ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第96話 “落鳳坡”

夕食後、一行は食堂で水鏡が出してくれたみかんを食べながらくつろいでいた。

 

「関羽さん、あ~ん」

 

「りゅ、劉備殿ですから…」

 

「も~…まだ劉備殿だなんて…」

 

「愛紗お姉ちゃんは鈴々にあ~んなのだ」

 

「あ〜ミカンうめ〜」

 

「ルフィてめェ!いくら何でも食い過ぎだぞ!」

 

「そうだぞ!おれ達にももう少しよこせ!」

 

「てめェら全員少しは遠慮しやがれ!」

 

「ギャ~!みかんの汁が目に~!……あ、私目なかった」

 

「ぐーっ…」

 

「ナミさ~ん。次、お風呂いいですよ」

 

「ありがとう朱里ちゃん」

 

「皆さん、寝床の用意が出来ましたよ」

 

水鏡と雛里が戻って来た。

 

「申し訳ないのですが、部屋が足りなくて…男性の皆さんは雑魚寝になってしまいますが…」

 

「いいよ。気にすんな」

 

「コイツはすでに眠ってるし、ここに放っといていいんじゃねェか?」

 

サンジの言葉に、一同の視線が部屋の隅で壁に寄り掛かって寝ている剣士に向く。

 

「さすがにそれは…」

 

「ぐこー…」

 

「それから朱里、あなたのお部屋、今はこの子が使っているの。だから今夜は、そこで二人で寝て貰えるかしら?」

 

「!」

 

「はい!」

 

朱里は承諾するが…

 

「…………」

 

「?」

 

雛里が無言で水鏡の服の袖を引っ張る。

 

「どうしたの雛里?」

 

「知らない人と一緒に寝るの…こわい…」

 

「え?」

 

「!」

 

「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」

 

「そう……仕方ないわね。それじゃあ今夜は、私の部屋一緒に寝ましょう」

 

「!うん…!」

 

「…………」

 

朱里は、僅かに顔を曇らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中。

 

(……久し振りだなァ…この部屋…)

 

朱里はかつて自分が使っていた部屋で、久々に夜を過ごしていた。

 

(部屋の中の物…私がいた頃から、ちょっとだけ変わっている…。でも、この寝台と布団と枕は同じ……?)

 

…と、枕に顔をうずめた所で朱里は違和感を覚える。

 

(私の髪と違う香り……そうか、この部屋、今は鳳統ちゃんが使っているだっけ…)

 

―――――知らない人と一緒に寝るの…こわい…

 

(明日…少しでもいいから…仲良くなりたいな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼間。

 

「ポカポカしていて、絶好のお昼寝日和なのだ~」

 

昼食を済ませた後、鈴々は屋根に登って横になっていた。

 

「張飛ちゃ~ん!そんな所で寝たら危ないですよ~!」

 

「せめてゾロさんみたいに、安全な所でして下さ~い!」

 

下から桃香とブルックが注意するが…

 

「そんな事を言われても、何とかと煙は高い所が好きだから仕方がないのだ~」

 

「何とかって…」

 

「自分で言ってしまっては…」

 

「お~い鈴々~!劉備殿~!ブルック殿も!」

 

「関羽さん!それにナミさんも!」

 

「ルフィ見なかった?」

 

「見てないのだ~!」

 

「山にでも行ったのでしょうか?」

 

「はァ…ちょっと目を放すとすぐコレだ…」

 

「ゾロと違って、ダメな自覚がある方だけど…」

 

「また逸れたりしないか、心配ですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃。

 

「みんな、お昼も沢山食べてくれましたね!」

 

「そうね」

 

「ウチには人並外れて食べる奴らが大勢いるからな。作り甲斐があるってもんだ」

 

朱里達4人は、厨房で昼食の後片付けをしていた。

 

「あの…先生…」

 

「?どうしたの雛里?」

 

「今日…お昼の後…」

 

「ああ…そういえば今日はお昼の後、一緒に薬草取りに行く約束していたわね」

 

「はい」

 

