ONE PIECE エピソードオブ恋姫†無双 無双の姫たちと九人の海賊   作:HAY

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第十一席編です。




第97話 “脳筋”

ルフィ達が水鏡の庵を出て、数日後の桃花村。

 

義勇軍の拠点である屋敷は、桃香が来る少し前に本来の持ち主である張世平が出て行き、村に家を持たない兵達も供として同行した為、ほとんど人が居ない。

 

「う~ん…!」

 

現在の屋敷の住人の内、一番早起きなのは紫苑である。

 

主婦としての習慣が身についており、誰よりも早く起きて顔を洗い、朝食の準備を始める。

 

「ふあァ~…」

 

その次に起きるのは璃々。

 

「お母さ~ん…おはよ~…」

 

「おはよう、璃々」

 

起きると真っ先に紫苑がいる台所に向かい、朝食の準備が一段落した紫苑に手伝って貰って顔を洗う。

 

「あ~…良く寝た~…」

 

3番目に起きるのはウソップ。

 

「あ!ウソップお兄ちゃん、おはよう!」

 

「おう、おはよう」

 

すっかり目を覚まして遊んでいる璃々と挨拶をし、洗面所に向かう。

 

そして、一番遅くまで寝ているのは翠である。

 

「ふわああァァァ~~~…」

 

大きなあくびをしながら、寝巻のまま自室を出る。

 

「お、ウソップ、紫苑、おはよー」

 

そして洗面所に向かう途中、2人に会い挨拶するが…

 

「おー翠、おは……ぶっ!」

 

「あら、翠ちゃんおはよ……ぷくくっ!」

 

「?」

 

何故か2人共、翠の顔を見るなり笑い出す。

 

「どうしたんだよ二人共?」

 

「い、いや…何でもねェぞ……ぶくくっ!」

 

「す、翠ちゃん…朝ご飯の用意できてるから…早く、顔洗ってらっしゃい……くくくっ!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この屋敷では、洗面所と厠は家屋の外に、隣接する形で作られている。

厠は個室式のが3つあり、翠は先にそこで用を足した。

 

「ふー…すっきりした」

 

そして顔を洗おうと洗面台に向かい…

 

「ん⁉」

 

そこで鏡を見て気がついた。

 

「“脳”…“筋”…⁉」

 

左右の頬に一文字ずつ、大きくそう書かれていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、屋敷の食堂で皆は食事をとっていた。

 

「ふー…ごちそうさま」

 

「ごちそうさまでしたー」

 

「璃々、お口の周り綺麗にしましょうね」

 

食卓の一角で、ウソップ、璃々、紫苑は仲良く食事をし…

 

「…………」

 

翠は少し離れた席から、ご立腹な様子である一つの席に視線を送る。

 

「…………」

 

視線の先には、彼女の従姉妹である蒲公英がいる。

 

彼女は、ルフィ達が留守の間に桃花村を訪ねて来て、それからこの屋敷で一緒に暮らしているのである。

 

因みに、翠が真名を預けているなら良いと、蒲公英はウソップ達にも真名を預けた。

 

「ごちそうさま~♪」

 

食事を終えた蒲公英は、そそくさと食堂を出ようとするが…

 

「ちょっと待てたんぽぽ」

 

(ぎくっ!)

 

翠が呼び止める。

 

「お前…“脳筋”ってどういう意味だ⁉」

 

「“脳筋”っていうのは~『脳みそが筋肉』の略で~…」

 

「そういう事を訊いてるんじゃない!何であんな悪戯したりするんだ⁉」

 

ドンと食卓を叩いて怒る翠に、蒲公英は若干怖気ずく。

 

「な、何でって~…

 

 

 

 

 

それは今朝、ウソップが起きた後、翠が起きる前の事。

 

蒲公英と璃々は翠の部屋の前に来ていた。

 

『皆様お待たせしました!西涼の馬騰が一族馬岱による、恒例の寝起き拝見のお時間です!』

 

