IS -other world order-   作:3×41

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第12話 真夜中のバスターズ

 2000時

 

 ゲッペンファミリーの屋敷の前。シチリアIS研究都市の郊外に、ひとつ巨大な屋敷があった。ゲッペンファミリーの屋敷である。巨大な屋敷の前には広大な庭があり、その先にはいかつい正門が構えている。

 

 その正門の門番は二人。腰にピストルをさして憮然と門の前に立っていた。

 それは形式だけのことだった。

 シチリアの巨大マフィアの一角であるゲッペンファミリーの屋敷に訪れようとする一般市民など誰一人としていない。たとえたちの悪い酔っ払いだって、ゲッペンファミリーの門からは裸足で逃げ出す。

 

「それで、昨日の女はどうだったんだよ?」

 

「ああ、いい具合だったぜ。途中でそいつの男が割り込んできたが、そいつも『昇天』させてやった」

 

 男たちがそこでゲラゲラ笑った。

 彼らにとって、この街での殺しはきちんとした手順を踏めば『合法』だった。

 警察はマフィアと癒着しているし、市民は手を出すことができない。

 

 雑談する二人の男の前に、一人の少女が立っていた。

 男の一人が気がついて、その少女に声をかけた。

 

「おやぁ?お嬢ちゃん。どうしたんだいこんなところで、ここがどこだかわかってるのかなぁ?」

 

 男の目の前の少女は、10歳前後で少しとまどったようにしている。

 その服は真っ黒で、目には穴の開いた布を巻きつけて顔までよく見えなかった。

 

「それになんだいそのカッコウは?ハロウィンのつもりか?トリックオアトリート?俺がいたずらしてやろうか?デカイフランクフルトが好み?」

 

「ハハハ、お前そっちの趣味まであったのかよ!!」

 

 その隣の男が大口を開けて笑った。

 その少女は戸惑いがちに男に答えた。

 

「う、うん。私からも何か渡させて」

 

 男は少し楽しそうに、しかし残忍そうな表情で言った。

 

「なんだい?何を渡してくれるのかなお嬢ちゃ~ん?」

 

 そう言った男の口に、何かが差し込まれた。

 金属質でそこそこの太さがある。男の口に差し込まれた物体がガチリとげき鉄の音をならした。

 

「ロリコン野郎。お前の大好きなデカマラと、鉛玉のプレゼントだ」

 

 男の顔が上にはね、口腔内から弾丸が突き破って男の頭を吹き飛ばした。

 その事態にすかさず反応して胸元の拳銃を抜いた隣の門番に、はるか遠方から回転する狙撃ライフル弾が高速で疾走、男の頭を貫通させて男は倒れた。

 ネッドが撃った狙撃弾である。ネッドはその屋敷がよく見渡せる丘の上に狙撃ライフルを並べ、砂袋を敷いて狙撃体勢をとっていた。

 

「父さん。ナイスショット。それじゃぁ行くわ」

 

『オーケークロエ。気をつけて』

 

 クロエが巨大な門を開くと、そこには3人ほどの見回りのマフィアがこちらを向いた。

 マフィアたちは、門が開いたのを見て、次にその門の前で門番の二人の男が銃弾で殺されているのを確認した。

 

 そしてあわててその門の真ん中にたっている少女を見て。とまどいながら銃を抜いた。

 

 クロエは両の腰に拳銃をさしたまま。そこに両手を伸ばし、指をピクピクとひくつかせながら、しかめ面のアゴを横にひねっていった。

 

「お前たち、私と遊びたいの?」

 

 マフィアが一人、跳ねるようにクロエに銃を向けると、クロエは即座に腰にさした銃を抜いて、それでその男に向かって殴りつけるように右手を突き出して同時に射撃し、その銃弾が男の額を貫通した。

 その男が倒れるのを見て次に反応して銃を構えた男の額にクロエの左手の拳銃の弾丸が着弾し、もう一人の男の心臓を遠方から飛来したネッドの狙撃ライフル弾が爆散させた。

 

 一瞬で、屋敷の前の庭を哨戒していた三人の男が血の池に沈んだ。

 クロエは男たちが倒れる前に屋敷の扉に向かって歩き出していた。

 

 

 #

 

 

 

 まったく、なんということだ。

 屋敷の屋上の広い部屋で、マフィアのトップであるゲッペンがうめくように言った。

 

 先日の酒場の件である。何者かに襲撃され、ファミリーは8人全員殺された。襲撃したイカレ野郎の手がかりはなし。これではファミリーの面子はつぶれてしまう。次のマフィアのトップ会合ではどんな顔をすればいいというのか。

 

 ゲッペンは広い部屋の机の前で頭をかかえるようにした。

 部屋には白いトラの絨毯が広く引かれ。巨大な水槽では大型魚がゆっくりと泳いでいる。

 

 とにかく、そいつらを見つけて肛門から腸を引っ張り出してやる。

 でなければ「組織」にも見放されてしまうかもしれない。

 

