ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
翌日、華琳の宮殿にて―――
桂花、華侖、柳琳、栄華、凪、真桜、沙和、風、稟、香風は一室で身支度をしていた。
「ルフィっちの仲間ってどんな人達なんすかね~?会うの楽しみっす~!」
「そうね…姉さんはちゃんと会った事ないものね」
「ふん!あの猿の仲間なんて、ろくな奴な気がしないわね」
「桂花、機嫌悪い?」
恐る恐る訊ねる香風。
「当たり前でしょ!猿の分際で華琳様の手料理を口にしようだなんて…!」
「そういえば、凪達も何だか元気がない様に見えますが?」
…と、稟。
「あ、いえ…そんな事はないのですが…」
「ウチら…昨日アニキとお別れの挨拶したばかりやったからなァ…」
「ちょっとばつが悪いの…」
「まァ、そういう時はあまり深く考えず、少しでも長く一緒にいられる事を喜んだ方が良いですわ」
「栄華ちゃんの言う通りよ。……ところで栄華ちゃん、何だか今日はいつにも増して、身だしなみに気を遣っているみたいだけど…」
「だってる……お客様が来られるんですもの、はしたない恰好なんてできないでしょう?」
「ところで春蘭様達は?」
「春蘭様は稽古してる。秋蘭様と季衣は春蘭様呼びに行った」
「あ!ルフィっち達来たっすよー!」
窓から外を見ていた華侖が叫んだ。
▽
「でえェェェい!」
その頃、春蘭は訓練場で鉄の塊に斬り込んでいた。
「姉者、そろそろ片付けろ。もうすぐ客人が来るのだぞ」
「春蘭様ー、今日の鍛錬は終わりにしましょー?」
「むうう…」
「春蘭さーん!秋蘭さーん!季衣さーん!」
「栄華!」
「ルフィさん達が来られましたわー!華侖さん達は先にお迎えに行きましたわよー!」
「そうか、わかった。そういう訳だ姉者、我々も行くぞ」
「うむ…わかった…」
▽
その頃門にて。
「ひィィィっ!」
桂花は悲鳴を上げていた。
その原因はというと…
「うわ~!すごいっす柳琳!この人本当に骨だけっすよ~!」
「ね、姉さん!」
「いえいえ、お気になさらず。大抵の人はこの外見を怖がるので、好感を持っていただいて嬉しいぐらいです」
「寛大な心遣い…ありがとうございます…」
「それにしてもお嬢さんお美しいですねー、下着見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「良いっすよー」
「やめろ変態ガイコツ!」
「姉さんやめて!」
「おう、お前ら!ここに仕官が決まったんだってな」
「はい!あの…昨日の今日で、ちょっと妙な気分ですが…」
「まァ…今日一日、よろしゅう頼むわ…」
「なの!」
化物同然の外見のブルックと、変態そのものであるフランキーだった。
「ううっ…やっぱりろくな連中じゃないわ…。変態の男ばっかり…」
「おいおい!変態なんて照れるじゃねェか!」
「褒めてないわよ!」
「あれ⁉ゾロの兄ちゃん⁉」
「ん?季衣じゃねェか!」
秋蘭、栄華、季衣、そして稽古に使っていた鉄の塊を担いだ春蘭がやって来た。
季衣はゾロの姿を見つけると、真っ先に駆け寄って来た。
「今日は翠さんは一緒じゃないの?」
「ああ、あいつとは別行動中だ」
「ん?おめェはいつかの大食い大会の…」
季衣の姿を見てフランキーが声を掛ける。
「あ!準優勝だった裸の兄ちゃん!」
「知ってんのか?」
「前に大食い大会でな」
「おめェこそ、こいつ知ってんのか?」
「まァな。にしてもお前、何でここに?」
「この辺りの山で山賊退治していたら、華琳様に勧誘されたの。それで今は、華琳様の身辺警護をしてるんだ」
「へェ…」
「「ああ~~~っ!」」
今度は春蘭と桂花の声が響く。
「変態共に気を取られて気付かなかったけど…」
「貴様はあの時、馬超と一緒にいた剣士ではないか!」
「やはりお主もルフィ殿の仲間だったのか…」
ゾロに気がついた桂花、春蘭、秋蘭が近づいてくる。
「お前ら、知り合いなのか?」
「まァな」
「お、おい貴様!」
…と、春蘭はゾロの前に担いでいた鉄の塊を置く。
「これを斬ってみろ!」
「あ?」
「斬ってみろと言ってるんだ!」
「…何だよいきなり?」
「うるさい!いいからやれ!つべこべ言わずに…」
スパン!
