ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第83話 “飢餓”

ルフィ、空丹、白湯が真名を交換した日の翌朝―――

 

「……う~ん…?」

 

目を覚ました白湯は、自分が手にしている物が布団とは違う物である事に気が付く。

 

(………あれ?…え?)

 

目を開けると目の前に男の横顔があり、自分がその男の体に抱き着くように寝ている事に気が付く。

 

(……あ…そうだった。ルフィと一緒に、あの小屋から逃げ出したんだった…)

 

上半身を起こすと、反対側で空丹が同じ様にルフィに抱き着いて寝ているのが見えた。

ちなみにルフィは仰向けになって、立派な鼻ちょうちんを膨らませ、大いびきをかいて寝ている。

 

(……あれ?)

 

…と、そこで白湯はある事に気が付きルフィと空丹、そして自分の体を見る。

 

「ええええェェェ~~~っ⁉」

 

なんと3人とも、生まれたままの姿で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

「え~っと…確か川で遊んで服が濡れちまったから、脱いで乾かしてたらいつの間にか眠っちまったんだ」

 

白湯の絶叫で2人も目を覚まし、近くの木に掛けていた自分達の服を着て、昨夜の事を思い出していた。

 

「裸は寒かったけど、三人でくっついていると温かかったわね」

 

「そうだな」

 

「はうゥ…」

 

2人が平然とする一方、白湯だけは羞恥に顔を染めていた。

 

 

 

着替えた後、3人はルフィが捕まえてきた鹿で朝食を済ませて出発した。

 

しばらく歩くと、スモモがなっている木があったので、弁当代わりに実を持って行くことにした。

ルフィが木に登って実を採って来て、空丹と白湯は1つずつ、ルフィは両腕に残りの実を全て抱えて出発した。

 

「ルフィ、ずいぶんたくさん持ってきたわね」

 

「ああ。おれはメシは一日五回食うし、一度にたくさん食うからな」

 

「五回も食べるの…?」

 

「お?」

 

3人は森を抜け、崖沿いに着いた。

下には荒野が広がっており、少し先に城が見える。

 

「あら、街が見えるわね」

 

「どうする?あそこ行ってみるか?おれの仲間がいるかもしれねェし…」

 

「でも、あそこにはきっと李傕達が…」

 

白湯は少々考え込み…

 

「ルフィ、本当に私達を李傕達から守ってくれる?」

 

「ああ任せとけ!約束だ!」

 

「うん!じゃあ、あの街へ行こう!」

 

「よし!」

 

ルフィは返事をすると両腕のスモモを全て口に放り込み、飲み込む。

そして空丹と白湯を抱きかかえる。

 

「川もねェし、今度は大丈夫だな!」

 

「えっと…ルフィ?」

 

「よーし行くぞ!しっかりつかまってろよ!」

 

「わかったわ」

 

「え…?え?」

 

そしてルフィは崖から飛び降りた。

 

「きゃーーー!」

 

「わーーー⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長安にある李傕の屋敷。

そこで李傕は朝食をとっていた。

 

食卓には豪華な料理が並べられ、大きな杯には酒がなみなみと注がれている。

その前では踊子が舞を披露し、楽女達が楽器を演奏している。

 

「郭汜軍の様子はどうじゃ?」

 

李傕は食事をしながら近くにいた兵に訊ねる。

 

「今朝はまだ動いている様子はありません。しかし、おそらく今日も帝をよこすように要求してくるかと」

 

「はははは!好きなだけ吠えるがいいわ、負け犬どもめ!天子様がこちらにいる限り、正義は我らにある!

おーい!酒が足らんぞー!」

 

「李傕将軍!一大事でございます!」

 

兵士が一人駆け込んできた。

 

「何じゃ騒々しい。今食事中じゃぞ」

 

「天子様と劉協様がいなくなりました!」

 

「ぶーーーっ⁉」

 

李傕は思わず口の中の物を全て吐き出してしまった。

 

「今朝、食事を届けに行ったところ、小屋の中はもぬけの殻だったそうです!」

 

「ば、バカモン!見張りは何をしておったのだ!」

 

「見張りって…『天子様達はどうせ何もできないし、郭汜達に気取られる可能性もあるから見張りはいらない』って将軍がおっしゃったので…」

 

「黙れ!ワシはそんな事言っとらん!断じて言っとらんぞ!

これはキサマらの職務怠慢じゃ!打首にしてやるっ!」

 

「え~~~っ⁉」

 

「将軍!」

 

さらに別の兵士が駆け込んできた。

 

「今度は何じゃ⁉」

 

「街の中で天子様を見たという兵士達が!」

 

「何ィ⁉」

 

「何者かが天子様を連れていたようで!すでに郭汜の兵士達もこの情報が伝わっており、動き出しております!」

 

「何じゃと⁉では天子様を連れだしたのは郭汜軍の者ではないのか⁉一体誰が…⁉」

 

「将軍!そのような事を考えている場合ではありません!

