ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
そのため今作では、恋姫無双のキャラ達がルフィ達に対して、後漢・三国時代の時代背景や社会について、説明するシーンがけっこうあります。
あらかじめ、ご了承下さい。
ルフィ、愛紗、鈴々の3人が義兄妹となり、旅を始めてから数日が経過した。
「“
「うあっ!」
稽古の組手は3人の総当たり戦で行う事にした。
「今日もルフィ殿が全勝、私と鈴々は引き分けか」
「やっぱりルフィは強いのだ~」
「ししし!」
因みに鈴々はルフィの体が伸びる事や、泳げない事はすでに2人から聞かされた。
▽
しばらく行くと、道の先に壁の様な物が見えてきた。
壁には門の様な物があり、見張りの兵もいる。
「あ、お城が見えてきたのだ」
「よし、今日はあそこで宿を探すとするか」
「城?城がどこにあんだよ?」
「はにゃ?目の前に見えているのだ」
「城ってあの壁のことか?」
「もちろんなのだ」
「あの、ルフィ殿…」
「なんだ?」
「ルフィ殿が思っている城というは、どの様な物なのですか?」
「王様とか偉い奴が住んでる、でかい建物の事だぞ?」
「つまり王族などの住居のことなのですね。
こちらの世界では城というのは、あの様に一つの街を囲んでいる城壁の事を指すのです。
一応、戦などに備えて生活用の部屋もありますが、基本的に住居や職場として使う事はありません。
屋敷や庁舎などは、城内にある街の中心に建てられているのです」
「ふ~ん、そうなのか」
▽
「!失礼、少々よろしいか?」
ルフィ達3人が城門から入ろうとしたとき、門番の兵に呼び止められた。
「何か?」
「違っていたら済まないが、お主はもしや巷で噂の“黒髪の山賊狩り”ではないか?」
「まァ…そう呼ぶ者もいるようで…」
まんざらでもなさそうに答える愛紗。
「おお!そうでしたか!近くの村に現れたと聞いたので、それらしき人物を見かけたら声を掛けていたのですが、黒髪の綺麗な絶世の美女という噂でしたので…
危うく見過ごすところでした」
グサッ!
愛紗に見えない何かが突き刺さった。
「では、少々お待ちを。主に報告してまいります」
そう言うと兵士は街へと走っていった。
「愛紗はキレイで有名なのだ!」
「ああ…黒髪はな…」
「まァ、元気出せよ…」
気の利いた言葉は出てこないが、とりあえず慰めるルフィであった。
▽
しばらくして兵が戻り、3人はある屋敷の庭にある円卓で待たされていた。
それからまたしばらくすると、2人の女性が現れた。
1人は鈴々よりも濃い赤い髪をポニーテールにし、同じような赤い服を着た女性。
もう1人は白く袖の長い着物を着た水色の髪の女性。
目つきは鋭く、明らかにただ者ではない風格を漂わせている。
どちらも年齢はルフィや愛紗と同じくらいである。
「お待たせして済まない。私は“
「“タイシュ”って…偉い奴なのか?」
「え?」
ルフィの質問に、公孫賛は驚いたような顔をする。
「ああ、失礼!この方はつい最近、遠方の国から来られたもので、この辺りの文化や習慣に疎いのです」
「ああ、そうだったのか。では、後で説明しよう。そして、こちらは…」
「“
「趙雲殿には客将として、我が軍に滞在して貰っている」
「お招きにあずかり、光栄です。私は“関羽”字は“雲長”です」
「おれは“モンキー・D・ルフィ”」
「鈴々なのだ!」
「こら!真名ではなく、ちゃんと名乗って挨拶せぬか!」
「関羽殿…」
愛紗が鈴々を注意していると、趙雲が口を開いた。
「まだお若いのに、旦那様との間に随分と大きな子供をお持ちなのですな」
「⁉ち、違います!私達三人は親子ではなく、義兄妹でありまして…」
「ほう、血の繫がっていない兄妹ですか…。では、夜はさぞかし仲が良いのでしょうな」
「⁉そ、そんな訳ないでしょう!」
「そうなのだ!鈴々達が仲良しなのは、夜だけじゃないのだ!」
「ああ!おれ達はいつでも仲良しだぞ!」
「ほほう…」
「二人共!よく意味もわかってないのに、話に入ってくるな!」
「?」
「じゃあどういう意味なのだ?」
「えっ⁉あ、いや…それは…」
「ま、まァ…そういう話は後にして貰うとして…」
「二度としません!」
「そちらのルフィ殿でしたな。ついでですから、この辺りの地理や政治について、簡単に説明しよう。その方が私の話も理解し易いだろううしな」
▽
そして公孫瓚は数枚の地図を用意した。
「―――まず、この地図の線で囲まれている部分が、我々の暮らす国“
漢王朝は十三の“
ここがこの国で最も偉い方、皇帝陛下がいる“
そこから見て北に隣接しているのが“
冀州のさらに北東にあるのが、私達がいるここ“
兗州と豫州のさらに東にあるのが“
荊州の東隣にあるのが“
それぞれの州は“
ついでに言っておくと、“牧”というのは軍権を持った“刺史”の事だ」
そこまで説明すると公孫賛は、幽州について描かれた別の地図を取り出す。
「それぞれの州はいくつかの“
またそれぞれの郡はいくつかの“