言われるがままに、ゾロは鉄の塊を斬った。
「これでいいか?」
「…………」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
春蘭は見事にフリーズしている。
否、春蘭だけでなく、秋蘭達曹操軍の面々は皆固まっていた。
愛紗達は桃花村で何度が見た事があるため、春蘭達程ではないがやはり多少は動揺している。
「す…すごいっすー!どうなってるんすかその刀⁉」
「あ?」
一足先に我に返った華侖がゾロに訊ねる。
「鉄が斬れる刀なんて初めて見たっすー!誰が作ったんすか⁉どこで手に入るんすか⁉」
「……おい、ちょっとお前の剣貸せ」
「ほえ?」
華侖は言われるがままにゾロに自分の剣を渡す。
ゾロは剣を受け取り…
スパン!
「ええっ⁉」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
先程と同様に鉄の塊を斬った。
「これは使い手の腕によるものだ。剣の質の問題じゃねェ」
そう言ながら華侖に剣を返し…
「これで満足か?」
「…………」
未だにフリーズしている春蘭に問いかける。
「………し…」
「?“し”?」
「師匠と呼ばせてくれええェェェ!」
突然そう叫ぶと、春蘭はゾロの腰に抱き着いた。
「うおっ⁉何だいきなり⁉」
「どうか!どうか私にその技をご教授下さい!肩もみでもお茶くみでも何でも致しますから!どうかお願いします師匠ォ!」
「だから何なんだよいきなり⁉」
「あ…な、何でもとは言いましたが、夜の営みは少しご遠慮して頂けると…」
「……斬るぞてめェ…」
「とにかくお願いします~!私を弟子にして下さい師匠ォ~!」
「わかったわかった!助言はしてやるから、とりあえず離れろ!」
「ありがとうございます!」
春蘭はようやくゾロから離れた。
「見てろ」
そう言うとゾロは近くの柳の木に近づき、枝葉に向かって剣を振るう。
パシッ…
しかし、枝葉は揺れるだけで斬れない。
「…?あの…師匠?斬れていませんが…?」
「違う、
「?」
「鉄を斬れるようになりたかったら、
「?あの…一体どういう…」
「つまり『剣が触れた物を斬るか斬らないか選べるようになれ』という意味ね?」
「華琳様!」
「そういう事だ」
「あなたと会うのは随分久しぶりね。
馬超がルフィ達と一緒にいたから何となく察しはついていたけど、あなたもルフィ達と一緒にいたのね」
「ああ。馬超の時は悪かったな。だました上に檻を壊しちまって…」
「構わないわよ。詫びとしてのお金は春蘭から受け取ったし、あなたが我が軍の部将に剣の指南をしてくれるのであれば、それ以上のものが手に入ったわ」
「そ、それよりも師匠…もう少し具体的な指導をお願い…」
「待ちなさい春蘭。……あなたは自分の師から同じ助言だけを貰い、後は独学でその技を身に着けたのね?」
華琳は春蘭を制止し、ゾロに問いかける。
「ああ、そうだ」
「だったら春蘭も同じ様に、後は自力で身につけなさい。それが彼への礼儀というものよ」
「はい…わかりました…」
春蘭は未だに不服そうだったが、口を閉ざした。
