ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
一人の男がある街にやって来た。
「あークソっ!一年以上ムダにしちまった…。あのオカマ本当にただ話がしたいだけだったとは…」
黒いスーツに身を包み、金髪で左目を隠し、右目の眉毛が渦巻きになった男―――サンジは少々イラついた様子で街を歩く。
▽
それは一年以上前、サンジがこの世界に来てから数日後の事。
『ナァミすァ~~~ん‼ロビンちゅわァ~~~ん‼』
一味の内、女性二人の名前を大声で叫びながら、サンジはあちこちを走り回っていた。
『ああ…二人共どこに行っちまったんだ…?きっとおれに会いたくて泣いているに違いないぜ…。早く見つけてあげねェと。きっと…
―――――ナミさん!ロビンちゃん!迎えに来たぜ!
―――――ああ!サンジ君!
―――――待っていたわ、私達の王子様!
―――――サンジ君…私、あなたと離れ離れになって、初めてわかったわ!
―――――あなたを愛しているわ…一人の女性として!
…って事になるだろうな~♡ぐふふふふ…♡』
…と、ものすごく気持ち悪い顔をしてにやけだすサンジ。
この男、コレが無ければもう少しモテそうなものである。
サンジが妄想にふけっていると…
『見ィつけた…』
『⁉』
どこからともなく声が聞こえ、思わず身構え辺りを見渡す。
『誰だ⁉どこにいやがる⁉』
『私はココよ~~~ん!』
そう叫びながら近くの茂みから飛び出してきたのは…
『うおォっ⁉何だテメェは⁉』
坊主頭の左右に三つ編みのおさげをし、パンツだけを身に纏った筋肉隆々のオカマだった。
『私は“
『テメェ世界中の美女に土下座して謝りやがれ!』
『誰がキモイに手足をつけたような生き物ですってェ⁉』
『言ってねェよんな事!』
売り言葉に買い言葉で一触即発気味になる2人。
『あら?』
『?』
しかし次の瞬間、貂蝉は静かになりサンジをじっと見つめ…
『中々良い男じゃない…コ・ノ・ミ♡』
『⁉』
もしそこにいたのが、麦わらの一味の他の者達なら何の問題もなかったであろう。
ルフィやウソップ、チョッパーやフランキーだったらすぐに仲良くなっていたであろうし、他の者達も服装等で最初は多少戸惑ったかもしれないが、その後は特に気にせず話を聞いたであろう。
しかし、この男は違った。
彼は男女差別にも近いほどの女性優先主義者であり、息をするようにナンパをする程の女好きであった。
彼にとって女性はエネルギー、栄養や酸素も同然あった。
故にこの手の輩からの好意はとても嫌なものであった。
そのため…
『うおおおォォォ~~~!』
彼は逃げ出した。
『あ~ん!ちょっと待って~!話は終わってないわよ~~~!』
『来んじゃねェ~~~!“
『ぬううゥ~~~ん!』
サンジはすかさず蹴り技を繰り出し、貂蝉を吹き飛ばす!
しかし…
『今の攻撃、すっごく良いわァ!強い男は好きよォ!』
『うおおおォォォ~~~!』
貂蝉は全くひるまない。
サンジは反撃の考えを捨て、ひたすら逃げる事に集中する。
それから一年以上彼らは追いかけっこを続け、寝る間や食事の時間も惜しんで走り続けた。
そしてある日『話を聞いたらもう二度とつきまとわない』という条件の下、サンジは貂蝉の話を聞いた。
▽
(…にしてもあのオカマ野郎の言葉…一体どういう意味だ?)
貂蝉がサンジに伝えた言葉は…
―――――あなた達がこの世界に来たのには理由があるわ。あなた達がこの世界での役割を果たした時、あなた達は帰れる。闇雲に海に出ても意味はないわよ
…というものだった。
(“
考えながら街を歩いていると、人だかりが目に入って来た。
飲食店の前に人が集まっているようである。
(食中毒でもあったのか?それとも悪質なクレーマーか?)
