ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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ワンピースの世界に三国志はないため、ルフィ達に三国志についての知識はありません。
そのため今作では、恋姫無双のキャラ達がルフィ達に対して、後漢・三国時代の時代背景や社会について、説明するシーンがけっこうあります。

あらかじめ、ご了承下さい。



第8話 “群雄の国の冒険”

ルフィ、愛紗、鈴々の3人が義兄妹となり、旅を始めてから数日が経過した。

 

「“(ピストル)”!」

 

「うあっ!」

 

稽古の組手は3人の総当たり戦で行う事にした。

 

「今日もルフィ殿が全勝、私と鈴々は引き分けか」

 

「やっぱりルフィは強いのだ~」

 

「ししし!」

 

因みに鈴々はルフィの体が伸びる事や、泳げない事はすでに2人から聞かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく行くと、道の先に壁の様な物が見えてきた。

壁には門の様な物があり、見張りの兵もいる。

 

「あ、お城が見えてきたのだ」

 

「よし、今日はあそこで宿を探すとするか」

 

「城?城がどこにあんだよ?」

 

「はにゃ?目の前に見えているのだ」

 

「城ってあの壁のことか?」

 

「もちろんなのだ」

 

「あの、ルフィ殿…」

 

「なんだ?」

 

「ルフィ殿が思っている城というは、どの様な物なのですか?」

 

「王様とか偉い奴が住んでる、でかい建物の事だぞ?」

 

「つまり王族などの住居のことなのですね。

こちらの世界では城というのは、あの様に一つの街を囲んでいる城壁の事を指すのです。

一応、戦などに備えて生活用の部屋もありますが、基本的に住居や職場として使う事はありません。

屋敷や庁舎などは、城内にある街の中心に建てられているのです」

 

「ふ~ん、そうなのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!失礼、少々よろしいか?」

 

ルフィ達3人が城門から入ろうとしたとき、門番の兵に呼び止められた。

 

「何か?」

 

「違っていたら済まないが、お主はもしや巷で噂の“黒髪の山賊狩り”ではないか?」

 

「まァ…そう呼ぶ者もいるようで…」

 

まんざらでもなさそうに答える愛紗。

 

「おお!そうでしたか!近くの村に現れたと聞いたので、それらしき人物を見かけたら声を掛けていたのですが、黒髪の綺麗な絶世の美女という噂でしたので…

 

 

 

 

 

危うく見過ごすところでした」

 

グサッ!

 

愛紗に見えない何かが突き刺さった。

 

「では、少々お待ちを。主に報告してまいります」

 

そう言うと兵士は街へと走っていった。

 

「愛紗はキレイで有名なのだ!」

 

「ああ…黒髪はな…」

 

「まァ、元気出せよ…」

 

気の利いた言葉は出てこないが、とりあえず慰めるルフィであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして兵が戻り、3人はある屋敷の庭にある円卓で待たされていた。

 

それからまたしばらくすると、2人の女性が現れた。

 

1人は鈴々よりも濃い赤い髪をポニーテールにし、同じような赤い服を着た女性。

 

もう1人は白く袖の長い着物を着た水色の髪の女性。

目つきは鋭く、明らかにただ者ではない風格を漂わせている。

 

どちらも年齢はルフィや愛紗と同じくらいである。

 

「お待たせして済まない。私は“公孫賛(こうそんさん)”、字は“伯珪(はくけい)”と申す。太守(たいしゅ)としてこの辺りを治めている」

 

「“タイシュ”って…偉い奴なのか?」

 

「え?」

 

ルフィの質問に、公孫賛は驚いたような顔をする。

 

「ああ、失礼!この方はつい最近、遠方の国から来られたもので、この辺りの文化や習慣に疎いのです」

 

「ああ、そうだったのか。では、後で説明しよう。そして、こちらは…」

 

「“趙雲(ちょううん)子龍(しりゅう)”と申す。お主達と同じ、旅の武芸者だ」

 

「趙雲殿には客将として、我が軍に滞在して貰っている」

 

「お招きにあずかり、光栄です。私は“関羽”字は“雲長”です」

 

「おれは“モンキー・D・ルフィ”」

 

「鈴々なのだ!」

 

「こら!真名ではなく、ちゃんと名乗って挨拶せぬか!」

 

「関羽殿…」

 

愛紗が鈴々を注意していると、趙雲が口を開いた。

 

「まだお若いのに、旦那様との間に随分と大きな子供をお持ちなのですな」

 