「でも、今日はお客様がいるから、それはまた別の日にしましょうね」

 

「え⁉……でも、約束…」

 

「た、確かに約束したけれど…」

 

「ああ、おれ達の事は気にしなくていいから、行ってきてあげなよ」

 

気を遣ってそう言うサンジ。

 

「ですが…」

 

「先にした約束なんだから、ちゃんと守ってあげなって。ましてや家族との約束なんだから」

 

「…………」

 

「あの…水鏡先生、でしたら私が代わりに、鳳統ちゃんと薬草摘みに行ってきましょうか?」

 

「え?」

 

「!」

 

水鏡が困っている様子を見て、朱里が提案する。

 

「確かに…そうして貰えると助かるけど…」

 

「いつも先生と薬草採りに言っていた山、私も久し振りに行きたいですし…」

 

「そう?それじゃあ、お願いしても良いかしら?」

 

「はい!よろしくね、鳳統ちゃん」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、朱里と雛里は2人で山に来た。

 

「わ~!昔と全然変わってない!」

 

「…………」

 

「あ!見て鳳統ちゃん!これが肩こりに効くアンメル草、こっちのは胸やけに効くパンシロ草、これが解毒剤になる邪含(じゃがん)草で…あ!これは便秘に効く後楽草でね…」

 

朱里は薬草の説明をしながら雛里の方を見るが…

 

「あ…」

 

「…………」

 

雛里は一人で薬草摘みを始めてしまう。

 

「…………」

 

仕方がなく、朱里は雛里と別々に薬草摘みを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

やがて日が暮れてきた。

 

「鳳統ちゃ~ん!」

 

「…………」

 

薬草が一杯になった籠を抱え、朱里は再び雛里に声を掛ける。

 

「薬草、沢山見つかった?」

 

「…………」

 

朱里が近くに置かれた雛里の籠を覗いてみると、薬草は籠の半分も入っていなかった。

 

「……仕方ないよね。鳳統ちゃんは、まだこの山にあまり来たことないから…」

 

「…………」

 

「あ!良かったら、私が採ってきた薬草分けてあげ…」

 

そう言って朱里は近づくが…

 

「…………」

 

「あっ!」

 

「っ!」

 

間の悪いことに、その瞬間雛里が立ち上がって朱里の籠にぶつかり、籠を落としてしまった。

 

「ご、ごめん鳳統ちゃん!私、ただ鳳統ちゃんと仲良くなりたくて…」

 

「……私は…仲良くなんて…なりたくない…!」

 

「え?」

 

「嫌い……嫌い…!嫌い!」

 

そう言いながら走り去る雛里。

 

「!待って鳳統ちゃん!」

 

朱里は二人分の籠を手にし、大急ぎで追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳳統ちゃーん!どこー⁉」

 

雛里を見失ってしまった朱里は、大声で呼び掛けるが返事はない。

 

「私に悪い所があるなら言って!謝るからー!」

 

「…………」

 

大声をあげて捜し回る朱里の姿を、雛里は崖沿いの茂みに隠れて見ていた。

 

「……うっ…」

 

その顔は、今にも泣きだしそうになっている。

 

「……ううっ…」

 

目をつむり、しゃがみ込んで震える雛里。

 

「あれ~?お前~…」

 

「⁉」

 

突然前方から声を掛けられ、目を開けるとルフィが近くの木の枝に、逆さまにぶら下がっていた。

 

「あ、あわわ…!」

 

「何やってんだお前、こんなトコで?」

 

「…あうっ…!」

 

バキッ

 

「ん?」

 

不意に嫌な音と共に、ルフィがぶら下がっていた枝が折れ…

 

「あ~~~⁉」

 

ルフィの体は崖の下にある川、それもかなり深めの川に落下していった。

 

「がべっ…!ぐばぶ……!た、たすけべ…!」

 

「あわわ~⁉」

 

雛里は大慌てでルフィを追いかけ、川に沿って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ…だすがった……ありがど…」

 

「あう~…」

 