…と、レンゲをマイクの様に手にし、蒲公英が言う。

 

『わ~~~!』

 

ぱちぱちと拍手する璃々。

 

『璃々ちゃん、静かにね』

 

『!』

 

蒲公英に言われ、璃々は慌てて拍手を止めて、口を両手で押える。

 

『さァ、それでは早速参りましょう』

 

『ねェ蒲公英お姉ちゃん、そのれんげなに?』

 

『ウソップさんがこうすると雰囲気が出るって言ってたんだよ』

 

そして2人は静かに翠の部屋の戸を開け、中に入る。

 

『抜き足…差し足…忍び足…』

 

そーっと翠が横になっている寝台に近づく。

 

『頭は見事に枕から落っこちて、お布団もぐちゃぐちゃですね~。相変わらず寝相が悪い様で…』

 

寝ている翠を観察して蒲公英が呟く。

 

『むにゃむにゃ…も~食べられね~よ~…』

 

『うわァ…なんてベタな寝言…ベタ過ぎてツッコむ気にもなれません…』

 

若干引き気味になる。

 

『寝相といい寝言といい、涼州にいた頃と全く変わっていないですね~…。しかし…』

 

…と、蒲公英は翠の体の一部を凝視する。

どこかはご想像にお任せします。

 

『こちらはだいぶ変わっていますね…。璃々ちゃんのお母さん程ではないですが、中々成長しているようで…。

寝る子は育つと言うますが、少々育ち過ぎではないでしょうか…?

こういったキョウイの格差社会が多くの人を苦しめている事を、もっと理解して頂きたいものですなー…』

 

そこまで言うと、自分の身体と見比べる。

 

『まー確かにたんぽぽも、鶸に比べれば育っている方だけど…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同刻、涼州。

 

『…………』

 

『どうしたの鶸ちゃん?』

 

『何だかよくわからないけど、今一瞬もの凄く腹が立った…!』

 

『?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び桃花村。

 

『さて、それでは本題である、お漏らしの確認に参りましょう!』

 

蒲公英がそう言い、2人は翠の股付近の布団をめくり、顔を近づける…

 

『緊張の一瞬です…!』

 

『わくわく…!』

 

そしてクンクンと匂いを嗅ぎ…

 

『……どうやら今朝は漏らしてはいないようですね。安心した様な、残念な様な…。

昨夜、水菓子を沢山食べていたので、もしやと思っていたのですがねー。

それでは、お姉様が起きる前に我々は退散……おおっとォ⁉』

 

見ればいつの間にか、璃々が一本の筆を手にしていた。

先にはちゃんと墨汁が付いている。

 

『何て物を用意してくれたんですか璃々ちゃん⁉』

 

『えへっ♪』

 

璃々はイタズラっぽく笑う。

 

『困りましたね~…こんな物があっては、例えその気がなくとも、何か書きたくなってしまうではないですか~♪』

 

蒲公英はやる気満々の様子で筆を受け取る。

 

『う~ん…なーんて書こうかな~?』

 

しばし考えた後…

 

『やっぱコレにしよっと♪』

 

翠の左右の頬に“脳筋”と書いた。

 

『なんてかいたの~?』

 

『後で教えてあげる~♪』

 

そして2人は部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

…と、いう訳で…」

 

「何が『と、いう訳で』だ!―――ってかお前、今朝そんな事してたのか⁉」

 

「まァ確かに、寝ている奴がいて、近くに書く物があるのなら、顔にラクガキするしかねェな。おれもよくやったし…」

 

腕を組み、うんうんと頷くウソップ。

 

「何お前も納得してんだ!

あのなァたんぽぽ!お前が西涼から出て修行したいって言うから、ここに置いてやってんだぞ!

