セシリアたち大空洞調査の先発チームが、ISのブースターを展開しながらゆっくりと大空洞の縦穴を下りていく、真っ暗な大空洞を、2機の自律思考戦車アルバニがライトで照らす、空洞は、あまりにも巨大で、向こうまで視認することはできないが、手前に見える巨大な空洞の壁面には、いくつも横穴がのびているのがわかる。
なるほど怪しまれるわけだ。セシリアはブルーティアーズに身を包んでゆっくりと降下しながら思った。
『ひゃー深いですねー。いつになったら下につくんだろう』
アルバニ4号が、電磁アンカーで縦穴をおりながら言った。戦車の白い単眼はあたりを捜索するためにグルグルとまわっている。
下まで降りていくと、電磁波がかなり強くなってくるのがわかった。
ISのレーダーにもノイズが走り始める。アレクサンダーへの通信やアルバニの通信はなんとかできるようだが、なるほど危険な場所でもあるようだ。シチリアの警察が、マフィアと癒着していなくとも捜査をしぶるのも無理からぬことである。
数十分巨大な縦穴を降下していくと、ようやく大空洞のそこに着いた。
7名のIS搭乗者と2機の自律思考戦車が、それぞれ大空洞の地面に着地する。
「こちら先発チームのセシリア=オルコット。今大空洞の底に到着いたしましたわ」
次にセシリアを含めた数人がISを解除してライトを手に取り、大空洞の底から、奥に延びる横穴に入って行った。
#
同時刻、シチリアIS学園近海の上空の飛行艦アレクサンダーの司令室では、千冬が司令室のイスに座って、じっと中央の立体モニターを睨んでいた。予備隊チームに編成されていたラウラもまた、千冬の隣で立体ディスプレイを見つめている。
ちょうど今セシリアたち先発チームが大空洞の底に到着し、そこから続く横穴へと入っていったところだった。
「何か出ますかね」
ラウラが千冬にたずねる。
「こればかりはわからんな。不正の隠れ蓑には絶好の場所だとは思うが、確証があるわけではない」
しかしながら、捜査において、黒を見つけることばかりが重要なわけではない、白をはっきりさせてグレーゾーンを狭めていくこともまた重要な手順なのである。
千冬は第二チームに連絡を取り、警戒を怠らないように確認をとった。
他方、研究都市からの要望で予備チームに編成されていたサラとレミーは、今その研究都市に呼び出され、研究都市へと向かっていた。
「これは、いささか神経過敏かと思うのですが、すいません織斑先生」
サラはさきほど、そのように千冬に断りを入れてレミーと研究都市へと向かったのだった。
アレクサンダー司令室中央の巨大ディスプレイには、大空洞地下でマッピングを進めるセシリアたちの情報が送られ、アルバニがサーチしたマップ情報が立体ディスプレイに表示されていく。
ラウラはその様子を見て小さくうんうんとうなずいた。
「やつらが廃棄処分されるなど、いいわけがない」
ラウラは悔しさをにじませていった。やつらとは、自律思考戦車アルバニたちのことである。
今もアレクサンダーの兵器ドックではアルバニたちが大空洞地下のマップ情報を同期しているに違いない。
「ボーデヴィッヒ、余計なことに気を取られるな。今は調査に集中しろ」
「はっ。申し訳ありません」
ラウラは短く返事をした。
同時に、隣で指揮を取る千冬の横顔を見やった。そしてチラリと頭をよぎる。
優秀な指揮官を持てることは兵士にとって何より幸運なことである。
その点で千冬は申し分ない人間だった。加えて、ラウラにはそれ以上の意味がある。
現在の指揮官である千冬は、以前のラウラの指導教官でもあったからだ。
ドン底をヘドロのようにたゆとっていたラウラに再び不屈の灯をともし、ここまで鍛え上げたのは千冬なくしてありえない。
その千冬を上官として作戦に向き合える喜びとともに、昼間のレミー=マグラスの千冬に対する侮辱に感情が沸騰しそうになる。それは同時に、その侮蔑を招来する原因となった自分のふがいなさにも向けられていた。
実際のところ、なれないチハ38式で運動性能において上回るユーロガイツⅡを相手にしたのだ。そのような自責は本来不要のようにも思われるが。ラウラにそのような理屈が入り込む余地はなかった。
