ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第五席編を投稿します!



第88話 “名医 華佗”

ルフィ達にフランキーが合流し、凪、真桜、沙和が加わってから数日―――

 

一行は夕暮れの中、山中を彷徨っていた。

 

「この分だと、今日は野宿になりそうだな…」

 

星が呟く。

 

「鈴々、先ほどのお前の占い、やはり間違っていたのではないか?」

 

愛紗がそう言った時…

 

「うう…」

 

鈴々がうなり声をあげた。

 

「?どうしたの鈴々ちゃん?」

 

ナミが訊ねる。

 

「お腹…痛いのだ…」

 

「全く…だから茶店を出るときに厠に行っておけと…」

 

「そうじゃ…なくて…ううっ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

愛紗の言葉をさえぎって苦しみだす鈴々に、全員が明らかに様子がおかしい事に気付く。

 

「お腹が…キリキリして…ううっ!」

 

蛇矛を落とし、その場にうずくまる鈴々。

 

「!鈴々!」

 

「おい!しっかりしろ!チョッパー!」

 

「おう!」

 

思わず駆け寄るルフィと愛紗。

チョッパーも急いで鈴々のお腹に手を当て、調べ始める。

 

「ここ、痛いか?」

 

「そこは…痛くないのだ…」

 

「張飛は昼に何食べたんだ?」

 

「鰻を揚げたものと…ご飯…」

 

「あと…沙和が残した瓜を貰って食べていたな…」

 

「!そうか、食べ合わせだ!」

 

凪の言葉にチョッパーは気付く。

 

「食べ合わせ?」

 

「ああ。一緒に食べるとお腹を壊す食べ物の組み合わせの事だ。

困ったな…整腸剤、この前の村の住民に使ったので全部無くなっちまったし…」

 

チョッパーは月の下を去る際、いくつかの薬を残していった。

また、以前フランキー達がいた村で腹痛の患者が出た際、持っていた薬を全て使ってしまっていた。

その時は『食べ物は自分が注意しているし、ルフィなどは腹を壊すような奴ではない』と考えていたが、見通しが甘かったようだ。

 

いかに医者といえど、薬や治療道具がない状況では手も足も出ない。

一同が困り果てていると…

 

「あ、あそこ!」

 

桃香がそう離れていない場所から、焚火の煙が上がっているのを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙の場所では、赤い髪の男が一人焚火をしていた。

 

「突然申し訳ない!」

 

「?」

 

鈴々を背負った愛紗が男に声を掛ける。

 

「私達は旅の者なのだが、連れの者が急な病になってしまって、良ければ火に当たらせてもらえぬか?」

 

「病だと⁉」

 

愛紗の話を聞き、男は立ち上がる。

 

「よし、診せてみろ。おれは医者だ」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「昼に食べたウナギと瓜のせいで、食べ合わせを起こしたようなんだ」

 

「成程、ならばこの辺りか?」

 

チョッパーの説明を聞き、男は鈴々の体を調べる。

 

「…よし!ここだ!」

 

そう言うと男はどこからか2本の針を取り出す。

 

「!もしかして針治療ができるのか⁉」

 

「針治療?何だそりゃ?」

 

チョッパーの言葉にゾロが訊ねる。

 

「身体の特別な場所に針を刺して、そこから気を流し込むことで病気を治す治療法だ。

おれも本で読んだことはあるけど、実際にできる奴はそういないぞ!」

 

「そういえば私も聞いたことがある。気を操ることで病を治す術があると…」

 

同じ様に気を扱うことができる凪も言う。

 

「その通りだ!我が身!我が針と一つなり!一心同体!全力全開!病魔覆滅!元気に―――なァれェェェーーーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

そう叫ぶと男は鈴々の右手の甲と、右足の膝近くのスネに針を刺す。

 

「っ!」

 

次の瞬間、鈴々が目を見開く。

 

「病魔!退散!」

 

「!………っ」

 

男が針を抜くと鈴々は目を閉じる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

「………あれ?」

 

