ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第87話 “受け継いだもの”

作戦決行日、昼間―――

 

「いいですか?今夜私達は二手に分かれて、二ヶ所ある賊の砦に奇襲を仕掛けます!」

 

ルフィ、ゾロ、ナミ、チョッパー、フランキー、ブルック、桃香、愛紗、鈴々、星、朱里、凪、真桜、沙和が集い、作戦の最終確認を行っていた。

 

「一組目はルフィさん、愛紗さん、フランキーさん、楽進さん、于禁さん。

二組目はゾロさん、鈴々ちゃん、星さん、チョッパーさん、ブルックさん。

目的はあくまでも敵をおびき出すことなので、くれぐれも深入りはしないようにしてください」

 

「ああ、わかった!」

 

「任せるのだ!」

 

朱里の説明に一番心配な2人が大声で返事をする。

 

「私は橋に一番近い櫓に待機して、松明で円を描いて水を流す合図を出します。

李典さんは堰の近くに待機して、合図が来たら水を流して下さい。

ナミさんと劉備さんは村と湖の間にある、二ヶ所の櫓に待機して、私が送った合図を李典さんに送って下さい。

水が来たら、私が銅鑼を鳴らしますので、すぐに川から離れて下さい!」

 

「一応川が静まった後、すぐに橋を架けられるように、加工した材料を用意しておいた。もし残党がいたら、こいつで川を渡ってまた仕掛けるぞ」

 

そして夜になって、雨が降る中ルフィ達は作戦を開始した。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

 

「“ゴムゴムの銃(ピストル)”‼」

 

「ぐああ⁉」

 

ルフィ達が砦に近づくなり、賊は迎撃してきた。

 

「ルフィ!我々の目的はおびき出すこと!深入りはなりませんぞ!」

 

「わかってる!うおおおおお!」

 

叫びながらルフィは砦の中へ突っ込んで行く。

 

「……絶対にわかってないな…」

 

「心配すんな、想定内だ」

 

「まァそうですな」

 

その後ろ姿をため息交じりに見るフランキーと愛紗。

 

「くっ…このっ!」

 

沙和は戸惑いながらも2本の剣、“二天(にてん)”を振るい、賊と戦う。

 

「オラァ!」

 

「きゃあ⁉」

 

しかし、相手の槍に押され座り込んでしまう。

 

「へへへ…」

 

勝利を確信した賊はとどめを刺そうと槍を振り上げる。

 

「っ⁉」

 

しかし、振り上げた所で槍が全く動かなくなる。

 

「……?……!テメェ!」

 

振り返ると、凪が槍の先端を掴んでいた。

 

「たァっ!」

 

「ぐあっ⁉」

 

凪はそのまま賊の頭に回し蹴りをくらわせ、気絶させる。

 

「大丈夫か沙和?」

 

沙和に手を差し伸べる凪。

 

「うん…ありがとう凪ちゃん…」

 

「気にするな、仲間だろう?」

 

「うん…!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

一方、ゾロ達も賊と対峙していた。

 

「“鬼斬り”‼」

 

「うわァ⁉」

 

「うおりゃー!出て来い賊共!鈴々がみんなブッ飛ばしてやるのだー!」

 

砦へと突っ込んで行く鈴々。

 

「おい鈴々!深入りするなと…!」

 

「あの子…ルフィさんに似ていますね…」

 

「関羽達、大変そうだな…」

 

その背中をため息交じりに見るブルックとチョッパーだった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「楽進殿、そろそろ頃合いですぞ!」

 

「ああ、撤退だ!」

 

愛紗達は引き始める。

 

「了解なの!」

 

「放せェ~!まだやれる~!」

 

「いいから下がるんだよ!」

 

フランキーに引きずられる形で、ルフィも引き揚げて行った。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「皆さ~ん!そろそろ潮時ですよ!」

 

「そうだな!撤退するぞ!」

 

同じ頃、ゾロ達の方も引き揚げ始めた。

 

「何するのだゾロ~!鈴々はまだ戦えるのだ~!」

 

「作戦なんだから退くんだよ!」

 

「ゾロ!そっちじゃねェぞ!」

 

鈴々を引きずるゾロを、さらにチョッパーが引きずる形で撤退して行った。

 

その様子を見て、砦の中にいた賊は…

 

「あいつら逃げて行くぞ」

 

「上手く不意を突いたつもりだったんだろうが、所詮は多勢に無勢だ!」

 

「頭ァ!どうやら向こうの砦にも襲撃があって、撃退したようです!」

 

「そうか!連中、少しばかり戦力が増えて、調子に乗っちまったようだな!

