ」

 

そんな3人をよそに女性は一心不乱に食べ続ける。

 

「……何だか…」

 

「よくわからないけど…」

 

「小動物が食べているみたいで…」

 

「癒されます…」

 

「のだ…」

 

その様子を見ている愛紗達5人に、ほわわ~んとした空気が漂う。

 

ドドドドド…

 

「ん?」

 

不意に、どこからか地響きが聞こえて来た。

 

「何だ?」

 

見ると()()がもうもうと砂煙を上げ、こちらへ突進してくる。

 

「“ちんきゅ~”…」

 

「?」

 

何者かは高々と跳び上がり…

 

「“きーーーっく”‼」

 

「うげーっ⁉」

 

ルフィの顔面に跳び蹴りをくらわせた。

 

「「「「「「「⁉」」」」」」」

 

「くお~らァ~!恋殿がなかなか待ち合わせ場所に来ないと思ったら、お前の仕業だったのですかー!」

 

着地した何者かは、そのまま仁王立ちでルフィを睨む。

 

「あー、びっくりしたー。何すんだお前!」

 

無論、ゴム人間のルフィに蹴りは効かないため、一瞬吹っ飛んだがすぐに起き上がる。

 

「恋殿も恋殿ですぞ!こんなどこの馬の骨ともわからぬ輩と一緒に…!」

 

しかし相手はルフィを無視し、いまだに食事の手を止めない女性と話し始める。

 

「この人達、ご飯くれた。だから良い人」

 

「それは罠なのです!ただでさえここは見知らぬ土地!いつどこから敵が狙ってくるかわからぬのですぞ!」

 

「おい!無視すんじゃねェ!」

 

「うるさいのです!ねねは今、恋殿と大事な話を…ってよく見ればお前らはさっきの!」

 

「あ、お前!」

 

よく見るとルフィに蹴りをくらわせたのは、先ほどのお土産屋で鈴々と言い争っていた少女だった。

 

「お~い!」

 

…と、そこへさらに何者かの声が響く。

 

「れ~ん!ねねも!やっと見つけた~!」

 

「「「ん?」」」

 

その声に聞き覚えがあったルフィ、ゾロ、ナミが見てみると、叫びながらこちらへ走って来たのは…

 

「「「チョッパー!」」」

 

「あー!ルフィ~!ゾロ~!ナミ~!会いたかったぞコンニャロ~!」

 

「「「「「「「⁉」」」」」」」

 

 




「きっく」という単語は、チョッパーが教えました。

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