ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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今回で麦わらの一味の一人と合流します。



第86話 “龍神”

ルフィ達が涼州を出てから数日、一行は曇り空の下を歩いていた。

 

「だいぶ雲行きが怪しくなってきたな…」

 

「今すぐ降って来る感じはしないけど、いつ降り出してもおかしくないし、一度降り出すと長くなりそうね」

 

空を見上げながらナミが言う。

 

「さっきわずかにですけど、雷鳴のような音が聞こえましたし、心配ですね…」

 

「ぷぷっ…雷が怖いなんて、朱里はお子ちゃまなのだ」

 

「そうじゃなくて、ほらアレ」

 

そう言って朱里は近くにある黒焦げの木を指さす。

 

「雷が落ちると、あんなふうになっちゃうんですよ」

 

「雷は背の高い物や金属に落ちやすいから、気をつけないとね」

 

「「「っ!」」」

 

朱里とナミの言葉に愛紗、鈴々、星は思わず得物を低く持ち直す。

 

「心配ならおれが持ってようか?」

 

「「「「「?」」」」」

 

ルフィの言葉に不思議そうにする桃香達。

 

「ルフィは伸びる身体のおかげで、雷が効かないのよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ」

 

「あと私も、身がないので雷は平気です。ヨホホホホ」

 

「―――で、どうする?」

 

「いいえ、けっこうです。自分の得物は自分で持ちます」

 

「私も。やっと取り戻した大切な宝剣ですから、自分で持ちたいですし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして…

 

「あ、あそこに村がありますよ」

 

先頭にいた桃香が村を見つけた。

 

「丁度いいな。今夜はあそこに泊めて貰おう」

 

愛紗も村に気付く。

 

「なァ、村の門の前にあるアレ何だ?」

 

「随分幅の広い谷だな」

 

「たぶん、大きい川が干上がっちゃったのよ。真ん中あたりに、まだ少しだけ水が流れているみたいだし」

 

ルフィとゾロの呟きにナミが答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ルフィ達は村へ向かい…

 

「!止まれ!」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

河川跡に架けられていた橋を渡り切ったところで、門前にいた槍を持った少年達に止められた。

 

「お前ら、何者だ⁉」

 

「何者と言われても…」

 

「おれはルフィ、か…むぐ」

 

すかさずゾロがルフィの口を押える。

 

「見ての通り、旅の者だが?」

 

「……お前ら、何か物騒なモン持ってるけど、まさか賊の仲間じゃないだろうな?」

 

「賊?」

 

愛紗は思わず、少年達に訊き返す。

 

「“黒髪の山賊狩り”が賊と間違われるとは、皮肉なものだな」

 

「“黒髪の山賊狩り”?」

 

星の言葉に、少年達は黒い髪をしている愛紗をじっと見る。

 

「嘘つけ!“黒髪の山賊狩り”は綺麗な黒い髪をした、すっげー美女だって話だぞ!」

 

「そうだ!お前なんかのワケないだろ!」

 

「…………」

 

少年達の言葉に青筋を立てる愛紗。

 

「愛紗、落ち着け」

 

「愛紗さん、子供の言う事だから」

 

「ああ…わかっている…わかってはいるが……!」

 

星とナミになだめられ、愛紗はもう少しで出そうになる拳を必死に抑え込むのだった。

 

「おいお前、アニキ達を呼んで来い!」

 

「わかった!」

 

片方の少年が、村の奥へと消えて行った。

 

「こうも敵意をむき出しにされるのは久しぶりだな」

 

「むぐー!むぐー!」

 

ルフィの口を抑えたまま、ゾロが呟く。

 

「何だか、随分警戒しているみたいですね」

 

「たぶん、ここ数日の内に賊に襲撃されたことがあるのでしょう」

 

そんな会話をする桃香と朱里。

 

「だからって、鈴々達を疑うなんてひどいのだ!」

 

「おれ達はこういうの慣れてるけどな」

 

…と、チョッパー。

 

「うーむ…愛紗が噂通りの絶世の美女ならば、疑われることもないのだろうにな…」

 

「星、私が悪いのか?」

 

「関羽さん、充分お美しいと思うのですが…」

 

「たぶん期待値のせいでしょうね…」

 

ナミがそう言った時、村の奥から2人の女の子が走って来た。

 

2人とも愛紗よりはやや年下で、鈴々よりは年上に見える。

 

「真桜ちゃん!きっとあの人達なの!」

 

「おっしゃ!覚悟せいや!」

 

片方の少女がそう叫び、抱えた筒をルフィ達に向ける。

 

ポン!と音がして、筒の中から小さな弾が飛び出し、ルフィ達の頭上に跳ぶ。

 

「?何だ?」

 

弾はルフィ達の真上で大きな網に変わり、落下してくる。

 

「へっ!」

 

「ヨホッ!」

 

「むっ!」

 

