ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
「着いた!」
ルフィが行方不明になった後、ゾロ、ナミ、チョッパー、ブルック、桃香、愛紗、鈴々、星、朱里、詠、恋、ねね、華雄は大急ぎで長安に向かった。
急いだ甲斐もあり、日没前に到着することができた。
「……こりゃヒデェな…」
街の様子を見てゾロが呟く。
家屋のほとんどが崩れかけ、壊れた荷車や商売用の道具などがあちこちに放置されている。
放火の跡や血痕、投げ捨てられた武器、人や動物の死体が散乱していた。
「これでは住民もたまったものではないな…」
「しかもこれが、盗賊ではなく領主の兵士の仕業だとはな…」
「世も末だな…」
華雄、星、愛紗が嘆く。
「おい、キサマら」
そこへ数人の兵士が現れた。
「見ない顔だが、余所者か?」
「その通りだが?」
「そうか。じゃあ入城料金を貰おう。身ぐるみ全て置いてけ」
兵士達はそう言って武器を向ける。
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「おいどうした?さっさとしろよ?」
「それとも何だ?体で払ってくれるのか?」
そう言って一人が愛紗の肩に手を伸ばす。
「フン!」
「ぐえっ⁉」
しかし次の瞬間、愛紗の偃月刀によって殴り飛ばされる。
「て、テメェらいきなり何しやがる⁉」
「それはこっちの台詞だ!いきなり旅人を脅して身ぐるみ剥ぎ取ろうなど、盗賊の真似事か⁉」
「うるせェ!おれ達は役人様だぞ!テメェらは黙って言うこと聞いてりゃいいんだよ!」
「役人様に手を挙げた以上、ただで済むと思うなよ!やっちまえ!」
「「「「「「「「「「おおおおおっ!」」」」」」」」」」
兵士達は全員武器を取り、襲い掛かる。
「やるしかないようだな…」
対する愛紗達は、慌てる様子もなく得物を構え…
「おらっ!」
「ほいっ!」
「フンッ!」
「ほっ!」
「よっと!」
「ほいっと!」
「てい!」
「とうっ!」
「「「「「「「「「「ぎゃーっ⁉」」」」」」」」」」
…と、軽くあしらい兵士達を吹っ飛ばした。
「…想像以上にあっけないな」
「ここの兵士達は、民百姓相手の略奪しかしていないからね。ロクに訓練もされていないのよ。ただ、洛陽に近い街なだけあって、兵の数は相当多いわよ」
「それは厄介だな」
「おい…ちょっとあんた達…」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
声が聞こえ、見ると近くの家屋の陰から一人の老父が声をかけてきた。
「あんた達えらく強いみたいだけど、ひょっとして李傕のところから逃げ出した客将ってあんた達の誰か?」
「いや、違うが…一体何の事だ?」
「一ヶ月ぐらい前に、李傕の奴が旅の武芸者を客将として雇ったって噂があってな…。わしは会ったことはないんだが、とんでもなく強い奴らしくて…」
「ほう…とんでもなく強ェのか…」
ゾロは露骨に嬉しそうにする。
「なに興味持ってんのよ…」
「人違いだったか…もしそうだったら連れて行って貰おうと思っていたのにな…」
「?“連れていく”?一体どこに?」
「ああ…その客将さん、一度は雇われたんだけど、すぐに辞めちまったらしくてな。
その後、何人かの住民と一緒に、用心棒として隠れ家で暮らしているようなんだ。
そこへ行けば今よりはマシな暮らしができるから、叶うならばそこへ行きたいと思ってな…」
「『李傕の下から脱走した客将』と『住民達の隠れ家』ね……どう思う?」
「一時李傕の配下にいた者なら、天子様の事を何か知っているかもしれませんね」
「そうですね。もしその人に会えなくても、人が集まっているのなら、何かしらの情報を得られるかと」
「そうね。じゃあ、とりあえずその隠れ家を探してみましょう!」
朱里、詠、ねねら軍師組の言葉に全員うなずく。
「ご老父よ、その隠れ家について他に知っている事はないか?」
「確か…北の方の区画で、その武人さんを見たって噂があったな…」
「では北に向かうとしよう。ご老父もよかったらご同行しませんか?」
「それじゃあ…お言葉に甘えて…」
「よし、じゃあ出発だな」
「ゾロさん!そっちじゃありませんよ!」
▽
一方―――
「ん?」
気が付くと、ルフィは小屋の中で寝ていた。
「……あれ?」
「気が付きましたか?」
「!」
横から誰かの声が聞こえ、起き上がる。
そこには一人の少女がいた。
年齢は鈴々と同じくらいで、少し桃色が混ざった白い長髪をしている。