なのに毎日毎日くだらない悪戯ばっかりして!今度やったら西涼に強制送還だからな!」

 

「えェ~~~っ⁉」

 

「まァまァ翠ちゃん、蒲公英ちゃんは璃々の良い遊び相手になってくれているし、少しくらいは大目に見てあげても良いんじゃないかしら?」

 

「今朝のアレもか?」

 

「まー本当の事だし…」

 

「ウソップてめー!」

 

「だよねー」

 

「ふんっ!」

 

「いだっ⁉何でたんぽぽだけ殴るの⁉」

 

「ぷぷっ…!た、確かにアレはやり過ぎだったかもしれないけれど…悪意がある訳じゃないんだし…」

 

「そーそー。可愛げのある悪戯なんだから、広い心で許してよ」

 

「自分で言うな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、翠と蒲公英は修行で近くの山に来ていた。

 

「よし!それじゃあまず、準備運動から始めるぞ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「まずは重りを結び付けて、斜面を兎跳びで登るんだ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「次は木の枝にぶら下がって腹筋!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

「重りを背中に乗せて腕立て伏せだ!」

 

「はい~!」

 

 

 

 

 

 

「素振り!」

 

「はい~!」

 

 

 

 

 

 

「異国から伝わった、腰を落として足を交互に突き出す舞踊!」

 

「はい~…!」

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ準備運動はここまでだ」

 

「は…はあ~い…!」

 

すでに蒲公英は少々へばっている。

 

「今日は特別な特訓をするからな、付いて来い」

 

「?“特別な特訓”?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、蒲公英が翠に連れてこられた場所は…

 

「……ねェ翠姉様…」

 

「何だ蒲公英?」

 

「ここどこォーーーっ⁉」

 

2人が移動したのは大渦が巻いている湖だった。

 

「見ての通り、湖だ」

 

「どうやったらあの村の近くに、こんな場所を見つけられるの⁉」

 

「……そんなの、あたしが訊きたいぐらいよ…」

 

遠い目をする翠。

 

「…ひょっとしてここ、ゾロさんが一人で歩いてる時に見つけたの?」

 

「まァそんな所だ…」

 

「やっぱり…」

 

「それはさておき、早速特訓だ!」

 

そう言うと翠は縄を取り出し、片方の端を蒲公英の腰に、もう片方の端を近くの木に結び付ける。

 

「いいか?激しい渦の中で耐える事で、どんな動きにも対応できる身体能力を養うんだ!

危なくなったら縄で引き上げてやるから、安心して行ってこい!」

 

「ええ~~~っ⁉過酷過ぎるって!」

 

「つべこべ言わずに行けェーーーっ!」

 

「きゃーーーっ⁉」

 

そして蒲公英は翠に突き落とされ、渦の中へと落下していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶壁での特訓を終えた後、2人は再び移動した。

 

そこは…

 

「……ねェお姉様、もう一回訊いても良い?」

 

「何だ?」

 

「ここどこォーーーっ⁉」

 

「見ての通り火山の噴火口だ」

 

「何であの村から歩いて行ける場所に火山があるの⁉」

 

「ゾロに訊いてくれ…」

 

「訊いてもわかんないと思うけど…」

 

「まァとにかく、修行を始めるぞ」

 

そう言うと翠はその場で逆立ちする。

 

「いいかたんぽぽ、今からここを逆立ちで十周する。そうする事で、腕力だけでなく痛みや熱にも動じない、耐久力を身に付けるんだ!」

 

「わかったけど…」

 

「どうしたたんぽぽ?」

 

「良いの?お姉様?」

 

「何がだよ?」

 

「たんぽぽは平気だけど…お姉様丸見えだよ?」

 

「っ⁉」

 

そう、蒲公英はズボンを穿いていたが、翠はスカートだった為、下着が丸見えだった。

 

「い、いいから早くやれェ‼」

 

「は、はいっ!」

 

翠は顔を真っ赤にし、早く終わらせようと躍起になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火山での特訓を終えた2人は桃花村の近くに戻って来た。

 

