ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
豫州を出発してから数日―――
ルフィ達はとある町に着き、そこで一泊することにした。
そして宿を探していたのだが…
「……ようやくとれたな…」
「何とか無理を言って、五人分の部屋で十一人泊めてもらえることになりましたね…」
「それにしても、何故この町の宿はどこもかしこもここまで混雑しているのだ?」
宿探しでくたくたになった一同がそう呟いていると…
「あー!きっとこれですよこれ!」
桃香が何かを見つけた。
指さす先には一枚の貼紙がしてある。
「何て書いてあんだ?」
「何々?『只今人気絶頂の張三姉妹、本日夕刻より当地にて公演開催』…何だコレは?」
「全然知らないのだ」
「ええっ⁉皆さんご存じないんですか⁉」
信じられないものを見たように驚く桃香。
「歌って踊れる三人組の旅芸人のことですよ!
能天気で天然なところが魅力の長女“張角”、盛り上げ役の次女“張宝”、輝く知的な眼鏡が特徴の三女“張梁”。
元々は青州を中心に活動していたらしんですけど、凄腕の音楽家を引き入れてからから、人気が爆発して、衣装や演出もすっごく素敵で、あちこちで話題になっているんですよ!」
貼紙に描かれている3人の女性を示しながら、説明する桃香。
「ほう…そんなに人気なのか…」
「そういえば、前に書物を買った時、書店でそんな噂を聞いたような…」
「涼州ではあまり聞いた事がないのです」
「三人が黄色い布を見に着けていることから、支援者の皆さんは黄色い衣服を見に着けているそうなんです」
「そういえば宿を探している途中、町のあちこちで黄色い服を見かけたが…そういう事だったのか」
「泊まり掛けでこの町に来てるってワケか…」
「……ねェちょっと…」
先ほどから貼紙を凝視していたナミが声をあげる。
「ん?」
「この貼紙の下の方に描いてある、楽器持ってる奴ってもしかして…」
ナミの言う通り、貼紙には張三姉妹の他に演奏者らしき人物が描かれていた。
「あーーーっ!」
「「「「「「「?」」」」」」」
▽
張三姉妹の公演会場、控室。
「今日もお客さんいっぱい来ているよ~!」
「今日もみんな、ちぃ達の歌の虜にしてやるわよ!」
「それじゃあブルックさん、今日の舞台はそんな感じで…」
「はい。よろしくお願いします」
4人はそこで舞台の準備をしていた。
「それにしても…こんな大舞台で歌える日が来るなんてね…!」
「今日の舞台は、今までで一番規模が大きいもんね~!」
「それは嬉しいけど…」
「どうしたの人和ちゃん?」
「私達…楽器の方はあまり上達していないわよね…」
「…確かにそうだね…」
「いつまでもブルックさんに頼ることはできないって、わかってはいるけどね…」
「あの~そのことなんですけど…」
「「「?」」」
「最近は皆さんの懐も豊かになってきていますし、新しい演奏家を雇うというのはどうでしょうか?」
「そっか、そういう方法もあるんだ…」
「それならちぃ達も今まで通り歌に集中できるし…」
「検討する価値はあるわね…」
「失礼します!」
運営のスタッフらしき人物が入って来た。
「どうしたの?」
「ブルック殿のお知り合いという方が訪ねて来られたのですが、いかがいたしましょう?」
▽
「ルフィさ~ん!ゾロさ~ん!ナミさ~ん!チョッパーさ~ん!お久しぶりです~!」
「「ブルック~!」」
「やっぱりあんただったのね」
「お前、こっちでも音楽やってたのか」
「はい、私はやっぱり音楽家ですから!
…あ、ナミさん、再会の記念にパンツ見せて貰っても…」
「見せるかァ!」
「よゲブッ!」
ナミの右アッパーは、的確にブルックの顎を捕えた。
「あの人達がブルックさんの仲間?」
「てっきりどんな化物かと思ってたけど、普通の人間ね」
「一匹変な狸いるけどね…」
ルフィ達を見て感想を述べる天和達。
対して…
「あ、アレって仮装とかじゃなくて、本当に骨だけ…?」
「が、骸骨…」
「なのだ~…」
「な、なんと奇怪な…」
「は、はわわ~…」
「ば、化物なのです…」
ブルックの容貌に怯える桃香達。
(セキト達のご飯…)
唯一、恋だけは違うことを考えていた。
「ところで皆さん、そちらの方々は?」
「ああ、こっちに来てからできた仲間だよ」
「おお、それはそれは。我が船長と仲間がお世話になっております」
深々と頭を下げるブルック。
「い、いえ…こちらこそルフィ達にはお世話になっております…」
(意外と礼儀正しいな…)
星は少々驚いた。
「それにしても皆さま、これまたお美しい」
「そ、それはどうも…」
「下着見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「「やめんかァ!」」
ナミと地和の息の合った拳骨が、ブルックの頭の左右にめり込んだ。
「それであのう…天和さん、地和さん、人和さん、突然で申し訳ありませんが…」
「ううん、いいよ。ブルックさんとは仲間が見つかるまでっていう約束だったし」
「これからはちぃ達だけで立派にやって見せるから!」
「淋しいけど、この四人での活動は今日で終わりということで…」
「わかりました。ルフィさん達も、最後に今日の舞台だけやらせて貰って構いませんか?」
「おう、いいぞ」
「最後はちゃんと心残りなく終わらせておけ」
「はい、ありがとうございます」
「あ、あのっ!」
えらく緊張した様子で桃香が天和達の前に出る。
「み、皆さんが張三姉妹なんですよね⁉」
「うん、そうだよ」
「わ~!皆さんをこんな間近で見られるなんて!私感激です!」
「え~⁉そんなに嬉しいの⁉」
「はい!皆さんの噂を聞いて、一度でいいから舞台を見てみたいって思ってたんです!
