ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊 作:HAY
陳留を出発してから数日、ルフィ達はある店で夕食を食べていた。
「はい、あ~ん」
桃香が餃子を箸でつまみ、愛紗に食べさせようとする。
「りゅ、劉備殿…」
「も~…いい加減“お姉ちゃん”って呼んで下さいよ~…」
「いや…ですからそれは…」
そう言いながら何となく鈴々の方を見ると…
「む~…」
「鈴々?」
ふくれっ面をしていた。
「鈴々ちゃん?」
「どうしたんだ?」
桃香とルフィが訊ねる。
「愛紗ばっかりあ~んして貰ってずるいのだ」
「なんだ、そういう事なら早く言え。さ、劉備殿、あ~んするならどうぞ鈴々に…」
「そうじゃないのだ~!」
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」
「鈴々は桃香お姉ちゃんじゃなくて、愛紗にあ~んして欲しいのだ!」
「はァ⁉ど、どうして私が…⁉」
「愛紗はお姉ちゃんの桃香お姉ちゃんから、あ~んして貰っているんだから、鈴々もお姉ちゃんの愛紗から、あ~んして貰ってもいい筈なのだ!」
「…ってどういう理屈だソレは⁉」
「いいじゃねェか、してやれよ」
「る、ルフィまで…」
「そ~そ~してあげなって~♡ついでにおれにもしてくれな~い?♡」
「ヨホホ~でしたら私も~」
「話がややこしくなるから、あんた達は黙ってなさい!」
「ルフィ!てめェ今、おれの皿から取っただろ⁉返せ!」
「うおっ⁉何しやがるフランキー!酒こぼれたじゃねェか!」
「アチィ~!お茶かかった~!」
「……やれやれ、ルフィ殿の仲間も次々見つかって、かなり騒がしくなってきたな朱里」
…と、星は隣の席にいる朱里に話しかけるが…
「…朱里?」
「…………」
朱里は答えず、並んで座っているルフィ、桃香、愛紗、鈴々の様子をじっと見ていた。
▽
その夜。
(姉妹…)
宿の寝台の上で、朱里は昔を思い出していた。
(家族が離れ離れになる前は、私にもお姉ちゃんと妹が…)
まだ幼かった頃、初めてできた妹を姉と一緒に可愛がっていた日々を思い出す。
(私のお姉ちゃん…私の妹…)
世の中の乱れに巻き込まれ、離れ離れになってしまった姉妹を想い、朱里は静かに涙を流すのだった。
▽
翌日、一行は桃花村への道を外れ、南へ向かっていた。
「…………」
「孔明、大丈夫か?何だか元気がないみたいだけど…」
隣を歩いていたチョッパーが、朱里に話しかける。
「い、いえ。そんな事ないですよ」
「ひょっとして、私達に寄り道させた事を気にしているの?」
「それなら気にする事はないぞ。朱里の話を聞いて、私も久し振りに水鏡殿に会いたくなったしな」
ナミと愛紗が言う。
そう、一行は水鏡の庵に向かっていたのだった。
「別に急ぐ必要もねェんだし、遠慮すんなって」
「そーそー、気にすんなって」
「ちょっと寄り道する方が、人生は楽しいですよね」
「ブルック殿の言う通りだ」
「おれも~♡みんな長く一緒にいられるのは嬉しいよ~♡」
「そうか。じゃあてめェ、ずっと一人でここに残ってろよ」
「あァ⁉」
▽
一行がだいぶ進むと、霧が出てきた。
「だいぶ濃くなってきたな…」
「全く
「ぷぷっ!やだ関羽さん面白~い!」
「うけて良かったのだ」
「そ、そうだな…」
「そういや、前にここに来た時も、霧が出たよな」
「そうだったな。そして私が逸れてしまったんだったな」
「もうあんな事には、ならないよう頼むぞ」
「当然だ。私も好きで逸れた訳ではない」
「けど、本当に霧が濃いわね」
「スリラーバークを思い出しますね~」
「あそこよりは安全だと思うけど」
「だが逸れねェよう、注意はしねェとな」
「こっちには要注意人物もいるしな」
「おいコック…何でおれを見て言う…⁉」
「言わなきゃわかんねェのかてめェは⁉」
▽
やがて霧が晴れ…
「無事、霧を抜けたみたいですね…」
「あれ?趙雲さんがいませんよ⁉」
「何⁉」
桃香の言葉に全員で周囲を見渡してみると、確かに星の姿が見当たらない。
「全く!早く探さねば……!」
「「「「!」」」」
そう言いかけて愛紗が何かに気づくと同時に、ゾロ、ナミ、鈴々、朱里もハッとした様子でルフィの近くに集まる。
「あの…これってもしかして…」
「ああ、十中八九そうだろうな…」
「何だ?」
「華蝶メンマになって出て来る前振りよ」
「きっとそうなのだ」
「ああ!」
「うむ。間違いないな」
「放っときましょ」
「賛成です」
「しかし…
そう言ってゾロが横目で見た先には…
「おいクソ野郎共!ナミさん達も!コソコソ話してる場合じゃねェだろ!
