ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第十席編を投稿します。




第95話 “あわわ”

陳留を出発してから数日、ルフィ達はある店で夕食を食べていた。

 

「はい、あ~ん」

 

桃香が餃子を箸でつまみ、愛紗に食べさせようとする。

 

「りゅ、劉備殿…」

 

「も~…いい加減“お姉ちゃん”って呼んで下さいよ~…」

 

「いや…ですからそれは…」

 

そう言いながら何となく鈴々の方を見ると…

 

「む~…」

 

「鈴々?」

 

ふくれっ面をしていた。

 

「鈴々ちゃん?」

 

「どうしたんだ?」

 

桃香とルフィが訊ねる。

 

「愛紗ばっかりあ~んして貰ってずるいのだ」

 

「なんだ、そういう事なら早く言え。さ、劉備殿、あ~んするならどうぞ鈴々に…」

 

「そうじゃないのだ~!」

 

「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

 

「鈴々は桃香お姉ちゃんじゃなくて、愛紗にあ~んして欲しいのだ!」

 

「はァ⁉ど、どうして私が…⁉」

 

「愛紗はお姉ちゃんの桃香お姉ちゃんから、あ~んして貰っているんだから、鈴々もお姉ちゃんの愛紗から、あ~んして貰ってもいい筈なのだ!」

 

「…ってどういう理屈だソレは⁉」

 

「いいじゃねェか、してやれよ」

 

「る、ルフィまで…」

 

「そ~そ~してあげなって~♡ついでにおれにもしてくれな~い?♡」

 

「ヨホホ~でしたら私も~」

 

「話がややこしくなるから、あんた達は黙ってなさい!」

 

「ルフィ!てめェ今、おれの皿から取っただろ⁉返せ!」

 

「うおっ⁉何しやがるフランキー!酒こぼれたじゃねェか!」

 

「アチィ~!お茶かかった~!」

 

「……やれやれ、ルフィ殿の仲間も次々見つかって、かなり騒がしくなってきたな朱里」

 

…と、星は隣の席にいる朱里に話しかけるが…

 

「…朱里?」

 

「…………」

 

朱里は答えず、並んで座っているルフィ、桃香、愛紗、鈴々の様子をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

(姉妹…)

 

宿の寝台の上で、朱里は昔を思い出していた。

 

(家族が離れ離れになる前は、私にもお姉ちゃんと妹が…)

 

まだ幼かった頃、初めてできた妹を姉と一緒に可愛がっていた日々を思い出す。

 

(私のお姉ちゃん…私の妹…)

 

世の中の乱れに巻き込まれ、離れ離れになってしまった姉妹を想い、朱里は静かに涙を流すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一行は桃花村への道を外れ、南へ向かっていた。

 

「…………」

 

「孔明、大丈夫か?何だか元気がないみたいだけど…」

 

隣を歩いていたチョッパーが、朱里に話しかける。

 

「い、いえ。そんな事ないですよ」

 

「ひょっとして、私達に寄り道させた事を気にしているの?」

 

「それなら気にする事はないぞ。朱里の話を聞いて、私も久し振りに水鏡殿に会いたくなったしな」

 

ナミと愛紗が言う。

 

そう、一行は水鏡の庵に向かっていたのだった。

 

「別に急ぐ必要もねェんだし、遠慮すんなって」

 

「そーそー、気にすんなって」

 

「ちょっと寄り道する方が、人生は楽しいですよね」

 

「ブルック殿の言う通りだ」

 

「おれも~♡みんな長く一緒にいられるのは嬉しいよ~♡」

 

「そうか。じゃあてめェ、ずっと一人でここに残ってろよ」

 

「あァ⁉」

 

 

 

 

 

 

一行がだいぶ進むと、霧が出てきた。

 

「だいぶ濃くなってきたな…」

 

「全く()()がないな」

 

「ぷぷっ!やだ関羽さん面白~い!」

 

「うけて良かったのだ」

 

「そ、そうだな…」

 

「そういや、前にここに来た時も、霧が出たよな」

 

「そうだったな。そして私が逸れてしまったんだったな」

 

「もうあんな事には、ならないよう頼むぞ」

 

「当然だ。私も好きで逸れた訳ではない」

 

「けど、本当に霧が濃いわね」

 

「スリラーバークを思い出しますね~」

 

「あそこよりは安全だと思うけど」

 

「だが逸れねェよう、注意はしねェとな」

 

「こっちには要注意人物もいるしな」

 

「おいコック…何でおれを見て言う…⁉」

 

「言わなきゃわかんねェのかてめェは⁉」

 

 

 

 

 

 

やがて霧が晴れ…

 

「無事、霧を抜けたみたいですね…」

 

「あれ?趙雲さんがいませんよ⁉」

 

「何⁉」

 

桃香の言葉に全員で周囲を見渡してみると、確かに星の姿が見当たらない。

 

「全く!早く探さねば……!」

 

「「「「!」」」」

 

そう言いかけて愛紗が何かに気づくと同時に、ゾロ、ナミ、鈴々、朱里もハッとした様子でルフィの近くに集まる。

 

「あの…これってもしかして…」

 

「ああ、十中八九そうだろうな…」

 

「何だ?」

 

「華蝶メンマになって出て来る前振りよ」

 

「きっとそうなのだ」

 

「ああ!」

 

「うむ。間違いないな」

 

「放っときましょ」

 

「賛成です」

 

「しかし…()()はどうすんだ?」

 

そう言ってゾロが横目で見た先には…

 

「おいクソ野郎共!ナミさん達も!コソコソ話してる場合じゃねェだろ!