良かったらこの莚に揮毫貰えませんか⁉」
「うん!いいよ~!
…ねェ、舞台が終わるまで時間もあるし、良かったらあなた達も今日の舞台、見ていかない?」
サインをしながら天和が提案する。
「ええっ⁉いいんですか⁉」
「そうね。こちらの都合で待たせるのも悪いし…」
「どうするみんな?」
「せっかくの好意だ。断るのも失礼だろう」
「そうだな。では、お言葉に甘えて」
「やった~!」
▽
ルフィ達は観客席に移動した。
「結構暗いですね」
「意外と女性の観客も多いな」
「本当に黄色い服を着ている人達ばかりですね」
「ブルック達まだか?」
「あ、舞台の幕が上がっていきますよ」
「そろそろ始まるようなのです」
やがて幕が上がり切るが、舞台には誰もおらず暗いままである。
実は観客席からは見えないが、舞台の天井には小さな袋がいくつもぶら下げられている。
「ヨホホホ」
暗闇の中、ブルックが得意の身軽さとスピードを生かし、袋を半分ほど切り裂く。
次の瞬間、舞台をたくさんの光が一斉に照らしだす。
先ほど切り裂かれた袋は、天井からぶら下がっている燭台を覆い隠していたのである。
それを一気に切り裂いたことで、一斉に光が差したように見えたのだ。
そして舞台の上には…
『『『みんなー!今日は楽しんでいってねー!』』』
暗闇に紛れて舞台上に移動していた張三姉妹がいた。
「「「「「「「「「「ほわっ!ほわっ!ほわっ!ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」
「⁉」
「な、何々っ⁉」
「すごい鬨の声なのだ…」
「何か怖いくらいだな…」
会場の熱狂具合に驚くルフィ達。
『『『前髪かすめ~た~♪つむじか~ぜ~♪』』』
やがてブルックが演奏し張三姉妹が歌い、舞台が始まる。
『『『サナ・ギを・脱ぎ捨て~よう♪ありったけの~
「ヨホッ!」
サビにかかるところで再びブルックが天井付近まで飛び上がり、残りの袋を切り裂く。
すると袋の中から色とりどりの紙吹雪が降り注ぐ。
「おおっ!」
「これは…!」
「なるほど」
「すごいのだ!」
「すげ~!」
「綺麗」
「素敵な演出なのです!」
『『『いま~ひ~ら~り~♪ひらひら~
「「「「「「「「「「ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」
観客も一体となり、歌に合わせて掛け声をかけて盛り上がる。
「ほわーっ!」
「ほわっ!ほわーっ!」
「ほわーっ!」
ルフィ、桃香、鈴々は楽しそうに溶け込む。
『『『き~ぼ~う~の空~へ~と~♪舞い上がれ♪ユ・メ♪蝶ひらり~♪』』』
「「「「「「「「「「ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」
「悪くないわねこういうの」
「なかなか楽しいのです」
他の8人も楽しそうにしている。
『みんなありがとー!えーっと今日は…』
歌い終わり天和が挨拶をしようとする。
が…
『……何を言うんだったけ?』
『知らないわよ!』
「「「「「「「「「「あっはっはっは…」」」」」」」」」」
ド忘れしてしまい会場に笑い声が響く。
『天和姉さん、しっかりして』
『お姉ちゃんがしっかりできるワケないでしょ~!』
『大丈夫ですよ。そこが張角さんの可愛いところですから。ねェ皆さん?』
「「「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」」」
ブルックの言葉を会場全体が一致して肯定する。
「おい!何しやがる!」
「お前が押すからだろ!」
『『『『?』』』』
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
突然、観客席のどこかから騒ぎ声が聞こえだした。
「何だと⁉」
「この野郎っ!」
「何だ?」
「ケンカか?」
『え、えーと…ど、どうしたの~?ケンカは止めて~…!』
突然の事態に会場がざわめき、天和も動揺する。
「コラー!お前ら何やってんだ⁉」
『『『『?』』』』
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
そこにルフィの声が響く。
「あいつ、また首突っ込んで…」
