ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第92話 “師匠”

翌日、華琳の宮殿にて―――

 

桂花、華侖、柳琳、栄華、凪、真桜、沙和、風、稟、香風は一室で身支度をしていた。

 

「ルフィっちの仲間ってどんな人達なんすかね~?会うの楽しみっす~!」

 

「そうね…姉さんはちゃんと会った事ないものね」

 

「ふん!あの猿の仲間なんて、ろくな奴な気がしないわね」

 

「桂花、機嫌悪い?」

 

恐る恐る訊ねる香風。

 

「当たり前でしょ!猿の分際で華琳様の手料理を口にしようだなんて…!」

 

「そういえば、凪達も何だか元気がない様に見えますが?」

 

…と、稟。

 

「あ、いえ…そんな事はないのですが…」

 

「ウチら…昨日アニキとお別れの挨拶したばかりやったからなァ…」

 

「ちょっとばつが悪いの…」

 

「まァ、そういう時はあまり深く考えず、少しでも長く一緒にいられる事を喜んだ方が良いですわ」

 

「栄華ちゃんの言う通りよ。……ところで栄華ちゃん、何だか今日はいつにも増して、身だしなみに気を遣っているみたいだけど…」

 

「だってる……お客様が来られるんですもの、はしたない恰好なんてできないでしょう?」

 

「ところで春蘭様達は?」

 

「春蘭様は稽古してる。秋蘭様と季衣は春蘭様呼びに行った」

 

「あ!ルフィっち達来たっすよー!」

 

窓から外を見ていた華侖が叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でえェェェい!」

 

その頃、春蘭は訓練場で鉄の塊に斬り込んでいた。

 

「姉者、そろそろ片付けろ。もうすぐ客人が来るのだぞ」

 

「春蘭様ー、今日の鍛錬は終わりにしましょー?」

 

「むうう…」

 

「春蘭さーん!秋蘭さーん!季衣さーん!」

 

「栄華!」

 

「ルフィさん達が来られましたわー!華侖さん達は先にお迎えに行きましたわよー!」

 

「そうか、わかった。そういう訳だ姉者、我々も行くぞ」

 

「うむ…わかった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃門にて。

 

「ひィィィっ!」

 

桂花は悲鳴を上げていた。

 

その原因はというと…

 

「うわ~!すごいっす柳琳!この人本当に骨だけっすよ~!」

 

「ね、姉さん!」

 

「いえいえ、お気になさらず。大抵の人はこの外見を怖がるので、好感を持っていただいて嬉しいぐらいです」

 

「寛大な心遣い…ありがとうございます…」

 

「それにしてもお嬢さんお美しいですねー、下着見せて貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「良いっすよー」

 

「やめろ変態ガイコツ!」

 

「姉さんやめて!」

 

「おう、お前ら!ここに仕官が決まったんだってな」

 

「はい!あの…昨日の今日で、ちょっと妙な気分ですが…」

 

「まァ…今日一日、よろしゅう頼むわ…」

 

「なの!」

 

化物同然の外見のブルックと、変態そのものであるフランキーだった。

 

「ううっ…やっぱりろくな連中じゃないわ…。変態の男ばっかり…」

 

「おいおい!変態なんて照れるじゃねェか!」

 

「褒めてないわよ!」

 

「あれ⁉ゾロの兄ちゃん⁉」

 

「ん?季衣じゃねェか!」

 

秋蘭、栄華、季衣、そして稽古に使っていた鉄の塊を担いだ春蘭がやって来た。

 

季衣はゾロの姿を見つけると、真っ先に駆け寄って来た。

 

「今日は翠さんは一緒じゃないの?」

 

「ああ、あいつとは別行動中だ」

 

「ん?おめェはいつかの大食い大会の…」

 

季衣の姿を見てフランキーが声を掛ける。

 

「あ!準優勝だった裸の兄ちゃん!」

 

「知ってんのか?」

 

「前に大食い大会でな」

 

「おめェこそ、こいつ知ってんのか?」

 

「まァな。にしてもお前、何でここに?」

 

「この辺りの山で山賊退治していたら、華琳様に勧誘されたの。それで今は、華琳様の身辺警護をしてるんだ」

 

「へェ…」

 

「「ああ~~~っ!」」

 

今度は春蘭と桂花の声が響く。

 

「変態共に気を取られて気付かなかったけど…」

 

「貴様はあの時、馬超と一緒にいた剣士ではないか!」

 

「やはりお主もルフィ殿の仲間だったのか…」

 

ゾロに気がついた桂花、春蘭、秋蘭が近づいてくる。

 

「お前ら、知り合いなのか?」

 

「まァな」

 

「お、おい貴様!」

 

…と、春蘭はゾロの前に担いでいた鉄の塊を置く。

 

「これを斬ってみろ!」

 

「あ?」

 

「斬ってみろと言ってるんだ!」

 

「…何だよいきなり?」

 

「うるさい!いいからやれ!つべこべ言わずに…」

 

スパン!

