ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回で麦わらの一味の一人と合流します。



第86話 “龍神”

ルフィ達が涼州を出てから数日、一行は曇り空の下を歩いていた。

 

「だいぶ雲行きが怪しくなってきたな…」

 

「今すぐ降って来る感じはしないけど、いつ降り出してもおかしくないし、一度降り出すと長くなりそうね」

 

空を見上げながらナミが言う。

 

「さっきわずかにですけど、雷鳴のような音が聞こえましたし、心配ですね…」

 

「ぷぷっ…雷が怖いなんて、朱里はお子ちゃまなのだ」

 

「そうじゃなくて、ほらアレ」

 

そう言って朱里は近くにある黒焦げの木を指さす。

 

「雷が落ちると、あんなふうになっちゃうんですよ」

 

「雷は背の高い物や金属に落ちやすいから、気をつけないとね」

 

「「「っ!」」」

 

朱里とナミの言葉に愛紗、鈴々、星は思わず得物を低く持ち直す。

 

「心配ならおれが持ってようか?」

 

「「「「「?」」」」」

 

ルフィの言葉に不思議そうにする桃香達。

 

「ルフィは伸びる身体のおかげで、雷が効かないのよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ」

 

「あと私も、身がないので雷は平気です。ヨホホホホ」

 

「―――で、どうする?」

 

「いいえ、けっこうです。自分の得物は自分で持ちます」

 

「私も。やっと取り戻した大切な宝剣ですから、自分で持ちたいですし」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

しばらくして…

 

「あ、あそこに村がありますよ」

 

先頭にいた桃香が村を見つけた。

 

「丁度いいな。今夜はあそこに泊めて貰おう」

 

愛紗も村に気付く。

 

「なァ、村の門の前にあるアレ何だ?」

 

「随分幅の広い谷だな」

 

「たぶん、大きい川が干上がっちゃったのよ。真ん中あたりに、まだ少しだけ水が流れているみたいだし」

 

ルフィとゾロの呟きにナミが答えた。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

そして、ルフィ達は村へ向かい…

 

「!止まれ!」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

河川跡に架けられていた橋を渡り切ったところで、門前にいた槍を持った少年達に止められた。

 

「お前ら、何者だ⁉」

 

「何者と言われても…」

 

「おれはルフィ、か…むぐ」

 

すかさずゾロがルフィの口を押える。

 

「見ての通り、旅の者だが?」

 

「……お前ら、何か物騒なモン持ってるけど、まさか賊の仲間じゃないだろうな?」

 

「賊?」

 

愛紗は思わず、少年達に訊き返す。

 

「“黒髪の山賊狩り”が賊と間違われるとは、皮肉なものだな」

 

「“黒髪の山賊狩り”?」

 

星の言葉に、少年達は黒い髪をしている愛紗をじっと見る。

 

「嘘つけ!“黒髪の山賊狩り”は綺麗な黒い髪をした、すっげー美女だって話だぞ!」

 

「そうだ!お前なんかのワケないだろ!」

 

「…………」

 

少年達の言葉に青筋を立てる愛紗。

 

「愛紗、落ち着け」

 

「愛紗さん、子供の言う事だから」

 

「ああ…わかっている…わかってはいるが……!」

 

星とナミになだめられ、愛紗はもう少しで出そうになる拳を必死に抑え込むのだった。

 

「おいお前、アニキ達を呼んで来い!」

 

「わかった!」

 

片方の少年が、村の奥へと消えて行った。

 

「こうも敵意をむき出しにされるのは久しぶりだな」

 

「むぐー!むぐー!」

 

ルフィの口を抑えたまま、ゾロが呟く。

 

「何だか、随分警戒しているみたいですね」

 

「たぶん、ここ数日の内に賊に襲撃されたことがあるのでしょう」

 

そんな会話をする桃香と朱里。

 

「だからって、鈴々達を疑うなんてひどいのだ!」

 

「おれ達はこういうの慣れてるけどな」

 

…と、チョッパー。

 

「うーむ…愛紗が噂通りの絶世の美女ならば、疑われることもないのだろうにな…」

 

「星、私が悪いのか?」

 

「関羽さん、充分お美しいと思うのですが…」

 

「たぶん期待値のせいでしょうね…」

 

ナミがそう言った時、村の奥から2人の女の子が走って来た。

 

2人とも愛紗よりはやや年下で、鈴々よりは年上に見える。

 

「真桜ちゃん!きっとあの人達なの!」

 

「おっしゃ!覚悟せいや!」

 

片方の少女がそう叫び、抱えた筒をルフィ達に向ける。

 

ポン!と音がして、筒の中から小さな弾が飛び出し、ルフィ達の頭上に跳ぶ。

 

「?何だ?」

 

弾はルフィ達の真上で大きな網に変わり、落下してくる。

 

「へっ!」

 

「ヨホッ!」

 

「むっ!」

 

「ふんっ!」

 