幸い、それほど離れていない場所で浅瀬になっていた為、ルフィは雛里の手を借り、何とか岸まで上がって来た。

 

「あ~危なかった……お前、こんな所で何してたんだ?」

 

再度訊ねると…

 

「……う…」

 

「?」

 

「うわァ~~~ん!」

 

「⁉」

 

雛里は突然泣き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

「ええっ⁉鳳統ちゃんまだ帰って来ていないんですか⁉」

 

日が沈んでしまったため、雛里はもう帰っているかもしれないと考えた朱里は、一旦庵に戻って来ていた。

 

「まさかそんな事になっていたなんて…!」

 

「ごめんなさい先生!私が鳳統ちゃんを見失っちゃったせいで…」

 

「いえ、朱里一人に雛里を押し付けてしまった私の責任でもあるわ。そんなに気にしないで…」

 

「反省するのはいいが、今はそれ所じゃねェだろ!」

 

そう言うなりゾロは立ち上がる。

 

「おれが捜してくるからお前らはここで…」

 

「ダメよ!」

 

「やめろバカマリモ!」

 

「それは絶対ダメだ!」

 

「やめろドアホ!」

 

「ダメですよ!」

 

「それはいけません!」

 

「ゾロ殿だけは駄目です!」

 

「駄目なのだ!」

 

「はわわ!駄目です!木乃伊(ミイラ)取りが木乃伊(ミイラ)になってしまいます!確実に!」

 

「てめェら揃いも揃って!」

 

「ウルセェー!ここ大陸なんだぞ!これ以上逸れてみろ!

てめェおいて“偉大なる航路(グランドライン)”に帰るぞこのバカ迷子野郎!」

 

「とにかく!おめェが一人で誰かを探しに行くなんてのは絶対にダメだ!」

 

「そうよ!遭難者を余計に一人捜なきゃいけない、コッチの身にもなりなさいよ!」

 

「ゾロさんはいい加減、自分の駄目さを自覚して下さい!」

 

「朱里てめェ!今“ダメ”っつったか⁉」

 

「ちょっと皆さん!喧嘩している場合じゃ…」

 

収拾がつかなくなってきたその時…

 

「ただいまー」

 

「…………」

 

「「「「「「「「「「⁉」」」」」」」」」」

 

屋敷の戸が開き、ずぶ濡れのルフィと雛里が入って来た。

 

 

 

 

 

 

「―――ったく、何やってんだてめェは!」

 

「全くですぞ!鳳統殿が近くにいたから、良かった様なものを!」

 

「あい…ずびばぜんべした…」

 

事情を話したルフィは、桃香、水鏡以外の全員から一発ずつ殴られ、顔が倍近くに腫れ上がった状態で、正座させられていた。

 

「でも、二人とも無事で良かったわ」

 

「あの…ルフィさん…」

 

寝間着に着替えた雛里が、別室から手拭いと大人サイズの寝間着を持ってきた。

 

「手拭いと替えの服持ってきましたから、身体拭いて着替えて下さい…」

 

「いいよ別に、このままで」

 

「駄目ですよ、風邪ひいちゃいます」

 

そう言うと雛里はつま先立ちして、手拭いでルフィの頭を拭き始める。

 

「あら?雛里」

 

「?」

 

「あなた、ルフィさんと仲良くなったの?」

 

「ふえっ⁉あ…えっと…」

 

「ああ!おれ達は友達だもんな!」

 

そう言ってルフィは雛里の頭に手を置く。

 

「……はい!」

 

雛里は嬉しそうに返事をする。

 

「…………」

 

2人の様子を、朱里は羨ましそうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

その後、水鏡が用意してくれた風呂に、朱里は一人で入っていた。

 

(いいなァルフィさん…鳳統ちゃんと仲良くなれて…)

 

―――――…私は…仲良くなんて…なりたくない…!

 

―――――嫌い…嫌い…!嫌い!

