IS -other world order-   作:3×41

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第4話 初夏の洋上にて

 ラウラちゃんとシチリアIS学園の生徒がISでやりあっている。

 

 アルバニにそう聞いたセシリアはサラをつれてアルバニにその場所を聞き、それが兵器ドックの上の飛行艦前部のカタパルト甲板だとわかると、急いで兵器ドックの扉を出て、廊下からつながる長い階段をのぼってカタパルト甲板につながる扉を開けた。

 

 甲板の扉を開けると、インドシナ洋上の湿気のない乾いた風が吹き込み太陽のまぶしい日差しがさしこんできた。

二人が200メートルある甲板を早足にあるいていると両手に東南アジアの光るような青い海と空が眼前に広がった。

 

 その甲板の100メートルほどあたりにIS学園生徒とシチリアIS学園生徒たち、そして千冬が洋上を見ているのがわかった。

 生徒たちはやいやいと盛り上がり、両学園の生徒が口々にラウラさんいけー、レミー負けるなーと叫んでいた。

 

 セシリアはそれをよそに千冬にかけよってたずねた。

 

「織斑先生、ラウラさんがシチリアIS学園の生徒とISでやりあってると聞きましたが、一体何がどういたしましたの?」

 

「来たかオルコット、それにハースニールも一緒だな。何もいざこざがあったというわけではない。親善試合として、IS同士で2onをやっているところだ」

 

「しかし、ラウラさんのシュヴァルツェア・レーゲンはドックで整備中でしたわよ」

 

 セシリアの言うとおりだった。確かに先ほどセシリアたちが兵器ドックにいるときには彼女の専用ISはドックの壁面に設置されていた。

 

「そうだ。だからボーデヴィッヒにはチハ38式で出している。なれない機体だがやつなら使えるだろう。見てみろ」

 

 セシリアが千冬が促したほうを見ると、光る洋上に4つのISが高速で移動しているのが見えた。

 その中でチハ38式に身をつつみ、高速で移動しながら白銀の髪を光らせているのがラウラ・ボーデヴィッヒだった。

 

 ラウラは同じチハ38式の生徒に後衛を任せ、海面スレスレで後衛と前方のユーロガイツの間を高速で移動しているところだった。

 

 甲板ではアルバニ6号がきており、4機の映像を拡大して立体映像として映し出している。

 兵器ドックのアルバニたちはこの映像を見ていたからおとなしかったのだろう。

 

 

 ラウラのチハ38式が海面スレスレを高速で飛行すると、それを追うように風圧で海面が水柱を上げた。

 そのチハ38式を80Mほど先の二機のユーロガイツⅡが狙ってライフルから指向性の榴弾を撃ってきた。

 ラウラはチハ38式を駆りグネグネと蛇行するように高速でランダム飛行するとその三つの榴弾を巧みにかわし海面に突き刺さった三つの榴弾が爆発し海の上に三つの巨大な水柱が上がった。

 

 そして水柱が消えたとき、その水柱に隠れていたラウラのチハ38式の姿が消えてしまっていた。

 

「ラウラさんが消えましたわ!?」

 

 セシリアが驚いていった。どこを探してもラウラのチハ38式の姿は見当たらなかった。

 セシリアが困惑気味に千冬のほうを見ると、千冬が説明を加えた。

 

「チハ38式には光学ステルスは搭載されていない。上にいないなら下だろう。見ろ」 

 

 千冬が言って。はるか遠方の洋上の二機のユーロガイツⅡをさした。

 

 そのとき、洋上に浮かぶ2機のユーロガイツⅡの真下の海が揺らめき、水面の爆発とともに多重装甲ブレードを構えたラウラのチハ38式が海の中から急上昇してきた。

 

 ラウラは2機のユーロガイツⅡに向かって急上昇しラウラに向かって右側のユーロガイツⅡにチハ38式の多重装甲ブレードを突き立てた。

 

