ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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少し、違う話を挟みます。




第77話 “隊長”

桃香が無事宝剣を取り戻し、一行が涼州に向けて出発した頃―――

 

とある村で2人の少年が門番をしていた。

 

村の前には大きな枯れた川があり、中央部分を僅かに水が流れている。

 

「ん?おい」

 

「どうした?」

 

「あそこ、誰か倒れてないか?」

 

「あ!ホントだ」

 

言われてもう一人が目を凝らしてみると、確かに枯れた川の跡に大の字になって寝転がっている人影がある。

 

「どうする?」

 

「とりあえず“楽進(がくしん)”さん達に報告しようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男か…」

 

しばらくして、3人の少女がその人物を調べに向かっていた。

 

「結構ゴツイ身体しとるな…」

 

関西弁で髪を高めの位置で二つ縛りにし、上半身にビキニタイプの水着を着た少女が男を見て呟く。

 

「なんか怖そうな人なの…」

 

顔にそばかすがあり眼鏡を掛け、茶色い髪を一本の長い三つ編みにし、右側に垂らした少女が呟く。

 

「“沙和(さわ)”、怖いのなら無理して来なくても…」

 

全身に傷があり、銀髪を地面まで届く長さの一本の三つ編みにした、目つきの鋭い少女が呟く。

 

「へ、平気なの!」

 

沙和と呼ばれた眼鏡の少女はむきになって、寝転がっている男に真っ先に近づいて行く。

 

「あ、あの~…お兄さ~ん…ひゃああっ⁉」

 

「さ、沙和⁉」

 

「ど、どないしたん⁉」

 

「“(なぎ)”ちゃん!“真桜(まおう)”ちゃん!大変なの!この人裸同然の格好しているの!」

 

「な、何やて⁉」

 

「お、追剥にでもあったのか⁉」

 

沙和の言葉に驚き、残りの二人も男に駆け寄る。

 

男は水色の髪をリーゼントにしてサングラスを掛けており、上半身はアロハシャツを羽織っているだけで、下半身に至ってはパンツ一丁である。

 

「ほ、本当に奇抜な格好しとるな」

 

「真桜ちゃん…」

 

「お前はあまり人のことを言えないと思うのだが…」

 

「ウチはこれがお洒落なんやー!」

 

真桜と呼ばれた関西弁の少女は泣きそうな顔をする。

 

「ん~…?」

 

「あ、起きたで」

 

「私が話してみよう」

 

「な、凪ちゃん、任せていいの?」

 

凪と呼ばれた傷だらけの少女は男に近づく。

 

「少々よろしいでしょうか?」

 

「ん?誰だおめェは?」

 

「私は“楽進(がくしん)”と申します。あなたは?この辺りでは見ない顔ですが、旅の者でしょうか?」

 

「おれは“フランキー”。まァ確かに旅の者だな」

 

「そうですか。とりあえず、何か着る物を用意しますので…」

 

「ああ⁉余計なことすんじゃねェ!」

 

「「「⁉」」」

 

「これ以上何か着てみろ!変態の名折れだ!それついて来い!」

 

自身でリズムを口ずさみ、踊りだすフランキー。

 

「シリを~♪ライト!右手を腰に~♪左手つっぱる!スライドエ~ンレフト!くり返し~!アウッ!1(ワン)2(ツー)1(ワン)2(ツー)!」

 

(こうか?)

 

(こう?)

 

(こうなの?)

 

何となく動きをマネする3人。

 

「両手を上から下に!回転(スクリュー)!」

 

(こうか?)

 

(こう?)

 

(こうなの?)