もしその者が、我らが天子様を誘拐したと朝廷に告げ口すれば、我々は朝敵に…!」

 

「そ、そうであったな!すぐに天子様を探せ!郭汜に先を越されるな!天子様を連れだした奴は、ひっ捕らえて膾切りにしてやれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

その頃、街の北の方にある、例の隠し通路がある屋敷で愛紗は見張りをしていた。

 

「関羽、朝食貰ってきたで」

 

「すまないな」

 

隠し通路からやって来た霞から食事を受け取り、2人は食べ始める。

 

「…なァ張遼殿」

 

「何や?」

 

「お主はどうしてここの用心棒を引き受けたのだ?」

 

「へ?」

 

「お主、路銀に困っていたこともあって李傕の客将になったと言っていたであろう?

ここで貧しい庶人の用心棒をしていたところで、大した報酬は期待できまい。

よその町に移った方が稼げるであろう。なのに何故、引き受けたのだ?」

 

「………そう言われてみたら、何でやろ?」

 

霞は上を見上げながら考え出す。

 

「李傕に雇われたときはな、すぐに嫌な気持になったんねん…。

給料はそれなりに良かったし、天子様のためっちゅう大義名分もあったんやけどな…。

けどここの用心棒は全然嫌やのうてな…。

給料は日々の食事だけやし、それも雀の涙みたいなもんや。酒も満足に飲めへんのに…何でやろ?」

 

「張遼殿、お主ゾロ殿に負けた後、何か誇れるものを持つ武人になろうと、そう決心したと言っておりましたな」

 

「ああ」

 

「あなたにとっての誇りというのは、ここであなたが守っている民なのではないですか?」

 

「?」

 

「あなたは自分でも意識しないうちに『富や名声ではなく民のために戦いたい』、『力なき者を、苦しめられる無辜の民草達を守るために武を振るいたい』と、そういう志を抱いていたのではないですか?」

 

「な、何言うとるんや…?ウチにそんなの似合わへんって…」

 

「張遼殿、似合っていてもいなくても、今のあなたの姿はそれそのものですよ」

 

「……民を守るためにか…」

 

「急げー!」

 

「探せー!」

 

霞が考えていると、外から騒ぎ声が聞こえてきた。

 

「?何だか、街が騒がしくなってきましたな」

 

「何かあったんやろか?」

 

「張遼殿は顔が知られているでしょうから、私が様子を見てきます」

 

「そうか。ほな、頼むわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒がしくなってきたなー…」

 

ルフィ達3人は、街に入った直後に李傕と郭汜の兵士に見つかってしまった。

ルフィがとっさに2人を連れて民家の屋根の上に逃げ、今はそこで様子を見ていた。

 

「ルフィ、ごめんね…」

 

「ん?」

 

突然白湯が謝る。

 

「私達のせいで、こんな事に巻き込んだりして…」

 

「お前が謝る事ねェよ。おれがお前らを連れだしたんだし…。

それに真名も預かったし、お前らももうおれの友達だ!おれが必ず守ってやるから安心しろ!」

 

「……うん!ありがとう!」

 

「……ねェルフィ」

 

「何だ空丹?」

 

「ここ、小さい建物がたくさんあるけど、誰が何のために使うの?」

 

「人が住んでるんだよ」

 

「そうなの?私の住んでいる所はもっと大きいわよ?」

 

「それはお前が偉い奴だからだよ。偉い奴はみんなデカい建物に住んでるんだ」

 

「ふーん…でも、こんな小さい建物に人が住めるの?」

 

「人が住む場所なんて、メシ食う場所と寝る場所とトイレ…じゃなくて厠があれば十分だろ。

お前らだって昨日まで山小屋にいたじゃねェか」

 

「そういえばそうだったわね。……そう言われてみれば、宮殿は大きいけれど、私が使わない部屋も多いわね。

でも、何でそんなに大きいのかしら?」

 

「さァ~?おれは偉い奴じゃねェからな~」

 

「お姉様、宮殿には私達以外にも、大勢の人が出入りしますから、その人達の部屋が必要なのです」

 

「ああ、そうだったのね。そういえば“(ふぁん)”や“瑞姫(れいちぇん)”も一緒に住んでいたわね」

 

「……ねェルフィ」

 

「何だ?」

 

「この街の人達、なんだか苦しそう…」

 

街の路上で力なく座り込んでいる人々や、今にも倒れそうにフラフラしながら歩いている人々を見て、白湯は心配そうに言う。

 

「…………」

 

「みんな下を向いていて、やせていて…元気がないみたい…」

 

「……ああ、苦しんでるんだ」

 

ルフィはやや厳しめの表情になる。

 

「この街だけじゃねェ。偉い奴のせいでひどい目に遭って、苦しんでる奴がこの国にはたくさんいるんだ」

 

「……そうなんだ…」

 

「“ひどい”ってどんな事?」

 

「メシを食えねェようにする事だ」

 

「それがひどい事なの?」

 

「ああ、メシ食えねェと腹が減るからな。腹減ったら力が出ねェから、何もできなくなっちまう。

お前らだって腹減るの嫌だろ?」

 

「そうね。確かにお腹が空くのは嫌だわ」

 