 そのユーロガイツⅡの搭乗者はあの白髪の少女だった。甲板でシチリアIS学園の生徒にレミーと呼ばれていた少女である。

 彼女のユーロガイツⅡはラウラの多重装甲ブレードを右手の物理シールドで受け止め、ラウラのチハ38式を右上方に弾き飛ばした。

 

 いい反応だった。一見わからないが並の搭乗者だったらまともにシールドにダメージを受けるところだっただろう。

 

 そしてもう片方のユーロガイツⅡの搭乗者がラウラのチハ38式に反応したとき、ラウラは突撃したユーロガイツⅡに運動エネルギーを放出し、静止したチハ38式がグルリと半回転し、至近距離からすでに左手に抜いたチハ38式の流弾ライフルの砲口を向けていた。

 

 次の瞬間、爆音。至近距離からチハ38式の榴弾がユーロガイツⅡに突き刺さり、ユーロガイツⅡは巨大な爆煙に包まれた。

 

 その光景を見て、IS学園の生徒たちが歓声を上げた。

 

「いや、だめだな」

 

 それを見ていた千冬が冷静な口調でいった。

 

 煙が晴れると、シールドで榴弾を受けたユーロガイツⅡが、後衛のチハ38式にライフルを向けていた。

 

「あっ」

 

 後衛のチハ38式に搭乗した少女が気がついたように声を上げた。

 同時に、爆音。ユーロガイツⅡから発射された榴弾が後衛のチハ38式に直撃した。

 

 そのダメージで後衛のチハ38式のシールドは容量オーバー。チハ38式は訓練用の安全装置を起動して戦闘モードを停止した。

 

 そしてこれでチハ38式とユーロガイツⅡの1対2である。

 

「そんな、いくらラウラさんでもチハ38式でユーロガイツⅡ二機の相手は・・・」

 

 チハ38式とユーロガイツⅡは小回りと整備性においてはチハ38式が上回るものの、単純な戦闘能力はユーロガイツⅡが上回っており、シールド出力もタフである。

 

 セシリアは洋上のラウラを見ながら青くなってうめいた。

 

 

 ラウラのチハ38式の前にユーロガイツⅡが2機浮遊していた。

 ラウラがチハ38式1機でどうせめようか考えていると、ふと前方のユーロガイツⅡの搭乗者の白髪の少女が、もう一方のユーロガイツⅡの搭乗者に何か合図した。

 

 すると、そのユーロガイツⅡが後方に下がっていく。

 

「どうしたんでしょう?ユーロガイツⅡが一機さがっていきますわよ?」

 

 甲板上でセシリアがつぶやいた。

 

(どういうことだ?)

 

 ユーロガイツⅡの前でラウラがその意図を測りかねていると、そのユーロガイツⅡにのった白髪の少女がライフルをしまい、ユーロガイツⅡの近接戦闘用のヒートジャベリンを抜き、反対側の右手を手のひらを上にしてラウラのチハ38式に向かって突き出した。

 

 そしてその右手の4本の指をクイクイと上下させた。

 

「…なめるなっ!!」

 

 それは近接戦闘をサシで勝負しようと言う合図だった。

 ラウラはそれを手心を加えられたと取って、チハ38式の多重装甲ブレードを抜いて、白髪の少女のユーロガイツⅡに向かってチハ38式を加速させた。

 

 それを見て甲板上のサラがセシリアたちに言った。

 

「あれはレミー=マグラスだね。悪気があるわけじゃないんだろうけど、血の気が多くてこちらも困ってるんだ。しかしISの近接戦闘ではかなりの腕だよ」

 

 高速でユーロガイツⅡにつっこんだラウラのチハ38式は、衝突する瞬間にチハの多重装甲ブレードをユーロガイツⅡにたたきつけた。

 

 そのラウラの高速の初撃をユーロガイツⅡのヒートジャベリンで受けた。

 

「ほう、ラウラの斬撃を受けるとは、あのパイロットはいい腕をしている」

 

 甲板上で千冬が言う。

 

 チハ38式とユーロガイツⅡはそのまま高速で飛行しつばぜり合いをしながら海面近くから弧を描くように上空に上昇して行った。

 