「ふんっ!」

 

「「⁉」」

 

しかし、すかさず得物を構えたゾロ、ブルック、愛紗、鈴々によって、網は見事に切り裂かれてしまった。

 

「ま、真桜ちゃん…この人達強いの…!」

 

「せ、せやな…せやけど、せめてアニキ達が来るまで…」

 

「沙和ー!真おーう!」

 

「おう!お前ら大丈夫か⁉」

 

「凪ちゃん!」

 

「アニキ!」

 

そこへさらに何者かが2人、村の中から走って来る。

 

「ん?」

 

片方の声に聞き覚えがあったルフィ達が目を凝らしてみると…

 

「おや?」

 

「あー!」

 

「あ!」

 

「お?」

 

「フランキー!」

 

「おー!お前ら!」

 

「「「「「「「「?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、フランキーの知り合いということでルフィ達は村に入れてもらい、フランキー達が寝泊まりしている家に上がらせて貰った。

 

「こちらの早とちりでご迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳なかった。真桜も沙和も、決して悪気あったワケでは…」

 

ルフィ達に深々と頭を下げる凪。

 

「いえ、誤解が解けたのであればそれで十分ですから…」

 

「頭を上げて下さい、楽進さん」

 

「おれ達の方は、賊と()()()()()()ワケじゃねェしな」

 

愛紗、桃香、ルフィの言葉に凪は頭を上げる。

 

「沙和、あんたが賊が来たって大騒ぎしとったから…」

 

「だって…門番の子が賊の手下が来たって走って来たから…」

 

「ゴホン!」

 

「「っ!」」

 

凪のわざとらしい咳払いに、二人は思わずビクッと体を震わせ…

 

「ほ、本当にごめんなさいなの…」

 

「まさか、アニキのお仲間だったとは…」

 

凪と同じ様に深々と頭を下げるのだった。

 

「ところで、随分と賊を警戒しているようでしたけど…」

 

「何かあったのか?」

 

「ああそうだ、丁度良かった!そのことなんだが、おめェらちょっと手ェ貸してくれねェか?」

 

 

 

 

 

 

「成程、そういうことだったのですね…」

 

フランキーはルフィ達に、近くに賊が潜伏し村を占領しようとしている事態を説明した。

 

「賊のくせに生意気な奴らなのだ!」

 

「ルフィ」

 

「ああ。フランキーが戦ってんだ、おれ達も手伝おう!愛紗達もいいよな?」

 

「当然だ」

 

「私もお手伝いします!何ができるかわかりませんけど、莚を織ることなら自信があります!」

 

「それじゃあ鈴々は、その莚で賊を簀巻にしてやるのだ!」

 

ルフィをはじめ、愛紗や桃香、鈴々もやる気を見せる。

 

「しかし、聞けば賊はかなりの人数…。しかも元々兵として勤めていたため、戦略や戦術もある程度心得ているとか…」

 

「久しぶりに手ごたえがありそうだな」

 

心配そうにする星に対し、ゾロは少々嬉しそうにする。

 

「もし、私達が戦っている間に村の皆さんに何かあれば…」

 

「そう考えると、真っ向から勝負するのは避けた方が良いな…」

 

「そうですね。こちらも戦略を練って挑みましょう」

 

ブルックと愛紗の言葉に、朱里は頷くのだった。

 

 

 

 

 

「これが、この辺りの地形を記した略地図だ」

 

凪が床に広げた絵地図を全員で覗き込む。

 

「ここが村で、この印がある山に賊の砦がある」

 

「これが村の前にあった橋ですね……!」

 

朱里が何かに気付いた。

 

「村の上に描かれているコレは湖ですか?」

 

「はい。“龍神湖(りゅうじんこ)”という名前で、龍神様が住む湖だと言い伝えられているそうです。

村人の話では、昔はかなり大きな湖だったそうですが、今では水が枯れ、村の前を流れる川もすっかり細くなってしまったそうです」

 

「朱里ちゃん、何か思いついたの?」

 

「はい…龍神様のお力を借りられれば、何とかなるかもしれません…!」

 

「龍神様の…?」

 

「力…?」

 

「はい。まず、龍神湖の湖尻(こじり)(せき)を築いて水をせき止めます。

水の量が少なくても、流れを止めていればいずれは水が溜まる筈。

それにナミさんさっき、『何時雨が降ってもおかしくないし、降り始めたら長くなる』って言ってましたよね?

