ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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皆さんが待ち望んでいたあの男がついに合流します!




第93話 “もてなしの心”

一人の男がある街にやって来た。

 

「あークソっ!一年以上ムダにしちまった…。あのオカマ本当にただ話がしたいだけだったとは…」

 

黒いスーツに身を包み、金髪で左目を隠し、右目の眉毛が渦巻きになった男―――サンジは少々イラついた様子で街を歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは一年以上前、サンジがこの世界に来てから数日後の事。

 

『ナァミすァ~~~ん‼ロビンちゅわァ~~~ん‼』

 

一味の内、女性二人の名前を大声で叫びながら、サンジはあちこちを走り回っていた。

 

『ああ…二人共どこに行っちまったんだ…?きっとおれに会いたくて泣いているに違いないぜ…。早く見つけてあげねェと。きっと…

 

 

 

 

 

―――――ナミさん!ロビンちゃん!迎えに来たぜ!

 

―――――ああ!サンジ君!

 

―――――待っていたわ、私達の王子様!

 

―――――サンジ君…私、あなたと離れ離れになって、初めてわかったわ!

 

―――――あなたを愛しているわ…一人の女性として!

 

 

 

 

 

…って事になるだろうな~♡ぐふふふふ…♡』

 

…と、ものすごく気持ち悪い顔をしてにやけだすサンジ。

この男、コレが無ければもう少しモテそうなものである。

 

サンジが妄想にふけっていると…

 

『見ィつけた…』

 

『⁉』

 

どこからともなく声が聞こえ、思わず身構え辺りを見渡す。

 

『誰だ⁉どこにいやがる⁉』

 

『私はココよ~~~ん!』

 

そう叫びながら近くの茂みから飛び出してきたのは…

 

『うおォっ⁉何だテメェは⁉』

 

坊主頭の左右に三つ編みのおさげをし、パンツだけを身に纏った筋肉隆々のオカマだった。

 

『私は“貂蝉(ちょうせん)”!絶世の美女よ!』

 

『テメェ世界中の美女に土下座して謝りやがれ!』

 

『誰がキモイに手足をつけたような生き物ですってェ⁉』

 

『言ってねェよんな事!』

 

売り言葉に買い言葉で一触即発気味になる2人。

 

『あら?』

 

『?』

 

しかし次の瞬間、貂蝉は静かになりサンジをじっと見つめ…

 

『中々良い男じゃない…コ・ノ・ミ♡』

 

『⁉』

 

もしそこにいたのが、麦わらの一味の他の者達なら何の問題もなかったであろう。

ルフィやウソップ、チョッパーやフランキーだったらすぐに仲良くなっていたであろうし、他の者達も服装等で最初は多少戸惑ったかもしれないが、その後は特に気にせず話を聞いたであろう。

 

しかし、この男は違った。

彼は男女差別にも近いほどの女性優先主義者であり、息をするようにナンパをする程の女好きであった。

彼にとって女性はエネルギー、栄養や酸素も同然あった。

 

故にこの手の輩からの好意はとても嫌なものであった。

そのため…

 

『うおおおォォォ~~~!』

 

彼は逃げ出した。

 

『あ~ん!ちょっと待って~!話は終わってないわよ~~~!』

 

『来んじゃねェ~~~!“三級挽き肉(トロワジェム・アッシ)”‼』

 

『ぬううゥ~~~ん!』

 

サンジはすかさず蹴り技を繰り出し、貂蝉を吹き飛ばす!

 

しかし…

 

『今の攻撃、すっごく良いわァ!強い男は好きよォ!』

 

『うおおおォォォ~~~!』

 

貂蝉は全くひるまない。

サンジは反撃の考えを捨て、ひたすら逃げる事に集中する。

 

それから一年以上彼らは追いかけっこを続け、寝る間や食事の時間も惜しんで走り続けた。

そしてある日『話を聞いたらもう二度とつきまとわない』という条件の下、サンジは貂蝉の話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…にしてもあのオカマ野郎の言葉…一体どういう意味だ?)