 

言われるがままに、ゾロは鉄の塊を斬った。

 

「これでいいか?」

 

「…………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

春蘭は見事にフリーズしている。

否、春蘭だけでなく、秋蘭達曹操軍の面々は皆固まっていた。

 

愛紗達は桃花村で何度が見た事があるため、春蘭達程ではないがやはり多少は動揺している。

 

「す…すごいっすー!どうなってるんすかその刀⁉」

 

「あ?」

 

一足先に我に返った華侖がゾロに訊ねる。

 

「鉄が斬れる刀なんて初めて見たっすー!誰が作ったんすか⁉どこで手に入るんすか⁉」

 

「……おい、ちょっとお前の剣貸せ」

 

「ほえ?」

 

華侖は言われるがままにゾロに自分の剣を渡す。

ゾロは剣を受け取り…

 

スパン!

 

「ええっ⁉」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

先程と同様に鉄の塊を斬った。

 

「これは使い手の腕によるものだ。剣の質の問題じゃねェ」

 

そう言ながら華侖に剣を返し…

 

「これで満足か?」

 

「…………」

 

未だにフリーズしている春蘭に問いかける。

 

「………し…」

 

「?“し”?」

 

「師匠と呼ばせてくれええェェェ!」

 

突然そう叫ぶと、春蘭はゾロの腰に抱き着いた。

 

「うおっ⁉何だいきなり⁉」

 

「どうか!どうか私にその技をご教授下さい!肩もみでもお茶くみでも何でも致しますから!どうかお願いします師匠ォ!」

 

「だから何なんだよいきなり⁉」

 

「あ…な、何でもとは言いましたが、夜の営みは少しご遠慮して頂けると…」

 

「……斬るぞてめェ…」

 

「とにかくお願いします~!私を弟子にして下さい師匠ォ~!」

 

「わかったわかった!助言はしてやるから、とりあえず離れろ!」

 

「ありがとうございます!」

 

春蘭はようやくゾロから離れた。

 

「見てろ」

 

そう言うとゾロは近くの柳の木に近づき、枝葉に向かって剣を振るう。

 

パシッ…

 

しかし、枝葉は揺れるだけで斬れない。

 

「…?あの…師匠?斬れていませんが…?」

 

「違う、()()()()()んじゃねェ。()()()()()()んだ」

 

「?」

 

「鉄を斬れるようになりたかったら、()()()()()()()ができるようになれ。助言は以上だ」

 

「?あの…一体どういう…」

 

「つまり『剣が触れた物を斬るか斬らないか選べるようになれ』という意味ね?」

 

「華琳様!」

 

「そういう事だ」

 

「あなたと会うのは随分久しぶりね。

馬超がルフィ達と一緒にいたから何となく察しはついていたけど、あなたもルフィ達と一緒にいたのね」

 

「ああ。馬超の時は悪かったな。だました上に檻を壊しちまって…」

 

「構わないわよ。詫びとしてのお金は春蘭から受け取ったし、あなたが我が軍の部将に剣の指南をしてくれるのであれば、それ以上のものが手に入ったわ」

 

「そ、それよりも師匠…もう少し具体的な指導をお願い…」

 

「待ちなさい春蘭。……あなたは自分の師から同じ助言だけを貰い、後は独学でその技を身に着けたのね?」

 

華琳は春蘭を制止し、ゾロに問いかける。

 

「ああ、そうだ」

 

「だったら春蘭も同じ様に、後は自力で身につけなさい。それが彼への礼儀というものよ」

 

「はい…わかりました…」

 

春蘭は未だに不服そうだったが、口を閉ざした。

 

「さてと…準備が整ったわ。ルフィ、関羽達も、すぐに会場へ案内するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルフィ達は会場に移動した。