少し間を置いて、鈴々は起き上がった。

 

「お腹、痛くなくなったのだ!」

 

「ほ、本当に大丈夫なのか?」

 

「チクッ!としてピキューン!ってなってハッ!としたら治っていたのだ!」

 

愛紗の問いかけに鈴々は元気よく答える。

 

「痛みが退いたのなら、もう大丈夫だろう」

 

「ありがとうな助けてくれて。薬がなくなってたから、ダメかと思ったよ」

 

チョッパーが礼を言う。

 

「なァに、礼には及ばん。医者が病を治すのは当然の事だ」

 

「申し遅れました、我が名は“関羽”。こちらは共に旅をしている“張飛”、“趙雲”、“孔明”、“劉備”殿、“楽進”殿、“李典”殿、“于禁”殿。

異国の出身の“ルフィ”、“ゾロ”殿、“ナミ”殿、“チョッパー”殿、“ブルック”殿、“フランキー”殿だ」

 

「おれは旅の医者で、“華佗(かだ)”という者だ」

 

「!“華佗”ってもしかして『五斗米道(ごとべいどう)』の…」

 

「!ちっがァーう!」

 

「⁉」

 

何か癇に障ったかのように朱里の言葉を否定する華佗。

 

「『ごとべいどう』ではなく…『ゴット・ヴェイドォォォーーーッ!』だ」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

突然ハイテンション状態で叫ぶ華佗に、一同は啞然とする。

 

「大事な事なので、正しい発音を心がけてくれ」

 

「おお…!なんかカッコイイな『ゴット・ヴェイドー』…!」

 

「すごそうだな…『ゴット・ヴェイドー』…!」

 

ルフィとチョッパーは興奮気味になっていた。

 

「おお!ルフィ殿達は正しい発音ができるのだな!大半の者は中々正しい発音ができなくてな…嘆かわしい…」

 

(まァ確かに、この辺りじゃ滅多にない発音でしょうね…)

 

そんなことを思うナミ。

 

「え、えーと朱里…そのごと…ではなく『ゴット・ヴェイドー!』とは何なのだ?」

 

気を取り直して愛紗が訊ねる。

 

ルフィ達の名前で口が慣れているのか、一応正しい発音が出来ている。

 

「は、はい…『ゴット・ヴェイドー!』というのは、益州の漢中(かんちゅう)を中心に布教している道教の集団で、貧しい者に施しをしたり、病に苦しむ者達を助けたりといった活動をしているんです。

私が聞いた話では、こちらの華佗さんは『ゴット・ヴェイドー!』の中でも一番の名医だとか」

 

「おお!『ゴット・ヴェイドー!』つうのは立派な集団なんだな!」

 

フランキーも感心したように言う。

 

「ウチらも旅の途中で何度か『ゴット・ヴェイドー!』の連中に助けて貰うたな」

 

「うん。だから沙和達も『ゴット・ヴェイドー!』を応援しているの」

 

「おれも『ゴット・ヴェイドー!』応援するぞ!」

 

「それにしても『ゴット・ヴェイドー!』(いち)の名医に助けてもらえるとはな」

 

「『ゴット・ヴェイドー!』(いち)の名医に助けて貰ったのだ!」

 

「それにしても『ゴット・ヴェイドー!』(いち)だなんてすごいですね!」

 

「『ゴット・ヴェイドー!』(いち)ってスゲーな!」

 

「はい!『ゴット・ヴェイドー!』(いち)です!」

 

「……あんた達、楽しくなってない?」

 

徐々にテンションが高くなっている真桜、沙和、チョッパー、愛紗、鈴々、桃香、ルフィ、朱里を残りの面々は呆れて見ていた。

 

「うんうん。皆良い発音だ」

 

 

 

 

 

 

夜も更けてきたので、ルフィ達は華佗と一緒にそこで野宿をすることにした。

そして、せっかくなので華佗の話を聞かせて貰う事にした。

 

「『太平道(たいへいどう)』?」

 