 

「ん~~~……スーパ~!」

 

両腕の内側を外に向けて腕を合わせる形で、斜め上に高く掲げ、ポーズを決める4人。

 

「…で、ここはどこだ?」

 

「ここは司隷と并州の州境にある村、“龍河村(りゅうがそん)”の近くです」

 

「何だそりゃ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なァ凪、本当に入れてよかったんか?」

 

「まァ、奴らの手下ではなさそうだし…」

 

フランキーは近くの村―――龍河村に入れて貰い、凪達が寝泊まりしている家に上がらせて貰った。

 

「では、改めて自己紹介を。私は“楽進(がくしん)文謙(ぶんけん)”と申します」

 

「ウチは“李典(りてん)曼成(まんせい)”や」

 

「“于禁(うきん)文則(ぶんそく)”なの」

 

「おれは“カティ・フラム”、通称“フランキー”だ。早速だがちょっと訊いてもいいか?」

 

「何でしょう?」

 

「この村、さっきから老人女子供しか見てねェし、入り口で見張りしてた奴らもまだガキだった。

それに村全体が妙に殺気立っているようだったが、何かあったのか?」

 

「話せば長くなるのですが…」

 

凪が説明を始める。

 

「我々三人は、仕官の道を求めて旅をしている途中で、この村に立ち寄り、宿をとりました。

するとその夜、近くの山に巣くっていた賊が襲ってきたのです。

聞いたところによると、この村は司隷に近いこともあり、戦や土木工事のために人手をとられ、老人女子供ばかりになることが度々あったそうです。

しかし近いと言っても、州境の方であるため、官軍はあまり目を光らせていない。

連中はそこに目をつけ、近くの山中に潜み、機会を覗っていたようなのです。

そしてこの村を占領して新たなる拠点とし、さらなる勢力の拡大を目論んでいるそうなのです」

 

「随分と抜け目のねェ賊だな」

 

「それから、賊は隙を見ては村を襲撃し、その度に我々が中心となって撃退しているのです。

幸い、連中が村に入るためには吊り橋を渡る必要があるため、一度に襲ってくる人数に限りがあるので、なんとかしのげているのですが、多勢に無勢。

防衛することはできても、賊を退治することはかなわず…」

 

「沙和達がこの村にやって来てもう一ヶ月半になるの。その間に五回も襲われて…」

 

「正直ウチらも、いつまでもここで足止めくろうとるワケにもいかへんのやけど、見捨てて行くワケにもいかへんし…」

 

「当然だ!ここで村人を見捨てたりなどすれば、我らは何のために仕官の道を求めていたのか…。

苦しむ民を救いたい一心で、そのための仕官の道を探していたのに…本末転倒だ!」

 

「それにこの村が賊の拠点になったら、あいつらはますます力が強くなって、他の村や町にも被害が出るの!」

 

「一宿一飯の恩もあるワケやしな!」

 

「ぐうっ…!立派な志じゃねェかァ!」

 

話を聞き、フランキーは涙ぐんでいた。

 

「あの…お兄さん…」

 

「その…自分達でも立派な志だとは思いますが…」

 

「そんな…泣く程のことやないと思うんやけど…」

 

「ああ⁉泣いてねェよ!ぐすっ…!」

 

「いや…涙流れとるやん…」

 

「そうか!よし、話はわかった!嬢ちゃん達!この村の防衛、おれも手ェ貸すぜ!」

 

「え?」

 

「よろしいのですか?」

 

「ああ。おれも真っ当な人間とはいえねェが、弱い者いじめは好きじゃねェんでな!

おめェらを見捨てて行くことはできねェ!協力させてくれ!」

 

「それはどうも!」

 

「ありがとうなの!」

 

「いや~兄さん、見た目は変態っぽいけどいい奴やな~」

 

「おいおい変態なんて照れるじゃねェか!」

 

「照れるとこソコかいな⁉」

 

「ああそれと、ついでにもう一つ訊きてェんだが…」

 

「何でしょうか?」

 

「お前ら、さっきから自己紹介で名乗った名前とは違う名前で呼び合っているみたいだが、それは何だ?」

 

「何って、真名ですが…?」

 

「“マナ”?」

 

