ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第79話 “商談”

豫州を出発してから数日―――

 

ルフィ達はとある町に着き、そこで一泊することにした。

そして宿を探していたのだが…

 

「……ようやくとれたな…」

 

「何とか無理を言って、五人分の部屋で十一人泊めてもらえることになりましたね…」

 

「それにしても、何故この町の宿はどこもかしこもここまで混雑しているのだ?」

 

宿探しでくたくたになった一同がそう呟いていると…

 

「あー!きっとこれですよこれ!」

 

桃香が何かを見つけた。

指さす先には一枚の貼紙がしてある。

 

「何て書いてあんだ?」

 

「何々?『只今人気絶頂の張三姉妹、本日夕刻より当地にて公演開催』…何だコレは?」

 

「全然知らないのだ」

 

「ええっ⁉皆さんご存じないんですか⁉」

 

信じられないものを見たように驚く桃香。

 

「歌って踊れる三人組の旅芸人のことですよ!

能天気で天然なところが魅力の長女“張角”、盛り上げ役の次女“張宝”、輝く知的な眼鏡が特徴の三女“張梁”。

元々は青州を中心に活動していたらしんですけど、凄腕の音楽家を引き入れてからから、人気が爆発して、衣装や演出もすっごく素敵で、あちこちで話題になっているんですよ!」

 

貼紙に描かれている3人の女性を示しながら、説明する桃香。

 

「ほう…そんなに人気なのか…」

 

「そういえば、前に書物を買った時、書店でそんな噂を聞いたような…」

 

「涼州ではあまり聞いた事がないのです」

 

「三人が黄色い布を見に着けていることから、支援者の皆さんは黄色い衣服を見に着けているそうなんです」

 

「そういえば宿を探している途中、町のあちこちで黄色い服を見かけたが…そういう事だったのか」

 

「泊まり掛けでこの町に来てるってワケか…」

 

「……ねェちょっと…」

 

先ほどから貼紙を凝視していたナミが声をあげる。

 

「ん?」

 

「この貼紙の下の方に描いてある、楽器持ってる奴ってもしかして…」

 

ナミの言う通り、貼紙には張三姉妹の他に演奏者らしき人物が描かれていた。

 

「あーーーっ!」

 

「「「「「「「?」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

張三姉妹の公演会場、控室。

 

「今日もお客さんいっぱい来ているよ~!」

 

「今日もみんな、ちぃ達の歌の虜にしてやるわよ!」

 

「それじゃあブルックさん、今日の舞台はそんな感じで…」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

4人はそこで舞台の準備をしていた。

 

「それにしても…こんな大舞台で歌える日が来るなんてね…!」

 

「今日の舞台は、今までで一番規模が大きいもんね~!」

 

「それは嬉しいけど…」

 

「どうしたの人和ちゃん?」

 

「私達…楽器の方はあまり上達していないわよね…」

 

「…確かにそうだね…」

 

「いつまでもブルックさんに頼ることはできないって、わかってはいるけどね…」

 

「あの~そのことなんですけど…」

 

「「「?」」」

 

「最近は皆さんの懐も豊かになってきていますし、新しい演奏家を雇うというのはどうでしょうか?」

 

「そっか、そういう方法もあるんだ…」

 

「それならちぃ達も今まで通り歌に集中できるし…」

 

「検討する価値はあるわね…」

 

「失礼します!」

 

運営のスタッフらしき人物が入って来た。

 

「どうしたの?」

 

「ブルック殿のお知り合いという方が訪ねて来られたのですが、いかがいたしましょう?」

 

 

 

 

 

 

「ルフィさ~ん!ゾロさ~ん!ナミさ~ん!チョッパーさ~ん!お久しぶりです~!」

 

「「ブルック~!」」

 

「やっぱりあんただったのね」

 

「お前、こっちでも音楽やってたのか」

 

「はい、私はやっぱり音楽家ですから!