「「⁉」」

 

しかし、すかさず得物を構えたゾロ、ブルック、愛紗、鈴々によって、網は見事に切り裂かれてしまった。

 

「ま、真桜ちゃん…この人達強いの…!」

 

「せ、せやな…せやけど、せめてアニキ達が来るまで…」

 

「沙和ー!真おーう!」

 

「おう!お前ら大丈夫か⁉」

 

「凪ちゃん!」

 

「アニキ!」

 

そこへさらに何者かが2人、村の中から走って来る。

 

「ん?」

 

片方の声に聞き覚えがあったルフィ達が目を凝らしてみると…

 

「おや?」

 

「あー!」

 

「あ!」

 

「お?」

 

「フランキー!」

 

「おー!お前ら!」

 

「「「「「「「「?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

その後、フランキーの知り合いということでルフィ達は村に入れてもらい、フランキー達が寝泊まりしている家に上がらせて貰った。

 

「こちらの早とちりでご迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳なかった。真桜も沙和も、決して悪気あったワケでは…」

 

ルフィ達に深々と頭を下げる凪。

 

「いえ、誤解が解けたのであればそれで十分ですから…」

 

「頭を上げて下さい、楽進さん」

 

「おれ達の方は、賊と間(・)違(・)え(・)ら(・)れ(・)た(・)ワケじゃねェしな」

 

愛紗、桃香、ルフィの言葉に凪は頭を上げる。

 

「沙和、あんたが賊が来たって大騒ぎしとったから…」

 

「だって…門番の子が賊の手下が来たって走って来たから…」

 

「ゴホン!」

 

「「っ!」」

 

凪のわざとらしい咳払いに、二人は思わずビクッと体を震わせ…

 

「ほ、本当にごめんなさいなの…」

 

「まさか、アニキのお仲間だったとは…」

 

凪と同じ様に深々と頭を下げるのだった。

 

「ところで、随分と賊を警戒しているようでしたけど…」

 

「何かあったのか?」

 

「ああそうだ、丁度良かった!そのことなんだが、おめェらちょっと手ェ貸してくれねェか?」

 

 

 

▽

 

 

 

「成程、そういうことだったのですね…」

 

フランキーはルフィ達に、近くに賊が潜伏し村を占領しようとしている事態を説明した。

 

「賊のくせに生意気な奴らなのだ!」

 

「ルフィ」

 

「ああ。フランキーが戦ってんだ、おれ達も手伝おう!愛紗達もいいよな?」

 

「当然だ」

 

「私もお手伝いします!何ができるかわかりませんけど、莚を織ることなら自信があります!」

 

「それじゃあ鈴々は、その莚で賊を簀巻にしてやるのだ!」

 

ルフィをはじめ、愛紗や桃香、鈴々もやる気を見せる。

 

「しかし、聞けば賊はかなりの人数…。しかも元々兵として勤めていたため、戦略や戦術もある程度心得ているとか…」

 

「久しぶりに手ごたえがありそうだな」

 

心配そうにする星に対し、ゾロは少々嬉しそうにする。

 

「もし、私達が戦っている間に村の皆さんに何かあれば…」

 

「そう考えると、真っ向から勝負するのは避けた方が良いな…」

 

「そうですね。こちらも戦略を練って挑みましょう」

 

ブルックと愛紗の言葉に、朱里は頷くのだった。

 

 

▽

 

 

 

「これが、この辺りの地形を記した略地図だ」

 

凪が床に広げた絵地図を全員で覗き込む。

 

「ここが村で、この印がある山に賊の砦がある」

 

「これが村の前にあった橋ですね……!」

 

朱里が何かに気付いた。

 

「村の上に描かれているコレは湖ですか?」

 

「はい。“龍神湖(りゅうじんこ)”という名前で、龍神様が住む湖だと言い伝えられているそうです。

村人の話では、昔はかなり大きな湖だったそうですが、今では水が枯れ、村の前を流れる川もすっかり細くなってしまったそうです」

 

「朱里ちゃん、何か思いついたの?」

 

「はい…龍神様のお力を借りられれば、何とかなるかもしれません…!」

 

「龍神様の…?」

 

「力…?」

 

「はい。まず、龍神湖の湖尻(こじり)に堰(せき)を築いて水をせき止めます。

水の量が少なくても、流れを止めていればいずれは水が溜まる筈。

それにナミさんさっき、『何時雨が降ってもおかしくないし、降り始めたら長くなる』って言ってましたよね?