 

山での出来事を思い出しながら朱里は浴室を出る。

 

「あわわっ⁉」

 

「ふえっ⁉」

 

すると、雛里に出くわした。

 

「ほ、鳳統ちゃん…?」

 

「あ、あの…えっと……!」

 

「?」

 

「さ、さっきはごめんなさい!」

 

「⁉」

 

雛里はそう言って深々と頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は今雛里が使っている部屋に移動した。

 

「私、水鏡先生の所に来るまで、親戚の間を何件も何件もたらい回しにされていたの…」

 

寝台に隣り合わせに腰掛け、雛里は話し始めた。

 

「自分の事も満足にできないから、どこに行っても邪魔者扱いされて…。

でも、水鏡先生は私にとても優しくしてくれて…本当のお母さんみたいに思っていたの…。

孔明ちゃんの事は、水鏡先生からよく聞いていたの…。

とっても優しい子で、お勉強も凄くできるって…。

だから…本当は凄く仲良くなりたかった…書物の事や薬草の事…いっぱいお話ししたかった…」

 

話ながら、雛里は目に涙を浮かべる。

 

「でも…先生と孔明ちゃんが仲良くしているのを見たら、先生を取られちゃった様な気がして…すっごく胸が苦しくなって…。

だから、あんな酷い事言っちゃったの…本当にごめんなさい…」

 

そう言って再び頭を下げる雛里に対して…

 

「大丈夫だよ鳳統ちゃん。私、全然怒っていないから」

 

「え?」

 

「鳳統ちゃんがそんなに先生の事が好きなんだってわかって、むしろ嬉しいよ」

 

「…………」

 

「私、水鏡先生の事が大好き。鳳統ちゃんも先生の事が大好き。私達、仲間だね」

 

朱里は優しく笑いかける。

 

「孔明ちゃん…」

 

雛里も笑みを浮かべ、涙をぬぐう。

 

「鳳統ちゃん、私達…友達になれるよね?」

 

「……“雛里”って…」

 

「え⁉」

 

「お友達だから…真名で“雛里”って呼んで良いよ…!」

 

「…うん!ありがとう“雛里”ちゃん!私の事も“朱里”って呼んで良いよ!」

 

「ありがとう!“朱里”ちゃん!」

 

2人は手を取り合って喜ぶ。

 

「本当に…ルフィさんが言った通りだった…」

 

「?ルフィさんが?」

 

「うん。私、ルフィさんが溺れているのを助けた後、同じ事を話したの。

そしたら…

 

 

 

 

 

『なーんだ、大丈夫だよそれくらい』

 

『え?』

 

『朱里はすげェ奴だから、それくらいで怒ったりしねェよ』

 

―――――なんで笑ってんだよ‼あんなのかっこ悪いじゃないか‼

 

―――――ただ酒をかけられただけだ。怒る程の事じゃないだろ

 

『大丈夫だって。もう一回話してこいよ』

 

『…………』

 

 

 

 

 

…って」

 

「そうだったんだ」

 

その夜、2人は雛里の部屋で、同じ寝台で一緒に寝たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、水鏡と雛里に見送られ、一行は出発しようとしていた。

 

「それでは皆さん、道中お気をつけて」

 

「それじゃあまたね()()ちゃん」

 

「うん、()()ちゃんも元気でね」

 

(朱里…雛里…)

 

真名で呼び合う2人を見て、水鏡は嬉しくなる。

 

「ししし!良かったな鳳統」

 

「ルフィさん…」

 

「な、言っただろ」

 

「……あの…」

 

「ん?」

 

「ルフィさんも…私の事…“雛里”って…」

 

「いいのか?おれは真名ないけど…」

 

「お友達…だから…」

 

「わかった。じゃあ呼ぶ」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

「朱里ちゃ~ん!ルフィさ~ん!きっとまた来てね~!」

 

大腕を振って見送る雛里。

 

「うん!絶対にまた来るからね~!」

 

「またな~!“雛里”~!」

 

朱里とルフィも手を振り返し、一行は庵を後にした。

 

 




次回は翠と蒲公英の話なのですが、ちょっと執筆が滞っているので、また10日ほど更新停止します。
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