ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第82話 “蛍”

 

夜―――

 

「噂で聞いたのはこの辺りですが…」

 

ゾロ達は老父と一緒に、例の脱走兵と住民達の隠れ家を探して、街の北の方を訪れていた。

 

「……人の気配は全く感じられんが…」

 

「チチチー!」

 

「ふんふん…なるほど。おーいみんなー!」

 

一同が周囲を探索していると、一匹のネズミの前にしゃがみ込んでいたチョッパーが声を上げた。

 

「今、こいつが教えてくれたんだけど、あそこの建物に人間が出入りしているのを何度か見たらしいんだ」

 

そう言ってチョッパーが示した先には、ところどころ崩れてはいるが、豪華な造りをした大きめの屋敷があった。

 

「では、入ってみるとしよう」

 

 

 

 

 

 

半分ほど崩れかけた門から、一行は中に入った。

 

「これは…!」

 

入ってみると建物は明らかに人の手によって、あちこちが破壊されていた。

 

「蜘蛛の巣があまり張っていないところを見ると、まだ人の出入りがあるみたいですね…」

 

周囲の様子を見て朱里が呟く。

 

「確かにそうね。でも門の腐食具合から見て、持ち主がいなくなってからかなり経つみたいよ」

 

「怪しいですな…。ここを調べてみるのです」

 

詠とねねも呟く。

 

一行は家屋の内部に足を進めた。

内部は乱暴に開けられた収納棚や櫃が放置され、古びた家具などが散乱している。

 

「何者かが侵入して、破壊と略奪をしたみたいね…」

 

ナミが呟く。

 

「それにしても、ここ誰のお屋敷なんでしょう?」

 

「おそらく、李傕か郭汜に楯突いた政務官のお屋敷でしょう。

これだけ大きい屋敷ならば、間違いなく高い身分の者か、大商人の物でしょうし、略奪だけでなく破壊までされているのは、持ち主が相当な怒りを買ったからだと思います。

李傕か郭汜の配下の者の屋敷なら、放置される筈はないと思いますから、二人に敵対している者の屋敷を兵達が荒らしたんだと思います」

 

桃香の疑問に朱里が答えたその時…

 

「ほう…お嬢ちゃんは賢いんやなァ…」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

不意に何者かの声が聞こえ、ゾロ達はとっさに身構える。

 

「!あそこに誰かいるのだ!」

 

鈴々が指した方を見ると、屋敷の奥の暗闇の中に、何者かが偃月刀を手に立っているのが見えた。

 

「アンタら何者や?」

 

声の主は得物を構え、歩き出す。

 

やがて月明かりにその姿が照らされ…

 

「ん⁉おめェ霞じゃねェか!」

 

「⁉ゾロォ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついて来いや」

 

簡単に自己紹介、ゾロと出会ったいきさつの説明を済ませた後、一行は霞に案内されて屋敷の台所に向かった。

霞はそこの隅にある大きめの竈に向かい、焚口に入っている薪を取り除く。

 

「ここが隠し通路の入り口になっとるんや。最後に入ってくる奴は、ちゃんと薪で隠しといてな」

 

隠し通路は地下道になっており、人一人がやっと通れる程の広さだった。

ゾロや愛紗達は少々身をかがめ、ブルックに至っては四つん這いになって進んだ。

 

しばらく行くと、少し広いところに出た。

そこは縦穴になっており、上から縄梯子がかけられ、地上に出られるようになっていた。

 

登ってみるとそこはどこかの林の中で、何人もの住民が天幕を張り暮らしていた。

 

霞はその内の一つに、ゾロ達と一緒に来た老父を案内して食事を与え、別の天幕にゾロ達を連れて行った。

 

「ここは長安から少し離れた所にある林の中や。この絵地図で言うと、この辺りになる」

 

霞は床に絵地図を広げて、説明を始めた。

 

「あの屋敷はここの本来の領主様の屋敷でな、有事の際に人が避難できるように、あの通路を作って、この辺りに食料や武器、金をある程度貯めといたらしいんや。

領主様は少し前に二人に殺されて、屋敷は荒らされたんやけど、何とかあの通路だけはバレずに済んでな。

領主様の腹心が少しずつ住民を避難させて、この集落を築いたんや。

んで、ウチはそいつに協力を求められて、基本あの屋敷に隠れて、あの隠し通路が気付かれんよう見張ったり、時々役人から必要物資を奪って、ここに供給したりしとるちゅうワケや」

 

「では、あの老父が言っていた、李傕の下から逃げ出した客将というのは…」

 

「ああ、ウチの事や」

 