 高速で併走しながらラウラはブレードを左下に振りかぶり、逆けさからユーロガイツに斬りつけた。

 

 するとその斬撃をユーロガイツⅡのレミーは急に減速してかわすと再び急加速してヒートジャベリンを振りかぶり、ラウラの顔にむかって全力でないできた。

 

 ジャベリンの刃がラウラの右顔にせまった。ユーロガイツⅡのヒートジャベリンをまともにもらえば安全装置がはたらきチハ38式の戦闘モードは停止する。

 

 ラウラはジャベリンの刃が右顔の数センチにせまったところで体を腹部を中心に横に回転してかわした。強力な風圧がラウラのチハを減速させる。

 

 ラウラが上空のユーロガイツⅡを見ると、ユーロガイツⅡはヒートジャベリンをないだ勢いで回転し、ラウラのチハ38式に背をむけていた。

 

 突然、ユーロガイツⅡの背部から何かが射出され爆発し、黒い煙がラウラのチハ38式とレミーのユーロガイツⅡを包んだ。

 

 甲板からチハ38式とユーロガイツⅡが黒い煙に包まれるのが見える。

 

「あれは?」とセシリア。

 

 千冬が答える。

 

「ユーロガイツⅡのチャフグレネードだ。攻撃力はほとんどない。しかし、少なくとも煙幕にはなっているようだな」

 

 

 黒煙の中で、ラウラは視界を失っていた。すでにチハのセンサーを起動しユーロガイツⅡを策敵するが、ユーロガイツⅡのチャフグレネードはミサイルのセンサーから自機をロストさせるミサイルジャマーである、チハ38式のレーダーは妨害されユーロガイツⅡを見つけることができない。

 

 同時にラウラが加速してチャフグレネードの黒煙から脱出しようとすると、ラウラの左側から高速のユーロガイツⅡがせまっていた。

 

 急にラウラの目の前に現れたレミーのユーロガイツⅡがかまえたヒートジャベリンが高速でラウラのチハ38式の左腹部に突き刺さった。

 

「ぐあああぁぁぁっ!!」

 

 チハ38式のシールドが起動しているとはいえ、ラウラは腹部から空気をしぼりだされてそのままチハ38式は高速で海面に突っ込み、大きな水柱をあげて機能停止した。

 

 それを確認して、千冬が声を上げる。

 

「そこまで!シチリアIS学園チームの勝利!」

 

「ああ、負けてしまいましたわ…」

 

 と甲板上でセシリアが残念そうにつぶやいた。

 逆に甲板上ではシチリアIS学園の生徒たちが歓声を上げていた。

 

 サラが残念そうにするセシリアをなぐさめるように言った。

 

 「いやいや、ラウラさんはチハ38式になれていないんだろう?それでレミー相手にあそこまで動ければたいしたものだよ」

 

 

 

 しばらくしてユーロガイツⅡとチハ38式、4機のISが甲板にもどってきた。

 

 ラウラが甲板に着陸した途端、アルバニ6号があわてて近寄ってきた。

 

『あわわわわ、ラウラちゃんだいじょうぶ?けがはない?』

 

「ああ、私は大丈夫だ。そもそも訓練モードで怪我をすることなどない」

 

 心配そうにするアルバニ6号にラウラが答えた。

 それを聞いて、アルバニ6号が安心したような身振りをしていると、もうひとりのチハ38式の搭乗者の少女がラウラのほうに歩いてきた。

 

「その、ラウラさんごめんなさい。私がぼーっとして撃墜されたから…」

 

「いや、問題はない。そのための訓練だ。その経験をよく見直して自分に活かすといい」

 

 ラウラの口調には一切の非難がましさはなかった。

 少女にそういうと、次にラウラはおなじく甲板にもどってきたユーロガイツⅡ二機のほうに歩いていっていった。

 

「負けたよ。シチリアIS学園の錬度はすばらしいな」

 

