IS -other world order-   作:3×41

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第9話 訓練にて

 翌日の朝。セシリアはシチリアIS学園の近くの海上コテージのベッドで、柔らかい光を浴びて目を覚ました。

 セシリアが目をあけると、きれいな木目の天井がうつり、波が揺れる音が小さく聞こえる。

 セシリアがベッドから降りてベランダに出ると、まだ薄暗いコバルトブルーの海がのぞいた。近くに青い熱帯魚が遊泳している。

 そこから右手には自ら伸びる柱の上に作られた木製の海上コテージがいくつも並んでいるのが見えた。

 

 目覚めて海上を眺めていたセシリアに同室の同級生が声をかけた。

 

「おはようセシリア。せっかくだからバルコニーに朝食を準備しましょう?」

 

 セシリアも承諾して、二人はバルコニーでほの明るい海のそばで朝食をとっていた。

 バルコニーで朝食をとりながら同級生が話す。

 

「昨日は楽しかったわね。今日はシチリアIS学園で共同授業だっけ」

 テーブルに座って同級生が言った。

 

「ええ、そうですわね。今日はシチリアIS学園と合同で、午前は授業で、午後はISの機動訓練でしたわね」

 

「そっかー。私たちもシチリアの学生にまけてらんないねー」

 同級生の少女が言いながら目玉焼きののったトーストをもぐもぐ食べる。

 

 切磋琢磨の精神を養うとした千冬の言はある程度的を射たようで、セシリアも身の引き締まる気持ちだった。

 

 同級生の少女にセシリアもそうですわねと同意して朝食のサンドイッチを口に運んだ。

 セシリアたちIS学園の編成クラスの生徒は今日から数日間、シチリアIS学園で授業を受けることになっている。

 

 

 

 #

 

 

 

 シチリアIS学園03教室。

 ここでは千冬が両IS学園の生徒を前に授業を展開していた。

 千冬がたつ教壇の前にはセシリアやシチリアの生徒たちが授業を受けている。

 

「つまりISコアとの同調による特殊演算で、高度な光学迷彩を搭載することが可能になったわけだ。エネルギーは食うがな」

 

 千冬が黒板に図解しながらいくつかのISに搭載された光学迷彩について解説を進める。

 千冬の解説に、生徒側のセシリアが手を上げて質問した。 

 

「では光学迷彩を搭載したISと戦闘になった場合どのように対処すればよいのでしょうか」

 とセシリア。

 

「もっともな質問だ。姿が見えないというのはかなりやっかいだ。特にゲリラ戦闘においては接近さえ気づくことが困難だからな」

 と千冬が補足する。

 

「見えないんじゃぁ対処のしようがないのでは」

 とシチリア学園の生徒。

 

「あくまでやっかいだと言っただけだ。対処する方法はある」

 生徒が自ら考えることも重要なので、千冬は生徒たちの考えをまず聞く姿勢であるようだった。

 

『せんせー僕たちにも光学迷彩機能を搭載してくださーい』

 と教室の後ろのアルバニがいった。

 

「ふむ」

 

 教壇の千冬が生徒側を振り返って言った。

 

「なぜアルバニが教室にいるんだ」

 

「え?いやーそのー」

 

 教室の後ろに一台鎮座していた自律思考戦車がこたえる。

『みんながどうしても授業の内容を同期してほしいっていうもんで、僕たちだって経験をもっとつむべきかなーと』とアルバニ1号。

 

「はぁ・・・まぁいい」

 こめかみをおさえて千冬が続ける。この自律思考戦車を出席簿で叩いたところで何の教訓にもなるまい。

 

「ではこの場合の対処について意見のあるものはいるか?ハリー=アウシェンビッツはどうだ」

 

 千冬がまわりを見回して、ハリーを指した。

 

「光学迷彩ですか。そうですねー」

 

 ハリーは考えて、何か思いついた様子で続けた。

 

「そういえばレミーさんがISで中東ゲリラの対処に当たったときの話なんですが」

 

「そういえばそんなことがあったね」

 とサラ。

 ハリーがうなずいてこの場にいないレミーの話をはじめる。

 