冠を被っており、服装も見るからに高級そうなもので、高貴な身分の者だとわかる。
決して強そうではないが、ルフィはその少女からどことなく特別な風格を感じた。
「あら、起きたのね」
「!」
別の方から声が聞こえ振り向くと、同じように冠と高級そうな衣服を身に着けた少女が窓際の椅子に座っていた。
こちらの方は、年齢は愛紗と同じくらいで、紫が少し混ざった白い長髪をしている。
そしてこの少女からも、同じような風格を感じた
「誰だお前ら?」
「私は“
「“
「おれはルフィ。よろしく」
「驚いたわ。川に人が流れてくるのなんて初めて見たもの」
「川?」
劉宏の言葉にルフィは少々頭をひねり…
「あ、思い出した!崖から飛び降りたら下が川で、そのまま溺れちまったんだ!お前らが助けてくれたのか?」
「見つけたのは私だけど、助けたのはその子よ」
「そうか、ありがとうな」
「いえ、ご無事でよかったです」
「お前ら、ここで何やってんだ?」
ルフィは劉宏に訊ねる。
「さァ?“
劉宏が劉協の真名らしき名を呼び訊ねる。
「…何もしていないと思います」
「そう、なら何もしていないのね」
「…ん?」
ルフィは、どことなく今のやり取りに違和感を覚えた。
「…お前ら何もしてねェのか?」
再び劉宏に訊ねる。
「ええ。何かしろと言われてないもの。ね、白湯」
「…はい、そうですね…」
「???」
劉宏の返事に、ルフィはまたも違和感を覚える。
ルフィが首をかしげていると、外から馬のなびき声と蹄の音が聴こえてきた。
「!こ、こっちに…!」
「ん⁉」
慌てたように劉協がルフィの腕を引っ張り、近くの寝台の下に押し込む。
「おい、何すんだ⁉」
「と、とにかくここに隠れていてください!」
「失礼いたします!」
劉協がルフィを隠すのとほぼ同時に、何人かの兵士が小屋に入ってきた。
「主上様、劉協様、お食事をお持ちしました」
「そう、ご苦労様」
「あ、ありがとう…」
兵士達は小屋にあった机の上に食器と食事を並べる。
しかし、それらは全て異臭を放ち、虫が湧き、明らかに傷んでいる物や腐っている物ばかりだった。
「では、明日の朝にまた食事をお持ちしますので、決してここから出ないでくださいね」
「ええ、わかったわ。ここから出ないわ」
「はい、それでは失礼します」
兵士達は去っていった。
「…何だあいつら?」
寝台の下から這い出してきたルフィが訊ねる。
「今のは李傕の配下の兵士達です」
「“リカク”?どっかで聞いたな?」
ぐ~…
「「「!」」」
ルフィがそう言った直後、3人のお腹から大きな音がした。
「お前ら腹減ってんのか?」
「ええ。お腹すいたわ…」
「もう何日もロクに食事をしていませんから…」
「食わねェのかこれ?」
「食べたくないわそんな物。臭いし、美味しくないし…」
「私もいらない…」
「じゃあおれ食って良いか?」
「えっ⁉」
「お前ら食わねェんだろ?だったら別に良いよな?」
「ええ、別に良いわよ。ね、白湯?」
「そ、それは構いませんけど…」
「そっか。じゃあいっただきまーす!」
ルフィは大喜びで食事を手に取り、たかっている虫ごとキレイにたいらげた。
「ごちそうさまー!」
「…………」
その様子を見て、劉協はあっけにとられている。
「あなた、よくあんな不味い物食べられるわね」
劉宏の方も、驚いてはいないが珍しい物を見たように言う。
「まー変な味したけど、あれくらいなら平気だよ」
「そう。……ねェ知ってる?私も少し前までは、もっと美味しい物をたくさん食べていたのよ」
劉宏が喋りだす。
「ん?そうなのか?」
「ええ、部屋ももっと綺麗で広くて、いろんな物がたくさんあったわ」
「ふーん…じゃあ何でこんなトコにいるんだ?」
「さっきの人達が連れてきたのよ」
「はい。数日前、私とお姉様はお供を連れ、
劉協が詳しく説明する。
「その途中でお供の者達が不審な人影を見つけ、それを調べに私達のそばを離れたのです。
するとその時、李傕の配下の者達が来て私達を連れ去り、危険だからここにいるようにと…」
「だから、十日以上ずっとここでじっとしているのよ」
「十日以上⁉そりゃ退屈だな!」
「……“たいくつ”?」
「ああ。何日も、こんな何もねェ所でじっとしてるなんて退屈じゃねェか!おれだったらおかしくなってるよ」
「……たいくつ…」
『退屈』という言葉が気になったのか、劉宏は少し考えこむ。
「…白湯、私は退屈なの?」
「え、えっと…」
「?何でお前さっきから全部こいつに聞くんだ?お前の事なのに」
「あ、あの…」