 ラウラがユーロガイツⅡの搭乗者にそう告げると、その白髪のIS搭乗者レミー=マグラスは口角をあげて言った。

 

「もうちょっと期待してたんだけどなぁ。どんなもんかと思ってたけどさぁ。IS学園の生徒にはがっかりしたよなぁ」

 

 そうレミーにいわれて、ラウラが表情を険しくした。

 

「貴様、われわれを侮辱する気か?」

 

 険を帯びたラウラの声にレミーは笑い声を上げた。

 

「ははっ、事実を言っているだけだろう?この程度の実力なら、今度のモンドグロッソは日本のIS学園は棄権しておいたほうがいいってもんさ。なぁ?それで手間がはぶける」

 

 二人の間の空気の圧がにわかに高まった。

 その二人の空気を察して、サラが仲裁に入った。

 

「やめろレミー。すまないラウラさん。こいつは戦闘後で興奮してるんだよ」

 

 サラはそういってから、次にセシリアのほうを向いていった。

 

「セシリアさん。もしよかったらだけど、次はきみのISを見せてくれないかな?」

 

 

 

 サラにそう言われてセシリアが千冬のほうを見ると、千冬は少し思案していった。

 

「そうだな。オルコットのブルーティアーズは整備が終わっていたな」

 

 千冬はセシリアのほうを向いてたずねた。

 

「どうする?オルコット?」

 

 それは聞くまでのない質問だった。

 

「ええ、もちろんかまいませんわよ。このセシリア=オルコット、謹んでお受けいたしますわ」

 

 それを聞いて千冬が声を張った。

 

「よし。ではシチリアIS学園からはユーロガイツⅡを5機出してくれ。これよりシチリアIS学園のユーロガイツⅡ5機とオルコットのブルーティアーズで5on1を行う!」

 

 

 

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 揺れる洋上に浮遊する全長800Mの巨大飛行艦。

 その前方の全長200Mの甲板から5機のISが海上に離れた。

 シチリアIS学園の標準ISユーロガイツⅡ5機である。

 フィリピン北部の洋上を、世界最強の兵器と謳われる機体が5機ホバリングしている。

 

 それを見る甲板に立つセシリアは、風に彼女の金髪を揺らしながら、無線でアレクサンダーの第一兵器ドックと連絡をとった。

 

「こちらセシリア=オルコットですわ。兵器ドック佐藤田さんですか?わたくしのブルーティアーズの転送をお願いできまして?」

 

 無線で連絡を受けて、兵器ドッグで佐藤田と呼ばれた女性士官がドックの中央を見た。

ドッグ中央には深く青い全身鎧のようなIS、ブルーティアーズが設置されている。

 

 次に士官の指がマニピュレーターを操作した。

 すると兵器ドックの青いISブルーティアーズが上からどんどんと消失していく。

 

 それと同時に甲板のセシリアの小さな体を上から青い燐光が徐々に包み、上からブルーティアーズの機体を身にまとっていった。

 

 ISの転送が終わり、セシリアがブルーティアーズを装着し終えると。

 セシリアはブルーティアーズの第二戦闘モードを起動し、甲板からフワっと浮き上がると、海上へと移動した。

 

 移動を確認した甲板上の千冬が無線を操作した。

 

「両陣営とも準備はいいな」

 

 通信してしばらくして、無線から声が返ってきた。

 

『ユーロガイツⅡチーム、いつでもかまいません』

 

 次に別の声が聞こえる。

 

『こちらセシリア=オルコットのブルーティアーズ。準備できましてよ』

 

 それを確認して、千冬が甲板上で右手を高く掲げた。

 

「それでは…」

 

 飛行艦の巨大な甲板からはIS学園の生徒とシチリアIS学園の生徒が対峙したISを静かに見つめている。

 

「はじめ!!」

 

 千冬が叫んで腕を振り下ろした瞬間、すべてのISがブースターを起動した。

 

 

 

 

 