早く趙雲ちゃん探さねェと!ケガしてねェかな⁉心細くて泣いたりしてねェかな⁉」
完全にパニックになっているサンジの姿があった。
「確かに…どうする?」
「面倒くさいわね…」
「皆さん、何話しているんですか?」
「そうだぞ。早く探さねェと」
「?皆さん?」
「どうしたんだ?」
桃香とチョッパーも、サンジほどではないが心配そうにし、ブルックとフランキーもコソコソと話すルフィ達を変な目で見ている。
「でも確かに、皆にもどう説明すれば良いのか…?」
「私に任せて下さい」
そう言うと、朱里はサンジに近づいて行く。
「大丈夫ですよサンジさん」
「何言ってるの孔明ちゃん⁉」
「星さんはきっと何か考えがあって、別行動をしているだけですから」
「で、でもおれ達に何も言わないで…」
「サンジさん、劉備さん達もよく考えて下さい」
「?考える?」
「もし星さんが本当に迷子になったのだとしたら、もっと先に迷子になっている筈の人がいるでしょう?」
「ああ…」
「「「「確かに…」」」」
「「「「成程…」」」」
「こっち見んじゃねェよ!」
▽
『ゾロが迷子にならない様な場所で、星が迷子になる筈がない』という朱里の説明で全員納得し、一行は星を放置して進み、水鏡の庵に着いた。
「たのも~なのだ~!」
門を叩きながら鈴々が叫ぶ。
しばらくすると門が僅かに開き…
「あわわっ⁉」
そんな声がしたかと思うとすぐに閉じてしまった。
「“あわわ”?」
「今の…誰なのだ?」
「朱里は知らないか?」
「いえ、私も初めて見る人でした…」
▽
一方、門を開けた少女は、大急ぎで屋敷の奥にいる水鏡の下へ走って行った。
「え⁉武器を持った人達が大勢押しかけて来た⁉」
少女から話を聞いた水鏡は顔を険しくし、少女と共に門に向かう。
「“
少女を物陰に隠し、自身は門を少し開けて隙間から様子を覗う。
「…………」
そして…
「…!朱里!」
訪ねて来たのが、かつての教え子である事に気づいた水鏡は、門を大きく開けてルフィ達を招き入れた。
「水鏡先せ~い!」
「朱里!本当に朱里なのね!」
抱き合って再会を喜ぶ二人。
「でも、来るなら手紙で教えてくれれば良かったのに」
「すいません、旅の途中で急に寄ろうという事になったので」
「そうだったの。朱里、大きくなったわね…」
朱里の頭をなでる水鏡。
「……?」
雛里と呼ばれた少女は、物陰から2人の様子を不思議そうに見ていた。
「良かったな朱里」
「あらルフィさん、関羽さんに張飛ちゃんも…失礼しました」
「いえ、お気になさらず」
「久しぶりなのだー!」
「初めまして、“劉備”といいます」
「おれ達はルフィの仲間で、おれは“ロロノア・ゾロ”」
「私は“ナミ”」
「“サンジ”といいます。以後、お見知りおきを」
「“トニートニー・チョッパー”だ」
「おれは“フランキー”」
「お初にお目にかかります。“ブルック”と申します」
「初めまして、“水鏡”と申します。ようこそ我が庵へ。皆さんには、すっかり朱里がお世話になって…」
「いえ、それ程大した事は…。むしろ、我々の方が朱里を頼りにしているぐらいで…」
「そーそー。さっきも朱里のおかげで助かったしな」
「所で先生、あの子は?」
「ああ…紹介がまだだったわね」
朱里が先程から物陰に隠れていた少女の事を訊ねる。
青い魔女っ子帽子を被り、水色の髪をツインテールにしている。
年齢は朱里と同じくらいだ。
「あの子は“
あなたと同じ様に、身寄りを亡くしてね…。
あなたの“妹弟子”という事になるのかしらね」
「“妹弟子”…私の妹…」
朱里は嬉しくなり、“鳳統”こと“雛里”のもとへ駆け寄る。
「!あわわ…⁉」
「よろしくね!鳳統ちゃん!」
「………っ」
朱里は挨拶するが、雛里は帽子を深く被り直し、顔を隠してしまう。
「あの子…人見知りが激しくて…」
「愛紗、“ヒトミシリ”って何なのだ?」
「“遠慮”と一緒にお前が母親の腹の中に忘れてきた物だ」