よし、奴らは疲弊している筈!この機に一気に村を占領するぞ!向こうにも出撃するように伝えろ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

足の速いブルックが真っ先に入口に到着し、櫓にいる朱里に問いかけた。

 

「孔明さ~ん!敵の様子はどうですか⁉」

 

「山の中で無数の火が動いています!どうやら追撃してきたようです!」

 

「了解しました!それでは私達は迎撃に移ります!」

 

 

 

▽

 

 

 

間も無くルフィ達が全員到着、そして追撃してきた賊の大群もすぐに追いついて来た。

 

愛紗と鈴々が作戦通り橋を落とす。

 

「橋が…!」

 

「小癪な…!どうせ浅い川だ!このまま攻め込め!」

 

「「「「「「「「「「おーーーっ!」」」」」」」」」」

 

賊はまんまと河川跡に誘い込まれ、川岸をよじ登る。

そして、ルフィ達は這い上がってくる賊を片っ端から叩き落す。

 

「てりゃーっ!」

 

「ぐあっ!」

 

「このっ!」

 

「ぎゃあ!」

 

(……そろそろ頃合いですね…!)

 

賊の大半が河川跡になだれ込んだ様子を見て、朱里は合図を送る。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

(…!合図ね!)

 

櫓にいたナミは朱里が持つ明かりが輪を描くのを確認し、同様の合図を桃香に送る。

 

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

(…!合図ですね!)

 

ナミの合図を見て、桃香も堰にいる真桜に合図を送る。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

村の門前でルフィ達は奮闘を続けていた。

 

「行け行けーーー!なだれ込めーーー!」

 

「水はまだか⁉あまり長くは持ちこたえられんぞ!」

 

そう言う星を始め、一同は焦り始めていた。

 

「やっぱりおれが行ってブッ飛ばして…」

 

「バカ野郎!飲み込まれたら助けようがねェんだぞ!ここで大人しくしてろ!」

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

 

(え?)

 

しばらくして、櫓にいた桃香にナミから再び合図が送られてきた。

 

(まだ水が来ていない?……まさか、李典さんの身に何かあったんじゃ⁉)

 

桃香は宝剣を腰に携え、真桜のいる堰へと向かった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…李典さ~ん!一体何が…!」

 

桃香が堰に辿り着くと、水門はすでに開けられていた。

 

しかし、近くにあった大岩、“龍の卵”が河川の中に倒れ込み、水を止めてしまっていた。

 

「雨で地盤が緩んでいたせいで、水門を開けた途端岩が倒れてこの様や…!

何とかしてどかそうとしたんやけど、押しても引いてもビクともせえへん…!

くそっ!こんな事ならあの時、あいつの言う通り岩壊しておくんやった!」

 

両膝をつき、地面を叩いて悔しがる真桜。

 

桃香も何とかしたいが、自分が力添えをしたところでどうにもならない事は明らかであり、何もできずに呆然とその岩を見る。

 

ゴロゴロ…

 

「……!」

 

その時、かすかに雷鳴が聞こえ、桃香は思わず空を見上げる。

 

カッ!

 

「!」

 

そして稲光を見た瞬間、ある考えが頭に浮かび、桃香は岩の上に降り立つ。

 

―――――雷は背の高い物や金属に落ちやすいから、気をつけないとね

 

(お願い…!上手くいって!)

 

そう祈ると桃香は宝剣を抜き、岩に突き刺す。

 

「アホか!そないなことぐらいで壊れたり……⁉」

 

その直後、桃香の頭上で巨大な稲光が起こる!

 

「危ないっ!」

 

真桜が桃香を庇った次の瞬間、巨大な雷が宝剣に落ちる!

 

「ドアホ!もう少しで死ぬところやった…」

 

バキバキバキッ…

 

「⁉」

 

剣が刺さっていた所から、岩にヒビが入り始めた。

 

「アカン!はよ逃げるで!」

 

2人がその場から離れると同時に、岩は砕け水が流れ出した。

 

「あんたもしかして…初めからこれを狙って…?」

 

「良かった…上手く……いって………」

 

「⁉お、おい!しっかりしィ!」

 

緊張の糸が切れたのか、桃香は気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

桃香の機転により流れ出した水は、濁流となってルフィ達のいる門前に迫っていった。

 

「!」

 