 

貂蝉がサンジに伝えた言葉は…

 

―――――あなた達がこの世界に来たのには理由があるわ。あなた達がこの世界での役割を果たした時、あなた達は帰れる。闇雲に海に出ても意味はないわよ

 

…というものだった。

 

(“()()()()”ってのは一体どういう意味だ?まるでここが“偉大なる航路(グランドライン)”とは全く別の場所みたいな言い方だが……ん?)

 

考えながら街を歩いていると、人だかりが目に入って来た。

飲食店の前に人が集まっているようである。

 

(食中毒でもあったのか?それとも悪質なクレーマーか?)

 

だとしたら料理人として放っておけないと考え、サンジは近くの人から話しを伺う。

 

「なァ、妙に騒がしいが何かあったのか?」

 

「いやァ…この店で働いていた女の子が、ついさっきこの街の領主様の所へ連れて行かれたんだよ」

 

「女の子が⁉この街の領主に⁉」

 

「何でもその子の料理の腕が凄いって聞いて、興味を持ったらしくてな…」

 

「へェ…すご腕の料理人ねェ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…季衣?これって一体どういう事?」

 

その頃、華琳の宮殿に連れてこられた典韋は、会場の調理場で困惑していた。

 

「典韋とやら、あなたは中々の腕を持つ料理人らしいわね」

 

調理場からルフィ達と同じ来賓席に移動した華琳が声を掛ける。

 

「あなたが作った料理に興味が湧いたの。そこにある食材、調味料は自由に使って構わないわ。何か作ってみてくれないかしら?」

 

「そういう訳なんだ。“流琉(るる)”、何か作ってよ」

 

季衣が典韋の真名らしき名前を呼ぶ。

 

「すんごいのを作って、曹操のお姉ちゃんをぎゃふんと言わせてやって欲しいのだー!」

 

鈴々の言葉に、流琉はルフィ達の存在に気づく。

 

「………!わかりました!何とかやってみます!」

 

流琉はしばらく戸惑っていたが、ルフィ達の顔を見て何か思いついたのか、表情を明るくし調理を開始した。

 

食材を切り、炒め、煮込み、生地をこねる。

 

(手際は良いわね…)

 

作業の様子を見て、華琳は感心する。

 

最後に蒸籠で蒸し…

 

「できた!」

 

流琉は一人に3ずつ肉まんを運ぶ。

 

「どうぞお召し上がり下さい!」

 

「「いっただっきまーす(なのだー)!」」

 

ルフィと鈴々を始め、全員食べ始める。

 

「うめェ~~~!」

 

「美味しいのだ~!」

 

「これ…三つとも中の具が違うのね…」

 

「これは麻婆豆腐と狼の肉ですか?」

 

「ピリ辛味が食欲をそそるな」

 

「こっちはチンジャオロースが入っているな」

 

「筍の代わりにメンマを使っているのか」

 

「こっちは玉子スープでしょうか?」

 

「片栗粉で餡にしてお饅頭の中に入れたんですね」

 

「へー!よくそんな事思いつくな!」

 

「一緒に入っている羊の肉もうめェな」

 

「うん!美味い!」

 

「成程、悪くないな…」

 

「さすが流琉!昔よりも上手になっているね!」

 

「美味いっす~!」

 

「美味しいわ」

 

「可愛らしいうえにお料理も上手だなんて…!」

 

「この麻婆豆腐は良いな!」

 

「正直言うとあの店の料理、また食べたかったんやよな~!」

 

「美味しいの~!」

 

『今回もおれはおあずけか?』

 

「諦めなさい宝譿」

 

「おかずを饅頭に入れるとは、面白い発想ですね」

 

「シャン、これ好き~!」

 