「?」
愛紗の説明に、鈴々は頭に疑問符を浮かべる。
「さァ皆さん、大したおもてなしはできませんが、ゆっくりしていって下さいね」
「ああ、ありがとう」
「かたじけない」
「なのだ」
▽
その後、夕食の用意をするために、サンジと朱里は水鏡、雛里と一緒に厨房にやって来た。
朱里は早速調理道具を手に取る。
「張り切っているわね朱里」
「ここでお料理するのが懐かしくて」
「そういえば、あなたがここにいた時はよく二人で料理を作ったわね」
「先生には沢山料理を教えて貰いましたね」
「そっか。朱里ちゃんは本当に、水鏡先生に色々教えて貰ったんだな」
「はい!」
「私は正直、朱里がここまで料理上手になるとは思わなかったのだけどね」
「え、そうなんですか⁉」
「だって最初は、釜戸に火を点けるのも怖がって…」
「やだ先生!それは本当にちっちゃい頃の話じゃないですか~!」
「あら、そうだったかしら?」
「いいねェ、仲の良い家族の思い出話は。心があったまるぜ」
朱里と水鏡の会話を、サンジが微笑ましそうに見ているのに対し…
「…………」
雛里はどこか淋しそうに見ていた。
「それじゃあ、みんなで夕食を作りましょう」
「はい!」
「ああ」
「…は、はい…」
▽
「サンジさん、本当に料理上手なんですね」
サンジの手際の良さを見て、水鏡は感嘆の声を漏らす。
「まァな。おれは孔明ちゃんぐらいの頃には、もう見習い料理人として働いていたからな」
「そんなに小さい頃から?」
「ああ、本当にガキの頃から料理は好きでね。
最初は教えてくれる奴が周りにいなかったから独学でやって、それはもうメチャクチャだったな」
水鏡、サンジ、朱里がそんな会話をしながら調理を進めていく中、雛里は包丁で不器用ながらも野菜の皮を剝いている。
「あわわ…」
「あ、鳳統ちゃん。包丁そんな持ち方らしたら、怪我しちゃうよ」
朱里は半ば強引に雛里から包丁を受け取り、皮を剝き始める。
「あ…」
「これは私がやるね」
「…………」
手持ち無沙汰になった雛里は何かする事はないかと辺りを見渡し、流しにあった野菜を洗おうと手に取る。
「朱里、ちょっと味見して貰える?」
「あ、はい」
「…………」
水鏡から小皿を受け取り、味を確かめる朱里。
「もうちょっと、お塩を加えた方が良いかもしれませんね」
「そう、じゃあお塩とってもらえる?」
「はい」
「うう~…」
▽
「うめ~!」
「美味しい~!」
その後、食堂で4人が作った料理を全員堪能していた。
「孔明が作った料理、初めて食べたけど美味いな!」
「小せェのに大したもんだぜ」
「ホントほっぺたが落ちそうですよ!私ほっぺたありませんけどー!」
「調理中の手際も良かったし、ほんと大したもんだな」
チョッパー、フランキー、ブルック、サンジも絶賛する。
「ありがとうございます」
「私達も朱里ちゃんの料理は久しぶりね!」
「また腕を上げたのだ!」
「そう言うお前はどうなんだ鈴々?おむすびとおにぎり以外に、何か作れる様になったのか?」
「卵かけご飯とお茶漬けも作れる様になったのだ!料理の腕前急上昇中なのだ!」
「そうかそうか」
「あらまァ」
「しししし!」
(愛紗さん…)
(おめェは…)
(人の事言えないでしょうに…)
愛紗の料理の腕を知る3人は、冷めた目で愛紗を見るのだった。
「…………」
「?」
そんな中、朱里は雛里が自分を見ている事に気がつく。
「!………」
しかし、気づいた瞬間に目を逸らされてしまった。
「けど、こうして見ていると孔明ちゃんと水鏡先生って、何だか本当に親子みたいですね」
「「え?」」
桃香の言葉に、思わず二人はキョトンとする。
「「そうですか?」」
「うん!」
「ま、生みの親より育ての親ってもんだ」
いつになく真剣な表情で、そう呟くサンジ。
「「……ふふっ」」
顔を見合わせて笑う2人。
「…………」
その様子を、雛里は僅かに頬を膨らませて見ていた。