一瞬でそこまで考えて、しかしラウラは鋭く感情を切り替えた。
千冬の言うとおり、今注力すべきは目の前の立体ディスプレイに映る大空洞の内部である。
マップはゆっくりと、人が歩くスピードで新たに書き込み続けられている。
#
大空洞内。長い横穴は、セシリアたちを吸い込もうとするかのようにどこまでも暗闇が続いているように思われた。
ブルーティアーズを格納したセシリアは、先発チームを先導して、あたりをライトで照らしながら歩を進めていた。
地面には崩れたアスファルトの瓦礫が散乱している。よこの壁にライトを照らすと、コンクリートのうちっぱなしの壁面が、ところどころ破れているのが確認できた。
「みなさん、瓦礫に足をとられないようにお気をつけになってください」
暗い横穴を、7人と2機がライトで照らしながら進んでいく。同時に随伴している自律思考戦車アルバニがまわりをサーチしてマッピングしていった。
歩きながらセシリアは推論をめぐらした。神隠しにあった人間を隠すとすればここは悪くない選択肢であるように思われる。
もしかしたら、さらわれた女性たちはこの道を連れて行かれたのかもしれない。
それらしい痕跡がないか、地面を確認して見るが、そのような痕跡はみられなかった。だからといって、痕跡が消されていないという確証もなかった。
先頭を歩くセシリアの後ろで、ガシャンガシャンと音を立てながら歩行する2機の自律思考戦車たちが話していた。
『暗いですね~。それにすごく広い。いったいなにがあるかわかりませんよ~』
とアルバニ4号。車体全部の白い単眼が右に左にとキョロキョロと動いている。
『もしかしてオバケが出ちゃったりして~。ヒュードロドロ~』
アルバニ2号がそういって両手のマニピュレータアームを持ち上げて左右に振る。
『や、やめてよ~』
アルバニ4号がそれを見て疑念を振り払うように車体を左右に振った。
『でも、これは誰かいても不思議じゃないね~。絶好の隠れ蓑だよ』
アルバニ4号が、暗い横穴を見回しながら続けて行った。
一向は長く続く洞窟をライトで照らしながら、速やかに、しかし確実に捜索しながら歩を進めて行った。
#
洞窟は長く蛇行して続いていた。しかし先発隊がしばらく進むと、巨大な空洞が二手に分かれている場所に出た。
「…」
セシリアはそこで一行の歩みを止めて、あたりをライトで捜索した。
洞窟は左右に分かれている、ライトで照らして見ると、どちらもかなりの長さが続いているようだった。
さてどうするか。そこは選択肢があるように思われた。全員で一方から調べていくか、あるいは二手に分かれるかである。
考えているセシリアの後ろでハリーが提案した。
「あの、セシリアさん。ここは二手に分かれてはどうでしょう?私とアルジャーで左の穴を調査してみます」
セシリアは少し考えて、その提案を承諾した。
「では、お二人にお願いいたしますわね。わたくしたちは右手の洞窟を調べますわ」
『そしたら僕たちはどうしましょう?』
アルバニがセシリアに尋ねる。
「そうですわね。アルバニ4号はこちらに、2号はハリーさんたちのほうへお願いしますわ」
『がってん~』
『いや~なんだか心細くなるなぁ』
アルバニ2号が言って、ガシャンガシャンと左手の洞窟のほうに歩いて行った。
そのアルバニ2号と一緒にアルジャーとハリーが左手の洞窟へと消えていった。
セシリアには、彼女らは少々急ぎすぎているように感じられたが、彼女らの学園生も行方不明になっていることを思えば無理もないことかと考え直した。
セシリアたちも、アルバニ4号を伴って右手の洞窟へと進んだ。
#
「広いですわね…」
右手の洞窟を進みながらセシリアがひとりつぶやいた。
手にもったライトであたりを照らしながら進んでいく、しかしいまだ異常な痕跡は見つけられない。
他方では、アルバニ4号が強力なライトで前方を照らしているが、ところどころ瓦礫のおちた洞窟が続いているのみだ。
洞窟には、ところどころ部屋用にか横に空けられた穴が散見されたが、その中を注意深く確認してもやはり中にはなにもなかった。
『うわぁっ!!』
「ひゃぁっ!?」
アルバニの声に、一同が驚く。