「さてと…準備が整ったわ。ルフィ、関羽達も、すぐに会場へ案内するわ」
▽
ルフィ達は会場に移動した。
そこは中央の低くなった所に調理台が用意され、その周囲の三方向に長机と椅子が用意されている。
調理台の後ろには貯蔵庫への通路がある。
貯蔵庫の中は薄暗く、中には野菜や果物、調味料、食器、調理器具、生きたままの家畜や魚介類が泳いでいる生簀などもある。
そこで待機していたマントを羽織った少女―――華琳は青梅を一つ手に取ると、外の調理場へと足を運ぶ。
「ルフィ、関羽、他の者達も、今日は私の料理を楽しんで行って頂戴」
そう言うと華琳は手にした梅を一口かじる。
「…っ!それでは今から、美食の会を始めるわ!」
一瞬すっぱそうな顔をした後、華琳は高らかに宣言する。
貯蔵庫から必要な食材と調味料が運ばれ、華琳はさっそく調理を始める。
「それにしても、曹操殿が料理も嗜まれるとはな…」
「あいつ何でもできるんだな~!すげーな~!」
驚きを隠せない愛紗とルフィ。
「古来より、料理は兵法に通ずると言いますしねー」
「風、そんな話聞いた事ないですよ…」
ツッコむ稟。
「ああ~…さっき青梅をかじった時の華琳様のすっぱそうなお顔~…。あれを思い出すだけで唾が湧いてくるわ~…」
顔を赤らめる桂花。
「別にそうでなくとも、貴様は華琳様のお姿を見るたびに妄想にふけり、四六時中涎を垂らしているだろうが…」
…と、春蘭。
「っ!春蘭、あんたこそもう一つの口から始終涎を垂らしていて、乾く暇もないんじゃないの?」
言い返す桂花。
「っ⁉な、何を根拠にそんな事を⁉私の様子を、そんな所まで観察しているとでも言うのか⁉」
「姉者…これから食事という時に、ましてや客人がいる時にそのような話題は…」
「私だって好きでこんな話をしているのではない!桂花が私のもう一つの口が…」
「わかった!わかったから!うるさくしては華琳様の調理の邪魔になる…」
「むう…」
春蘭は未だに不満そうだったが、仕方なく口を閉ざす。
一方、調理場では華琳がテキパキと魚をさばいている。
「見事な手つきですね…」
「本物の料理人並みね…」
多少なりとも料理の心得がある朱里とナミは思わず見とれる。
「どんなのできるんだろうな~?」
「楽しみなのだ~!」
そこへ侍女がやって来た。
「お飲み物と前菜をご用意しましたので、先にそちらをお楽しみ下さい」
そう言って侍女は装飾が施された杯を差し出す。
「曹操様が好物の蜜柑でお造りになった果実酒でございます」
「これは…いい香りですね…」
香りを堪能してからブルックは酒を口に含む。
「美味しい…!」
「初めて飲むが悪くないな」
「いい酒だな」
他の者達も酒を口にし、絶賛する。
「?どうして鈴々と朱里はお酒じゃなくて、山羊の乳なのだ?」
「大人の事情です」
一応この世界では十三歳で成人とみなされる為、鈴々達も酒は飲めるのだが。
「ああ…なんて芳醇な香り…」
酒を飲み、桂花はうっとりとした表情になる。
(仕込みのために、美しい御身脚で蜜柑の実を潰す華琳様のお姿目に浮かぶわ…。
そして…この独特の風味…!きっと、滴る汗が流れ落ち、それが絶妙な隠し味となっているに違いないわ…!