そこで蒲公英はバッターボックスにいる打者の様に、木の棒を手に、キャッチャー代わりに置かれた丸太の前に立っている。

 

「それじゃあ、行きますよ!」

 

遠く離れた場所から、紫苑が丸太に向かって矢を撃つ。

 

「でェい!」

 

蒲公英は飛んで来た矢を撃ち返す様に棒を振るう。

 

しかし、蒲公英は空振りし、矢は丸太の真ん中に突き刺さる。

 

「目を閉じるなたんぽぽ!どんなに早くても、目を開いて見ていれば、動きは必ず見える!」

 

「はい…!」

 

隣で見ていた翠からの助言を受け、蒲公英は再び棒を構える。

 

「行きますよ!」

 

紫苑は再び矢を撃つ。

 

「ふん!」

 

蒲公英が振るった棒は矢をかすり、棒に僅かに傷がつき、僅かに弾かれた矢は中心よりもやや上に突き刺さる。

 

「それじゃあ駄目だ!芯で捉えろ!」

 

「はい…!」

 

三度棒を構える。

 

「行きますよ!」

 

紫苑が矢を撃つ。

 

「おりゃァーーーっ!」

 

蒲公英が振るった棒は的確に矢を捉え、矢は棒の真ん中に突き刺さった。

 

「や…やった…」

 

「よし!じゃあ次の段階だ!」

 

「次?」

 

蒲公英が首をかしげていると、紫苑と入れ替わりにウソップが現れる。

 

「ほら、たんぽぽ」

 

蒲公英は翠から新しい棒を受け取り、構える。

 

「行くぞ!」

 

今度はウソップが2発の鉛球を放つ。

 

「⁉」

 

鉛球は軌道を変えながら飛び、丸太に当たる。

 

「あの…翠姉様…今二発同時に、曲がりながら飛んで来たけど…」

 

「当たり前だ!戦場では何本の矢がどこから飛んでくるか、わからないんだからな!

どんな状況でも対応できるように、より多くの物の動きを的確に捉えるんだ!」

 

「よォし!もう一発行くぞォ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の修行が終わり、昼食をとった後、蒲公英は自分に充てられた部屋で休憩していた。

 

「は~~~…どうしてこんな事になっちゃったんだろう…?」

 

寝台の上で寝っ転がりながら、蒲公英は呟く。

 

実を言うと、蒲公英が修行の為に来たというのはただの口実であり、本当の目的は別にあったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数ヶ月前、涼州での事。

 

『蒼~?蒲公英~?どこ~?』

 

隴西郡にある宮殿の中を、鶸が彷徨っていた。

 

『…で、そのままお姉ちゃんは押し倒されて…』

 

『すっごく良いねそれ!じゃあ逆に、お姉様が攻めの場合は⁉』

 

『!二人共ここにいるの?』

 

近くの部屋から声がしたので、鶸は戸を開けて中に入る。

 

『あ、鶸ちゃん』

 

『どうしたの鶸?』

 

『うん、ちょっと二人に相談が……?』

 

部屋の中に入った鶸は、蒼の手にどこなくゾロと翠に似た人形が握られている事に気づく。

 

『何してたの二人共?』

 

『お姉ちゃんとゾロさんが、どんな夜の営みをしてるか妄想していたの♪』

 

『⁉』

 

『蒼の妄想力って本当に凄いよね~。言動が本人そっくりに再現されていてさ~』

 

『えへへ~!それ程でも~!』

 

『ふ、二人ともなに破廉恥な事やってるのよ⁉』

 

鶸は顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

『だってお姉ちゃんが男の人と一緒にいるんだよ⁉どうなっているか気になるでしょ⁉』

 

『そうだよ!あの翠姉様が男の人とだよ!鶸は気にならないの⁉』

 

『…………』

 

鶸は顔を赤くして俯き…

 

『……なります』

 

『『でしょ~!』』

 

返事を聞き、二人は心底嬉しそうだった。

 