…あ、ナミさん、再会の記念にパンツ見せて貰っても…」

 

「見せるかァ!」

 

「よゲブッ!」

 

ナミの右アッパーは、的確にブルックの顎を捕えた。

 

「あの人達がブルックさんの仲間?」

 

「てっきりどんな化物かと思ってたけど、普通の人間ね」

 

「一匹変な狸いるけどね…」

 

ルフィ達を見て感想を述べる天和達。

 

対して…

 

「あ、アレって仮装とかじゃなくて、本当に骨だけ…?」

 

「が、骸骨…」

 

「なのだ~…」

 

「な、なんと奇怪な…」

 

「は、はわわ~…」

 

「ば、化物なのです…」

 

ブルックの容貌に怯える桃香達。

 

(セキト達のご飯…)

 

唯一、恋だけは違うことを考えていた。

 

「ところで皆さん、そちらの方々は?」

 

「ああ、こっちに来てからできた仲間だよ」

 

「おお、それはそれは。我が船長と仲間がお世話になっております」

 

深々と頭を下げるブルック。

 

「い、いえ…こちらこそルフィ達にはお世話になっております…」

 

(意外と礼儀正しいな…)

 

星は少々驚いた。

 

「それにしても皆さま、これまたお美しい」

 

「そ、それはどうも…」

 

「下着見せて貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「「やめんかァ!」」

 

ナミと地和の息の合った拳骨が、ブルックの頭の左右にめり込んだ。

 

「それであのう…天和さん、地和さん、人和さん、突然で申し訳ありませんが…」

 

「ううん、いいよ。ブルックさんとは仲間が見つかるまでっていう約束だったし」

 

「これからはちぃ達だけで立派にやって見せるから!」

 

「淋しいけど、この四人での活動は今日で終わりということで…」

 

「わかりました。ルフィさん達も、最後に今日の舞台だけやらせて貰って構いませんか?」

 

「おう、いいぞ」

 

「最後はちゃんと心残りなく終わらせておけ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「あ、あのっ!」

 

えらく緊張した様子で桃香が天和達の前に出る。

 

「み、皆さんが張三姉妹なんですよね⁉」

 

「うん、そうだよ」

 

「わ~!皆さんをこんな間近で見られるなんて!私感激です!」

 

「え~⁉そんなに嬉しいの⁉」

 

「はい!皆さんの噂を聞いて、一度でいいから舞台を見てみたいって思ってたんです!

良かったらこの莚に揮毫貰えませんか⁉」

 

「うん!いいよ~!

…ねェ、舞台が終わるまで時間もあるし、良かったらあなた達も今日の舞台、見ていかない?」

 

サインをしながら天和が提案する。

 

「ええっ⁉いいんですか⁉」

 

「そうね。こちらの都合で待たせるのも悪いし…」

 

「どうするみんな?」

 

「せっかくの好意だ。断るのも失礼だろう」

 

「そうだな。では、お言葉に甘えて」

 

「やった~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィ達は観客席に移動した。

 

「結構暗いですね」

 

「意外と女性の観客も多いな」

 

「本当に黄色い服を着ている人達ばかりですね」

 

「ブルック達まだか?」

 

「あ、舞台の幕が上がっていきますよ」

 

「そろそろ始まるようなのです」

 

やがて幕が上がり切るが、舞台には誰もおらず暗いままである。

 

実は観客席からは見えないが、舞台の天井には小さな袋がいくつもぶら下げられている。

 

「ヨホホホ」

 

暗闇の中、ブルックが得意の身軽さとスピードを生かし、袋を半分ほど切り裂く。

 

次の瞬間、舞台をたくさんの光が一斉に照らしだす。

 

先ほど切り裂かれた袋は、天井からぶら下がっている燭台を覆い隠していたのである。

それを一気に切り裂いたことで、一斉に光が差したように見えたのだ。

 

そして舞台の上には…

 

『『『みんなー!今日は楽しんでいってねー!』』』

 