「しかし、おめェが何でここに?」

 

「あんたらと別れた後、ウチは今まで通り日銭稼ぎをしながら旅しとったんやけどな…」

 

ゾロに訊かれ、霞は説明し始める。

 

「だいぶ前にこの辺りの役人が喧嘩売ってきおってな、返り討ちにしたらそれを見ていた李傕の奴が勧誘してきたんや。

『天子様の身を守り、国家のために我とともに戦わんか?』って。

路銀に困っていたところやったし、天子様のためならきっと誇れるモンがある思うて承諾したんや。

けど実際にやる事というたら、弱い者いじめと略奪ばっか。

嫌になってすぐ辞めたったわ」

 

「なるほど…」

 

「ほんで、ゾロ達はどうしてここに?」

 

 

 

 

 

 

「自分で天子様を攫っといて、天子様をお守りする軍を騙る⁉どんだけド汚い奴やねん!」

 

話を聞き、霞は怒り心頭に叫んだ。

 

「それで、張遼さんは天子様とその妹様、董卓さんやルフィさんの事は何かわかりませんか?」

 

「必要物資をめぐって何度か役人とはやりおうてるけど、そういった話は聞いたことないなァ…」

 

桃香の問いに、霞は申し訳なさそうに答える。

 

「そうですか…」

 

「ただ…李傕が天子様を誘拐したっちゅうのは本当やと思う」

 

「え⁉」

 

「ウチも天子様に直接会った事はないけど、郭汜の奴が度々李傕んトコに来て『天子様をよこせ』っちゅうてな。

それに李傕も自信満々に『天子様に刃を向ける反逆者め』って返しておったわ。

それに、李傕の奴は毎日食事をどこかに届けとるようやったし、天子様は李傕の手の中にいるとみて間違いないと思う」

 

「成程ね…」

 

「けど、あとの二人の事はホンマにわからへんわ…すまへんなァ…」

 

「いいわよ気にしなくて」

 

「うん。ルフィはすぐに見つけられるだろうし、月の事は明日おれも臭いで探してみるし」

 

「しかし、街で何の騒動もないという事は、ルフィは長安には着いていないという事だろうか?」

 

愛紗は首をかしげる。

 

「道に迷った可能性が高いわね…」

 

冷や汗をかくナミ。

 

「…ったく方向オンチを自覚しねェで勝手に動きやがって」

 

そういうゾロに対し…

 

((((((((お前が言うな…)))))))

 

ナミ、チョッパー、ブルック、愛紗、鈴々、星、朱里は心底そう思うのだった。

 

「せやけど天子様を助けるんなら、相当な覚悟をしといた方がええで」

 

霞は真剣な顔で言う。

 

「郭汜の奴も天子様を攫う気やから、天子様を助けるんやったら、李傕と郭汜の両軍を相手にする必要がある。

あの二人は徹底的に戦をする気やから、自分の屋敷とその周りの区画を防壁で固めとるし、武器とかも相当準備をしとるからなァ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィ、劉宏、劉協はしばらく森の中を進んでいたが、劉宏と劉協が疲れて歩けなくなってしまった。

幸い、少し開けた場所がすぐ近くにあったので、ルフィが焚火を焚き、そこで休んでいた。

 

「お腹空いたわ…」

 

「私も…」

 

「そういや、何日もメシ食ってねェって言ってたもんな…。よし、ちょっと待ってろ」

 

そう言うなり、ルフィは森の中へ消えていった。

 

「どこに行ったんでしょう?」

 

「さァ?でも、待ってろって言うんだから待っていましょう」

 

「…はい」

 

ドゴン!

 

「⁉」

 

「?」

 

突然、森の奥から轟音が聞こえ、しばらくすると何かを引きずる音が聴こえだした。

やがて…

 

「あー!思ったより早く見つかって良かったー!」

 

気絶したイノシシを引きずるルフィが現れた。

 

「あのルフィ…それは…?」

 

「イノシシだよ。捕まえたんだ。焼いて食おうぜ!」

 

 

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでしたー」」」

 

3人はイノシシを焼いて食事を済ませた。

もっとも、肉の8割近くはルフィが食べた。

 

「あ~食った食った~!」

 

「ふー…久しぶりにお腹いっぱい食べられた…」

 

「へー…お肉って本当はああいう毛むくじゃらの動物なのね。知らなかったわ」

 

「えっ⁉見たことねェのか⁉」

 

劉宏の言葉に驚くルフィ。

 

「うん。私もお姉様も、料理されたお肉しか見たことなかったから……あの…ルフィ」

 

劉協は代わりに答えると、表情を曇らせ…

 