セシリアがアルバニを見ると、アルバニは右手のマニピュレータアームで車体をかくしぐさをした。
『ご、ごめん。ライトの照り返しにびっくりしちゃって…』
言われて、セシリアがはぁとため息をもらした。
「もうっ、反射回路の敏捷値を少し下げてはいかがですか」
セシリアは少し避難の色を交えて言うと、再び進んでいった。
歩きながら、セシリアの後ろでアルバニの車体がときどき飛び跳ねているようだったが、しばらく進んだところで慣れてきていた。
『こ、こわいね~。ねぇセシリアちゃん。こんなときには何か楽しい話でもしない?』
「楽しい話、ですか?」
セシリアは前方をライトで照らしながら返事をした。
確かに、一向は少し緊張しすぎているように思われた。少々の緩和は毒にはならないだろう。
セシリアが頼むとアルバニが快諾した。
『じゃぁ僕がするね。題して上級オイルが怖い! え~、むかしむかしあるところに6体の自律思考戦車がおりまして…』
一行はアルバニの話を聞きながら巨大な洞窟をさらに進んで行った。
アレクサンダーからの連絡に、まだ異常は見つからないと返信する。ブリーフィングでは、ある程度調べておおまかな様子が把握できたら、後発チームも送られるということだった。かなりの地下なこともあってか、かなり通信のノイズが大きくなっているようだ。
『…そこで一言、そろそろ熱い上級オイルが怖い! ってね! どうどう?楽しかった?』
とアルバニ4号。
「ええ、なかなかでしたわよ。でもオイルの味なんてわたくしたちにはわかりませんわね」
セシリアが少々脱力して言った。しかしおかげで少し緊張がほぐれた感もある。
歩きながら天井をライトで照らすと、天井から5メートルほどのコード類がぶらさがっている。それはさっとしか見なければ蛇かなにかにでも見えたかもしれない。
一方地面にはなにかの古くなった機材が無造作に打ち捨てられていた。
セシリアの後ろでアルバニ4号が腕を組んで考えている様子でついてきている。
『そっかー。そうだよねーそこはやっぱりお茶にしといたほうがよかったかなー。でもそうすると僕たちにはお茶の味がわからないものなー。ねぇ2号…アレ?』
アルバニ4号が、他方で別の洞窟を調査しているアウシェンビッツ姉妹に随伴しているアルバニ2号に通信する。アルバニ4号の白い単眼が空中を眺めるようにグルグル動いた。
アルバニ4号はその通信の様子についてセシリアに報告した。
『セシリアちゃーん。2号からの連絡が途絶えてますー』
「通信が?」
セシリアはそれを聞いてアルバニ4号に振り向いた。
通信が途絶えた?確かに先ほどからアレクサンダーとの通信のノイズは強くなる一方だったが、同じ洞窟内のアルバニ同士でさえ通信障害が発生するのか。
セシリア振り向いて、後ろのアルバニ4号の青い車体を照らすと、そのアルバニ4号の後ろに随伴するチハ38式の少女のすぐ後ろに赤い物体が照らされた。
「えっ?」
セシリアが目を丸くすると、そのチハ38式の搭乗者がつぶやくようにそういった。
それはただの赤い物体ではなかった。よく見ればその赤い物体が脈動する筋肉だとわかる。しかもそれは上までずっと続いている。
チハ38式の少女のすぐ後ろにいたのは、むき出しになった筋肉の塊だった。正確には筋肉をむき出しにした2.5mほどの怪物がそこに立っていた。
それだけではなく、その怪物の頭部の巨大な口はすでに大きく開いていて、そのままチハ38式の腕をつかむとその鋭利な牙を突きたてた。
「きゃ、ああああああああぁぁぁぁっ!!」
少女がその自体を把握して悲鳴を上げた。
セシリアはその光景に心臓が握りつぶされるようだった。しかしなんとか次の動作に移ることができた。
「ブルーティアーズ!!」
ライトを放り投げてブルーティアーズを呼び出す。
それより数瞬早く、異常を感知した近くのユーロガイツⅡとチハ38式の搭乗者の少女二人が反応した。
歯をたてる巨大な怪物に向かって榴弾ライフルを向け、引き金を引いた。
ガチンッ
2機は引き金を引いたが、ガチンと音がしただけで榴弾が発射されることはなかった。
少女たちが一瞬その自体にポカンとする。
兵器が作動しない。故障?
