ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第90話 “裸の付き合い”

「はァ…」

 

栄華は華琳の宮殿の敷地内を歩いていた。

 

(どうしてしまったのかしら…?最近、いつも溜息ばかり…それもあの男の事を考えて…)

 

「あれ?ウサギの奴じゃねェか」

 

(男なんて大嫌いだった筈なのに…。

私の窮地に駆けつけてくれた…身を挺して私を守ってくれた…あの男の姿がいつも頭をよぎって…)

 

「おーい!お前ー!」

 

(ああ…なんだか今もあの男の声が聞こえてくるようで…)

 

「あの…曹洪殿ー?」

 

「…って関羽さん⁉ルフィさんも⁉」

 

いつの間にか自分が正面門に来ており、目の前に客人がいた事に驚き、栄華は慌てて身だしなみを整えた。

 

「お、お久しぶりですわね…!今日はどういったご用件で?」

 

「曹操殿に謁見したいと思いまして。すでに曹純殿に取次ぎをお願いしております」

 

「そうでしたの」

 

「関羽さん!ルフィさん!あ、栄華ちゃんも」

 

「柳琳」

 

「曹純殿、曹操殿は何と?」

 

「はい。お二人にお会いしてくださるそうです。ただ…」

 

「「「?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後―――

 

「おおーーーっ!でっけー風呂だなー!」

 

ルフィは柳琳に案内され一人、宮殿の大浴場にいた。

 

「大人数の来客に備えて改装したお風呂なんです。

お姉様は関羽さん達とルフィさんの要件は別々に片付けたいらしいので、しばらくここでお待ちください」

 

「ああ、わかった」

 

「では、私はこれで」

 

柳琳は浴場を出て行く。

 

(それにしても…どうしてわざわざ別々に謁見を?

それに確かにお風呂は贅沢だけど、ルフィさんだったらお食事でも用意してあげた方が喜びそうなのに…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、愛紗、凪、真桜、沙和、風、稟は客室で待たされていた。

 

「失礼しまーす」

 

しばらくして、香風が部屋に入って来た。

 

「これは徐晃殿」

 

「おや!香風ちゃんではないですかー!」

 

「あなた、曹操殿にお仕えしていたのですか⁉」

 

「あー!風!稟!」

 

「お知り合いなのですか⁉」

 

「うん!前に一緒に旅をしたことがあった。桃花村の時はすぐに帰ったから言えなかったけど、その時に星とも知り合っていた」

 

「そうだったのですか」

 

「それで、香風ちゃんは曹操様から何か言伝を預かってきたのですかー?」

 

「うん。えっとね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、大浴場―――

 

「あ~…チカラ入んね~…」

 

能力者であるルフィは湯に浸かり、脱力状態になっていた。

 

「っ⁉る、ルフィ⁉」

 

「ん?」

 

聞き覚えのある声が聞こえ、入り口の方を見てみると、体にタオルを巻いた愛紗達が立っていた。

 

ちなみに風の頭上にある宝譿はしっかり目隠しをされている。

 

「おーお前ら、何でここに?」

 

「そ、それはこっちの台詞です!ど、どうしてルフィが浴場に⁉」

 

「私が招いたからよ」

 

「「「「「「!」」」」」」

 

「華琳」

 

反対側の入口から、タオルを巻いた華琳が入って来た。

 

「久しぶりねルフィ、関羽も」

 

「そ、曹操殿⁉こ、これは一体⁉」

 

「最初は別々に謁見するつもりだったのだけれどね。急に予定が立て込んできたから、一緒にやらせて貰うことにしたわ」

 

「そ、それは構わないのですが、何故風呂で…⁉」

 

「こうして一糸纏わぬ姿で会ってこそ、身なりに惑わされずにその人物を見定められるからよ」

 

「は、はァ…」

 

どうもこじつけ臭い気がする。

 

「それで、その五人が私に仕官したいという者達ね?」

 

「はっ!楽進と申します!お目通りをお許しいただき、感謝します!」

 

「李典と申します」

 

「于禁と申します」

 

「かっ…郭嘉と申します!お…お会いできて光栄です!」

 

「程昱と申します」

 

「さ、あなた達も湯に入りなさい」

 

そう言うと華琳は躊躇いなくタオルを脱ぎ捨て、湯に入る。

 