「?」
「お、お姉様、ちょっと失礼します…」
「?」
劉協はルフィの袖を引っ張り、部屋の隅に連れて行った。
▽
「何だ?」
「…お姉様には……何もないんです」
「?“何もない”?」
「お姉様は生まれた時から、何でも誰かにやって貰っていました。
服を着るのも、食事をするのも全部家臣達がやるから、自分では何もしなくて良かったんです」
「…………」
「でもそれは裏を返せば、お姉様は何もさせて貰えないという事でもありました。
それでお姉様は何もせず、部屋の中でじっとしているだけの日々を送るようになって…」
「それじゃあアイツ、生まれた時からずっと退屈で、それでおかしくなっちまったのか?」
「多分、そういう事なんだと思います…。
周りの者達も、お姉様に何もさせないように…『周りの者が何かやるのを待っていればいい』と、そう教え込むようになって…。
今ではお姉様は、本当に自分では何もしなくなってしまいました…。
遊びも食事も誰かが持って来るのを待つばかりで…お仕事も全部人任せで…」
「ん?そういえばさっきも『全部誰かにやって貰ってる』って言ってたけど、あいつそんなに偉い奴なのか?」
「えっと……お姉様は天子…皇帝なんです」
「ええェェェ~~~っ⁉」
ルフィの絶叫が響き渡った。
「アイツ皇帝⁉じゃあアイツこの国でイッチバンえらい奴なのか⁉」
「は、はい…」
「ん⁉じゃあ何であいつ腹一杯メシ食えてねェんだ⁉偉い奴なのに!
おかしいじゃねェか!」
「…はい。私もおかしいと思います…」
「?」
「李傕が本当に私達の身を案じているのなら、こんな扱いをする筈がないと思います…。
たぶん李傕は、私達の事なんて本当はどうでもよくて、ただお姉様を…天子様を利用して、自分がいい思いをしたいだけなんだと思います…。
だから、このままここにいるのは、絶対にお姉様にとって良くない事だって思います…。
何とかしなきゃって思います…けど……」
「……そうか。よし、わかった。ここ出よう」
「………え?」
「さっきの奴らが来たら、おれがぶっ飛ばしてやるよ!
メシ食わせてくれたお礼だ。おれがお前らを守ってやるから…」
「で、でも…」
「姉ちゃんの事何とかしてェんだろ?だったら逃げよう」
「……無理ですよ…。ここから出ても…何も変わらないから…」
「?」
「ここから出で宮殿に帰っても…閉じ込められる場所が変わるだけで、お姉様も私も何もさせて貰えないし…何もできないですから…。
みんな李傕と同じで、お姉様を利用したいだけで…誰も味方じゃないから……誰も助けてくれないから……」
「…………」
そう言って落ち込む劉協に…
ゴン!
ルフィはゲンコツをくらわした。
「い、痛い!な、何で殴るの⁉」
「なんとなくだ!」
「なんとなくって…」
「あのなァ劉協、おれは泳げねェ」
「?」
「剣も使えねェし、航海術も持ってねェ。ウソもつけねェし、料理も作れねェ。
医学も考古学も全然わかんねェ。船を直そうとすれば逆に壊しちまうし、音楽だってヘタクソだ」
「…?」
「でも…おれは海に出た。海賊になりたかったから」
「え?」
「おれは助けて貰わねェと、何も出来ねェ奴だ。
でも、助けてくれる奴が出来るまで何もしねェなんて―――そんなのおれはイヤだ!」
「!」
「仲間が必要なら、それも自分で探すんだ!
「…………」
そう言うと、ルフィは小屋の戸口へ向かう。
「……自分が…誰よりも動く…」
「劉協!」
「!」
ルフィの呼び声に劉協が振り向くと、そこには…
(あ……!)
日が沈みかけ薄暗くなった小屋の中、開かれた戸口から差し込む夕日を背に立つルフィの姿があった。
「おれは今からここを出るけど、お前はどうする?」
「……私…私は…」
劉協はしばらく戸惑っていたが、やがて引き締まった表情になり…
「お姉様、ここを出ましょう!」
「あら、出るの?」
「このまま李傕の言う事を聞いていれば、お姉様の身に良くない事が起こるばかりです!
宮殿に戻れば、少なくともお姉様の身を真剣に守ろうとする者はいます!ここから逃げ出しましょう!」
「そう、わかったわ」
そしてルフィと劉宏と劉協は小屋の外に出る。
「それで、どっちに行くの?」
「このまま道に沿って山を下ると、きっと李傕の兵士達に気付かれるでしょうから…」
「森の中を行くしかねェな」
「あの…ルフィでしたか?」
「ん?」
「本当に私達の事、守ってくれますか?」
「おう!任せとけ!」
「わかりました!それじゃあ、行きましょう!」
そして3人は森の中へと足を踏み入れていった。