「何だ?」

 

「あのお肉は…生きた動物だったのですよね?」

 

「ああ」

 

「でも、私達が食べたから死んだんだのですよね…」

 

「……ああそうだ」

 

ルフィは表情を少し厳しめにして語り続ける。

 

「肉だけじゃねェ。魚も果物も野菜も卵も、全部生きてる奴を殺して食ってるんだ。

おれ達は生きてる奴を食わねェと生きられねェんだ」

 

「果物や野菜もそうなの?」

 

今度は劉宏が訊ねる。

 

「ああ。たぶん最初から死んでるワケじゃねェと思うぞ」

 

「……お菓子とかもそうなの?」

 

「ああ。あれは果物とかを使って作るんだ」

 

ルフィはお菓子の作り方など全くわからないが、サンジが作っていたケーキなどに果物が使われていたことを思い出し、そう答えた。

 

「へェ…どうやって?」

 

「わかんねェ。それは作ってる奴に訊いてくれ」

 

「あれ?」

 

不意に、劉協が声を上げる。

 

「どうした?」

 

「あそこ…何か光っている…」

 

「「?」」

 

 

 

 

 

 

謎の光が気になり、3人がその場所へ行ってみると…

 

「わァ…!」

 

「すごい…!」

 

「キレーだな~!」

 

そこは小川になっており、何十匹、何百匹もの蛍が飛んでいた。

 

「ねェルフィ、コレはなんていうのですか?」

 

「これはホタルっていう虫だ」

 

「“ほたる”…?“むし”…?」

 

「カサカサしている奴や、ウネウネしている奴を“虫”っていうんだ。…で、光る虫の事を“ホタル”っていうんだよ」

 

「“虫”…“ホタル”…」

 

「すごい!すごーい!」

 

…と、劉宏は大はしゃぎしながら小川に入っていく。

 

「お、お姉様⁉」

 

劉協は心配するが、川は膝小僧ぐらいまでの深さしかなかったため、劉宏は平気で入って行った。

 

「あはははははっ!」

 

着物や体が濡れるのも気にせず、劉協は楽しそうにホタルと戯れる。

 

「……楽しそうだな、あいつ」

 

「……うん。あんなに楽しそうなお姉様、初めて見ました…」

 

ルフィは足を小川に入れて川岸に腰掛け、劉協はその隣に体育座りする。

 

「……ルフィ」

 

「ん?」

 

「私…何も知りませんでした…お肉の事も、動物の事も、虫の事も…。

書物とかを読んで、いろんな事を知りたいって思っていましたけど、させて貰えませんでした…」

 

「……そっか。でも良かったじゃねェか」

 

「え?」

 

「今まで何も知らなかったんなら、これから毎日面白ェモンいっぱい見られるぞ」

 

「………うん!」

 

「ねェ~!あなた達も来なさいよ~!」

 

「よし、行くか!」

 

「……うん!」

 

ルフィは能力者であるため、あまり水には入らない方が良いのだが、そこまで深くないので大丈夫だろうと判断し入る。

劉協の方も、服が濡れることは気がかりではあったが、劉宏があまりにも楽しそうだったため、入って行った。

 

「……あのねルフィ」

 

「何だ?」

 

「私の真名はね…“白湯(ぱいたん)”っていうの」

 

突然、劉協はそれまでの丁寧な口調を止めて話し始めた。

 

「私、ルフィと真名を交換したい」

 

「いいのか?おれは真名がねェから交換はできねェぞ?」

 

「それでもいい。私、ルフィには“白湯”って呼んで欲しい!」

 

「わかった。じゃあ呼ぶ」

 

「あら。それじゃあ私の事も、真名で“空丹(くうたん)”って呼んで構わないわよ」

 

「そうか。それじゃあ“白湯”、“空丹”よろしくな」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

「きゃっ⁉」

 

「お、お姉様⁉」

 

「どうした⁉」

 

「今、足に何か触ったわ…」

 

「あ…!よく見たら水の中に何かがたくさんいる…」

 

「ああ、魚だよ」

 

「“サカナ”?これが?」

 

「ああ。水の中にいて、ヒラヒラしてるところがあって、体の表面がザラザラしている奴の事だ」

 

「へー…じゃあさっきのお肉みたいに、これをバラバラにすると白いものになるの?」

 

「たぶんそうなんじゃねェか?」

 

その夜、ルフィ、空丹、白湯は遅くまで川の中で遊び続けた。

 

 




ルフィが他人に何かを教えたり、説明するシーンはルフィの思考レベルを考えて言葉を選ばないといけないから、結構難しいです。

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