“県長”と“県令”は治める県の人口によって区分される。
私はここ“幽州
「じゃあこのお姉ちゃんは、州牧って人の部下なのか?」
鈴々が訊ねる。
「いや、州牧、州刺史、太守、県長、県令はすべて皇帝陛下の配下でな…。確かに立場は下だが上下関係がある訳ではなくて…なんというか…」
「『命令を聞く必要はないが、何かをするなら報告しなければならない』という事だ」
公孫賛が困っていると、趙雲が代わって説明した。
「成程なのだ」
「なんとなくわかった」
「因みにこの地図で言うと、私達がいるこの街がココ、鈴々がいた村はココだな」
「ええ⁉あんなに歩いたのにこんなに近いのか?」
「お前の領土ってこんなに広いのか!それにこの国、ホント大きいんだな!」
愛紗の説明に驚く2人だった。
「ふむ、では本題に入ろう」
…と、公孫賛の表情や声色に真剣さが増す。
「お主達も知っての通り、漢王朝の混乱は極限に達していると言っても過言ではない」
「偉い奴がダメなせいで、みんな苦しんでるんだよな」
「ああそうだ。しかし最大の原因は皇帝陛下ではなく、その周りの臣下達なのだ」
「ん?」
「どういうことなのだ?」
「この国では皇帝が亡くなると、その子供や最も近い親族から次の皇帝が選ばれる。
しかし、皇帝の一族が全員賢明だとは限らない。
また、先帝が早死にした場合、幼い年齢で皇帝となる事になる。
それでは政治ができる訳がない。
その為皇帝陛下を補佐し、助言をする人間が必要なのだが、そいつらが問題だったのだ」
「奴らはどれだけ戦や飢饉などが起きたとしても、皇帝に『国は平和で、何も問題はない』と嘘の報告をし、問題解決に使うはずの金品で贅沢をしているのだ」
「何だそれ⁉」
「許せないのだ!」
公孫賛と趙雲の説明を聞き、ルフィと鈴々は怒りだす。
「問題の解決は我々に丸投げして、自分達は何もしない。
私達は皇帝陛下の部下である以上、当然命令されれば行動するが、何をするにしても金や食料、人手など様々なものが必要になる。
しかし奴らは命令だけを出し、増援や必要物資を送ることもせず、報告を待つだけ。
何が原因で何が起こり、どう解決したのかも全く興味がないのだ」
「この国の偉い奴らって、本当にダメなんだな」
「―――だが、これは好機でもある」
「「「?」」」
公孫賛の言葉にルフィと鈴々だけでなく、愛紗も疑問符を浮かべる。
「中央の連中は自分達の贅沢に夢中で、外の事に全く興味がないため、我々が
暴政や賄賂、誅殺はもちろん、他の州や郡への侵略や徴兵、交易などもそうだ。
何をしても適当な理由をつけ、国と陛下の為にやった事だと言えば、まかり通るようになっている。
―――たとえそれが、謀反を起こす為の準備だとしてもな」
「「「⁉」」」
「すでに漢王朝に国家としての威厳はない。
名門“
臣下としての称号や官職よりも、自らの力で領土、さらには天下を治める為の富や兵力、そして人材を求めている。
無論この私もだ」
「で、ですが…仮にも臣下たる者が国に刃を向けるなど…」
「違ェよ愛紗」
「え?」
「“国”ってのは、
「…あ、ああ……」
(…ほう……)
「…………」
「?」
鈴々はよくわからない様だったが、他の3人はルフィの言葉に驚いた様な反応をした。
「…話を戻すが、そういった豪族の中には、民を救うべく立ち上がろうとする者もいる。
だが、ただ単に自分達で朝廷を牛耳って、贅沢をしたいだけの者もいる。
私は辺境の一領主ではあるが、今の世を憂いる気持ちは人一倍あるつもりだ。
そこで乱れた世を救うため、是非お主の力を私に貸して欲しいのだ!」
「公孫賛殿」
…と、そこで趙雲が話に割って入ってきた。
「話の途中で済まないが、それは些か早計ではないか?」
「と言うと?」
「“黒髪の山賊狩り”についての噂は、私も旅の途中で何度か耳にしました。しかし噂という物は、得てして尾ひれが付き易いもの」
―――――黒髪の綺麗な絶世の美女という噂でしたので…
「……確かに」
自分の噂(と人々の反応)を思い出し、また少し悲しくなる愛紗だった。
「ですから、まずは関羽殿の実力を確かめてみては如何でしょう?」
「成程、確かにそうだな」
「差し支えなければその役目、私が引き受けましょう」
「おお、それはいいな!如何かな関羽殿、趙雲殿と手合わせしてみては?」
「いや…しかし私は…」
「臆されましたかな?」
「!」
趙雲の挑発的な言い方に、愛紗は表情を険しくする。
「そんな訳ないのだ!」
…が、鈴々がそれよりも早く挑発に乗った。
「愛紗はすっご~~~く強いのだ!お前なんかに絶対に負けたりしないのだ!
―――っていうか、お前なんか愛紗が出るまでもないのだ!鈴々がちょちょいのぷ~でコテンパンにしてやるのだ!」
「ほほう、かなりの自信だな」
そう言うと趙雲は立ち上がる。
「ではその自信の程を、確かめさせて貰おう」
「望む所なのだ!」
こうして、鈴々と趙雲が勝負する事になった。
今作の公孫賛さんは、北平郡の太守という設定になりました。