 そのとき、ゲッペンの部屋が勢いよく開き、ゲッペンファミリーのマフィアが走って入ってきた。

 ゲッペンはその幹部の突然の入室に、机においてあった拳銃を向けた。

 

「この部屋に入るときのルール、忘れたのか?」

 

 ゲッペンに拳銃をつきつけられた幹部は、息を切らしながらつばをのんで、両手を挙げた。

 

「すいません、ボス。でも、ボス。はぁっ、緊急事態です!急いで逃げてください」

 

 ゲッペンはその男のあわてように、拳銃を置いて身を乗り出してたずねた。

 

「ん?どうした?何があった?まさか警察のガサ入れでも?」

 

 ありえないことだった。警察はマフィアが掌握している。

 それもこのシチリアでも最大のファミリーの一角であるゲッペンファミリーに対するガサ入れなどありえない。

 ゲッペンに聞かれた幹部の男は、息を整える前に荒い口調でいった。

 

「幼女です!ファッキンロリータが屋敷に侵入して手当たりしだい殺しまくってます!」

 

「はぁっ?ロリ…なんだって?」

 

 ゲッペンは男のいっていることがわからず、片眉を上げて言った。

 幹部の男が入ってきた扉の向こうは、1方向の通路になっており、そこにはすでに8人のマフィアが拳銃を持って警戒態勢をしいていた。

 ゲッペンから見た廊下の向こうの扉がゆっくりと開いた。

 そこから現れたのは一人の10歳前後の少女だった。

 

 

 

 #

 

 

 

「ショウタイムだ。クソ馬鹿野郎ども」

 

 クロエは扉を開けて、目の前の広い廊下に8人のマフィアがいることを確認すると。

 一番目の前のマフィアに右手をさっとあげて拳銃を発射し、男の心臓を打ち抜くと、次に廊下に向かって全速力で走りだした。

 

 次の男がクロエの額に向かって拳銃を発射すると、クロエはそれを超反応で首をひねってかわし、左手を殴るように突き出して拳銃の弾丸が男の頭を吹き飛ばした。

 

 その後ろの男にクロエがダッシュし、男の腹にけりを入れると、そのまま横っ飛びしながら男の即頭部に弾丸を撃ち込み、その男の後ろから発射された弾丸をかわした。

 

 クロエはそのまま横にとんで、廊下の横のドアの上につかまって弾丸をかわすと。

 ジャンプで再び廊下の真ん中に下りて両手の銃で左右の男の頭を打ち抜いた。

 

 次にクロエに銃身を向けたマフィアまでダッシュで距離をつめたクロエはそのままジャンプしながら男の頭上を飛び越え、同時にその頭を宙返りしながらつかんで、着地と同時にバランスを崩したその男をその後ろにいた男に投げ飛ばして、二人が重なったところを拳銃でまとめて打ち抜いた。強化筋肉繊維があってはじめてできる動きである。

 

 ゲッペンの部屋から出てきた幹部の男がクロエに銃を向けると、クロエは右足を蹴り上げてその男の銃を跳ね飛ばし、次に男の胸あたりにむかって体を横にして肩口を爆発的な突進とともにぶち当てた。

 その衝撃で男の心臓はつぶれ、吹き飛ばされて部屋の奥で座るゲッペンの横を通り過ぎて、ゲッペンの後ろの窓を壊してそのまま屋敷から庭に落下していった。

 

 ゲッペンの部屋にゲッペンともう一人残ったマフィアが立ち上がって銃を抜くと、その男の後ろから飛翔してきた狙撃ライフル弾が男の頭を貫通して男は絶命しそのまま倒れた。

 

 ゲッペンはそれを見て、狙撃手もいることがわかった。

 クロエに拳銃を向けられたゲッペンは両手を挙げてつぶやいた。

 

「こんな息子が欲しかったぜ」

 

 ゲッペンは死のにおいとともに、使えない息子を思い出しながらそういった。

 もちろんそれらの事情を浅くも知らないクロエにはその意味を知ることはなかったのだが。

 

「ゲッペン。あんたに聞きたいことがある。ケイトリンはどこだ」

 

「ケイトリン・ヴァルツ?」

 

 ゲッペンはその名前を聞いて心臓が握られるようだった。

 

「知っているな?話せ!どこにいる!!」

 

 クロエが顔をゆがめてゲッペンに叫んだ。

 

「知っているさ。もちろん知っている。だが、言わない。言えば俺の命まで危なくなる」

 

 クロエはにくにくしげに顔をゆがめたままアゴをひねっていった。

 

「命があぶない?わかってないわね。あんたの命はいままさに私につかまれてる」

 

 そのとき、ゲッペンの部屋の後ろの廊下の扉から、マフィアたちがぞろぞろと入ってきた。

 同時に、マフィアたちが入ってきた廊下の横の壁が爆発して、そこからはるか遠方にいるネッドの対物マテリアルライフルから発射された狙撃榴弾がマフィアたちの足元で着弾、爆発しマフィアたちを吹き飛ばした。

 しかし、爆炎の後ろから現れたものを見てクロエは目を見開いた。

 3mほどの体躯、金属質の装甲。巨大な廊下の向こうの扉からアーマードスーツが廊下に入ってくるところだった。

 

「アーマードスーツ!?」

 

 クロエは廊下のほうを向きながら叫び、次に全力で横にとんだ。

 

「こいつを殺せ!!」

 

 ゲッペンが叫ぶ。ASから発射された重機関銃が暴風雨のような密度で廊下を疾走し、横に飛ぶクロエの向こうのゲッペンを粉々に引き裂いた。

 

 クロエがギリギリで横にとんで、振り返ると、すでに部屋にオーバードブーストで加速した3MのASが飛び込んできており、クロエに向かって両手を向けていた。

 クロエの目が見開かれる。なんでマフィアがASなんて持っているのだ!?

