ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
空丹達が去った後、ルフィ達と月達、そして霞は改めて自己紹介をした。
「ルフィさん、先ほどは危ないところを助けていただき、その上天子様達まで助けていただき、誠にありがとうございました。
関羽さん達も、今回の一件でご助力いただき、本当にありがとうございました」
月は深々と頭を下げる。
「白湯達に頼まれてやっただけだ。それにお前もチョッパーの事助けてくれから、そのお礼だよ。気にすんな」
「ルフィの言う通りです。我々は巻き込まれて、結果的に皆様にご助力しただけです。頭を上げてください」
「寛大な心遣い、感謝します。お礼代わりと言っては何ですが、後ほど我が城で、もてなしをさせて下さい」
「では、お言葉に甘えて」
「…それで賈駆、長安の復興の手筈は?」
「はっ!すでに兵士達に伝令を出し、武威郡より人手を回すように通達しております」
「よろしい」
「あの…董卓さん」
「何でしょう劉備さん?」
「董卓さんは長安の復興もするつもりなんですか?」
「はい。李傕と郭汜が去ったとはいえ、この街は未だに無法地帯も同然。
住民への奉仕はもちろん、政権の立て直しなど、やらなければいけない事は山ほどありますから」
「それ、私達にも手伝わせていただけないですか?」
「え⁉」
「いいですよね?皆さん?」
「おう、いいぞ」
「当然です」
「ま、乗り掛かった舟だしな」
「この状態の街を放置して行くのも、後味が悪いですしな」
「私も、お料理や医学の心得も多少はありますので」
「もちろん、おれも手伝うぞ!」
「鈴々もなのだ!」
「ウチもや。この街の事は最後まできっちりやらせて貰うで」
ルフィと愛紗を始め、ゾロ、星、朱里、チョッパー、鈴々、霞も賛同する。
「私もいいわよ」
「あの…ナミさん、さすがにここでお礼を要求するのは…」
「するか!私だって空気くらい読むわ!それに…」
「?」
「理不尽な支配を受けてきた人達は、放っておけないから…」
(…何か自分か知人に重なる部分でも、あったんでしょうか?)
気にはなったが、ブルックはそれ以上問い詰めなかった。
「…皆さん、ありがとうございます」
こうして、一同はしばらくの間長安にとどまり、復興を手伝うことになった。
月、詠、ねねが政権の再建を行い、ナミ、桃香、朱里は住民への給仕を、チョッパーは病人とケガ人の手当てを、ブルックは音楽で住民達の英気を養い、残りの者達は街の警備や家屋の修繕、田畑の耕起などを手伝った。
李傕と郭汜の悪政に加担していた者達は全員打首か身分・財産の没収といった処罰を受けた。
残りの者達から新しい政務官が選ばれ、その者達には月が呼び寄せた董卓軍の兵士達が貸し与えられた。
董卓軍の兵士達は、長安の兵士とは比べ物にならないほど強く、規律にも厳格であったため、兵士達による住民への暴行もなくなった。
長安が治安を取り戻したのを確認して、一行は武威郡にある月の城へと向かった。
▽
「董卓様、お帰りなさいませ」
「賈駆様、華雄将軍、呂布将軍、陳宮殿、遠征お疲れさまでした」
城に入ると、大勢の住民が月達を出迎えた。
「董卓さん、住民の皆さんから慕われているんですね」
その様子を見て、桃香も嬉しそうにする。
「…………」
「張遼殿?どうかされましたか?」
住民の様子をじっと見る霞を見て、愛紗が訊ねる。
「あ、いや…何でもあらへんで…」
「?」
「チョッパー殿ー!お帰りなさいませー!」
「チョッパー殿のお薬で、この間息子の病気が治りましたー!ありがとうございます!」
「へェ…」
「チョッパーさんも慕われていますね」
「さすがチョッパーね」
「仲間が人気者だと嬉しいな」
住民がチョッパーを慕う様子を見て、麦わらの一味の面々も嬉しそうにする。
▽
そして一行は、城内にある宮殿の門に着いた。
「あー…あらかじめ言っておくけど、たぶんびっくりするから覚悟しておいてね…」