「そういえばお兄さん、見慣れない服装しているし、名前もあまり聞かない名前だけど、どこの出身なの?」

 

「たぶんこの島っつうか、国の外の生まれだ。いつの間にかこの辺りに迷い込んでいたんだ。 “マナ”っつうのも初めて聞く習慣だしな」

 

「なんと…!」

 

「それは大変やったなァ」

 

 

 

 

 

 

「どうやら連中は、この山に二ヶ所砦を設けて、そこを根城にしているようなのです。

片方に攻撃を受ければ、もう片方が村を襲う、もしくは背後を突く。兵力はそれぞれ千人弱」

 

村の周辺の様子を記した絵地図を広げ、凪が説明する。

 

「随分と頭の切れる賊だな」

 

「連中、もともとはどっかの兵士だったらしくてな。お給金があまりにもひどいんで、賊になり下がったらしいわ」

 

「兵だった時も軍備費の徴収とか言って、略奪ばかりしていたみたいなの…」

 

「正規の軍や政治的権力者ってのには、ロクな奴がいねェのか⁉」

 

「楽進さーん!」

 

子供が一人走って来た。

 

「どうした⁉」

 

「奴らが襲って来た!」

 

「「「「!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年の話を聞き、4人は急いで村の入口に向かった。

 

「真桜!沙和!ぬかるなよ!」

 

「当然や!」

 

「お兄さん!お兄さんの強さは期待していいの⁉」

 

「当然だ!特に今週のおれはスーパー強ェぞ!」

 

「?“すうぱあ”?」

 

「見えたぞ!」

 

大勢の賊が入口に迫っているのが見えた。

 

「あの女どもが来たぜ!」

 

「何だ⁉今日はデケェ男もいるぞ⁉」

 

「気にすることはねェ!やっちまえ!」

 

「キサマら性懲りもなく…!」

 

そう言って凪が向かおうとした瞬間―――

 

「今だ!」

 

「なっ⁉」

 

村に迫りつつあった賊の大群が左右に開け、後ろにいた弓兵が大量に姿を現す!

 

「しまっ…!」

 

「凪!避け…!」

 

「放てェ!」

 

合図とともに大量の矢が凪達に向かって飛んでいく!

 

その時―――

 

「ぬあああああ!」

 

フランキーが凪達を庇うように前に出た!

 

「なっ⁉」

 

「お兄さん!」

 

「危な…!」

 

そして大量の矢がフランキーの体に当たる!

 

ガキキキキキン!

 

「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 

「「「え?」」」

 

しかし、矢は刺さらずに地面に落ちる。

 

「……終わりか?」

 

「ぬ、ぬあああああっ!」

 

賊の一人が飛び出し、フランキーに向かって斧を振り下ろす!

 

バキン!

 

しかし、フランキーの肩に当たった瞬間、刃が砕ける。

 

「何だこりゃ?製鉄の段階からして手抜きだし、手入れもロクにされてねェじゃねェか」

 

落ちた刃を手に取ってフランキーが呟く。

 

「な、何なんだコイツ⁉」

 

「ば、化物か⁉」

 

「そっちの攻撃は終わりか?なら今度はこっちから行くぜ!」

 

そう言うなりフランキーは拳を構え…

 

「“ストロング・(ライト)”‼」

 

ドッゴォォォン!

 

「「「「「「「「「「ギャアアア⁉」」」」」」」」」」

 

鎖でつながれた右手を飛ばし、賊を吹っ飛ばす!