「しかし、今回は咎められんな」
「怒るんじゃねェよ!せっかく楽しかったのに!台無しじゃねェか!」
「そうなのだ!ここは歌を聴いたり踊りを見たりして、楽しむところなのだ!ケンカするなら出てくのだ!」
ルフィに続いて鈴々も怒り出す。
「その通りだ!」
「張角ちゃん達も困ってるだろ!」
「うるさくしたら歌が聞こえねェだろ!」
「「…………」」
周りにも言われ、喧嘩両成敗で2人は大人しくなった。
『……ねェブルックさん』
『何です?』
『ブルックさんの仲間のあの人、頼りになるんだね』
『ええ、彼はとっても頼りになるんですよ。さァ皆さん!少々問題が起こりましたが、気を取り直して次の歌に行きましょう!』
『よーっし!気分治しに、次の曲は思いっきり盛り上がっていくよー!』
「「「「「「「「「「ほわっ!ほわっ!ほわあァァァーーーっ!」」」」」」」」」」
その後は大きな混乱もなく、舞台は順調に進んだ。
▽
『みんな~!今日も楽しかったー⁉』
「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」
『今日は、最後に皆さんに大事なお話があります』
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
「大事な話?」
「何だ?」
どよめく会場。
『今日まで私達の舞台を手伝ってくれた、こちらのブルックさんですが…』
『私は、今日限りで辞めさせていただくことになりました』
「「「「「「「「「「ええっ⁉」」」」」」」」」」
ざわめきが一層大きくなる。
「やめちまうのかあの人…」
「これから演奏とか大丈夫なのか…?」
『これからは、ちぃ達三人だけで舞台を行っていきま~す!』
『一人減って淋しくなるけど、これからも応援よろしくね!』
「「「「「「「「「「おおおーーーっ!」」」」」」」」」」
▽
翌日―――
「それでは天和さん、地和さん、人和さん、今までお世話になりました」
「こちらこそ」
「本当にありがとう」
「お世話になりました」
別れの挨拶をするブルックと天和達。
「私は、皆さんの一番の支持者ですから。これからも応援してます!」
「うん!」
「もっともっと、売れまくってやるんだから!」
「応援していてね」
そして、ブルックはルフィ達と一緒に出発する。
「昨日の歌、楽しかったぞー!」
「揮毫、大切にしますねー!」
「私達も、皆さんのこと応援していますからー!」
「お姉ちゃん達も頑張るのだー!」
「ありがとー!」
手を振り、言葉を交わしながら、ルフィ達は張三姉妹と別れるのだった。
▽
「…で、これから私達はどこに?」
「涼州ってとこだ。チョッパーのこと助けてくれた“トウタク”って奴がいるから、お礼言いに行くんだ」
「わかりました」
「ブルックとも再会して、後はサンジ君にフランキーとロビンね」
「ルフィ達の仲間探しの方も、順調にいきそうですな」
「しかし、この広い大陸の中で、こうも順調に再会を果たせるとはな…」
「ルフィさん達って運が良いのかもしれませんね」
▽
一方、張三姉妹。
「あ~あ~…ブルックさん、行っちゃったね~…」
「やっぱり淋しいわね~…」
宿の寝台で寝転がる天和と地和。
「姉さん達、落ち込んでいる場合じゃないわよ」
「そうだね…演奏のこと考えないと…」
「昨日の客さん達も、帰る時にこれから演奏や演出が大丈夫か、気にしている人多かったもんね…」
「それもあるけど、もう一つ心配なことが…」
「?何?」
「お客さん同士の喧嘩よ」
「「…………」」
「昨日はあのルフィって人が止めてくれたから良かったけど、いつもそうはいかないわよ」
「お客さんが増えてくれるのは嬉しいけど、ああいうのは困るよね…」
「けど、これからもっとお客さんが増えれば、ああいう事はもっと起きやすくなるわよ…」
「何かいい方法ないかしら…」
『すみません』
誰かが3人の部屋の戸をノックし、外から呼びかけてきた。
「?はーい」
天和が戸を開ける。
「?…あの、あなたは?」
戸を開けるとそこには眼鏡をかけ、顎まで届く長い髪をした男が立っていた。
「お初にお目にかかります。私は“
「?商談?」
果たして運が良いのはルフィ達だったのか?
それとも
次回から、久しぶりに完全オリジナルエピソードに入ります。