 千冬が合図をすると。

 五機のユーロガイツはすぐに5機編隊を組みバーニアを起動してセシリアのブルーティアーズに迫った。

 逆にブルーティアーズは前方で迫る5機のユーロガイツⅡのほうを向きながら後ろに加速した。

 

「妥当な戦術ですね」

 

 甲板上でラウラが千冬にいった。ラウラはチハ38式を転送し制服姿にもどっている。

 

「ああ、数の力でブルーティアーズを方位して攻撃しようということだ」 

 

 実際に専用機は標準機の戦闘力とは比べ物にならない。

 1対1のような状況を作らず、5機が一体となって連携攻撃をかけるというのがユーロガイツⅡ5機の作戦のようだった。

 

 セシリアは後ろに加速すると同時にブルーティアーズの右腕にもったレーザーライフルを右に見えるユーロガイツⅡに標準をあわせ発射した。

 

 ブルーティアーズの右手のライフルから青いビームが射出される。

 その標準を合わされたユーロガイツⅡの搭乗者はレーザーライフルが発射されるまでのタイムラグを見逃さなかった。

 ISの軌道を変えてビームライフルの青い光をかわすとすぐさま編隊を組みなおしてブルーティアーズに直進した。

 

「セシリアさんの専用ISといえども、さすがにユーロガイツⅡ5機と正面から激突するのは難しいようですね」

 

 とサラ。甲板からISの戦闘を冷静に分析している。 

 

 セシリアはブルーティアーズをさらに後方に加速しながらニ、三発とビームライフルの引き金を引いた。

 ユーロガイツⅡ5機は高速機動で放たれた青いビームを回避しながらユーロガイツⅡのライフルから榴弾を発射しつつブルーティアーズに迫っていく。 

 

 基本的にISの移動速度は前進するより後進するほうが遅い、ブルーティアーズの後進速度とユーロガイツⅡの前進速度はほとんど同じだったが、ユーロガイツⅡ五機から発射される榴弾をかわしながらで、ユーロガイツⅡがブルーティアーズに徐々に距離をつめていった。

 

 甲板からは、後進するブルーティアーズが徐々にユーロガイツⅡに差をつめられるのが見えた。

 

 次の瞬間、セシリアはブルーティアーズを急上昇させた。

 セシリアのブルーティアーズがブースターの青い尾を引きながら、グングン上空に上っていく。 

 ユーロガイツ5機もそれを追って上空に上昇していった。

 

 セシリアのブルーティアーズがかなり上昇していくと、しだいに大気が薄まり、まわりの極寒の冷気をブルーティアーズのシールドが遮断した。

 

 大気が薄まりあたりが暗くなった上空で、セシリアがブルーティアーズを反転させ下方を見ると飛行学園艦アレクサンダーの巨大な艦体がずいぶん小さく見え、下方150メートルにユーロガイツ5機が迫っているのがわかった。 

 

 それを見るとセシリアは小さく笑ってつぶやいた。

 

「いきますわよ」

 

 セシリアはグルリと下方から迫るユーロガイツⅡ5機のほうを向き、ブルーティアーズ背部の4機のビットを展開、4機のビットは真下からセシリアに向かうユーロガイツⅡ5機を狙った。

 

 次の瞬間、ブルーティアーズの4機のビットが下方のユーロガイツⅡ5機に向かって計12発の青いビームを連続射出し、セシリアは同時にブルーティアーズ腰部のエネルギーブレード、ブルーツヴァイの刀身を抜いて、機械的な抜き身の刃の周りに青いエネルギーブレードを発生させると、下方を向いてブースターを加速させ、せまるユーロガイツⅡに向かって12発の青いエネルギービームとともに急降下した。

 

 下方のユーロガイツⅡ五機からは青いビームが雨のように降ってくるのと同時に青いビームブレードを抜いたブルーティアーズが同時に急降下してくるのが見えた。

 

 迅速に下方のユーロガイツⅡ5機はビットのタイムラグを予測し、シールドを最大出力にして回避行動をとった。その回避行動を予測し、セシリアのブルーティアーズがブルーツヴァイの青い刀身を振りかぶりユーロガイツⅡ五機に向かって急降下した。