『でもお姉ちゃん、あんまり上手く行ってない様な気がするな~…』

 

『そうだよね~…。あ、そうだ!ねェ、たんぽぽも武者修行に行ってもいい?』

 

『え?』

 

『ちょっと蒲公英、何を考えているの?』

 

『やっぱり姉様の事だから、あまり進展していないんじゃないかって思うんだよね~。

だから~たんぽぽが行って、お姉様達と合流して、二人をいい感じにしてあげようかな~って!』

 

『いいねそれ!面白そうだし賛成~!』

 

『でしょ~!』

 

蒲公英と蒼は盛り上がるが…

 

『蒲公英…』

 

『『⁉』』

 

鶸の低い声が響く。

鶸は俯いており、表情は確認できない。

 

『る…鶸ちゃん…?』

 

『や…やっぱり駄目…?』

 

『…………』

 

鶸は無言で俯いたまま、蒲公英の両肩に両手を置き…

 

『……良い知らせを期待しているわ』

 

『任せて!』

 

やはり姉の恋愛事情は気になる様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして蒲公英は一人涼州を出発し、翠とゾロの目撃情報を聞きながら、二人の後を追って来たのだが…

 

(…いざ来てみれば、こんなお邪魔虫だらけの状態で、おまけにゾロさんは翠姉様を置いてどっかに行っちゃってるし…。

あ~も~!これじゃあたんぽぽが来た意味ないじゃ~ん!)

 

間の悪い事に、蒲公英が桃花村に着いた時、ゾロは丁度ルフィ達と涼州の月の下を去った頃だったのだ。

 

「たんぽぽ!午後の修行に行くぞ!」

 

蒲公英が唸っていると、部屋の戸を開けて翠が入って来た。

 

「え~…たんぽぽ今日はもう疲れたよ~…」

 

わざわざ涼州からやって来た苦労が空振りなった事を考え、憂鬱になっていたせいか、蒲公英は駄々をこねる。

 

「何言ってんだたんぽぽ!お前修行の為に来たんだから、これぐらいで音を上げてちゃ駄目だろ。

武術っつうのは日々の鍛錬が一番大切で、どんなに辛くてもそれを我慢して耐え続けて、初めて身に付くものなんだぞ!」

 

「……『我慢』とか『耐える』とか、お漏らしっ子の姉様に言われたって全然説得力ないんですけど~」

 

嫌味っぽく言い返す。

 

「なっ⁉だ、誰がお漏らしっ子だ!」

 

「だって翠姉様、たんぽぽ達の中で一番お漏らしが治るの遅かったじゃん」

 

「で、でも今はもうしてないんだから関係ないだろ!」

 

一番遅かった事は否定しないらしい。

 

「へ~じゃあ今はちゃんと我慢できるんだ?」

 

蒲公英の目が怪しく光る。

 

「当たり前だ!」

 

「じゃあ証拠見せてよ」

 

「証拠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は屋敷の厨房に移動した。

 

「この水を全部飲んで……夕飯の前までおしっこ我慢出来たら、お漏らしっ子じゃないって信じてあげる」

 

そう言って蒲公英は、自分の腰ぐらいまである大きな水瓶を示す。

中には水が半分程入っている。

 

「望む所だ!」

 

翠は水瓶を持ち上げ、中の水を飲み干す。

 

(しししし…♪)

 

その様子を見て、蒲公英は怪しく笑う。

 

「ぷはーっ!飲んだぞ!これで良いな?」

 

「うん!我慢するのは晩御飯の時までだからね。それまでは絶対に厠に行っちゃ駄目だからね」

 

「ああ、わかった」

 

こうして、蒲公英の口車に乗せられ、翠のプライドを懸けた戦いが始まったのであった。

 

 




長時間の外出から帰って来た。
腹が減った。
のどが渇いた。
眠い。

でも何よりもまずはトイレに行きたい!

尿意や便意に勝る欲求はないですよね…。

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