作動しないことは明らかだったが、2機同時に、である。
しかも、セシリアのISブルーティアーズも転送を開始したはずが一向に展開されない。
すでに、チハ38式とユーロガイツⅡは機動を停止し、動かなくなっていた。
「ISが動かない?」
「弾が出ない!!故障!?」
ISを装着した搭乗者たちが困惑気味に口々に言う。
暗い洞窟の内部で、すべてのISが動きを止めていた。
セシリアはすばやく何が起こっているのか推論をめぐらしたが、同時に赤い筋肉をむき出しにした怪物が、チハ38式の少女に歯をつきたてていた。
ガキン ガキンガキン
怪物の鋭い歯がチハ38式の走行を激しく打ちつけた。しかしつらぬけずにいる。
「い、ひいいいいぃぃぃぃ」
少女がすっとんきょうな声を上げる。
ISが起動停止しているということは、シールドも展開されていないということだ。
今彼女の肩のISに突き立てている歯が少し横の頭にずれれば、おそらくたやすく貫くに違いない。
セシリアの心臓はいまや早鐘のようにうち、青い瞳は見開かれていたが。
その事態にすぐに動けずにいた。
『動かないで!!』
セシリアの隣で機械音。アルバニ4号が言って、少女のISに歯をたてる巨大な怪物に向かって、重機関銃が搭載された両腕を掲げた。
ダダダダダダダダダダダ!!!
炸裂音があたりにとどろき、自律思考戦車の両腕から大口径ライフル弾が高速で射出され、少女をつかまえている怪物に疾走し、突き刺さった。しかしその銃弾の嵐は怪物の筋肉の表層で停止した。その衝撃で、怪物は少女を放してよろめいて後退した。
それを見て、セシリアがすぐさま叫んだ。
「ISが機動不能になっていますわ!みなさんアルバニの後ろへ!」
その間にも、筋肉をむき出しにした巨大な怪物は体勢を整えなおしていた。
#
アレクサンダー司令室で異常を察知した千冬が通信機に向かって叫んだ。
「どうしたオルコット!?何があった!!?」
通信音はノイズが強くなっていて、ところどころ叫び声が聞こえる。
司令室中央の立体ディスプレイは砂嵐がかかったようになっていた。
『わかりません!巨大なモンスターが、ISが機動不能に、キャアアァァァ!!』
モンスター?ISが機動不能?
「ラウラ!!」
「はっ!!」
千冬はラウラに短く言いながら思考をめぐらせた。
ラウラは千冬に言われて、返事をするとすぐにアレクサンダーの第一ドックに向かって走った。
大空洞付近で待機する後発隊からも、ISが機動不能になっている通信が入っていた。
アレクサンダー付近では、そのような事態になっていないことから、それは大空洞付近でのみ起こっていることだと推察される。
どうやら藪をつついたら、とんでもないものを呼び寄せたのかもしれない。
#
セシリアたちは、急いでアルバニの後ろに避難していた。
大洞窟内、後発隊の支援は望めない。孤立無援の状況だった。
そしてあの怪物は、そもそもいったいアレがなんなのかはおいておくにしても、明らかに攻撃の意思があるように思われた。
赤い筋肉をむき出しにした2.5mほどの怪物、大きくあけてうめく口の歯はナイフのように鋭利に見える、はピタっと動きを止めると、ついでアルバニの後ろにいるセシリアたちに向かって全力疾走を開始した。
赤い塊が高速でこちらに向かってくる。
それを見てセシリアたちの前に立ちはだかったアルバニ4号がすかさず両腕を掲げた。
『セシリアちゃんたちに手は出させないよ!!』
アルバニが走ってくる怪物に両腕を掲げ、重機関銃を掃射した。
アルバニの両腕から走る怪物へあまたのライフル弾が疾走する。
怪物はアルバニに走りながら両腕をクロスして機関銃の弾丸を受け止め、生物とは思えない強度だった、さらに突進してきた。
怪物は機関銃の掃射をうけながらアルバニに突進し、そのままアルバニの車体に覆いかぶさり、次にその車体に鋭い牙をつきたてた。
ガキン!! ガキンガキン!