 

 ブルーティアーズが高速の急降下をし、回避行動をとる1機のユーロガイツⅡに真上からブルーツヴァイの青いエネルギー刃が迫った。

 

 回避行動に専念するそのそのユーロガイツⅡは反応が遅れた。

 が、そのユーロガイツⅡに迫る青い刀身を、その左右の2機のユーロガイツⅡが突き出した二本のヒートジャベリンが受け止めた。

 

 ジュっと音がして、ブルーツヴァイの青い刀身が二本のヒートジャベリンの刃にめり込み受け止められる。ブルーツヴァイの青いビーム刀身には傷ひとつなかった。専用機と標準機の装備の性能差である。

 

「いいコンビネーションですわね」とセシリア。

 

 ブルーティアーズはユーロガイツⅡの編隊に交差して急降下していく。

 ユーロガイツⅡ5機は編隊を組みなおすと再び下方のブルーティアーズを追った。

 

 

 

 アレクサンダーの巨大なカタパルト甲板から、上空から青い尾を引いてブルーティアーズが降下してくるのが見えた。その後ろから5機のユーロガイツⅡが降下してくる。

 

 上空から降下してくるIS群を見てラウラが言った。

 

「教官、セシリアは苦戦しているようですね」

 

「先生といえ。…ふむ」

 

 ラウラが千冬を見ると、千冬は思案顔になり、無線を起動した。

 

「オルコット、聞こえるか?織斑だ」

 

 セシリアはブルーティアーズを海面スレスレで高速移動させながらユーロガイツⅡの榴弾を回避した。

 ブルーティアーズのソニックブームが海面を吹き上げ、海面に突き刺さった榴弾が巨大な水柱を上げる。

 

『織斑先生?どういたしましたの?今いいところですのよ?』

 

 海上で高速飛行するセシリアに千冬が通信する。

 甲板上ではIS学園の生徒とシチリアIS学園の生徒が盛大に声援をおくっていた。

 

「オルコット、ブルーティアーズの出力は今何分の一に設定している?」

 

 セシリアのブルーティアーズは海面から浮き上がり、さらにユーロガイツが発射した3発の榴弾をグネグネ蛇行するような高速のランダム飛行で交わした。

 

 3本の巨大な水柱が上がり、その水柱をつっきってユーロガイツⅡ5機がセシリアのブルーティアーズを追う。

 

『ブルーティアーズの出力ですか?いつものように1/3にしてありますわよ』 

 

 千冬の無線を漏れ聞いたサラが驚いていった。

 

「1/3?あの専用ISは出力をセーブしてユーロガイツⅡを5機も相手にしていたんですか?」

 

 千冬が無線ごしにセシリアに告げる。

 

「オルコット、そのことなんだが、今回は特別にブルーティアーズの出力制限の解除を許可する」

 

 セシリアは海上を高速移動しながら千冬からの無線を聞いて、小さく笑った。

 

「いいんですのね?了解しました。ブルーティアーズ出力制限を解除いたしますわ」

 

 次の瞬間、高速でブルーティアーズを追うユーロガイツⅡ2機が跳ね返るように突然吹き飛んだ。 

 ブルーティアーズのビームライフル砲である。出力制限を開放したブルーティアーズのビーム砲はほとんどタイムラグなしで、通常の質量弾の数倍のスピードで射出される。このビームライフルの回避は容易ではない。

 

 威力をコントロールした青いビームがユーロガイツⅡ二機のシールドを破壊し、戦闘モードを停止させたのだ。

 

 安全装置がはたらき、起動停止した二機にかまわずユーロガイツ1機が最大出力で突撃してくる。

 

 セシリアの専用ISブルーティアーズは遠距離レンジを得意とする砲撃特化型の専用ISである。このユーロガイツⅡの搭乗者は近接戦闘にもちこめば太刀打ちできると踏んだのだ。

 