暗闇に紛れて舞台上に移動していた張三姉妹がいた。

 

「「「「「「「「「「ほわっ!ほわっ!ほわっ!ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」

 

「⁉」

 

「な、何々っ⁉」

 

「すごい鬨の声なのだ…」

 

「何か怖いくらいだな…」

 

会場の熱狂具合に驚くルフィ達。

 

『『『前髪かすめ~た~♪つむじか~ぜ~♪』』』

 

やがてブルックが演奏し張三姉妹が歌い、舞台が始まる。

 

『『『サナ・ギを・脱ぎ捨て~よう♪ありったけの~情熱(あい)~で~♪』』』

 

「ヨホッ!」

 

サビにかかるところで再びブルックが天井付近まで飛び上がり、残りの袋を切り裂く。

すると袋の中から色とりどりの紙吹雪が降り注ぐ。

 

「おおっ!」

 

「これは…!」

 

「なるほど」

 

「すごいのだ!」

 

「すげ~!」

 

「綺麗」

 

「素敵な演出なのです!」

 

『『『いま~ひ~ら~り~♪ひらひら~(はね)~ひろ~げ~♪千~年の~眠り目覚~め~ゆく~♪』』』

 

「「「「「「「「「「ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」

 

観客も一体となり、歌に合わせて掛け声をかけて盛り上がる。

 

「ほわーっ!」

 

「ほわっ!ほわーっ!」

 

「ほわーっ!」

 

ルフィ、桃香、鈴々は楽しそうに溶け込む。

 

『『『き~ぼ~う~の空~へ~と~♪舞い上がれ♪ユ・メ♪蝶ひらり~♪』』』

 

「「「「「「「「「「ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」

 

「悪くないわねこういうの」

 

「なかなか楽しいのです」

 

他の8人も楽しそうにしている。

 

『みんなありがとー!えーっと今日は…』

 

歌い終わり天和が挨拶をしようとする。

 

が…

 

『……何を言うんだったけ?』

 

『知らないわよ!』

 

「「「「「「「「「「あっはっはっは…」」」」」」」」」」

 

ド忘れしてしまい会場に笑い声が響く。

 

『天和姉さん、しっかりして』

 

『お姉ちゃんがしっかりできるワケないでしょ~!』

 

『大丈夫ですよ。そこが張角さんの可愛いところですから。ねェ皆さん?』

 

「「「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」」」

 

ブルックの言葉を会場全体が一致して肯定する。

 

「おい!何しやがる!」

 

「お前が押すからだろ!」

 

『『『『?』』』』

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

突然、観客席のどこかから騒ぎ声が聞こえだした。

 

「何だと⁉」

 

「この野郎っ!」

 

「何だ?」

 

「ケンカか?」

 

『え、えーと…ど、どうしたの~?ケンカは止めて~…!』

 

突然の事態に会場がざわめき、天和も動揺する。

 

「コラー!お前ら何やってんだ⁉」

 

『『『『?』』』』

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

そこにルフィの声が響く。

 

「あいつ、また首突っ込んで…」

 

「しかし、今回は咎められんな」

 

「怒るんじゃねェよ!せっかく楽しかったのに!台無しじゃねェか!」

 

「そうなのだ!ここは歌を聴いたり踊りを見たりして、楽しむところなのだ!ケンカするなら出てくのだ!」

 

ルフィに続いて鈴々も怒り出す。

 

「その通りだ!」

 

「張角ちゃん達も困ってるだろ!」

 

「うるさくしたら歌が聞こえねェだろ!」

 

「「…………」」

 

周りにも言われ、喧嘩両成敗で2人は大人しくなった。

 

『……ねェブルックさん

 

『何です?』

 

『ブルックさんの仲間のあの人、頼りになるんだね』

 

ええ、彼はとっても頼りになるんですよ。さァ皆さん!少々問題が起こりましたが、気を取り直して次の歌に行きましょう!』

 