「どうも敵側のバックがIS乗りを雇ったようで、そのISが光学迷彩機能を搭載したロシア製標準ISバジェットだったそうです。そのときはほかの兵力をあらかた無力化して、ちょうどそのときにバジェットに遭遇したそうなんですが、センサー類が一切きかなかったそうなので」

 

 千冬がうなずいた。

「そうだ。通常兵器の光学迷彩と異なりISの光学迷彩は高度でアクティブセンサーもパッシブセンサーもキャンセルする」

 

 ハリーが続ける。

「そのようです。そのときは地上戦だったので大体の位置を特定するとそこに細かい熱源を撒いて、その熱源の動きをセンサーで追ってバジェットの位置を特定して撃破したという話を聞きました」 

 

「そうか、悪くないな。」

 と千冬。

「基本的にISの光学迷彩はレーダーで捕らえることができない。しかしまわりの物質の動きによって実体を捕らえることは可能だ。また光学迷彩はエネルギーを食うので攻撃のほうにまわるエネルギーが少ない場合もある。相手の攻撃をさばいてから位置を特定する、という手段も悪い手ではない。もっとも、不可視の相手の攻撃をさばくこと自体が相当の難度だがな」

 

 千冬が黒板にそれらを記述してまとめ、次に手元の本をめくった。

「では次に遠距離兵器の基礎理論Ⅳに移る」

 

 生徒たちがその話をまとめ、ノートに書く。

 アルバニ1号はほかのアルバニ達と通信をとっているらしくせわしなく両手を動かしていた。

 

 

 

 #

 

 

 

 昼休み。

 セシリアはラウラたちとシチリア学園の食堂でテーブルを囲んでいた。

 

「襲われた?」

 驚いてセシリアがラウラに聞き返す。

 

「いや、正確には襲われてはいない。そのような兆候があった、ということだ」

 とラウラ。

 

「昨日の夜シチリアIS研究都市でのことなんだが…」

 セシリアにせかされてラウラが続ける。

「夜に街道を歩いていたときだ、それで曲がり角に入ったときなんだが、ちょうど人気がないときだったな。右側のビルの壁面が急に赤く染まりだしたんだ」

 

「赤く染まるって、色が変わったってこと?」

隣の女生徒がたずねた。

 

 ラウラが首を振る。

「いや、色が変わるというより、そうだな、鉄が赤熱するような感じだったな。すぐにレーゲンを転送して上昇して、まわりをレーダーで索敵したんだが」

 

 ラウラが不思議そうな表情をして続ける。

「器具の反応は何もなかったし、まばらに一般的な所持品しか持たない人体反応があるだけだった」

 

 セシリアが考え込むようにして言う。

「そうですか。しかし一応織斑先生に話しておいたほうがいいでしょうね」

 

「それなら既に話しておいた。ところで教官は午後からシチリアIS学園都市に向かうらしい。なんでも無人ISの試運転に立ち会うらしいな」

 

 

 昨日のサラの話といい。やはり何もないというわけではないらしい。セシリアは推論をめぐらしたが、いかんせん手がかりが少なすぎる。

 

 その後隣の女生徒が午後の授業について話しはじめた。

「午後はISの格闘訓練だねー。私格闘があんまり得意じゃないからなー。ラウラさん何かコツはない?」

 

 ラウラの話はいまだつかみどころのない部分が多すぎた。

 その後はISの近接機動について話ながら昼の時間は過ぎていった。

 

 

 

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 午後シチリアIS学園では、シチリアIS学園が面する海上に設営されている

コンクリートのグラウンド上でISの格闘機動訓練が行われていた。

 広い円状のグラウンドを青く光海が囲んでいる。

 その洋上のグラウンドの上ではユーロガイツⅡやチハ38式のISが入り混じってペアを組んで格闘機動訓練を行っていた。

 

 ブルーティアーズを装着したセシリアの近くではユーロガイツⅡとチハ38式がブースターを切ってISで高速で拳を押収している。

 

 セシリアはというとブルーティアーズの出力を1/3に設定してハリー=アウシェンビッツのユーロガイツⅡを相手にしていた。 

 