 セシリアは後衛から二機のユーロガイツⅡが援護射撃している榴弾をかわしながら、ブルーティアーズの後進速度をさらに加速させた。

 最大加速で前進する1機のユーロガイツⅡをどんどん突き放していく。

 

 「くっ、追いつけない・・・!!」

 

 ユーロガイツの搭乗者がうめいた。

 

 出力制限を解除したブルーティアーズの後進速度はユーロガイツⅡの最大前進速度をはるかに上回る。

 高速機動するセシリアの専用ISブルーティアーズに接近できるのは日本のIS学園の専用ISでも極わずかである。

 次の瞬間、突然に最大出力で前進していたユーロガイツⅡの目の前からブルーティアーズが消えた。

 

「対象ロスト!?」

 

 速やかにユーロガイツⅡのレーダーを起動してブルーティアーズの現在位置を探索する。

 

 するとレーダーがユーロガイツⅡの真上に機影を発見した。

 そしてそれと同時に、真上からブルーティアーズの青いビームが機体の背部に突き刺さり、戦闘モードを停止し、高速で海面にたたきつけられた。

 

 セシリアが残りの二機のユーロガイツⅡをとらえると、二機ともがヒートジャベリンとライフルをかまえてブルーティアーズに突撃してくるのがわかった。

 

 見ると、二機のユーロガイツの搭乗者は二人の顔がまったく同じで髪の色だけが赤と黒で違う、おそらく双子のIS乗りだと推察された。

 さっきブルーティアーズのブルーツヴァイの刀身を二つのヒートジャベリンで受け止めたのはあの二機のユーロガイツⅡだった。

 

 海上でブルーティアーズをホバリングしながらセシリアは小さく笑みを浮かべた。

 

「かまいませんわ、遊んでさしあげてよ」

 

 そういうと、ブルーティアーズは青い両腕にビームブレードブルーツヴァイとビームライフルを構え、突進してくる二機のユーロガイツⅡに向かってブースターを起動し前進していった。

 

 アレキサンダーの甲板上のサラがそれを見ていった。

「あのユーロガイツ二機の搭乗者は双子なんだ。彼女らのコンビネーションの右に出るものはシチリアにいないよ」

 

 二機のユーロガイツⅡはセシリアのブルーティアーズが前進してきたのを確認すると、ブルーティアーズの左右に展開し、ちょうどブルーティアーズが球の中心になるように、ブルーティアーズをはさんで円状に移動しはじめた。

 

 それはまさにウロボロスの二匹のヘビのような動きだった、ブルーティアーズの前と後ろ、ピッタリと回転し、ブルーティアーズを中心に円状に回転する二機のユーロガイツが波状的にライフルとヒートジャベリンで攻撃してくる。

 

 セシリアは二機のユーロガイツⅡの軌道をレーダーを併用して確認しつつ、高速で攻撃をかわす。

 

 前方から突撃してきたユーロガイツⅡのヒートジャベリンをブルーティアーズの上体をそらせてかわすと、真上に加速して後方からの榴弾を回避する。

 

 反撃の隙を与えない波状攻撃である。

 

 セシリアのブルーティアーズが上方に移動してきたユーロガイツⅡにビームライフルの標準をあわせると、そのユーロガイツⅡはヒートジャベリンの投擲体勢に入っており、レーダーを見ると背後の下方からもう一機のユーロガイツⅡがブルーティアーズに向かって突撃してきているのがわかった。

 

 上方のユーロガイツⅡがISの人工筋肉をうならせ、下方のブルーティアーズに向かって全力でヒートジャベリンを高速で投擲する。

 

 ブルーティアーズがまるで戦車砲のような爆発力で投擲されたヒートジャベリンをかわすと、背後の下方から突進してきたユーロガイツⅡが高速で飛来したヒートジャベリンを回転しながらつかみ、二本のヒートジャベリンをかまえてブルーティアーズに突進した。

 

 目の前に背をむけたブルーティアーズが迫る。

 

 その瞬間、セシリアのブルーティアーズは背部のビットを二機射出、二つのビットが背後から突撃してきた二本のヒートジャベリンをうけとめた。

 