「ああ。おれ達『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』と同じくらい古くからの歴史を持つ、妖術使い達の教団の事だ。

一言で妖術といっても、生活を便利にするものや病を治すものまで、多様な種類がある。

無論、武術や兵器としても使うこともできるがな。

彼らはそれらを使い、おれ達と同様に人々を助ける事を目的に活動する教団()()()

 

「『だった』とは?」

 

「話せば長くなるのだが…。

太平道に入信する者達は、まず『太平妖術(たいへいようじゅつ)』と呼ばれる二冊の書物を用いて勉学を行う。

おれも詳しくは知らないが、上巻には『太平道』の成り立ちと歴史、下巻には妖術使いとなるための修行方法や知識、妖術を用いた道具の事などが記されているらしい。

もっとも、『太平妖術』に書かれているのは基礎的な事だけで、後は分野ごとにより細分化された専門書で学ぶらしい。

そして、その『太平妖術』が問題なんだ…」

 

「問題?」

 

「実は『太平妖術』という書物は、本当は上中下の三巻からなる書物なのだが、中巻に当たる書物は使用されず、ほとんどの信者には存在すら伝えられないのだ」

 

「それは何故?」

 

「そこに記されているのが、あまりにも非人道的で恐ろしい術ばかりだからだ」

 

「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 

「成程、危険な術を封印する目的で、存在を隠蔽しているというワケか…」

 

…と、星。

 

「その通りだ。例えば、多くの人間の死や怨嗟(えんさ)の声を用いて行う術。人の悪しき心を増幅させ、悪行へ奔らせる術。使用すれば、一つの城や郡を滅ぼせるほどの兵器的な力が手に入る術…」

 

「なんと恐ろしい…」

 

愛紗を始め、皆表情をこわばらせる。

 

「それ故『太平妖術』の中巻の書の存在は、信頼できる一部の道士にのみ伝えられ、大陸のどこかに隠されていたのだが…。

道士の一人である南華老仙(なんかろうせん)が、新たな道士となる自分の弟子達にその存在を伝えた時、一部の弟子達が裏切り、書物を持ち出してしまったのだ。

そして記されている術を用いて、大陸を支配し嗜慾(しよく)を肥やさんと企み、反対する道士、信者達を次々と抹殺…。

太平道は、恐ろしい妖術使い達の邪教の集団と化してしまった…」

 

「なんと…」

 

「それで、華佗さんの『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』とどういう関係が?」

 

桃香が訊ねる。

 

「おれ達『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』と『太平道』は、どちらかの暴走を阻止するため、互いの抑止力として存在してきた。

だからおれは、教団の命で『太平道』の野望を阻止するべく、情報収集のため旅をしているのだ。

その途中で、曹操殿が内々的に『太平道』についての情報を集めさせ、奴らと接触しようとしているという話を聞いてな…」

 

「なんだって⁉」

 

「曹操殿が⁉」

 

華佗の言葉にルフィと愛紗は思わず声を上げる。

 

「曹操殿がどういう目的で接触を図っているのかを探り、もし奴らに加担するつもりならば張魯(ちょうろ)様に報告し、討伐するつもりだ」

 

「成程…」

 

「けど、華琳がそんな悪い奴らの仲間になるワケねェと思うけどな…」

 

「!ルフィ殿達は曹操殿を知っているのか?」

 

「ああ。私も…曹操殿は野心家ではあるが、性格からしてそのような輩と協力するとは思えんが…」

 

「そうか…だとしたら何か理由があるのかもしれんな…」

 

愛紗の言葉に華佗は考え込む。

 

「おれが手に入れた情報では、『太平道』の妖術使い達はすでに大陸中に散らばり、妖術を駆使して権力者達に取り入り、その懐に隠れているという話だ。

さらには『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』の中にも裏切り者がいるらしい。

もし可能ならば、曹操殿にも『太平道』の討伐に協力して貰いたいところだが…」

 

「実は、私達も曹操殿を訪ねるつもりなのだが、よろしければ華佗殿も一緒に参りませんか?」

 