だから、水が溜まるまでそんなに時間はかからないと思うんです。

湖に水が溜まったら、賊の砦に奇襲を仕掛けます。

賊が反撃してきたら、相手を引きつけつつ橋まで撤退。

こちらが橋を渡り終わったら、橋を落として賊を河川跡へとおびき寄せます」

 

「そして堰を開けて水を流し、賊を綺麗に洗い流してしまうというワケか」

 

作戦を聞き、フランキーの目が光る。

 

「面白れェじゃねェか!それじゃあ早速、明日から堰の建設にかかるか!李典、手伝ってくれ!」

 

「おう!任しとき!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

3日後、フランキーと真桜が中心となって工事を進め、堰はあっという間に完成した。

 

「すごい!もうできたんですね!」

 

力仕事が必要なのでルフィとゾロ、様子を見るためにナミと朱里も現場に来ている。

 

「お二人は本当に物造りの天才ですね!」

 

「まァ、それほどでもあるかもな~!」

 

「いや~!そないなホントのこと言われると照れるで~!」

 

「堰の方はこんなもんでいいだろ。水を流す合図を伝達するための櫓も、もう少しで全部完成だし、あとは水が溜まるのを待つだけだな」

 

「お~い!もう運ぶもんねェか~⁉」

 

ルフィとゾロが運搬作業から戻って来た。

 

「はい!準備は完了です!ナミさ~ん!空の方はどうですか~?」

 

「この様子だと、たぶん今夜から降り始めるわ!数日は降りやまないと思う!風はほとんどなさそうだから、堰や櫓が壊れる心配もなさそうよ!」

 

「そうですか!どうやら龍神様の力を借りられそうですね」

 

「そういや、龍神様いうたらな…ほれ、見てみィあの岩」

 

そう言って真桜は、湖尻付近の岸に立っている巨大な卵型の岩を示す。

 

「でっけー岩だな~」

 

「堰を造るのを手伝ってくれた村人に聞いたんやけどな、アレ“龍の卵”らしいで」

 

「“龍の卵”?」

 

「ああ…そういや『割れると龍が生まれる』とかいう言い伝えがあるとかって、村の連中が拝んでいたな…」

 

フランキーが呟く。

 

「面白そうだなソレ!割ってみるか!」

 

拳を握るルフィ。

 

「アホか!あくまで言い伝えだ。それにそういうのは、時期が来れば自然と割れるモンなんだよ」

 

ゾロは呆れ気味に言うのだった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

それから数日、ルフィ達は村の警備をしつつ、ダムに水が溜まるのを待った。

 

「えー⁉お兄さんが張三姉妹の歌を作っていたの⁉」

 

「ええ、まァ」

 

「于禁さんも張三姉妹が好きなんですか?」

 

「うん!旅の途中で一度舞台を見たことがあるの!それで大好きになったの!」

 

「私もです!この間舞台を見てすっかり好きになっちゃって!」

 

「歌も踊りもすっごく可愛いの!」

 

「衣装も素敵ですよね~!」

 

「そうなのそうなの~!」

 

同じ張三姉妹のファンということで、桃香と沙和は意気投合していた。

 

「みんな~!」

 

ダムの様子を見に行っていたナミが戻って来た。

 

「たぶん明日の夕方には水が一杯になるわ!明日の夜には作戦を決行できそうよ!」

 

「いよいよだな…!」

 

 

 

▽

 

 

 

その夜―――

 

「かーっ…」

 

「ぐーっ…」

 

「むにゃむにゃ…」

 

「すう…」

 

翌日に備え、皆が寝静まる中…

 

「…………」

 

桃香は一人、眠れずにいた。

 

―――――阿備や…私は昔からあなたに教えてきましたね?

 

―――――あの宝剣は私達の先祖、劉勝様のさらに前、漢の礎を築いた“劉邦(りゅうほう)”様から受け継がれ、ご先祖様方が民のために振るってきた大切な宝剣だと…

 

―――――たとえ貧しい庶人に身を落としてしまったとしても、その剣と劉邦様の御心は受け継ぎ、絶やしてはならないと…

 

―――――時が来たら剣を手にし、世のため人のために戦わねばならぬぞと…

 

「…………」

 

「劉備殿、眠れないのですか?」

 

「!関羽さん…」

 

隣で寝ていた愛紗が声をかけて来た。

 

「なんか、宝剣のことを考えていたら、目がさえちゃって…」

 

「宝剣のことを?」

 

「母がよく言っていたんです。『私達のご先祖は立派な方が多く、この宝剣を手に民のために尽くしてきた。だから、お前もこの宝剣を受け継ぐからには、そうした気構えを持て』と。

けど私、それがどういうことなのか、全く理解できなかったんです。

莚織りしかしたことないし、自分のことも満足にできないのに、民のため尽くすなんて、って…」

 

「…………」

 

「でも、関羽さんやルフィさん達と旅をして、この村の人や袁術さんの所のみなしご達、長安にいた人達を―――たくさんの苦しんでいる人達を見て、何ができるかわからないけど、自分も何かしたい、しなきゃいけないって、そう思ったんです」

 

「そうですか……では劉備殿」

 

「!」

 

「我々は今まで“宝剣を取り戻すための旅の仲間”でしたが、これからは“世の中を変えるための仲間”として、ともに戦っていきましょう…!」

 

「はい…!」

 

 

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