「「「「「「「「「?」」」」」」」」」
詠の言葉にルフィ達は首をかしげる。
「開門!」
詠の掛け声で門がゆっくりと開いていく。
すると…
「ワンワン!」
「バウバウ!」
「ニャー」
「ミ~」
「ブヒ…ブヒ…」
「フゴフゴ…」
「モ~…」
「アオ~ン!」
「グルルルル…」
「ヒヒ~ン!」
「クワックワッ…」
「コケコッコー!」
「メ~…」
「メ゛ェェ~…」
犬、猫、家畜、猛獣、鳥、とにかく大量の動物達が出迎えた。
「こ、これは…?」
一同があっけにとられる中、何とか星が言葉を絞り出す。
「全部恋が拾ってきた動物達なんだ」
「みんな捨てられたり、怪我してたりしてた」
チョッパーと恋が説明する。
「みんな美味そうだな~…」
「っ⁉」
動物達を見渡しながらそう言うルフィに、恋は冷や汗をかく。
「る、ルフィ!みんな恋の家族で仲間だから、食ったらダメだぞ!」
チョッパーが必死に止める。
「ああ、わかってるよ。仲間なら食わねェから安心しろ」
口でそう言っているが、思いっ切り涎をたらし、腹からぐぎゅるるると大きな音がしているため、恋はあまり安心できなかった。
「ワン!」
不意に首に赤い布を巻いた子犬が恋によって来た。
「セキト、ただいま」
恋はその犬を抱きしめ頬ずりする。
「わふっ!」
「張々、ただいまなのです」
ねねも張々と抱き合い、体の毛に顔をうずめている。
「…いいなァ…」
「愛紗さん?どうかしましたか?」
「い、いやっ!何でもないぞ!」
「その犬、セキトって言うのか?」
ルフィが恋に話しかける。
「うん。恋の一番の友達」
「へー…」
…と、セキトに手を伸ばすルフィ。
「ワン!(がぶ)」
「痛ェー!」
しかし、セキトはルフィの手に噛みつく。
「セキト、その人噛んじゃ駄目」
「クウ~ン…」
「…ルフィさんって、犬との相性が悪いんでしょうか?」
「所謂『犬猿の仲』というヤツではないか?」
その様子を見て、朱里と星はそんな事を言うのだった。
「ちょ、ちょっと皆さ~ん!助けて~!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
ブルックの悲鳴が聞こえ、一同が見てみると…
「わんわん!」
「キャンキャン!」
「ワウワウ!」
ブルックは大量の犬に追いかけられていた。
「な…何だあれは?」
「犬に好かれやすい人ってたまにいるけど…」
「アレはいくら何でも好かれすぎじゃないですか?」
「たぶん、単純に餌だと思われてるんだと思います」
「「「「「「「「「「成程」」」」」」」」」」
朱里の言葉に全員が納得するのだった。
「助けて~!」
▽
その後、一同は謁見の間に移動した。
「…それで月、悪いんだけどおれは…」
「いいえ、大丈夫ですよ。チョッパーは皆さんと一緒に行ってください」
「ありがとう、月」
「…董卓殿、ウチから頼みたいことが一つあるんやけど」
チョッパーの話が終わると、霞が前に出てきた。
「何でしょうか?」
「ウチをあんたんとこで雇ってくれへんか?」
「え?」
「張遼殿⁉」
「関羽、あんたの言う通りやったわ」
「!」
「長安で李傕、郭汜と戦った時、ハッキリわかったわ。
ウチは弱いモンを守るために戦いたいって、自分でも気付かへんうちにそう思っとたわ。
それでここの住民達の様子を見て確信した。
あんた所のでやったら、大事なもん守るための戦いができるって。
董卓殿!この張遼文遠をあんたの部下にして欲しい!この通りや!」
そう言って霞は頭を下げる。
「……わかりました。張遼さん、我が愛する民のために、あなたのお力を私に貸してください」
「!ありがとうございます!」
「詠ちゃん、今夜はチョッパーの送別会と張遼さんの歓迎会で、宴会を開こうね」
「はい、喜んで!」
その夜、月の計らいで大宴会が開かれた。
そしてチョッパーが月達の下を離れる手筈が整うまで、ルフィ達は宿泊することになった。
▽
長安の一件から数日後―――
「董卓殿、本当にお世話になりました」