『よーっし!気分治しに、次の曲は思いっきり盛り上がっていくよー!』

 

「「「「「「「「「「ほわっ!ほわっ!ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」

 

その後は大きな混乱もなく、舞台は順調に進んだ。

 

 

 

 

 

 

『みんな~!今日も楽しかったー⁉』

 

「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」

 

『今日は、最後に皆さんに大事なお話があります』

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「大事な話?」

 

「何だ?」

 

どよめく会場。

 

『今日まで私達の舞台を手伝ってくれた、こちらのブルックさんですが…』

 

『私は、今日限りで辞めさせていただくことになりました』

 

「「「「「「「「「「ええっ⁉」」」」」」」」」」

 

ざわめきが一層大きくなる。

 

「やめちまうのかあの人…」

 

「これから演奏とか大丈夫なのか…?」

 

『これからは、ちぃ達三人だけで舞台を行っていきま~す!』

 

『一人減って淋しくなるけど、これからも応援よろしくね!』

 

「「「「「「「「「「おおおーーーっ!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日―――

 

「それでは天和さん、地和さん、人和さん、今までお世話になりました」

 

「こちらこそ」

 

「本当にありがとう」

 

「お世話になりました」

 

別れの挨拶をするブルックと天和達。

 

「私は、皆さんの一番の支持者ですから。これからも応援してます!」

 

「うん!」

 

「もっともっと、売れまくってやるんだから!」

 

「応援していてね」

 

そして、ブルックはルフィ達と一緒に出発する。

 

「昨日の歌、楽しかったぞー!」

 

「揮毫、大切にしますねー!」

 

「私達も、皆さんのこと応援していますからー!」

 

「お姉ちゃん達も頑張るのだー!」

 

「ありがとー!」

 

手を振り、言葉を交わしながら、ルフィ達は張三姉妹と別れるのだった。

 

 

 

 

 

 

「…で、これから私達はどこに?」

 

「涼州ってとこだ。チョッパーのこと助けてくれた“トウタク”って奴がいるから、お礼言いに行くんだ」

 

「わかりました」

 

「ブルックとも再会して、後はサンジ君にフランキーとロビンね」

 

「ルフィ達の仲間探しの方も、順調にいきそうですな」

 

「しかし、この広い大陸の中で、こうも順調に再会を果たせるとはな…」

 

「ルフィさん達って運が良いのかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、張三姉妹。

 

「あ~あ~…ブルックさん、行っちゃったね~…」

 

「やっぱり淋しいわね~…」

 

宿の寝台で寝転がる天和と地和。

 

「姉さん達、落ち込んでいる場合じゃないわよ」

 

「そうだね…演奏のこと考えないと…」

 

「昨日の客さん達も、帰る時にこれから演奏や演出が大丈夫か、気にしている人多かったもんね…」

 

「それもあるけど、もう一つ心配なことが…」

 

「?何?」

 

「お客さん同士の喧嘩よ」

 

「「…………」」

 

「昨日はあのルフィって人が止めてくれたから良かったけど、いつもそうはいかないわよ」

 

「お客さんが増えてくれるのは嬉しいけど、ああいうのは困るよね…」

 

「けど、これからもっとお客さんが増えれば、ああいう事はもっと起きやすくなるわよ…」

 

「何かいい方法ないかしら…」

 

『すみません』

 

誰かが3人の部屋の戸をノックし、外から呼びかけてきた。

 

「?はーい」

 

天和が戸を開ける。

 

「?…あの、あなたは?」

 

戸を開けるとそこには眼鏡をかけ、顎まで届く長い髪をした男が立っていた。

 

「お初にお目にかかります。私は“于吉(うきつ)”と申します。少し皆様とご商談をしたいと思いまして…」

 

「?商談?」

 

果たして運が良いのはルフィ達だったのか?

それとも()()の方だったのか?

 

 




次回から、久しぶりに完全オリジナルエピソードに入ります。

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