ルフィ達は絶賛し、曹軍の面々も満足そうにする。

 

(皮の食感は申し分ない…食材の切り方も悪くないわね…。

ただ、狼の肉と麻婆豆腐のそれぞれの香りが、互いの良さを打ち消し合ってしまっているわ…。

こっちはメンマの味に青椒肉絲の味付けが重なって、少ししつこくなっている…。

これも玉子羹の味が、羊の肉につけた下味の邪魔をしてしまっているわね…)

 

華琳は三つの饅頭を試食し、美食家として厳しく評価する。

 

「な~典韋~!」

 

そんな中、ルフィが流琉に声を掛けた。

 

「これよ~お前の店でおれ達が好きだったやつ、全部入れてくれたんだな!うめェ~!」

 

(え⁉)

 

「あ、確かに!鈴々ちゃんが好きだった羊の肉に、星さんの好物のメンマ、劉備さんのお気に入りだった狼の肉、チョッパーさんの青椒肉絲とブルックさんの玉子羹!全部入ってますよ!」

 

「ああ!本当だ!」

 

朱里の言葉に桃香達も気づく。

 

「はい!昨日の昼と夜に皆さんが来て、同じのを注文していたから、気に入って貰えたんだと思って!

急に言われて何を作ろうか困っていたんですけど、皆さんの顔を見てその事を思い出して、組み合わせて出そうと思ったんです!

ただ…初めて作る物でしたから、ちょっと味付けがおかしくなっちゃったかもしれませんけど…」

 

「…………」

 

その言葉を聞き、華琳はじっと典韋を見る。

 

「確かに、街の料理人にしては中々の腕みたいだけど、華琳様には及ばないわね」

 

「……何を言ってるの桂花、どう考えても私の負けじゃない」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

そう言うと華琳は立ち上がる。

 

「ルフィ達へのお礼と言っておきながら、私は招いた客人の好みを全く考えていなかったわ…。

その結果、自分の料理の腕を見せびらかすだけで終わってしまった…。

私には相手をもてなす考えが全くなかった、料理以前の問題よ…」

 

自分を叱責するように言った後、流琉の方を向く。

 

「それに比べて典韋は突然の事にも関わらず、食べる相手の事をしっかりと考え、好みに合った料理を作った。

私の負けは、火を見るよりも明らかだわ…」

 

「あのー…それは違うと思いますよ?」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

桃香が口を開いた。

 

「?“違う”というのは?」

 

「だって、曹操さんは私達の為を思って、わざわざ高価な食材を用意して、一生懸命作ったんですよね。

ならそれは、十分立派な“もてなしの心”だと思います。

それに、鈴々ちゃんの好みには合わなかったみたいですけど、私は曹操さんの料理も美味しいと思いましたし…。

そもそも、料理の善し悪しが“好き”か“嫌い”かで決まるなら、勝ち負けなんてないと思います。

強いて言うなら、『みんなで美味しく、楽しく食べる』のが正解だと思いますよ?」

 

「……『みんなで美味しく、楽しく食べるのが正解』?……『勝ち負けなんてない』?」

 

桃香の言葉に華琳は呆けたような顔をする。

 

「そーそー、桃香の言う通りだよ」

 

「ルフィ…」

 

「メシ食わせてくれるのが、“悪い”とか“負け”なわけねェだろ」

 

「……まったく、甘いわねあなた達は…」

 

華琳は呆れつつも嬉しそうだった。

 

「曹操様!少々宜しいでしょうか⁉」

 

そこへ兵士が一人やって来た。

 

「何事か?」

 

「妙な男が一人、お目通りを願っているのですが、いかが致しましょう?」

 

「妙な男?」

 

「何でも、街で曹操様が典韋殿を探していた話を聞き、『腕の良い料理人を探しているのなら是非自分も』と、名乗り出てきたようで…」

 

「相当自信がある様ね…どんな男なの?」

 