…と、愛紗。

 

「そうか。ではそうさせて貰うとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日―――

 

「「「いま~ひ~ら~り~♪ひらひら~(はね)~ひろ~げ~♪千~年の~眠り目覚~め~ゆく~♪」」」

 

仲良く歌いながら歩くルフィ、桃香、鈴々を先頭に、一行は山道を進む。

 

「鈴々ちゃん、すっかり元気ね」

 

「昨日腹痛を起こしたのが噓みたいですね」

 

ナミと朱里は安心したように言う。

 

「子供は元気が一番、あの様子ならご両親も安心であろう」

 

「?両親?」

 

華佗の言葉に愛紗は思わず疑問符を浮かべる。

 

「それにしても父上殿に似て、活発な子だな」

 

…と、愛紗を見ながら華佗は続ける。

 

「は?」

 

「おや、違うのか?昨夜、関羽殿とルフィが異様に張飛殿を心配しているようだったので、てっきりお二人の子供かと…」

 

「ち、違います!私達は義兄妹の契りを交わした仲で!私は子供を作るような…!」

 

「あ、ああ!わかった!これは失礼した!」

 

愛紗があまりに必死に否定するので、華佗は慌てて謝るのだった。

 

「なァ愛紗よ、前々から思っていたが、お主そこまで鈴々の母親に見られるのが嫌なのか?」

 

最後尾にいた星がこっそり耳打ちしてきた。

 

「当たり前だ!」

 

「ほう、そうか…」

 

「私は鈴々ぐらいの年の子供がいるような年齢では…」

 

「ではルフィ殿と夫婦(めおと)に見られる事の方は、まんざらでもないという事か」

 

「っ⁉……なっ…なっ…⁉」

 

「あーっ!」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

愛紗が混乱していると、突然鈴々が大声を上げた。

 

「人が倒れています!」

 

近くの茂みを指しながら桃香も叫ぶ。

 

「チョッパー!『五斗米道(ゴット・ヴェイドー)』も!」

 

「おう!」

 

「任せろ」

 

ルフィに言われ、2人は大急ぎで駆け寄り、残りの者達もやって来る。

 

見るとそこには眼鏡をかけ茶色い短髪をした、愛紗達と同じくらいの年齢の女性が倒れており、頭の近くに血溜りが出来ていた。

 

「息はあるのか?脈は?」

 

「チョッパー、華佗、どうなんだ?」

 

凪とゾロの問いかけに対し…

 

「…?なァ華佗、これって…」

 

「…あ、ああ…」

 

2人は奇妙な反応をする。

 

「…?どうなんですか?」

 

ブルックが再び問いかけると…

 

「それが…」

 

「どこも…悪くないぞ?」

 

「「「「「「「「「「………は?」」」」」」」」」」

 

想定外の返答に面食らう一同。

 

「いや…どこも悪くないって…」

 

「その出血は…」

 

「あのー…ブルック殿、フランキー殿も…少々どいていただけませぬか?」

 

「ああ、これは失礼」

 

「悪ィ悪ィ」

 

2人の体が邪魔で様子が全く見えなかった星が前に出てくる。

すると…

 

「!こやつは…」

 

「星、知っているのか?」

 

「ああ、こいつは…」

 

「すいませーん」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

星が説明しようとした時、後ろから何者かの声が聞こえ、一同が振り向くと…

 

「ちょっと、どいていただけないでしょうか?」

 

腰まで届くクリーム色の長髪をし、頭に本物の棒付きキャンディーを持たせた人形を乗せた、鈴々達と同い年くらいの少女が手拭いを手に立っていた。

 

「おお!“(ふう)”ではないか」

 

星は少女の真名と思われる名を呼ぶ。

 

「おや星ちゃん、お久しぶりです」

 

風と呼ばれた少女は軽く挨拶をすると、倒れていた女性に近づき…

 

「“(りん)”ちゃーん、手拭いを濡らしてきましたから、ふきふきしますねー」

 

女性の顔を拭い始めた。

 

 

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