 ハリーのハリーのユーロガイツが走ってきて右腕を繰り出す。 

 セシリアがセンサーを併用して補足したその高速の右腕を首をひねってかわすとハリーはそのままの勢いで体を回転させ後ろ回し蹴りを放った。

 

 その回し蹴りを、セシリアは身をかがめてユーロガイツの左足をかわすと、そのまま左にグルリとまわって左後ろ回し蹴りを放った。

 

 ハリーのユーロガイツはそれを即座に左腕を掲げて受けると少し浮き上がって小さくたたらを踏んだ。

 

「セシリアさんは遠距離特化だと思っていましたが、やはり近接格闘まで動けるんですね。これでも私とアルジャーは近接機動はかなりいけるほうなんですが」 

 

「おほめにあずかり光栄ですわ。ISの戦闘はオールレンジですから。近接戦闘ももちろんかるんじてはおりません」 

 

「そうですね。サラさんもそのようなことをおっしゃっていました」

 

 ハリーがかまえをといてセシリアの視線を促す。

 セシリアがそちらを見るとサラのグラビティカが3機のユーロガイツⅡに囲まれているのが見えた。

 あれでは1対3だ。ハリーがセシリアに話す。

 

「シチリアIS学園には常態的に運用している専用ISはサラさんのグラビティカしかないので、ああやって数機の標準ISと出力を1/5にして訓練してるんですよ」

 

「1/5でユーロガイツⅡ3機を相手にするんですの?」

 

 ブースターを切ってユーロガイツⅡ3機を一度に相手にする訓練をするというのだ。

 セシリアはハリーの言葉に驚いてサラのほうを見た。

 

 

 3機のユーロガイツⅡに囲まれた黒い全身鎧のような専用IS、グラビティカをまとったサラが両腕を上げた。

 

「それじゃぁいいよ。先に来ていい」

 

 サラがそういうと、三方向のユーロガイツⅡが一斉に中央のグラビティカに向かって走って殺到した。

 ユーロガイツⅡがそれぞれ拳を振りかぶる。

 三方向から一斉に拳が放たれると、サラのグラビティカは両足に力を入れ後ろに跳躍した。

 

 グラビティカが縦長の黒い弧を描いて1機のユーロガイツの後ろに着地すると、すぐ右腕を振りかぶり、そのまま前方のユーロガイツの背後に右拳を放った。

 そのユーロガイツはそれにすぐ反応し、しゃがんでグラビティカの拳をスレスレでかわすとそのまま後ろ足を蹴りだした。 

 

 グラビティカはその後ろ蹴りをスウェーでかわすと、そのまましゃがんで体を回転させ、右足を軸に左足で水面蹴りを放った。

 

 グラビティカの下段まわし蹴りがユーロガイツの両足を払ってそのユーロガイツが横向きに宙に浮いた。

 グラビティカはそのまま立ち上がりざまにそのユーロガイツをしたから蹴り上げた。 横向きに浮いたユーロガイツの胴をグラビティカの左足が下から突き刺さり、ユーロガイツを上空に吹き飛ばした。 

 

 その瞬間サラの左から別のユーロガイツが殴りかかってきた。次の瞬間、ユーロガイツの目の前のグラビティカが消えた。

 空中にとんだグラビティカが滞空しながらそのユーロガイツに上から右足を真下に振り下ろす。

 振り下ろされた右足がユーロガイツをとらえ地面にたたきつけた。

 

 グラビティカは蹴りの反作用でふわりと空中に浮き上がり、地面に降りたときにはもう一機のユーロガイツが向かってきた。

 グラビティカはユーロガイツから突き出された右腕を交わし、ましたにもぐりこむと、右腕を真下にふりかぶり、その腕をユーロガイツの腹部に突き上げた。

 

 グラビティカの黒い右腕がユーロガイツの腹部に突き刺さりユーロガイツの重い機体を少し上方に浮かせた。

 その瞬間、サラのグラビティカは背部に6つ半球埋め込まれたビットを起動。

 背部の六つのビットのすぐ後ろから極小の6つの斥力球が発生しグラビティカが瞬時に加速した。

 