 

「ほ、本物だ!本物の化物だァ!」

 

「に、逃げろォ!」

 

賊は大慌てで退散していった。

 

「ふゥ…」

 

「あ、あの…フランキー殿…」

 

「あ、あんた一体…何者なんや?」

 

未だに驚愕した様子で凪達が訊ねる。

 

「ああ。おれは“改造人間(サイボーグ)”なのよ」

 

「“さいぼうぐ”?」

 

「何なのソレ?」

 

「体内に鋼鉄や兵器が仕込んである。あの程度の連中の剣や槍じゃ、まず効かねェよ」

 

「な、なんやそれーーー!めっちゃすごい絡繰りやーーーん!」

 

興奮して目を輝かせる真桜。

 

「お?何だお前?こういうのに興味あるのか?」

 

「当然や!絡繰りと聞いたらウチは黙ってられへんで!」

 

「真桜ちゃん、すごく嬉しそうなの…」

 

「真桜、喜んでいるところを済まないが…フランキー殿、少々よろしいでしょうか?」

 

「何だ?」

 

「そのような身体をお持ちなのであれば、フランキー殿が単独で砦に乗り込み、敵を殲滅することも可能なのでは?」

 

「残念だが、そいつはちょっと厳しいな…」

 

「どうしてなの?」

 

「理由は2つある。

まずこの改造はおれ一人でやったからよ、後ろの面には手が届かなかったから背中は生身の人間だ。だから大勢に包囲させるとさすがに不利だ。

もう一つは身体の兵器を発動させるための燃料の問題だ」

 

「“ネンリョウ”?」

 

「火をおこすのに、薪や油が必要なのと似たようなもんか?」

 

「そんな感じだ。…で、その燃料にはコーラっつう飲み物を使うんだが…」

 

「“こおら”?」

 

「亀や蟹から作るのですか?」

 

「いや、作り方はよく知らねェが、たぶん関係ねェな。

…で、そのコーラなんだが、こっちに来てから全く手に入らなくなってな。それで全力で戦うことが出来ねェのよ」

 

「成程…」

 

「確かに聞いたことない飲み物なの」

 

「なァ、そのこーらってどんな飲み物なんや?」

 

「ああ、それは…」

 

喋りながらフランキーは自分の腹を開ける。

 

「うおーーーっ⁉何やそれ⁉」

 

「お、お腹が開くの⁉」

 

「ああ。おれの腹は冷蔵庫になってんだ」

 

「あの…“レイゾウコ”とは?」

 

「知らねェのか?食べ物や飲み物を冷やして長期間保存するための道具だ」

 

「確かに冷たいですな…」

 

「暑い日に最高なのー!」

 

「そ、そないなすごい絡繰りがあるんか…⁉」

 

「…で、このビンに入っているのがコーラだ」

 

「…真っ黒な液体ですな…」

 

「何か、泡立っとるで…」

 

「これ…本当に飲み物なの?」

 

「ああ。おれのいた所ではわりと一般的だったんだがな…」

 

「確かに…我々は見たことも聞いたこともないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜―――

 

「おれを村の警備隊長に?」

 

「はい。フランキー殿が一番年上のようですし、戦闘能力も申し分ないので」

 

「見かけも強そうやし、威厳も十分や」

 

「そう言うワケで、お願いしたいの。隊長」

 

「それは別に構わねェが…隊長っつう呼び方はちょっと慣れねェな…」

 

「それでは何とお呼びしましょう?」

 

「“将軍”か?“フランキー様”か?」

 

「そうだな…」

 

フランキーはしばらく顎に手を添えて考え…

 

「……“アニキ”って、そう呼んでくれ」

 

「“アニキ”ですか?……あまり敬意がなさそうな呼び方ですが…」

 

「いいんだ。おれはあまり堅苦しいのは性に合わねェからな」

 

「…わかりました。ではそうお呼びします“アニキ”」

 

「ほな、しばらくよろしゅう頼むで“アニキ”」

 

「頼りにしてるの“アニキ”」

 

「おう!任せとけ!」

 

こうして、フランキーは“楽進”こと“凪”、“李典”こと“真桜”、“于禁”こと“沙和”達の上官となり、村の警備を務めることになった。

 

 




今回はフランキー、凪、真桜、沙和の話でした。
もう一話、この四人の話を投稿します。

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