 

そこは中央の低くなった所に調理台が用意され、その周囲の三方向に長机と椅子が用意されている。

調理台の後ろには貯蔵庫への通路がある。

 

貯蔵庫の中は薄暗く、中には野菜や果物、調味料、食器、調理器具、生きたままの家畜や魚介類が泳いでいる生簀などもある。

 

そこで待機していたマントを羽織った少女―――華琳は青梅を一つ手に取ると、外の調理場へと足を運ぶ。

 

「ルフィ、関羽、他の者達も、今日は私の料理を楽しんで行って頂戴」

 

そう言うと華琳は手にした梅を一口かじる。

 

「…っ!それでは今から、美食の会を始めるわ!」

 

一瞬すっぱそうな顔をした後、華琳は高らかに宣言する。

 

貯蔵庫から必要な食材と調味料が運ばれ、華琳はさっそく調理を始める。

 

「それにしても、曹操殿が料理も嗜まれるとはな…」

 

「あいつ何でもできるんだな~!すげーな~!」

 

驚きを隠せない愛紗とルフィ。

 

「古来より、料理は兵法に通ずると言いますしねー」

 

「風、そんな話聞いた事ないですよ…」

 

ツッコむ稟。

 

「ああ~…さっき青梅をかじった時の華琳様のすっぱそうなお顔~…。あれを思い出すだけで唾が湧いてくるわ~…」

 

顔を赤らめる桂花。

 

「別にそうでなくとも、貴様は華琳様のお姿を見るたびに妄想にふけり、四六時中涎を垂らしているだろうが…」

 

…と、春蘭。

 

「っ!春蘭、あんたこそもう一つの口から始終涎を垂らしていて、乾く暇もないんじゃないの?」

 

言い返す桂花。

 

「っ⁉な、何を根拠にそんな事を⁉私の様子を、そんな所まで観察しているとでも言うのか⁉」

 

「姉者…これから食事という時に、ましてや客人がいる時にそのような話題は…」

 

「私だって好きでこんな話をしているのではない!桂花が私のもう一つの口が…」

 

「わかった!わかったから!うるさくしては華琳様の調理の邪魔になる…」

 

「むう…」

 

春蘭は未だに不満そうだったが、仕方なく口を閉ざす。

 

一方、調理場では華琳がテキパキと魚をさばいている。

 

「見事な手つきですね…」

 

「本物の料理人並みね…」

 

多少なりとも料理の心得がある朱里とナミは思わず見とれる。

 

「どんなのできるんだろうな~?」

 

「楽しみなのだ~!」

 

そこへ侍女がやって来た。

 

「お飲み物と前菜をご用意しましたので、先にそちらをお楽しみ下さい」

 

そう言って侍女は装飾が施された杯を差し出す。

 

「曹操様が好物の蜜柑でお造りになった果実酒でございます」

 

「これは…いい香りですね…」

 

香りを堪能してからブルックは酒を口に含む。

 

「美味しい…!」

 

「初めて飲むが悪くないな」

 

「いい酒だな」

 

他の者達も酒を口にし、絶賛する。

 

「?どうして鈴々と朱里はお酒じゃなくて、山羊の乳なのだ?」

 

「大人の事情です」

 

一応この世界では十三歳で成人とみなされる為、鈴々達も酒は飲めるのだが。

 

「ああ…なんて芳醇な香り…」

 

酒を飲み、桂花はうっとりとした表情になる。

 

(仕込みのために、美しい御身脚で蜜柑の実を潰す華琳様のお姿目に浮かぶわ…。

そして…この独特の風味…!きっと、滴る汗が流れ落ち、それが絶妙な隠し味となっているに違いないわ…!