「で、では…」

 

愛紗達も入ろうとするが…

 

「お待ちなさい!」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

「手拭いを湯船に入れるような、無礼な真似はしないで頂戴ね」

 

「ええっ⁉し、しかし…」

 

愛紗は頬を赤らめルフィを見る。

 

「礼儀を守れないのであれば、話は終わりよ」

 

「そ、そんなァ…」

 

愛紗は少々悩むが…

 

「ま、まァ…ルフィなら良いでしょう…」

 

そう言ってタオルを脱ぎ捨てる。

 

「お⁉あの兄ちゃんならええって⁉」

 

「そういう事なの⁉」

 

何故か嬉しそうに真桜と沙和が訊いてくる。

 

「ち、違います!ルフィなら無害だろうという事です!」

 

「…?無害?」

 

気になって凪達3人がルフィの様子を見ると…

 

「あぢ~~~…」

 

だらけ切った様子で湯に浸かっていた。

 

「……成程…」

 

「確かに害はなさそうなの…」

 

「なんか…ここまでくると逆に腹立ってくるなァ…」

 

そう言って凪達もタオルを脱ぎ捨て湯に入る。

 

風はあまり気にしていないのか平然と湯に入り、稟は華琳の事しか目に入ってないため、ルフィの存在を完全無視して入る。

 

(ふふふふ…)

 

華琳は頬を赤らめ、笑みを浮かべながら愛紗達に近寄り、その身体をじっくりと見る。

 

(((((…………)))))

 

相手が女性であれ、じっと見られるのは恥ずかしいのか、愛紗達は顔を赤らめる。

 

(こ…これが…生の曹操様…!そ、想像以上にお美しい…!

あ、危なかった…!ゆ、湯気で眼鏡が曇っていたから良かったようなものの…ちょ、直接見ていたら…!……っ⁉)

 

稟は吹き出す寸前の鼻血を必死に抑えるのだった。

 

「それでルフィ、あなたは私にお礼を言いたいという事だったけれど…」

 

「ああ、桃花村が襲われた時、香風達に手伝わせてくれただろ?ありがとうな」

 

「構わないわよ。あなたには私の命と城を守って貰った恩があるもの。

あれくらいじゃこっちが物足りないくらいだわ」

 

「そうか?でも、本当にありがとう」

 

「(あなたに恩さえなければ、私の気が済むまでお礼をして欲しいのだけれどね……)それじゃ、まずは楽進殿から始めましょうか」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方―――

 

「ぬァんですってえェ~~~っ⁉」

 

宮殿のある部屋に、桂花の絶叫が響き渡った。

その部屋には桂花の他に、秋蘭、華侖、柳琳、栄華、香風といった曹操軍の首脳人員が集まっている。

 

「桂花、うるさいっすよ。どうしたんすか?そんなに大声出して…」

 

「どうしたもこうしたもないわよ⁉

華琳様が男と―――あの猿と一緒にお風呂だなんて‼

華琳様のお身体が、男が浸かった汁に汚されてしまうじゃないのよ⁉

何で誰も止めなかったのよ⁉」

 

「そんな事言われても…」

 

「一緒に入るなんて知らなかったし…」

 

ルフィ達を風呂に案内した2人は困ったように言う。

 

「とにかく、事態は一刻を争うわ!丸腰で、誰もお供がいない状態だなんて危険すぎるわよ!春蘭の馬鹿はどうしたのよ⁉」

 

「姉者なら華琳様の命で外に行った。季衣も一緒にな」

 

「桂花が自分で行けばいいじゃないっすか?」

 

「そんな事したら私が汚されるじゃない!

だから汚されてもいいあの脳筋馬鹿に行かせようと思ったのに!肝心な時にいないんだから!」

 

「「「「…………」」」」

 

「じゃあみんなで行くっすよー!みんなで行けば怖くないっすー!」

 

「それでも嫌よ!とにかく、誰か早く護衛に行きなさいよ!」

 

「あいにく私はこれから兵の鍛錬があるのでな」

 

そう言って秋蘭は出て行く。

 

「じゃああたしが行くっす!ルフィっちと会うの久しぶりだから楽しみっすー!」

 

「シャンも行くー。お兄ちゃんと遊びたーい!」

 

「ね、姉さん⁉」

 