ああ…蜜柑の果汁で染まった、華琳様のお身脚をお舐めしたい…♡
指の間にも丁寧に舌を這わせて、余すことなくお綺麗にして…♡
いえ、いっそのこと私自身を果汁たっぷりの果実として、華琳様の御身脚で踏みつけて貰いた~い♡
あ~ん♡華琳様ァ~♡もっと♡もっとォ~♡」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
もはや味や香りとは全く関係のない事を楽しみ、身をくねらせる桂花を見て、周囲はドン引きしていた。
桂花は、最初は脳内で妄想しているだけだったが、『蜜柑の実を潰す』のあたりから声に出してしまっており、妄想が周囲にだだ洩れしていた。
因みに、華琳は原材料である蜜柑を道具を用いて潰している為、桂花の妄想のような事は実際にはない。
「桂花ちゃん…」
「また始まりましたわね…」
「…またなのですか?コレが?」
柳琳と栄華の言葉に、凪は思わず訊き返す。
「曹操軍は百合百合しいと聞いていましたが…」
…と、顔全体を赤くする稟。
「シャンも、最初見た時びっくりした…」
『野放しにしておいて良いのかこれ?』
「風達にできるのは、消されない様に祈る事だけです」
「温泉卵でございます」
その間に前菜が運ばれてくる。
「これ、何の卵だ?」
「
「!これは海亀の卵だわ!」
一口食べて桂花が叫ぶ。
「鶏卵にはない、こってりとした濃厚な風味。一見単純な料理だけど、実に奥が深い料理だわ」
桂花の解説をよそに、他の皆もいただく。
「こんなんじゃお腹の足しになんないのだ…」
「できたわ!」
華琳の一品目の料理が完成し、皿に盛りつけられて運ばれる。
「まずは一品目、江東の長江で採れた
できれば付け合わせに、益州の生姜を使いたかったのだけれど、手に入らなかったのよね…」
「ああ…口の中にまったりとした脂が広がり、舌の上でとろけるようだわ…。
吟味に吟味を重ねて選び抜いた食材の良さが、よく伝わる一品だわ…」
桂花を始め、他の者達も舌鼓を打つ。
「透けて見えるほど薄く切るなんて、すごい腕ね」
ナミは箸で切り身を取り、感嘆の声を漏らす。
「こんなに薄く切ったのしかくれないなんて、けちんぼなのだ…」
▽
「蜂蜜に漬けた熊の掌の佃煮でございます」
▽
「燕の巣を
▽
「軽く炙った
「どれも珍味や高級食材ばかりだわ…。そしてそれらの味をさらに引き立てる華琳様の調理…。
ああ…本当に素晴らしいわ…」
その後も、次々と出される料理を皆は堪能する。
が…
「あァーーーっ!」
「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」
突然、鈴々が大声で叫んだ。
「味も薄いし量も少ないし、つまんないのだァーーー!」
「コラコラ怒るな鈴々!せっかくご馳走してくれてんのに!失礼だぞお前!」
「意外だな…。てっきりルフィ殿も文句を言うかと思っていたのだが、まさか注意するとは…」
「あいつは食事で感じる恩がムダにデカいから…」
驚く星にナミは説明する。
「だってちまちました料理ばっかりで…こんなんだったら街で典韋の料理を食べた方が良かったのだァ!」
「てんい⁉」
鈴々の言葉に季衣が反応した。
「ねェ、それって緑色の短い髪に青い布を蝶結びにした子?」
「その通りなのだ」
「季衣、あなたその“てんい”という料理人を知っているの?」
興味津々といった様子で華琳は訊ねる。
「はい。ボクの幼馴染で、すっごく料理が上手なんですよ。
ボク何度もその子のお店に行って、腕相撲で僕が勝ったらお代はタダ、その子が勝ったら倍払うって賭けをよくしていたんです」
「へェ…関羽、その者の料理は美味しかったの?」
「え、ええっと…」
「……ルフィ、どうなの?」
愛紗が気を遣って答えようとしないので、華琳はルフィに訊きなおす。
「ああ。美味かったぞ」
「へェ、それ程の料理人が私の城下町にいるとはね…。その者の作った料理、是非食べてみたいわね。
季衣、その“てんい”とやらを探して連れて来て貰えるかしら?」
「わかりました」
私も小学生のころ、親戚の結婚式でフランス料理を食べたとき、あまり美味しく感じなかった記憶があります。