水が流れるのを確認した朱里は、大急ぎで合図の銅鑼を鳴らす。

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

銅鑼の音を聴き、ルフィ達は急いで岸から離れる。

 

「!今だ!」

 

「隙あり!」

 

「「⁉」」

 

…が、賊の2人が凪と沙和の足を掴む。

 

「へへへ…うおっ⁉」

 

「背を向けるとは…うわあっ⁉」

 

しかし次の瞬間、足を滑らせて2人の賊は河川跡へと転げ落ちる。

 

「ぐっ…⁉」

 

「きゃあ⁉」

 

当然、凪と沙和も引っ張られ、河川跡に落ちてしまう。

 

「おっしゃあ!まずは二人!」

 

「覚悟しやがれ!」

 

「「………っ!」」

 

地面に倒れ込んだ状態で大勢の賊に囲まれ、二人は窮地に追い込まれる。

 

その時…

 

「“ストロング・右(ライト)”‼」

 

「「「「「ぐあああああっ⁉」」」」」

 

数人の賊を吹っ飛ばしながら、フランキーの右手が2人の近くに飛んできた。

 

「「アニキ!」」

 

「お前ら捕まれ!」

 

フランキーの言葉に、二人は急いで右手に捕まる。

 

「小癪な…」

 

「おい⁉何だアレ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

何人かの賊が迫りくる濁流に気付いた。

 

「ヤベェ!戻れ右腕!」

 

フランキーは大急ぎで右手を引き寄せ、2人を引き上げる。

 

「うわあああああっ⁉」

 

「ぎゃあああああ⁉」

 

「がば…ぶ…」

 

「ぐぼ…べ…」

 

次の瞬間、濁流が押し寄せ、河川跡にいた賊は全て飲み込まれた。

 

「ま、間に合ったか…」

 

「ぎ、ギリギリだったの…」

 

「あ、危なかった…」

 

右手ごとフランキーに引き上げられ、すんでの所で凪と沙和は飲み込まれずに済む。

 

「くそがっ!」

 

「なっ⁉」

 

「「⁉」」

 

しかし、流されていた賊の一人が凪の腰にしがみついてきた。

 

「ぐうっ⁉」

 

思わぬ事態に凪は体勢を崩し、下半身を濁流に引きずり込まれてしまう。

 

「くっ…」

 

凪は必死に両手を踏ん張るが、賊が邪魔になって這い上がることができない。

 

「せめてお前だけでも道連れに…」

 

「たァ!」

 

「がっ⁉」

 

次の瞬間、沙和に顔面を殴られ、賊は濁流に飲み込まれていった。

 

「凪ちゃん、大丈夫なの?」

 

沙和に助けられ、凪は濁流から脱出した。

 

「ああ、ありがとう沙和」

 

「沙和達は仲間なの!だから当然なの!」

 

「沙和…」

 

(何が自信がないだよ…)

 

―――――少なくともアニキは、大切な人を助けようとしたの…だから、それは誇っていいと思うの…

 

―――――本当に凄いと思うの…沙和はそこまでできる自信がないから…

 

(下手すりゃ自分も巻き込まれるのによ…迷いもためらいも、全くなかったじゃねェか)

 

2人の様子を見ながら、フランキーはそんな事を思うのだった。

 

その後、濁流が収まるのを待って、ルフィ達は橋を架け、再び砦を襲撃。

残党を殲滅した。

 

一応、下流の方の様子も見に行き、見つけた賊を全員捕縛したのだった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

翌日、空はすっかり晴れ、川はだいぶ土砂に埋められてしまったが、流れは静かになった。

 

「賊も全滅しましたし、水も引きましたね」

 

「だな」

 

「これでめでたしめでたしなら、良かったんですけどね…」

 

川の様子を見ていた朱里、星、ブルックはそう呟き、龍神湖がある山を見る。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

桃香は龍神湖の湖尻で、溜まった土砂を必死に掘り返していた。

 

「「「…………」」」

 

その様子をルフィ、愛紗、鈴々が岸で見ている。

 

「劉備殿、ここは一度村に戻りましょう。村の者達も手伝ってくれると言っておりますし、宝剣を探すのは改めて…」

 

「…いえ、もういいです…」

 

愛紗の言葉に力なく呟く桃香。

 

「雷が落ちた時、宝剣はもう真っ黒こげになっていましたから、見つかったとしてもアレじゃあもう…」

 

「……劉備」

 

「?」

 

肩を落とす桃香に対してルフィは…

 

「立派だった」

 

「!」

 

ただ一言、そう言った。

 

「ルフィさん…」

 

「ルフィの言う通りですよ、劉備殿」

 

愛紗も桃香に声を掛ける。

 

「李典殿から聞きました。劉備殿は危険を顧みず、宝剣を犠牲にして村を守ったと。

その行いはきっと宝剣を大切にすることより、ずっとずっとご先祖様にとって喜ばしい事だと思います。

確かに、宝剣は無くなってしまいました。

しかし、劉備殿が本当に受け継がねばならないものは宝剣ではなく、先日あなたが言っていた『民のために戦う』という気構えなのではないですか?

