ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
フランキーが凪達と村の警備を務めることになってから数日が経った。
「ほう!おめェこれを自分で思いついたのか⁉」
「せやで!細い鋼を螺旋状にして、それが押さえつけられると元に戻ろうとする力で物を飛ばす仕掛けになっとるんねん!」
「李典は物作りが得意なんだな!」
「けどまァ、アニキの技術に比べたらお粗末なもんやけど…」
「いや、おれの技術はあくまで、おれの師匠から教えて貰ったもんだ。自分で思いつく奴ってのはそうそういるもんじゃねェ!
おめェ、本物の天才かもしれねェぞ!」
「ホンマか⁉そう言って貰えると嬉しいわ~!」
フランキーは3人とだいぶ仲良くなっていた。
「なァアニキ、他にもウチが考えた絡繰りの設計図あるんやけど、よかったら拝見して、何か助言してくれへんか?」
「おう、いいぞ。見せてみろ」
「真桜ちゃ~ん、凪ちゃんが戻って来たの~」
「お、そうか!ウチの見回りの時間やな。支度してくるわ」
「うん。気をつけてなの」
真桜は部屋を出て行った。
「沙和、アニキも、戻りました」
「おう、お疲れ」
「今日はお風呂を用意して貰えたの。入ってくると良いの」
「そうか。それでは…」
凪は浴室に向かった。
「ねェアニキ」
「何だ?」
「前々から気になっていたんだけど、どうしてアニキはそんな身体をしているの?」
「……そうだな、直接のきっかけはあの事故だな…」
「事故?」
「おれの居た所には、列車っていう長距離をすごい速さで移動する乗り物があってな、おれはそれに轢かれたんだ…」
「ど、どうしてそんなことに⁉」
「…おれの師匠が、無実の罪を着せられて連行されそうになった。おれはそれを止めようとして、列車の進路に立ち塞がった。そして轢かれたのよ。
…で、おれはボロボロになった身体を鉄屑で補って生き延びたってワケだ…」
「それじゃあ凪ちゃんの傷と同じ、名誉の負傷なの!」
「……いや、そんな立派なもんじゃねェ」
「え?」
「師匠が連行された原因はおれにもあるからな…」
「…どういうことなの?」
「おれの師匠は船大工でな、おれはその人の下で、住み込みで造船技術を教えて貰った。
そしておれは近くの海に住む、デカくて凶暴な魚を捕まえるため、毎日戦艦を造っていた。その戦艦が…政府の連中に利用された」
フランキーはどこか哀愁を漂わせながら語りだした。
「政府はある理由で師匠を連行しようと企んでいた。そのためにおれの戦艦を使って、自分達の船を攻撃した。
戦艦の持ち主だったおれとおれの師匠、
何とか師匠のおかげでおれと兄弟子は助かったが、師匠は連行された…」
「…………」
「自業自得なんだよ、この身体は…。おれが犯した罪の罰、一生消えることのない証拠なんだ…」
「……でも…」
「?」
「少なくともアニキは、大切な人を助けようとしたの…だから、それは誇っていいと思うの…」
「……そうか、ありがとうな」
「本当に凄いと思うの…沙和はそこまでできる自信がないから…」
「?」
「…実は私、戦うのがすごく怖いの…」
今度は沙和が語りだす。
「悪い人をやっつけるためなんだから、頑張らなきゃって思うんだけど…やっぱり怖くて…」
「…………」
「今までも三人で旅をしている中で、山賊とかを退治してきたことがあったんだけど…いっつも足手まといで、凪ちゃん達が頑張っているのに情けないの…」
「情けなくなんかねェよ…」
「へ?」
「お前は怖いのを我慢して頑張ってんだ。普通に頑張ってる奴よりよっぽど立派じゃねェか」
「…でも、やっぱり心配なの…私、二人の邪魔になっていないか、お荷物になってないか、って…」
「バカか」
「ひゃん⁉」
沙和の頭を軽く小突くフランキー。
「お前ら仲間なんだろ?真名を預け合ったんだろ⁉それなのに、何でそんな不要な遠慮するんだよ⁉」
「…でも、凪ちゃん達は優しいから、私に気を遣って言わないだけかもしれないし…」
「そこまで考えるなら、お前にそこまで気を遣う理由を察しろよ」
「!」
「あの二人と一緒に戦うのも、あの二人がお前と一緒に戦うのも、全部お前らが自分で決めたことなんだろ?だったら、悩む必要なんてねェ」
―――――造った船に‼男はドンと胸をはれ‼
「ドンと胸はってやってりゃいいんだよ。いらねェ遠慮なんかすんな」
「…………」
「アニキの言う通りだ沙和」
「⁉凪ちゃん⁉」
いつの間にか風呂から戻って来た凪がそこに立っていた。
「お前が私達と一緒に戦うと決めたのなら、私も真桜も、それをどうこう言うつもりはない。それに、お前がいなくなると淋しいからな」
「凪ちゃん…」
「沙和、これからも一緒に戦ってくれるか?」
そう言うと凪は沙和に手を差し伸べる。
「……うん!こちらこそよろしくなの!」
沙和はその手をとり、笑顔で応えた。
「うおーん!おめェら好きだチキショー!」
▽
翌日―――
「そうだな…これはここをこうして…」
「おー!なるほどなー!」
真桜の設計図を見てフランキーは助言をしていた。
「いや~やっぱり語り合える相手がおるとちゃうわ~!自分一人じゃ気付かへん発見もしてくれるし!」
「おお、そうだな!…にしても李典は本当に物造りが好きなんだな」
「ああ!これはウチの生きがいや!……せやけどなァ…」