月、詠、恋、ねね、霞、華雄、そしてセキトと張々に見送られ、ルフィ達は出発することにした。
「それじゃあ月、詠、恋、雪羅、ねね、セキトに張々も元気でな」
「チョッパーも元気でね」
「ほんとあんたにはお世話になったわ」
「またいつでも遊びに来い」
「また、どこかで」
「達者でなのです」
「わん!」
「わふ!」
月達にお別れを言うチョッパー。
「ルフィさん、関羽さん達も本当にありがとうございました。皆さまのような英傑に出会えて、本当に良かったです」
「こちらこそ、董卓殿のような方とお目通りでき、感激でした」
「はい。もし董卓殿に力が必要であれば、僅かではありますが、我々は喜んでご助力いたします」
「はい!頼りにさせていただきます!」
「おう!任せとけ!」
挨拶をする桃香、愛紗、月、ルフィ。
「お互い苦労が多そうだけど、頑張りましょう」
「ここ数日一緒に過ごしてわかったけど、あんた達も本当に大変ね…」
「全くもってその通りで…」
「あはは…」
苦笑いするナミ、詠、星、朱里。
「ほな、翠にもよろしく言うといてな。あと、どっかであったら季衣にも頼むわ」
「おう、お前も達者でな」
「今度会ったら、是非お前達と手合わせをしたいものだな!」
「恋も」
「ヨホホホ!これは手ごわそうですな!」
霞、ゾロ、華雄、恋、ブルックが挨拶をする、その隣で…
「…陳宮!」
「?」
鈴々がねねに声を掛ける。
「これ、やるのだ!」
そう言って鈴々は一つの袋を差し出す。
「え?」
ねねが中身を確認してみると…
「これ…」
それは、鈴々が美羽の城下町で買った犬のストラップだった。
「やっぱりいらなくなったから、お前にやるのだ!」
「…!あ、ありがとうなのです!」
「…?何?」
二人のやりとりを見て、訊ねる恋。
「な、内緒なのです!」
「ケチ」
「後でのお楽しみなのです!」
「よし!じゃあ行くか!」
▽
「月~!みんな~!またな~!」
すでにだいぶ小さくなった月達に向かって、チョッパーは振り返って腕を振る。
「絶対また遊びに来てね~!」
月達も腕を振って返していたが、やがて声も聞こえなくなり、一行は本格的に歩き出す。
「…張飛ちゃんって優しいんだね」
しばらくして、桃香が呟いた。
「なっ⁉」
「はい、鈴々ちゃんはとっても優しいんですよ」
「な、何を言っているのだ⁉鈴々はわがままで!大飯食らいで暴れん坊で…ぜ、ゼッタイゼ~ッタイ優しくなんかないのだ!」
朱里の言葉を、鈴々は真っ赤になって否定する。
「…そうだな鈴々。お前は本当にわがままで大飯食らいで暴れん坊だな」
「え、おい…!」
「チョッパーさん」
何か言おうとするチョッパーをブルックが制止する。
「何だよブルック?」
「関羽さん、優しくないってのいうは肯定していないでしょう?」
「あ…そうか…」
「な、何言ってるのだ愛紗!鈴々にだって、ちょっとぐらい良いところはあるのだ…!」
「…ってどっちなのよ」
ナミを始め、思わず笑いだす一同。
「ま、それはさておき、これで当面の目的は全て達したな」
星が呟く。
「どうする?来たついでに、翠の妹達のところにも寄ってみるか?」
ゾロが訊ねる。
「うーむ…しかし、翠がいないのに我々だけで行くというのもな…」
「そうね。それはまた別の機会に、翠さんと一緒に来た時にしましょう」
愛紗とナミの言葉に全員頷き…
「よし!それじゃあ桃花村に帰るか!」
まっすぐ東に向かうのであった。
▽
一方、ルフィ達を見送った月達は、すぐに城へと引き返した。
「でも本当に良かった。チョッパーがちゃんと仲間に再会できて」
「ボクはあまり素直に喜べないけどね…」
「あの船長の下で働くなど…チョッパーが気の毒なのです…」
「何を言う。強くて頼もしい男だったではないか」
「せやせや。それなりに腕も立つんやし…」
「それなりにじゃない」
「?恋殿?」
「「「「?」」」」
恋の言葉に、月達は思わず足を止め、恋の方を見る。
「あの人たぶん………恋の五倍くらい強い」
「「「「「⁉」」」」」