「⁉ち、違います!私達三人は親子ではなく、義兄妹でありまして…」

 

「ほう、血の繫がっていない兄妹ですか…。では、夜はさぞかし仲が良いのでしょうな」

 

「⁉そ、そんな訳ないでしょう!」

 

「そうなのだ!鈴々達が仲良しなのは、夜だけじゃないのだ!」

 

「ああ!おれ達はいつでも仲良しだぞ!」

 

「ほほう…」

 

「二人共!よく意味もわかってないのに、話に入ってくるな!」

 

「?」

 

「じゃあどういう意味なのだ?」

 

「えっ⁉あ、いや…それは…」

 

「ま、まァ…そういう話は後にして貰うとして…」

 

「二度としません!」

 

「そちらのルフィ殿でしたな。ついでですから、この辺りの地理や政治について、簡単に説明しよう。その方が私の話も理解し易いだろううしな」

 

 

 

 

 

 

そして公孫瓚は数枚の地図を用意した。

 

「―――まず、この地図の線で囲まれている部分が、我々の暮らす国“漢王朝(かんおうちょう)”だ。

漢王朝は十三の“(しゅう)”に分けられている。

ここがこの国で最も偉い方、皇帝陛下がいる“司隷(しれい)”だ。

そこから見て北に隣接しているのが“并州(へいしゅう)”、北西に隣接しているのが“涼州(りょうしゅう)”、北東に隣接しているのが“冀州(きしゅう)”、東に隣接しているのが“兗州(えんしゅう)”と“豫州(よしゅう)”、南に隣接している“荊州(けいしゅう)”、南西に隣接している“益州(えきしゅう)”。

冀州のさらに北東にあるのが、私達がいるここ“幽州(ゆうしゅう)”。

兗州と豫州のさらに東にあるのが“青州(せいしゅう)”と“徐州(じょしゅう)”。

荊州の東隣にあるのが“揚州(ようしゅう)”、南側にあるのが“交州(こうしゅう)”。

それぞれの州は“州牧(しゅうぼく)”または“州刺史(しゅうしし)”という役人によって治められている。

ついでに言っておくと、“牧”というのは軍権を持った“刺史”の事だ」

 

そこまで説明すると公孫賛は、幽州について描かれた別の地図を取り出す。

 

「それぞれの州はいくつかの“(ぐん)”に分けられており、その郡を治めているのが太守だ。

またそれぞれの郡はいくつかの“(けん)”に分けられ、“県令(けんれい)”、“県長(けんちょう)”によって治められている。

“県長”と“県令”は治める県の人口によって区分される。

私はここ“幽州北平郡(ほくへいぐん)の太守”というわけだ」

 

「じゃあこのお姉ちゃんは、州牧って人の部下なのか?」

 

鈴々が訊ねる。

 

「いや、州牧、州刺史、太守、県長、県令はすべて皇帝陛下の配下でな…。確かに立場は下だが上下関係がある訳ではなくて…なんというか…」

 

「『命令を聞く必要はないが、何かをするなら報告しなければならない』という事だ」

 

公孫賛が困っていると、趙雲が代わって説明した。

 

「成程なのだ」

 

「なんとなくわかった」

 

「因みにこの地図で言うと、私達がいるこの街がココ、鈴々がいた村はココだな」

 

「ええ⁉あんなに歩いたのにこんなに近いのか?」

 

「お前の領土ってこんなに広いのか!それにこの国、ホント大きいんだな!」

 

愛紗の説明に驚く2人だった。

 

「ふむ、では本題に入ろう」

 

…と、公孫賛の表情や声色に真剣さが増す。

 

「お主達も知っての通り、漢王朝の混乱は極限に達していると言っても過言ではない」

 

「偉い奴がダメなせいで、みんな苦しんでるんだよな」

 

「ああそうだ。しかし最大の原因は皇帝陛下ではなく、その周りの臣下達なのだ」

 

「ん?」

 

「どういうことなのだ?」

 

「この国では皇帝が亡くなると、その子供や最も近い親族から次の皇帝が選ばれる。

しかし、皇帝の一族が全員賢明だとは限らない。

また、先帝が早死にした場合、幼い年齢で皇帝となる事になる。

それでは政治ができる訳がない。

その為皇帝陛下を補佐し、助言をする人間が必要なのだが、そいつらが問題だったのだ」

 