 

 ASの両手の重機関銃からクロエに向かって鉄甲弾が嵐のように掃射されたとき、ゲッペンの後ろの窓からアルバニ3号が飛び込んできてクロエに覆いかぶさり、その装甲で重機関銃の掃射をうけた。

 

『あだだだだだだだ!!』

 

 アルバニの後部に重機関銃がめりこみ、装甲をへこませる。

 それと同時に、クロエの後ろの窓からネッドのマテリアル弾が飛翔し、ASの胸部に着弾、爆発すると、ASを向かいの壁面に吹き飛ばし、次にネッドが遠方から射出したマテリアルライフルの狙撃榴弾がASの胸部につきささりASを壁面に深くめりこませた。

 

『だいじょうぶクロエちゃん?』

 

 アルバニがしたのクロエに声をかける。

 クロエは混乱気味に首をふった。

 

「アルバニ!?なんであんたがこんなところにいるの!?」

 

 アルバニの後部のポッドが開いて、そこからレザードが顔を出した。

 

「クロエ!乗ってくれ!逃げなきゃ!」

 

 レザードが叫ぶ。

 

「向こうからまだASが来てる。2機いる!!」

 

『確かに僕のセンサーでも2機のASが向かってるね』

 

 クロエの耳の通信機にネッドから通信が入る。

 

「クロエ、ASが出るのは想定外だ。アルバニに乗って一時撤退だ」

 

 クロエは通信を聞いて、しかし悔しそうに、アルバニの後部のポットに滑り込んだ。

 

 アルバニはクロエを乗せると、廊下から2機のASに重機関銃の掃射をうけながら、装甲が破られる前に急いで入ってきた窓から飛び出すと地面に降りてローラー走行で全速力で走行し始めた。

 

 逃げるアルバニ3号のポッドの中で、クロエの通信機にネッドから通信が入る。

 

『クロエ、アルバニと一緒に、先に自宅に帰ってなさい。尾行はされないように規定ルートをアルバニに言っておきなさい。私は別ルートで戻る。愛してるよクロエ』

 

「はい父さん。父さんも気をつけて」

 

 クロエがそういうと通信が途絶えた。

 

 

 

 #

 

 

 

 ネッドがいる丘は静かなものだった。まだマフィアにはこちらの位置が特定されていないらしい。

 が、それはマフィアには、ということだった。

 ネッドの横手の地面の岩盤がじょじょに真っ赤にそまっていく。まるでマグマでも吹き上がるかのように。

 ネッドは通信機を足で踏み潰すと、手に持った巨大な対物マテリアルライフルを握りなおした。

 

 

 

 #

 

 

 

 道路を走るアルバニの後ろを、二台の黒塗りの車が追ってくる。

 

『クロエちゃーん。後ろからなんか車が追ってきてるよ~?』

 

 アルバニがそういったあと、後ろから追走してくる車の窓から男が二人それぞれからだを乗り出し、銃弾をアルバニに浴びせてきた。

 

『あたたたた。あの銃器じゃ僕の装甲は大丈夫だけど。僕兵器類はロックされてるんだよな~』

 

「私がやるわアルバニ。しばらくまっすぐ走って」

 

 クロエはそういうと、アルバニの後部のポットを開けて、そこから上半身を外気にさらすと、後ろから走ってくる2台の車のほうを向いて、右手の銃を伸ばした。

 

 車から疾走する弾丸がアルバニのポッドにあたり、クロエの顔の横を高速で通り過ぎていく。

 クロエは車のほうを見て目を細めると、続けて二回拳銃の引き金を引いた。

 クロエの右手の拳銃から発射された二発の弾丸は、そのまま空中を疾走してそれぞれの車の前輪に着弾、破壊させた。

 二台の車は一台はスリップして、もう一台は勢いで車体を横にして縦に2回転して走行がとまった。

 

『ひゅ~やるぅ~クロエちゃん』

 

「ありがとう。まぁ、当然だわ」 

 

 アルバニ3号はその後、クロエとレザードを乗せて、クロエの言われたルートを通って、クロエとレザードを家に送り届けた。

 

 

 

 #

 

 

 

 2300時

 クロエは、レザードを家のリビングに座らせたまま、ネッドの帰りを待っていた。

 しかしいつまで待っても、ネッドが帰ってくることはなかった。

 

 

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