ああ…蜜柑の果汁で染まった、華琳様のお身脚をお舐めしたい…♡

指の間にも丁寧に舌を這わせて、余すことなくお綺麗にして…♡

いえ、いっそのこと私自身を果汁たっぷりの果実として、華琳様の御身脚で踏みつけて貰いた~い♡

あ~ん♡華琳様ァ~♡もっと♡もっとォ~♡」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

もはや味や香りとは全く関係のない事を楽しみ、身をくねらせる桂花を見て、周囲はドン引きしていた。

 

桂花は、最初は脳内で妄想しているだけだったが、『蜜柑の実を潰す』のあたりから声に出してしまっており、妄想が周囲にだだ洩れしていた。

 

因みに、華琳は原材料である蜜柑を道具を用いて潰している為、桂花の妄想のような事は実際にはない。

 

「桂花ちゃん…」

 

「また始まりましたわね…」

 

「…またなのですか?コレが?」

 

柳琳と栄華の言葉に、凪は思わず訊き返す。

 

「曹操軍は百合百合しいと聞いていましたが…」

 

…と、顔全体を赤くする稟。

 

「シャンも、最初見た時びっくりした…」

 

『野放しにしておいて良いのかこれ?』

 

「風達にできるのは、消されない様に祈る事だけです」

 

「温泉卵でございます」

 

その間に前菜が運ばれてくる。

 

「これ、何の卵だ?」

 

(うずら)の卵でしょうか?」

 

「!これは海亀の卵だわ!」

 

一口食べて桂花が叫ぶ。

 

「鶏卵にはない、こってりとした濃厚な風味。一見単純な料理だけど、実に奥が深い料理だわ」

 

桂花の解説をよそに、他の皆もいただく。

 

「こんなんじゃお腹の足しになんないのだ…」

 

「できたわ!」

 

華琳の一品目の料理が完成し、皿に盛りつけられて運ばれる。

 

「まずは一品目、江東の長江で採れた(すずき)の洗いよ。

できれば付け合わせに、益州の生姜を使いたかったのだけれど、手に入らなかったのよね…」

 

「ああ…口の中にまったりとした脂が広がり、舌の上でとろけるようだわ…。

吟味に吟味を重ねて選び抜いた食材の良さが、よく伝わる一品だわ…」

 

桂花を始め、他の者達も舌鼓を打つ。

 

「透けて見えるほど薄く切るなんて、すごい腕ね」

 

ナミは箸で切り身を取り、感嘆の声を漏らす。

 

「こんなに薄く切ったのしかくれないなんて、けちんぼなのだ…」

 

 

 

 

 

 

「蜂蜜に漬けた熊の掌の佃煮でございます」

 

 

 

 

 

 

「燕の巣を(ちょうざめ)の卵の塩漬けで和えた物でございます」

 

 

 

 

 

 

「軽く炙った鵞鳥(がちょう)の肝臓に西方から取り寄せた松露(しょうろ)の薄切り添えでございます」

 

「どれも珍味や高級食材ばかりだわ…。そしてそれらの味をさらに引き立てる華琳様の調理…。

ああ…本当に素晴らしいわ…」

 

その後も、次々と出される料理を皆は堪能する。

 

が…

 

「あァーーーっ!」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

突然、鈴々が大声で叫んだ。

 

「味も薄いし量も少ないし、つまんないのだァーーー!」

 

「コラコラ怒るな鈴々!せっかくご馳走してくれてんのに!失礼だぞお前!」

 

「意外だな…。てっきりルフィ殿も文句を言うかと思っていたのだが、まさか注意するとは…」

 

「あいつは食事で感じる恩がムダにデカいから…」

 

驚く星にナミは説明する。

 

「だってちまちました料理ばっかりで…こんなんだったら街で典韋の料理を食べた方が良かったのだァ!」

 

「てんい⁉」

 

鈴々の言葉に季衣が反応した。

 

「ねェ、それって緑色の短い髪に青い布を蝶結びにした子?」

 

「その通りなのだ」

 

「季衣、あなたその“てんい”という料理人を知っているの?」

 

興味津々といった様子で華琳は訊ねる。

 

「はい。ボクの幼馴染で、すっごく料理が上手なんですよ。

ボク何度もその子のお店に行って、腕相撲で僕が勝ったらお代はタダ、その子が勝ったら倍払うって賭けをよくしていたんです」

 

「へェ…関羽、その者の料理は美味しかったの?」

 

「え、ええっと…」

 

「……ルフィ、どうなの?」

 

愛紗が気を遣って答えようとしないので、華琳はルフィに訊きなおす。

 

「ああ。美味かったぞ」

 

「へェ、それ程の料理人が私の城下町にいるとはね…。その者の作った料理、是非食べてみたいわね。

季衣、その“てんい”とやらを探して連れて来て貰えるかしら?」

 

「わかりました」

 

 




私も小学生のころ、親戚の結婚式でフランス料理を食べたとき、あまり美味しく感じなかった記憶があります。

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