「しゃ、香風さん⁉」

 

困惑する柳琳と栄華を後に、2人も部屋を出る。

 

そして残された2人は、華侖達が何か無礼を働くのではないかという、ほぼ確信に近い嫌な予感を覚える。

 

「……え、栄華ちゃん…ど、どうしましょう?」

 

「……う、うう~…」

 

その時…

 

「おい、聞いたか?」

 

「ああ。曹操が共もつけず丸腰で浴場にいるらしいな…」

 

部屋の外で、数人の兵士が会話の一部始終を盗み聞きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浴場にて―――

 

「…ではあなた達の武芸、後ほど見せて貰うとしましょう」

 

「「「はっ!」」」

 

凪達3人の面談は無事終了した。

 

「さてと…それじゃあ…」

 

…と、華琳が風達の面談に移ろうとした時…

 

「お風呂っす~!」

 

「お風呂~!」

 

「「「「「「「「⁉」」」」」」」」

 

何者かが湯船に飛び込んできた。

 

「華侖⁉それに香風⁉」

 

「おー!お前ら久しぶりだなー!」

 

「あ!お兄ちゃん!」

 

「久しぶりっす~!」

 

「な、何であなた達がここに⁉」

 

「か、華琳お姉様…」

 

「わ、わたくし達も来たのですが…」

 

「柳琳に栄華まで⁉」

 

 

 

 

 

 

「…というワケで、柳琳は華侖さんの見張りに。わたくしはお姉様の護衛と香風さんの見張りに…」

 

「桂花にも困ったものね…。まァいいわ、二人も入りなさい」

 

「はい…」

 

「失礼します…」

 

そう言って柳琳はルフィと距離を取り、愛紗達と華琳の間に、栄華は華琳とルフィの間に入る。

華侖と香風はルフィののすぐ近くに入り、ルフィの顔や体を引っ張って遊んでいる。

 

「それじゃあ気を取り直して…。

そこの二人は軍師志望だったわね。まずは程昱とやら、あなたが今の世をどう見ているか聞かせて貰えるかしら?」

 

「はい。かつて天下を蓋うまでに葉を茂らせた大樹は、今や根元から腐り始めております。

いたずらに上を目指し、折れやすい枝に登るよりも、地中にて冬を耐える種のように力を蓄えるべきかと…」

 

冷静に意見を述べる風。

 

「成程。そしていずれ枯れる大樹に代わり、自らが大樹になると」

 

「…………(コクリ)」

 

華琳の言葉に風は無言で頷く。

 

「……では郭嘉とやら」

 

「はっ…はひっ!」

 

「これから私が進むべき道について、あなたの意見を聞かせて貰えるかしら…」

 

「えっ…ええっとですね!わっ…わたくしが…かかか考えまするにっ…えっとその…!」

 

緊張と興奮のせいで、稟はしどろもどろになってしまう。

 

「…………」

 

その様子を見て、華琳は冷めた目で稟を見始める。

 

「ああああのっ…ええっとォ……!」

 

 

 

 

 

 

「おい、何してる⁉早く撃て!」

 

「わかってはいるが、湯気でよく見えねェし、似たような髪型の奴が何人もいるから狙いが…」

 

「この際誰でもいい!撃て!」

 

「わ、わかった!」

 

そう言って男は一つの人影に向けて矢を放った。

 

 

 

 

 

 

「っ!危ねェ!」

 

「きゃあ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

突然ルフィが栄華を押し倒した。

 

「あ、あなたっ!いいいきなり、なな何を―――⁉」

 

栄華は混乱するが、自分がいた場所に矢が飛んで来たのを見て冷静になる。

 

「くそっ!仕損じたか!」

 

「こうなったら自棄だ!やっちまえ!」

 

そう言って十数人の兵士達が武器を構え襲ってきた!

 

「「「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」」

 

愛紗達は一ヶ所に固って円陣を組み、栄華、風、稟を守りながら迎え撃つ!