早く趙雲ちゃん探さねェと!ケガしてねェかな⁉心細くて泣いたりしてねェかな⁉」

 

完全にパニックになっているサンジの姿があった。

 

「確かに…どうする?」

 

「面倒くさいわね…」

 

「皆さん、何話しているんですか?」

 

「そうだぞ。早く探さねェと」

 

「?皆さん?」

 

「どうしたんだ?」

 

桃香とチョッパーも、サンジほどではないが心配そうにし、ブルックとフランキーもコソコソと話すルフィ達を変な目で見ている。

 

「でも確かに、皆にもどう説明すれば良いのか…?」

 

「私に任せて下さい」

 

そう言うと、朱里はサンジに近づいて行く。

 

「大丈夫ですよサンジさん」

 

「何言ってるの孔明ちゃん⁉」

 

「星さんはきっと何か考えがあって、別行動をしているだけですから」

 

「で、でもおれ達に何も言わないで…」

 

「サンジさん、劉備さん達もよく考えて下さい」

 

「?考える?」

 

「もし星さんが本当に迷子になったのだとしたら、もっと先に迷子になっている筈の人がいるでしょう?」

 

「ああ…」

 

「「「「確かに…」」」」

 

「「「「成程…」」」」

 

「こっち見んじゃねェよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゾロが迷子にならない様な場所で、星が迷子になる筈がない』という朱里の説明で全員納得し、一行は星を放置して進み、水鏡の庵に着いた。

 

「たのも~なのだ~!」

 

門を叩きながら鈴々が叫ぶ。

 

しばらくすると門が僅かに開き…

 

「あわわっ⁉」

 

そんな声がしたかと思うとすぐに閉じてしまった。

 

「“あわわ”?」

 

「今の…誰なのだ?」

 

「朱里は知らないか?」

 

「いえ、私も初めて見る人でした…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、門を開けた少女は、大急ぎで屋敷の奥にいる水鏡の下へ走って行った。

 

「え⁉武器を持った人達が大勢押しかけて来た⁉」

 

少女から話を聞いた水鏡は顔を険しくし、少女と共に門に向かう。

 

「“雛里(ひなり)”はここにいなさい」

 

少女を物陰に隠し、自身は門を少し開けて隙間から様子を覗う。

 

「…………」

 

そして…

 

「…!朱里!」

 

訪ねて来たのが、かつての教え子である事に気づいた水鏡は、門を大きく開けてルフィ達を招き入れた。

 

「水鏡先せ~い!」

 

「朱里!本当に朱里なのね!」

 

抱き合って再会を喜ぶ二人。

 

「でも、来るなら手紙で教えてくれれば良かったのに」

 

「すいません、旅の途中で急に寄ろうという事になったので」

 

「そうだったの。朱里、大きくなったわね…」

 

朱里の頭をなでる水鏡。

 

「……?」

 

雛里と呼ばれた少女は、物陰から2人の様子を不思議そうに見ていた。

 

「良かったな朱里」

 

「あらルフィさん、関羽さんに張飛ちゃんも…失礼しました」

 

「いえ、お気になさらず」

 

「久しぶりなのだー!」

 

「初めまして、“劉備”といいます」

 

「おれ達はルフィの仲間で、おれは“ロロノア・ゾロ”」

 

「私は“ナミ”」

 

「“サンジ”といいます。以後、お見知りおきを」

 

「“トニートニー・チョッパー”だ」

 

「おれは“フランキー”」

 

「お初にお目にかかります。“ブルック”と申します」

 

「初めまして、“水鏡”と申します。ようこそ我が庵へ。皆さんには、すっかり朱里がお世話になって…」

 

「いえ、それ程大した事は…。むしろ、我々の方が朱里を頼りにしているぐらいで…」

 

「そーそー。さっきも朱里のおかげで助かったしな」

 

「所で先生、あの子は?」

 

「ああ…紹介がまだだったわね」

 

朱里が先程から物陰に隠れていた少女の事を訊ねる。

 

青い魔女っ子帽子を被り、水色の髪をツインテールにしている。

年齢は朱里と同じくらいだ。

 

「あの子は“鳳統(ほうとう)士元(しげん)”。あなたが出て行った後、私の所に預けられたの。

あなたと同じ様に、身寄りを亡くしてね…。

あなたの“妹弟子”という事になるのかしらね」

 

「“妹弟子”…私の妹…」

 

朱里は嬉しくなり、“鳳統”こと“雛里”のもとへ駆け寄る。

 

「!あわわ…⁉」

 