怪物の鋭利な牙は、しかしアルバニの戦車装甲を貫くことができずガキンガキンと音を立てた。
アルバニ4号はおおいかぶさる怪物にむけて、そのまま至近距離から胴部の戦車砲を発砲した。
怪物はその大砲を直撃され、爆風でバラバラに吹き飛び四散した。
あたりに散らばった腕などがビクンビクンと痙攣していたが、それもすぐにとまった。
『えっへん!どんなもんだい!』
アルバニ4号が右手のマニピュレータアームを掲げていった。その先端からはまだ重機関銃の煙が湯気のようにのぼっている。
「すごいですわアルバニ」
セシリアはアルバニの青い車体に手を載せてそういった。
『いやーそれほどでも~』
右手で車体をかくようにするアルバニをよそに、セシリアはアルバニの前方に散らばった物体を見た。
それは、明らかに生物のそれだった。
「これは、いったいなんですの?」
それらはまるで、人間の筋肉をそのまま巨大にしたようなものだった。いや、それだけではなく、生体にしては異常なほどの強度を備えている。生物兵器?なぜこんなところで?
そしてそれより問題だったのは、ISが起動停止になっているということだ。
アレクサンダーとの通信も不能、アルバニ2号との連絡もできないようだ。
ビンゴだった。明らかにここには「何か」ある。
しかし今は1秒でも早く脱出しなければならない。
「みなさん引き返しますわよ」
セシリアが言って、一行は反転した。
しかし、もしかしたら帰り道に何かある可能性もある。しかし今は戻るしかない。
一行が引き返そうとしたそのとき、セシリアの視界の上方、空洞の天井が赤く光っているのが見えた。
セシリアが顔を上げ、赤く光る天井を見た。
その赤い光は天井にどんどん広がっていき、天井から真っ赤な液体が滴り始める。
次に天井が真っ赤に融解したかと思うと、そこから何かが落下してきた。
それは3mほどの体を真っ赤に赤熱させて体から火を噴く怪物だった。
人型のそれは、洞窟の地面に落下すると、すばやくセシリアたちのほうに顔を向けた。
『みんな僕のうしろに!!』
アルバニが言って、すばやくその怪物に両腕を向けると、
瞬間その左がわから何かが飛来してアルバニの両腕にガンガンと音を立てて金属の槍が突き刺さった。
セシリアが反射的にそちらのほうを見ると、そのはるか遠方に、鉄のような金属質の体の3mほどの怪物がアルバニに右手を突き出していた。
その怪物の右腕のまわりの空間から、ビキビキと音を立てて金属の槍が出現し、アルバニに高速で射出される。
アルバニ4号はそちらに反応して振り向くと、両腕をクロスして迫る槍の群れから車体をガードした。
金属の槍はそのままガンガンガンと音をたててアルバニの両腕を半分貫通し、突き刺さった。
それと同時にアルバニに肉薄して迫っていた火の怪物がアルバニの上から火を吹いて真っ赤に赤熱する右腕をアルバニの車体に振り下ろしていた。
その赤熱する巨大な腕がアルバニの車体の装甲を瞬時に融解させ、アルバニ4号を真っ二つに両断した。
同時に熱風がセシリアたちの脇をすりぬける。
『ふ、ふにゅぅ~…』
真っ二つにされたアルバニ4号が断末魔の悲鳴を上げて機能を停止された。
セシリアたちの目の前には、赤く輝く3mの巨人が見下ろしている。
左のほうからは、鋼の怪物がこちらに腕を掲げているだろう。
もしいずれかの怪物が行動を起こせば、すぐさまセシリアたちは全員殺されてしまうに違いなかった。
セシリアたちはその状況に短く息を荒くしていた。
「おまえら手を挙げて動くな!!!」
洞窟の前方、さっきまで進んでいたほうから男の叫び声がした。
セシリアたちがそちらを振り向くと、銃口をこちらに突きつけた人間が4人、こちらににじりよってきていた
その間も2体の怪物は動く様子がなかった。コントロールされていると見るべきだろうか。
反撃しようにも、ISはピクリとも反応しなかった。
セシリアたちは言われたとおり、両腕を上げた。