だから、水が溜まるまでそんなに時間はかからないと思うんです。

湖に水が溜まったら、賊の砦に奇襲を仕掛けます。

賊が反撃してきたら、相手を引きつけつつ橋まで撤退。

こちらが橋を渡り終わったら、橋を落として賊を河川跡へとおびき寄せます」

 

「そして堰を開けて水を流し、賊を綺麗に洗い流してしまうというワケか」

 

作戦を聞き、フランキーの目が光る。

 

「面白れェじゃねェか!それじゃあ早速、明日から堰の建設にかかるか!李典、手伝ってくれ!」

 

「おう!任しとき!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、フランキーと真桜が中心となって工事を進め、堰はあっという間に完成した。

 

「すごい!もうできたんですね!」

 

力仕事が必要なのでルフィとゾロ、様子を見るためにナミと朱里も現場に来ている。

 

「お二人は本当に物造りの天才ですね!」

 

「まァ、それほどでもあるかもな~!」

 

「いや~!そないなホントのこと言われると照れるで~!」

 

「堰の方はこんなもんでいいだろ。水を流す合図を伝達するための櫓も、もう少しで全部完成だし、あとは水が溜まるのを待つだけだな」

 

「お~い!もう運ぶもんねェか~⁉」

 

ルフィとゾロが運搬作業から戻って来た。

 

「はい!準備は完了です!ナミさ~ん!空の方はどうですか~?」

 

「この様子だと、たぶん今夜から降り始めるわ!数日は降りやまないと思う!風はほとんどなさそうだから、堰や櫓が壊れる心配もなさそうよ!」

 

「そうですか!どうやら龍神様の力を借りられそうですね」

 

「そういや、龍神様いうたらな…ほれ、見てみィあの岩」

 

そう言って真桜は、湖尻付近の岸に立っている巨大な卵型の岩を示す。

 

「でっけー岩だな~」

 

「堰を造るのを手伝ってくれた村人に聞いたんやけどな、アレ“龍の卵”らしいで」

 

「“龍の卵”?」

 

「ああ…そういや『割れると龍が生まれる』とかいう言い伝えがあるとかって、村の連中が拝んでいたな…」

 

フランキーが呟く。

 

「面白そうだなソレ!割ってみるか!」

 

拳を握るルフィ。

 

「アホか!あくまで言い伝えだ。それにそういうのは、時期が来れば自然と割れるモンなんだよ」

 

ゾロは呆れ気味に言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日、ルフィ達は村の警備をしつつ、ダムに水が溜まるのを待った。

 

「えー⁉お兄さんが張三姉妹の歌を作っていたの⁉」

 

「ええ、まァ」

 

「于禁さんも張三姉妹が好きなんですか?」

 

「うん!旅の途中で一度舞台を見たことがあるの!それで大好きになったの!」

 

「私もです!この間舞台を見てすっかり好きになっちゃって!」

 

「歌も踊りもすっごく可愛いの!」

 

「衣装も素敵ですよね~!」

 

「そうなのそうなの~!」

 

同じ張三姉妹のファンということで、桃香と沙和は意気投合していた。

 

「みんな~!」

 

ダムの様子を見に行っていたナミが戻って来た。

 

「たぶん明日の夕方には水が一杯になるわ!明日の夜には作戦を決行できそうよ!」

 

「いよいよだな…!」

 

 

 

 

 

 

その夜―――

 

「かーっ…」

 

「ぐーっ…」

 

「むにゃむにゃ…」

 

「すう…」

 

翌日に備え、皆が寝静まる中…

 

「…………」

 

桃香は一人、眠れずにいた。

 

―――――阿備や…私は昔からあなたに教えてきましたね?

 

―――――あの宝剣は私達の先祖、劉勝様のさらに前、漢の礎を築いた“劉邦(りゅうほう)”様から受け継がれ、ご先祖様方が民のために振るってきた大切な宝剣だと…

 

―――――たとえ貧しい庶人に身を落としてしまったとしても、その剣と劉邦様の御心は受け継ぎ、絶やしてはならないと…

 

―――――時が来たら剣を手にし、世のため人のために戦わねばならぬぞと…

 

「…………」

 

「劉備殿、眠れないのですか?」

 

「!関羽さん…」

 

隣で寝ていた愛紗が声をかけて来た。

 

「なんか、宝剣のことを考えていたら、目がさえちゃって…」

 

「宝剣のことを?」

 

「母がよく言っていたんです。『私達のご先祖は立派な方が多く、この宝剣を手に民のために尽くしてきた。だから、お前もこの宝剣を受け継ぐからには、そうした気構えを持て』と。

けど私、それがどういうことなのか、全く理解できなかったんです。

莚織りしかしたことないし、自分のことも満足にできないのに、民のため尽くすなんて、って…」

 

「…………」

 

「でも、関羽さんやルフィさん達と旅をして、この村の人や袁術さんの所のみなしご達、長安にいた人達を―――たくさんの苦しんでいる人達を見て、何ができるかわからないけど、自分も何かしたい、しなきゃいけないって、そう思ったんです」

 

「そうですか……では劉備殿」

 

「!」

 

「我々は今まで“宝剣を取り戻すための旅の仲間”でしたが、これからは“世の中を変えるための仲間”として、ともに戦っていきましょう…!」

 

「はい…!」

 

 

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