だとしたら料理人として放っておけないと考え、サンジは近くの人から話しを伺う。
「なァ、妙に騒がしいが何かあったのか?」
「いやァ…この店で働いていた女の子が、ついさっきこの街の領主様の所へ連れて行かれたんだよ」
「女の子が⁉この街の領主に⁉」
「何でもその子の料理の腕が凄いって聞いて、興味を持ったらしくてな…」
「へェ…すご腕の料理人ねェ…」
▽
「えっと…季衣?これって一体どういう事?」
その頃、華琳の宮殿に連れてこられた典韋は、会場の調理場で困惑していた。
「典韋とやら、あなたは中々の腕を持つ料理人らしいわね」
調理場からルフィ達と同じ来賓席に移動した華琳が声を掛ける。
「あなたが作った料理に興味が湧いたの。そこにある食材、調味料は自由に使って構わないわ。何か作ってみてくれないかしら?」
「そういう訳なんだ。“
季衣が典韋の真名らしき名前を呼ぶ。
「すんごいのを作って、曹操のお姉ちゃんをぎゃふんと言わせてやって欲しいのだー!」
鈴々の言葉に、流琉はルフィ達の存在に気づく。
「………!わかりました!何とかやってみます!」
流琉はしばらく戸惑っていたが、ルフィ達の顔を見て何か思いついたのか、表情を明るくし調理を開始した。
食材を切り、炒め、煮込み、生地をこねる。
(手際は良いわね…)
作業の様子を見て、華琳は感心する。
最後に蒸籠で蒸し…
「できた!」
流琉は一人に3ずつ肉まんを運ぶ。
「どうぞお召し上がり下さい!」
「「いっただっきまーす(なのだー)!」」
ルフィと鈴々を始め、全員食べ始める。
「うめェ~~~!」
「美味しいのだ~!」
「これ…三つとも中の具が違うのね…」
「これは麻婆豆腐と狼の肉ですか?」
「ピリ辛味が食欲をそそるな」
「こっちはチンジャオロースが入っているな」
「筍の代わりにメンマを使っているのか」
「こっちは玉子スープでしょうか?」
「片栗粉で餡にしてお饅頭の中に入れたんですね」
「へー!よくそんな事思いつくな!」
「一緒に入っている羊の肉もうめェな」
「うん!美味い!」
「成程、悪くないな…」
「さすが流琉!昔よりも上手になっているね!」
「美味いっす~!」
「美味しいわ」
「可愛らしいうえにお料理も上手だなんて…!」
「この麻婆豆腐は良いな!」
「正直言うとあの店の料理、また食べたかったんやよな~!」
「美味しいの~!」
『今回もおれはおあずけか?』
「諦めなさい宝譿」
「おかずを饅頭に入れるとは、面白い発想ですね」
「シャン、これ好き~!」
ルフィ達は絶賛し、曹軍の面々も満足そうにする。
(皮の食感は申し分ない…食材の切り方も悪くないわね…。
ただ、狼の肉と麻婆豆腐のそれぞれの香りが、互いの良さを打ち消し合ってしまっているわ…。
こっちはメンマの味に青椒肉絲の味付けが重なって、少ししつこくなっている…。
これも玉子羹の味が、羊の肉につけた下味の邪魔をしてしまっているわね…)
華琳は三つの饅頭を試食し、美食家として厳しく評価する。
「な~典韋~!」
そんな中、ルフィが流琉に声を掛けた。
「これよ~お前の店でおれ達が好きだったやつ、全部入れてくれたんだな!うめェ~!」
(え⁉)
「あ、確かに!鈴々ちゃんが好きだった羊の肉に、星さんの好物のメンマ、劉備さんのお気に入りだった狼の肉、チョッパーさんの青椒肉絲とブルックさんの玉子羹!全部入ってますよ!」
「ああ!本当だ!」
朱里の言葉に桃香達も気づく。
「はい!昨日の昼と夜に皆さんが来て、同じのを注文していたから、気に入って貰えたんだと思って!
急に言われて何を作ろうか困っていたんですけど、皆さんの顔を見てその事を思い出して、組み合わせて出そうと思ったんです!