 

「くっ!」

 

得物のない愛紗達は迂闊に仕掛けず、防御に徹する。

 

「おのれっ!」

 

素手での戦闘に慣れている凪は攻撃を試みるが、湯に足を取られているせいで普段のような戦いができない。

しかし、湯のせいで思うように動けないのは、相手も同じだった。

 

そうした膠着状態の中、華琳が稟をかばい抱き着くような状態になった。

 

(⁉こ、この感触は⁉)

 

直に感じる華琳の身体のぬくもりに稟の興奮は限界に達し…

 

「ブーーーッ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

勢いよく鼻血を噴出した。

 

そして運のいい事に、その鼻血が何人かの敵兵の目に入り視界を奪った。

 

「ううっ…!」

 

「目…目がっ…!」

 

「隙あり!」

 

「たあっ!」

 

「とりゃーっ!」

 

「ハァッ!」

 

「フンッ!」

 

「ていっ!」

 

「ヤァッ!」

 

「えいっ!」

 

その隙に乗じて愛紗、華琳、華侖、柳琳、凪、真桜、沙和、香風は相手を討ち取る!

 

「よし!」

 

「気を抜くな!敵は十人以上…」

 

「いえ、もう心配はないかと…」

 

風の言葉に一同が見てみると…

 

「うっし!もういねェな!あー…水に浸かってるとやっぱ力入んねェなー…」

 

残りはすでにルフィによって叩きのめされていた。

 

「相変わらずとんでもない強さね…」

 

「力が出ない状態で凪ちゃんの数倍強いの…」

 

「何人か壁や床にめり込んどるのおるで…」

 

「ああ…修理代が…改装したばかりなのに…」

 

華琳を始め、全員呆然としていた。

 

「ふがふが…」

 

「稟ちゃーん、鼻血は止まりましたかー?」

 

「は、はい…何とか…」

 

「郭嘉殿、あなたのおかげで助かりました」

 

「あんたの鼻血が無かったら、ウチら反撃できへんかったわ」

 

「武器も何もない状態だったから助かったの」

 

凪達が礼を言う。

 

「うーん…しかし、楽進殿は素手でも戦えるのですから、李典殿と于禁殿はもう少し素手の戦い方の心得があってもいいのではないですか?」

 

「いやー…ウチらそれは不得意分野でなー…」

 

「武器があればそれなりには戦えるし別に…」

 

「ですが、得物が無いと戦えないというのは、正直どうかと思いますよ?

それに素手で戦えれば、武器を持たずに敵地に潜入することも可能になるのですから、かなり重宝する人材になるでしょうし…」

 

「へェ…郭嘉、あなたも中々面白い考え方ができるのね…」

 

稟と凪達の会話を聞き、華琳は感心したように言う。

 

「へ?あ…ありがとうございます…」

 

そんなやり取りがなされてる一方で―――

 

「あ…あのう…」

 

「ん?」

 

栄華がルフィに声を掛けた。

 

「ま、また助けて貰ってしまいましたね…。

い、いきなり押し倒された時は、ほんっとうに驚きましたけど…い、一応お礼は言っておきますわ…ありがとうございます…」

 

「ああ、いいよ。気にすんな」

 

「……何も要求しないのですね…」

 

「?」

 

「二度も私の命を助けておきながら…恩を着せるようなこともせずに…。

男なんて下品で…いやらしくて…ケダモノで…最低の存在で……とんでもなく卑猥な要求をしてくると思っていましたのに…。

そういった事を一切求めないなんて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同は風呂から上がり、謁見の間に移動した。

 

「全く…ひどい目に遭ったわ…」

 

不機嫌そうに玉座に座る華琳。

 

「ルフィ、関羽、またあなた達に助けられてしまったわね…」

 

「いいよ、気にすんな」

 

「しかし…先ほど襲ってきたのは曹操殿の兵のようでしたが?」

 

「間違った世の中で正しい事をしようとすれば、それを良く思わない者は大勢いるわ。私の配下にいてもおかしくないほどにね」

 

「…………」

 

華琳の言葉を聞き、愛紗は苦笑いする。

 

「さて…楽進とやら、あなたの先ほどの戦い、見事だったわ」

 

「はっ!お褒めにあずかり光栄です!」

 

「あなたがあれほどの剛の者なら、あなたが認めるその二人腕も確かなのでしょう。三人とも、我が軍の将として起用するわ」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

「そして程昱、郭嘉。あなた達の智謀はとても興味深いわ。これからは我が軍の軍師として働いて頂戴」

 

「「はっ!」」

 

こうして、凪、真桜、沙和、風、稟は華琳の配下となったのであった。

 

 

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