 そして反転する間に右手にとっていたビームライフルの銃口を至近距離でユーロガイツⅡに照準し、発射した。

 

 ブルーティアーズから発射された青いビームが下方のユーロガイツに突き刺さり戦闘モードを停止させ海面に叩きつけた。

 

 それと同時にビームライフルの反動を制御せずその反動で高速反転しつつ半回転しながら上方のユーロガイツⅡに左手のブルーツヴァイの青いビームの刀身をたたきつけた。

 

 上方のユーロガイツⅡはブルーティアーズの運動エネルギーがすべてのったブルーツヴァイの青い刀身を受けて戦闘モードを停止させ、数十メートル上空に打ち上げられてから、海面に突っ込み水柱を上げた。

 

 

 それを確認して千冬が声を上げる。

 

「それまで!セシリア=オルコットのブルーティアーズの勝利!」

 

 甲板からIS学園生徒の歓声が上がった。

 

 

 

 

 模擬試合を終えてユーロガイツⅡ5機とセシリアのブルーティアーズが甲板に着艦するとサラ=ハースニールがセシリアに声をかけた。

 

「すばらしいよセシリアさん。すごい運動性能と戦闘能力だ。あのウロボロスの双子がああもやられるなんてね」

 

「ありがとうございます。英国の代表候補生として当然ですわよ」

 

 セシリアは笑顔で答える。

 次にセシリアはブルーティアーズを兵器ドックに転送してからラウラにいった。

 

「ラウラさん。あなたがたの雪辱はこのセシリア=オルコットがそぎましてよ」

 

 セシリアにそういわれてラウラがばつがわるそうにする。

 

「ふ、フン。私はそんなことを頼んだ覚えはない。イギリスのIS乗りなぞに借りはつくらんからな」

 

「ふふっ、お強がりにならないでくださいな」

 

 セシリアがクスクス笑っていった。

 

 そしてセシリアがサラに向き直っていった。

 

「サラさん。よかったらあなたの専用ISも見せていただけませんこと?整備は終わっているのでしょう?」

 

 セシリアに言われて、サラがうーんと考える。

 

「いや、この場ではやめておくよ。グラビティカは出力の調整が難しくてね、万が一IS学園の人たちに怪我をさせては悪いし」

 

「あら、そうですの。それは残念ですわ」とセシリア。

 

千冬があたりを見回して叫んだ。

 

「ISの模擬試合はこれで終了とする。観戦していた生徒はレポートをまとめて後日提出するように。では解散!」

 

 

 

 解散をつげて千冬がアレクサンダー内の司令室に戻ろうとすると、千冬の前にラウラ=ボーデヴィッヒが歩いてきて敬礼していった。

 

「織斑先生!このたびは醜態をさらし、IS学園の名を汚してしまい申し訳ございませんでした!不肖このラウラ=ボーデヴィッヒ、いかなる罰も受ける所存です!」

 

 そういって敬礼したまままっすぐ千冬を見るラウラに、千冬は少し考えるとつぶやくようにいった。

 

「そうか、ではトレーニングルームで腕立て、腹筋、スクワット各800回。基礎体力を鍛えておけ」

 

「はっ!了解しました!」と、ラウラ。

 

「それとさっきユーロガイツⅡ二機と2on1になったときせめかたを考えていたな。チハ38式1機でユーロガイツⅡ2機に対峙したときのシュミレーションを3パターンレポートにまとめて提出しろ」

 

「はっ!」

 

「ではさっそくかかれ、夕食の時間にはちゃんと食堂に来るように」

 

 実際のところ、本来ならばこのような親善訓練で罰則など必要ないのだが、

ラウラの場合は何かさせてやったほうがむしろよいと千冬は考えていた。

 そしてそれで訓練にさらに身が入るならそれに越したことはない。

 

 敬礼してからその場をあとにするラウラと生徒たちを見送ると、千冬も甲板をあとにして司令室に向かった。

 

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