ただ…初めて作る物でしたから、ちょっと味付けがおかしくなっちゃったかもしれませんけど…」
「…………」
その言葉を聞き、華琳はじっと典韋を見る。
「確かに、街の料理人にしては中々の腕みたいだけど、華琳様には及ばないわね」
「……何を言ってるの桂花、どう考えても私の負けじゃない」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
そう言うと華琳は立ち上がる。
「ルフィ達へのお礼と言っておきながら、私は招いた客人の好みを全く考えていなかったわ…。
その結果、自分の料理の腕を見せびらかすだけで終わってしまった…。
私には相手をもてなす考えが全くなかった、料理以前の問題よ…」
自分を叱責するように言った後、流琉の方を向く。
「それに比べて典韋は突然の事にも関わらず、食べる相手の事をしっかりと考え、好みに合った料理を作った。
私の負けは、火を見るよりも明らかだわ…」
「あのー…それは違うと思いますよ?」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
桃香が口を開いた。
「?“違う”というのは?」
「だって、曹操さんは私達の為を思って、わざわざ高価な食材を用意して、一生懸命作ったんですよね。
ならそれは、十分立派な“もてなしの心”だと思います。
それに、鈴々ちゃんの好みには合わなかったみたいですけど、私は曹操さんの料理も美味しいと思いましたし…。
そもそも、料理の善し悪しが“好き”か“嫌い”かで決まるなら、勝ち負けなんてないと思います。
強いて言うなら、『みんなで美味しく、楽しく食べる』のが正解だと思いますよ?」
「……『みんなで美味しく、楽しく食べるのが正解』?……『勝ち負けなんてない』?」
桃香の言葉に華琳は呆けたような顔をする。
「そーそー、桃香の言う通りだよ」
「ルフィ…」
「メシ食わせてくれるのが、“悪い”とか“負け”なわけねェだろ」
「……まったく、甘いわねあなた達は…」
華琳は呆れつつも嬉しそうだった。
「曹操様!少々宜しいでしょうか⁉」
そこへ兵士が一人やって来た。
「何事か?」
「妙な男が一人、お目通りを願っているのですが、いかが致しましょう?」
「妙な男?」
「何でも、街で曹操様が典韋殿を探していた話を聞き、『腕の良い料理人を探しているのなら是非自分も』と、名乗り出てきたようで…」
「相当自信がある様ね…どんな男なの?」
「えーっとですね…金髪で片目を隠しており、渦巻き状の眉毛で黒い異国の服を着ておりまして…」
「⁉おい、それって…!」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
男の身なりを聞き、ルフィ達麦わらの一味の面々は思わず立ち上がった。
▽
「ナミすあ~~~ん♡あとその他ども」
「「サンジ~!」」
「サンジ君!」
「サンジさ~ん!」
「やっぱりおめェだったのか」
「…ったく、今までどこほっつき歩いてたんだてめェ…」
「うおっ⁉マリモ!なぜてめェがおれより先にナミさんと合流してやがる⁉奇跡か⁉」
「あ゛ァ⁉」
華琳がお目通りを許可し、現れたのはルフィ達が思った通りの男―――サンジだった。
「あの~…その人、ルフィさん達の仲間の料理人なんですか?」
桃香が声を掛ける。
「うおォっ⁉」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
それにより桃香や愛紗達に気づいたサンジは、一瞬雷に打たれたかの様にフリーズし…
「ああ、恋よ♡あなたはなんて残酷なのか⁉
ここはまるで天国であると同時に地獄♡魚は溺れ、鳥は飛ぶ事を忘れてしまう♡
花は枯れ、月は光を失う♡
そのような世界で僕にどうやって生きろというのか⁉」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
鈴々や華侖ですら反応に困り、何も言えずにいる。
「ああ…僕は不思議でたまらない♡
これほどの美女がいるにも関わらず、なぜここでは国が滅びず、城がしかと建っているのか⁉」
「あの…あの男は一体?」
「諦めて頂戴、ああいう奴なの」
やっと言葉を絞り出した星に、ナミはそう言い放った。
「な~サンジ~お前今までどこにいたんだ~?」
「ここはまるで花畑♡」
「何してたんだサンジ?」
「咲き誇るのは言葉を話す美しき花々♡」
「サンジさ~ん」
「ああ…これでは足の踏み場もない♡」
「「サンジ~」」
「サンジさ~ん」
話し掛けるルフィ、チョッパー、ブルック。
「ウルセェーッ!おれは今レディ達との出会いに浸ってんだ!後にしろクソども!」
「「「えェ~~~っ⁉」」」
「あの…あの人本当にルフィさん達の仲間なんですか?」
「諦めて頂戴、ああいう奴なの」
桃香の問いにもナミは同じ様に答える。
「んんっ!お初にお目にかかるわ。私は“曹孟徳”。この街の領主よ」
「おおっ!なんと可憐な領主様!お会いできで光栄…」
気を取り直して華琳が挨拶をすると、サンジは前に躍り出てさりげなく手を取ろうとするが…
「薄汚れた手で触るな色情魔!」
「華琳様に近づくな常時発情男!」
「ぶへェっ!」
本能的にサンジのエロさを察したのか、春蘭と桂花が渾身のストレートを繰り出す!
両者の拳が顔面に突き刺さり、サンジは仰向けに倒れる。
(姉者と桂花は、相変わらずこういう時だけは息がぴったりだな…)
「ああ…拳と顔面とはいえ…麗しきレディ達と触れ合えるこの幸せ…♡」
「……何なんですかあの人?」
「ただのバカだ」
「それは見ればわかります」
そんな会話をする朱里とゾロ。
「…ルフィ、この男はあなた達の仲間で料理人なのよね?腕は確かなの?」
華琳が訊ねる。
「ああ、もちろんだ!サンジのメシは最高だぞ!」
「そう…。いいわ、天の国の料理にも興味があるし、この男に何か作らせてみましょう」