「?」
真桜の表情が暗くなる。
「時々なァ……ちょっと悩むちゅうか…不調になるちゅうか…」
「(スランプってやつか?)どうした?」
「アニキ、前に賊が使うとった武器見て『手入れがなってない』ちゅうてたやろ?」
「ああ」
「大半の奴はなァ…道具のことを軽視しとるんや…。『使い捨てでええ』とか『誰が作っても同じ』やとか…。
まァ確かに、質がいいモンはそんなにたくさん作れへんし、時間もかかる。良質な一つより、なまくらでもいいからたくさん必要やって時もある。
せやけど、ウチは職人として最高のモンを造りたい、そして作ったモンを大切に使って欲しいねん…」
「…………」
「ウチは何のために物を造っとるのか?何を造りたいんか?時々わかんなくなるねん…」
「…おめェ、“夢の船”って知ってるか?」
「“夢の船”?」
「そいつは設計図だけじゃ完成しねェ船だ。幾千、幾万もの困難や戦いを乗り越え、“海の果て”に辿り着くことで初めて完成する船。
完成した時、そいつはきっとひどく汚れて、傷だらけでボロボロだろうが、この上なく輝いている。
そいつを完成させるには、最高の材料と設計図、腕のいい職人、そして最高の船長と乗組員が必要だ」
「…………」
「おめェ、世の中のためにあいつらと旅をしてるんだろ?おめェが作りてェのは
「それ?」
「ああ。単純な武器や道具じゃねェ、一騎当千の武人、天下に名を馳せる名士、国家を築く王、それらを支えるようなモンを―――そいつらがあって初めて完成する“国”を作りてェんじゃねェのか?」
「!」
「後世に語り継がれるほどの偉大な人、お前が命を懸けて誇れるような奴を手助けするための物を作る。
それはきっと、職人にとってこの上なく誇らしい仕事だと思うぞ」
―――――わしはロジャーという男に力を貸した事をドンと誇りに思っている‼
「……“国”…“夢”…そうやそれや!ウチが作りたいのはそれや!ありがとうアニキ!なんか目ェ覚めたわ!」
「そうか!」
「ああ!そうと決まれば、まずは材料集めや!ウチの“夢の国”を作るための“君主”!“名士”!“仲間”!絶対に集めたるで!」
「おう!頑張れ!」
▽
また別の日―――
「ハァッ!」
ドン!
「ぬうっ…!」
フランキーと凪が組手をしていた。
「…大した力だぜ…。鉄を仕込んだおれの体に、ここまで衝撃が来るなんてな…」
「ふゥ…恐縮です。しかし、アニキの体は本当に強固ですね。私の正拳なら、鉄にも多少なりとも損傷を与えられるのですが…」
「ああ。どうやらこの辺りの製鉄技術は、おれがいた所に比べて劣っているみたいだからな」
「成程…そういえばアニキ、真桜とも何かお話ししたのですか?」
「まァ、ちょっとな…何でそんな事訊くんだ?」
「いえ、何だかスッキリした顔をしておりましたので…」
「そうか」
そのまま2人は座り込んで、しばらく話した。
「正直言うと…私は時々二人が羨ましくなるのです…」
「そうなのか?」
「はい。私は物心ついたころから、ずっと武術に打ち込んできました。
それ故に身体中に傷が出来ました。その傷ゆえに人々から哀れみや恐怖、とにかく奇妙な目で見られることが多かったのです。
無論私自身、この傷は誇りに思っていますし、武術を極めてきた事を後悔はしていません。
ただ…」
「?」
「それ以外に何もないのが、ちょっと悲しくて…」
「…………」
「私はこの鍛え抜かれた身体で、太平の世を築きたいと思っております。しかし、築いた後はどうすべきなのか…。
真桜は絡繰り造り、沙和はお洒落が好きで、太平の世を満喫できますが…私は戦が無くなったら、何もなくなるのではないか…また大乱の世を望んでしまうのではないかと…」
「……おい楽進」
「…はい」
「船大工の仕事ってのは何だと思う?」
「…船を作ることです」
「そうだな。だが、船員としての船大工の仕事はそれだけじゃねェ」
「え?」
「船を造り、そして航海中に壊れたら直す。それが船大工の仕事だ」
「…はァ…」
「お前だってそうだ」
「?」
「お前は太平の世を築き、その後はそれを守るために戦う」
「!」
「造っただけで満足すんじゃねェ。造った後、それをきっちり面倒みんのが、造った奴の―――生みの親の責任ってモンだろ?」
「…はい!」
「それとこれは李典の奴にも話したんだがな、おれの夢は“夢の船”を造ることなんだ」
「夢の船…?」
「お前らが造ろうとしている“世界”と同じ。形が出来るだけじゃ完成しねェし、大工だけじゃ造れねェ。
最高の船長、最高の航海士、最高の操舵手、最高の船員が揃って初めて造れる船だ」
「…大きな夢ですね…」
「お前らの夢だってそうだろ。
最高の君主、最高の武将、最高の政務官、最高の民、そして最高の後継者。必要な仲間はたくさんいるぞ」
「……そうですね。私の夢は太平の世を築いて終わりではない。むしろ、そこからが始まりなのですね…」
「……楽進よォ…」
「?…はい」
「おれはならず者だから国になんて関わるべきじゃねェし、何より国や政府っつうもんがあまり好きじゃねェ」
「え?」
「だが、お前らが国と政府を造るとしている事は応援してるぜ」
「!」
「頑張れよ」
「……はい。ありがとうございます」
沙和だけでなく、凪と真桜とも中を深めておきたいな、と思い書きました。
次回から、またルフィ達の話になります。