「奴らはどれだけ戦や飢饉などが起きたとしても、皇帝に『国は平和で、何も問題はない』と嘘の報告をし、問題解決に使うはずの金品で贅沢をしているのだ」

 

「何だそれ⁉」

 

「許せないのだ!」

 

公孫賛と趙雲の説明を聞き、ルフィと鈴々は怒りだす。

 

「問題の解決は我々に丸投げして、自分達は何もしない。

私達は皇帝陛下の部下である以上、当然命令されれば行動するが、何をするにしても金や食料、人手など様々なものが必要になる。

しかし奴らは命令だけを出し、増援や必要物資を送ることもせず、報告を待つだけ。

何が原因で何が起こり、どう解決したのかも全く興味がないのだ」

 

「この国の偉い奴らって、本当にダメなんだな」

 

「―――だが、これは好機でもある」

 

「「「?」」」

 

公孫賛の言葉にルフィと鈴々だけでなく、愛紗も疑問符を浮かべる。

 

「中央の連中は自分達の贅沢に夢中で、外の事に全く興味がないため、我々が()()()()()まず咎めることはない。

暴政や賄賂、誅殺はもちろん、他の州や郡への侵略や徴兵、交易などもそうだ。

何をしても適当な理由をつけ、国と陛下の為にやった事だと言えば、まかり通るようになっている。

―――たとえそれが、謀反を起こす為の準備だとしてもな」

 

「「「⁉」」」

 

「すでに漢王朝に国家としての威厳はない。

名門“袁家(えんけ)”の血筋である“袁紹(えんしょう)”と“袁術(えんじゅつ)”、先日“孫堅(そんけん)”から家督を譲り受けた“孫策(そんさく)”、最近都の方で頭角を現してきた“曹操(そうそう)”を始め、多くの群雄達は朝廷を()()()()()()()()()

臣下としての称号や官職よりも、自らの力で領土、さらには天下を治める為の富や兵力、そして人材を求めている。

無論この私もだ」

 

「で、ですが…仮にも臣下たる者が国に刃を向けるなど…」

 

「違ェよ愛紗」

 

「え?」

 

「“国”ってのは、()()()()()じゃねェよ。な、そうだろ?」

 

「…あ、ああ……」

 

(…ほう……)

 

「…………」

 

「?」

 

鈴々はよくわからない様だったが、他の3人はルフィの言葉に驚いた様な反応をした。

 

「…話を戻すが、そういった豪族の中には、民を救うべく立ち上がろうとする者もいる。

だが、ただ単に自分達で朝廷を牛耳って、贅沢をしたいだけの者もいる。

私は辺境の一領主ではあるが、今の世を憂いる気持ちは人一倍あるつもりだ。

そこで乱れた世を救うため、是非お主の力を私に貸して欲しいのだ!」

 

「公孫賛殿」

 

…と、そこで趙雲が話に割って入ってきた。

 

「話の途中で済まないが、それは些か早計ではないか?」

 

「と言うと?」

 

「“黒髪の山賊狩り”についての噂は、私も旅の途中で何度か耳にしました。しかし噂という物は、得てして尾ひれが付き易いもの」

 

―――――黒髪の綺麗な絶世の美女という噂でしたので

 

「……確かに」

 

自分の噂(と人々の反応)を思い出し、また少し悲しくなる愛紗だった。

 

「ですから、まずは関羽殿の実力を確かめてみては如何でしょう?」

 

「成程、確かにそうだな」

 

「差し支えなければその役目、私が引き受けましょう」

 

「おお、それはいいな!如何かな関羽殿、趙雲殿と手合わせしてみては?」

 

「いや…しかし私は…」

 

「臆されましたかな?」

 

「!」

 

趙雲の挑発的な言い方に、愛紗は表情を険しくする。

 

「そんな訳ないのだ!」

 

…が、鈴々がそれよりも早く挑発に乗った。

 

「愛紗はすっご~~~く強いのだ!お前なんかに絶対に負けたりしないのだ!

―――っていうか、お前なんか愛紗が出るまでもないのだ!鈴々がちょちょいのぷ~でコテンパンにしてやるのだ!」

 

「ほほう、かなりの自信だな」

 

そう言うと趙雲は立ち上がる。

 

「ではその自信の程を、確かめさせて貰おう」

 

「望む所なのだ!」

 

こうして、鈴々と趙雲が勝負する事になった。

 

 




今作の公孫賛さんは、北平郡の太守という設定になりました。


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