「良いのかなそれで…?」

 

「あら?あれは何かしら?」

 

「「?」」

 

2人が空丹の視線の先を見てみると、一人の兵士と白髪の少女が言い争っているのが見えた。

兵士は芋が入った籠を抱えており、後ろには戸が開けられた民家がある。

 

どうやら兵士が籠を持って民家から出てきたところを、少女が呼び止めたようである。

 

「ねェ、あれは何をしているの?」

 

「さァ?」

 

「……ルフィ、お姉様、下に降りてみませんか?」

 

「白湯は下に降りたいの?」

 

「はい。あの二人に何があったのか気になりますし、あの子が苦しんでるなら助けてあげたい」

 

「そうか、わかった。空丹はどうする?」

 

「白湯が行くなら、私も行くわ」

 

「よし!」

 

 

 

 

 

 

「黙れ!これは税の徴収だ!」

 

「そんなものが徴収であってたまるものですか!」

 

兵士と少女はしばらく言い争っていたが…

 

「クソガキが…!」

 

しびれを切らした兵士が籠を地面に置き、腰の剣を抜く。

 

「いい加減に…」

 

「やめてーーー!」

 

「「⁉」」

 

突然第三者の声が響き、2人が見てみると…

 

「りゅ、劉協様⁉それに天子様も⁉」

 

「えっ⁉天子様⁉」

 

空丹と白湯の登場に2人は驚愕する。

無論、その隣にはルフィもいる。

 

「そのような者に剣を向けるなんていけません!

それにその籠の中の物は何ですか⁉人の物を勝手に持って行ってはいけない筈です!」

 

「ご、誤解ですよ劉協様!これは税として、我々が貰うのは当然の事なのです!」

 

「え…⁉」

 

「我々は民を守るために毎日働いているのです。そしてそのお礼として、民から物を貰い、貰った物で生活しているのです。

何も問題はないでしょう?」

 

「え、ええっと…」

 

「違う!」

 

「「「⁉」」」

 

今度はルフィの声が響く。

 

「確かに腹が減ってたら戦えねェし、守って貰ってんなら礼をするのは当然だ!

でも、お前らが全部持って行ったら、ここの奴らは何も食えねェ!

それじゃあ、守って貰う意味がねェだろ!」

 

「その男の言う通りです!この街の者達は皆、明らかに飢えています!

それほどまでに税を取るだなんて、盗賊の略奪と同じです!」

 

少女もルフィに賛同し、怒鳴りつける。

 

「っ!うるせェ!」

 

「きゃあ⁉」

 

逆上した兵士は少女を殴り飛ばした。

 

「ああっ!」

 

「っ!(カチーン!)」

 

「どいつもこいつも!クズ住民は黙っておれ達に従ってればいいんだよ!」

 

そう言って今度はルフィに斬りかかる!

 

が…

 

ドッゴォォォン!

 

「⁉」

 

ルフィがそんなものを食らう筈もなく、兵士は見事に吹っ飛ばされる。

 

「………あ、あの…」

 

少女がルフィ達に話しかけようとした、その時…

 

「いたぞー!天子様だー!」

 

「劉協様もいるぞー!」

 

「郭汜将軍に伝えろー!」

 

「急げー!郭汜軍に先を越されるなー!」

 

「ああっ⁉」

 

李傕、郭汜の兵士達が現れた。

 

「ルフィ、早く逃げ…」

 

「……白湯、空丹、悪ィ、やっぱり逃げるのやめだ」

 

「ええっ⁉」

 

「えっ⁉天子様達の真名を⁉」

 

「る、ルフィ⁉やめるって…⁉」

 

「こいつら全員ブッ飛ばす!」

 

「!」

 

「キサマが天子様達を連れだしたのか⁉」

 

「覚悟しやがれ!」

 

「よォし…来てみろ!」

 

ルフィは拳を構えるが…

 

「ま、待って下さい!」

 

「⁉何だ⁉」

 

先ほどの少女が制止する。

 

「ここで戦うと領民が巻き込まれます!どうか別の場所で…」

 

「そうか、わかった!どこならいい⁉」

 

「あ、あそこの…東の門の外で…!」

 

「よし!」

 

ルフィはうなずくと空丹を背負い…

 

「空丹!しっかりつかまってろよ!」

 

「ええ、わかったわ」

 

「行くぞ白湯!」

 

「うん!」

 

「お前も一緒に来い!」

 

「きゃっ⁉」

 

両手に白湯と先ほどの少女を抱え、門に向かって走り出す。

 

「取り囲めー!」

 

「逃がすなー!」

 

しかし、李傕・郭汜軍の兵士達が門までの道に立ちふさがる。

 

「ああっ!」

 

「そんな…!」

 

「邪魔だァーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「ギャアアアアア⁉」」」」」」」」」」

 

…が、ルフィは足だけで敵をなぎ倒しながら、留まることなく門へと進む。

 

「わ~」

 

「す、すごい…」

 

「この大軍の中を無人の野のように…!しかもたった一人、両手がふさがった状態で…!」

 

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