「よろしくね!鳳統ちゃん!」

 

「………っ」

 

朱里は挨拶するが、雛里は帽子を深く被り直し、顔を隠してしまう。

 

「あの子…人見知りが激しくて…」

 

「愛紗、“ヒトミシリ”って何なのだ?」

 

「“遠慮”と一緒にお前が母親の腹の中に忘れてきた物だ」

 

「?」

 

愛紗の説明に、鈴々は頭に疑問符を浮かべる。

 

「さァ皆さん、大したおもてなしはできませんが、ゆっくりしていって下さいね」

 

「ああ、ありがとう」

 

「かたじけない」

 

「なのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、夕食の用意をするために、サンジと朱里は水鏡、雛里と一緒に厨房にやって来た。

 

朱里は早速調理道具を手に取る。

 

「張り切っているわね朱里」

 

「ここでお料理するのが懐かしくて」

 

「そういえば、あなたがここにいた時はよく二人で料理を作ったわね」

 

「先生には沢山料理を教えて貰いましたね」

 

「そっか。朱里ちゃんは本当に、水鏡先生に色々教えて貰ったんだな」

 

「はい!」

 

「私は正直、朱里がここまで料理上手になるとは思わなかったのだけどね」

 

「え、そうなんですか⁉」

 

「だって最初は、釜戸に火を点けるのも怖がって…」

 

「やだ先生!それは本当にちっちゃい頃の話じゃないですか~!」

 

「あら、そうだったかしら?」

 

「いいねェ、仲の良い家族の思い出話は。心があったまるぜ」

 

朱里と水鏡の会話を、サンジが微笑ましそうに見ているのに対し…

 

「…………」

 

雛里はどこか淋しそうに見ていた。

 

「それじゃあ、みんなで夕食を作りましょう」

 

「はい!」

 

「ああ」

 

「…は、はい…」

 

 

 

 

 

 

「サンジさん、本当に料理上手なんですね」

 

サンジの手際の良さを見て、水鏡は感嘆の声を漏らす。

 

「まァな。おれは孔明ちゃんぐらいの頃には、もう見習い料理人として働いていたからな」

 

「そんなに小さい頃から?」

 

「ああ、本当にガキの頃から料理は好きでね。

最初は教えてくれる奴が周りにいなかったから独学でやって、それはもうメチャクチャだったな」

 

水鏡、サンジ、朱里がそんな会話をしながら調理を進めていく中、雛里は包丁で不器用ながらも野菜の皮を剝いている。

 

「あわわ…」

 

「あ、鳳統ちゃん。包丁そんな持ち方らしたら、怪我しちゃうよ」

 

朱里は半ば強引に雛里から包丁を受け取り、皮を剝き始める。

 

「あ…」

 

「これは私がやるね」

 

「…………」

 

手持ち無沙汰になった雛里は何かする事はないかと辺りを見渡し、流しにあった野菜を洗おうと手に取る。

 

「朱里、ちょっと味見して貰える?」

 

「あ、はい」

 

「…………」

 

水鏡から小皿を受け取り、味を確かめる朱里。

 

「もうちょっと、お塩を加えた方が良いかもしれませんね」

 

「そう、じゃあお塩とってもらえる?」

 

「はい」

 

「うう~…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うめ~!」

 

「美味しい~!」

 

その後、食堂で4人が作った料理を全員堪能していた。

 

「孔明が作った料理、初めて食べたけど美味いな!」

 

「小せェのに大したもんだぜ」

 

「ホントほっぺたが落ちそうですよ!私ほっぺたありませんけどー!」

 

「調理中の手際も良かったし、ほんと大したもんだな」

 

チョッパー、フランキー、ブルック、サンジも絶賛する。

 

「ありがとうございます」

 

「私達も朱里ちゃんの料理は久しぶりね!」

 

「また腕を上げたのだ!」

 

「そう言うお前はどうなんだ鈴々?おむすびとおにぎり以外に、何か作れる様になったのか?」

 

「卵かけご飯とお茶漬けも作れる様になったのだ!料理の腕前急上昇中なのだ!」

 

「そうかそうか」

 

「あらまァ」

 

「しししし!」

 

(愛紗さん…)

 

(おめェは…)

 

(人の事言えないでしょうに…)

 

愛紗の料理の腕を知る3人は、冷めた目で愛紗を見るのだった。

 

「…………」

 

「?」

 

そんな中、朱里は雛里が自分を見ている事に気がつく。

 

「!………」

 

しかし、気づいた瞬間に目を逸らされてしまった。

 

「けど、こうして見ていると孔明ちゃんと水鏡先生って、何だか本当に親子みたいですね」

 

「「え?」」

 

桃香の言葉に、思わず二人はキョトンとする。

 

「「そうですか?」」

 

「うん!」

 

「ま、生みの親より育ての親ってもんだ」

 

いつになく真剣な表情で、そう呟くサンジ。

 

「「……ふふっ」」

 

顔を見合わせて笑う2人。

 

「…………」

 

その様子を、雛里は僅かに頬を膨らませて見ていた。

 

 

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