あなたが受け継いだその意志は、宝剣を失った程度で無くなるようなものだったのですか?」

 

「関羽さん…」

 

「先日、私は言いましたね。

『これからは世の中を変えていく仲間として共に戦おう』と。

世の中のために戦うのであれば、私は喜んで力をお貸しします。

私で力になれることがあれば、何でもおっしゃって下さい」

 

「…でしたら関羽さん、それとルフィさんにもお願いがあるんですけど…」

 

「何だ?」

 

「何でも言って下さい」

 

「私を―――お二人の義妹にして下さい!」

 

「は⁉」

 

「おう、いいぞ」

 

「ルフィ⁉」

 

「さっきのお二人の言葉がなかったら、私はいつまでも立ち上がれませんでした。だから私、お二人について行きたいんです!」

 

「そんなの駄目なのだ!」

 

何故か鈴々が反対した。

 

「ルフィはともかく、愛紗の妹は鈴々だけなのだ!これは絶対に譲れないのだ!」

 

「―――っ!そ、そうです劉備殿!私にはもう手のかかる義妹がいますので、これ以上は…」

 

理由はともかく、鈴々が反対してくれた事には助かったらしく、便乗して断ろうとする愛紗。

 

「え~…」

 

「ん~…」

 

露骨にがっかりする桃香を見て、ルフィは少し考え込み。

 

「あ!だったらよ、おれの妹で愛紗の姉ちゃんになるってどうだ?」

 

「え?」

 

「⁉る、ルフィ⁉︎何を…⁉」

 

「はにゃ?それなら別にいいけど…」

 

「鈴々⁉」

 

「そうなんですか⁉だったら私、関羽さんのお義姉ちゃんになります!」

 

「これで解決なのだ!」

 

「いや、ちょっと…!」

 

「まァ、良いじゃねェか!」

 

「えええ~~~⁉」

 

こうして多数決により、桃香はルフィ達の義兄妹に長女として加わった。

 

 

 

 

 

▽

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、村を離れていた男達が戻って来た。

 

事の一部始終を聞き、役人達は村の警備を強化するよう、洛陽の朝廷に訴えた。

洛陽に近い村が賊の拠点にされるのはマズイということで、訴えは受け入れられ、近いうちに警備は強化されることになった。

これでこの村はもう大丈夫だろうということで、ルフィ達と凪達は村を去ることにした。

 

「楽進殿達はこれからどうされるのですか?」

 

愛紗が凪に訊ねる。

 

「我々は曹操殿のもとへ行ってみようかと思っています」

 

「曹操殿の?」

 

「はい。曹操殿は有為の人材であれば、立場や身分に関係なく召し抱える器の大きい方とお聞きしましたので」

 

「それに民からは慕われ、敵からは恐れられる、いずれ天下に覇を唱えられる方やって噂やしな」

 

「成程、確かにその通りですな」

 

「ああ。あいつは良い奴だし、仲間になるといいぞ」

 

「?お兄さん達、曹操様のこと知ってるの?」

 

「ルフィ達は曹操のお姉ちゃんと仲良しなのだ!」

 

「まことですか⁉では、我らの事を曹操殿に紹介してはいただけないでしょうか⁉」

 

「それは帰り道の途中ですから、私は構いませんが…」

 

そう言いつつ、愛紗はみんなの顔を見る。

 

「私も構わないですよ」

 

「おれ達もいいぞ。な?」

 

「はい」

 

「おう」

 

「誰も反対はしませんよ」

 

「それでは、一緒に参りましょう」

 

「では、もうしばらくお世話になります」

 

「よーし!出発だー!」

 

「「「「「「「「「「おーーー!」」」」」」」」」」

 

こうして、ルフィ達は再会したフランキーと凪、真桜、沙和を加え、華琳が治める陳留を目指すのだった。

 

 




書き溜めがなくなったので、しばらく更新停止します。

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