「えーっとですね…金髪で片目を隠しており、渦巻き状の眉毛で黒い異国の服を着ておりまして…」

 

「⁉おい、それって…!」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

男の身なりを聞き、ルフィ達麦わらの一味の面々は思わず立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

「ナミすあ~~~ん♡あとその他ども

 

「「サンジ~!」」

 

「サンジ君!」

 

「サンジさ~ん!」

 

「やっぱりおめェだったのか」

 

「…ったく、今までどこほっつき歩いてたんだてめェ…」

 

「うおっ⁉マリモ!なぜてめェがおれより先にナミさんと合流してやがる⁉奇跡か⁉」

 

「あ゛ァ⁉」

 

華琳がお目通りを許可し、現れたのはルフィ達が思った通りの男―――サンジだった。

 

「あの~…その人、ルフィさん達の仲間の料理人なんですか?」

 

桃香が声を掛ける。

 

「うおォっ⁉」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

それにより桃香や愛紗達に気づいたサンジは、一瞬雷に打たれたかの様にフリーズし…

 

「ああ、恋よ♡あなたはなんて残酷なのか⁉

ここはまるで天国であると同時に地獄♡魚は溺れ、鳥は飛ぶ事を忘れてしまう♡

花は枯れ、月は光を失う♡

そのような世界で僕にどうやって生きろというのか⁉」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

(うた)(うた)い、踊りだすサンジに桃香達は呆気にとられる。

鈴々や華侖ですら反応に困り、何も言えずにいる。

 

「ああ…僕は不思議でたまらない♡

これほどの美女がいるにも関わらず、なぜここでは国が滅びず、城がしかと建っているのか⁉」

 

「あの…あの男は一体?」

 

「諦めて頂戴、ああいう奴なの」

 

やっと言葉を絞り出した星に、ナミはそう言い放った。

 

「な~サンジ~お前今までどこにいたんだ~?」

 

「ここはまるで花畑♡」

 

「何してたんだサンジ?」

 

「咲き誇るのは言葉を話す美しき花々♡」

 

「サンジさ~ん」

 

「ああ…これでは足の踏み場もない♡」

 

「「サンジ~」」

 

「サンジさ~ん」

 

話し掛けるルフィ、チョッパー、ブルック。

 

「ウルセェーッ!おれは今レディ達との出会いに浸ってんだ!後にしろクソども!」

 

「「「えェ~~~っ⁉」」」

 

「あの…あの人本当にルフィさん達の仲間なんですか?」

 

「諦めて頂戴、ああいう奴なの」

 

桃香の問いにもナミは同じ様に答える。

 

「んんっ!お初にお目にかかるわ。私は“曹孟徳”。この街の領主よ」

 

「おおっ!なんと可憐な領主様!お会いできで光栄…」

 

気を取り直して華琳が挨拶をすると、サンジは前に躍り出てさりげなく手を取ろうとするが…

 

「薄汚れた手で触るな色情魔!」

 

「華琳様に近づくな常時発情男!」

 

「ぶへェっ!」

 

本能的にサンジのエロさを察したのか、春蘭と桂花が渾身のストレートを繰り出す!

両者の拳が顔面に突き刺さり、サンジは仰向けに倒れる。

 

(姉者と桂花は、相変わらずこういう時だけは息がぴったりだな…)

 

「ああ…拳と顔面とはいえ…麗しきレディ達と触れ合えるこの幸せ…♡」

 

「……何なんですかあの人?」

 

「ただのバカだ」

 

「それは見ればわかります」

 

そんな会話をする朱里とゾロ。

 

「…ルフィ、この男はあなた達の仲間で料理人なのよね?腕は確かなの?」

 

華琳が訊ねる。

 

「ああ、もちろんだ!サンジのメシは最高だぞ!」

 

「そう…。いいわ、天の国の料理にも興味があるし、この男に何か作らせてみましょう」

 

 

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