 グラビティカは強力に加速しながら体を横にむけ、そのまま上に浮いたユーロガイツに背中ごしに体ごとうちつけた。

 

 グラビティカの運動エネルギーをまともに食らったユーロガイツはそのまま後ろに吹き飛び、グラウンドから海上に飛び出すと海の上を高速で4、5回はねてそのまま海の中に沈んだ。

 

「ふぅ、こんなもんかな」

 とサラ。

 

「サラさん、鉄山功は反則ですよ…」

 近くにいたシチリアIS学園の女生徒が言った。

 

「あの子気絶してるんじゃないかな」

 別のユーロガイツに搭乗した女生徒が海に沈んだユーロガイツのほうに飛行していった。

 

「ごめんごめん、でも私のグラビティカだって出力をできるだけおさえてるんだからおあいこだろう」

 サラがすまなそうに、しかし朗らかな調子で言った。

「じゃぁ次の人たちお願いするよ」

 

「は、ハードなトレーニングをなさってるんですのね」

 それを見てセシリアが困惑まじりにつぶやいた。

 

 

 

 #

 

 

 

 他方千冬はシチリアIS研究都市で、無人ISの試験運転に立ち会うために、

昼からシチリアIS研究都市に出向き、とあるビルの研究区域にいた。

 

 試作無人ISをガラス越しに見つめる千冬に白衣を来た研究者が歩いてきていった。

 

「本日はようこそおいでくださいました織斑さん」

「まさか試運転にモンドグロッソ優勝者に立ち会っていただけるとは光栄ですよ」

 と研究者。

「いえ、それで、今回の試運転するISというのは」

 千冬は行って、巨大な研究室の中央を見た。

 

 巨大な研究室の中央には3つのISが設置されており、中央のISはひときわ大きかった。

 その腕はISの胴体くらいに太く、また背中から肩にかけて、両肩に大口径のライフル砲が備えられている。

 

「あの中央の黒いISは?」

 千冬がたずねる。

 

「ああ、あのISですね、お目が高い」

 研究員が続ける。

「あれはC2Sと呼んでいます。その隣の二つのISが見えますでしょう?」

 男が促して続ける。

「あの二つの無人ISは中央のC2Sに官制されます。無人ISの基本的な弱点であるアルゴリズムの脆弱性を補強するのが目的です。そしてあの二つの無人ISはそれぞれ一つのISコアを使用しており、中央のコアツーストラトス、C2Sは二つのISコアを使っています」

 

 二つのISコア?千冬は少し目を見開いた。

 

「二つのISコアを直列励起することで従来とは比べ物にならない出力が出せると試算されています。そしてこれが成功すれば二つだけでなく、三つ、四つと使用するコアを増やし、また新たな人工コアを代用することまでできるようになるかもしれません」

 

 なるほど「夢」のような話だ。千冬はアゴに手をやって考えながらいった。

 

「なるほど、理論としてはありえるかもしれません、しかし」

 言葉を切って千冬が続ける。

「ISコアの多重励起は人間でも成功例がありません。それを無人でやるのは容易ではないと思うのですが」

 

「確かに、それは事実です。ですから不確定要素がないとはいえません。その点については強固にセキュリティをしいています」 

 

 男が合図をする。すると、3機の無人ISのまわりの女生徒3人がそれぞれユーロガイツⅡを装着した。

 なるほど強固すぎるセキュリティだ。千冬も同意した。しかしその実験素材もまたISだ。油断はできない。

 

 

 「それでは試験運転を開始する。コアを起動しろ!」

 男が合図をすると近くの研究員がマニピュレーターを操作した。

 

 3つのISに動力が供給され、三つの大小の黒いISの目が赤く輝いた。

 

 右側の随伴ISが右腕を持ち上げる。

 

「起動した!実験は成功だ!!」

 千冬の隣の研究員が感動とともに声を上げた。しかしそれは尚早だった。

 

「えっ」

 ユーロガイツⅡの少女がつぶやいたとき、すでに小型の随伴ISの榴弾が目の前に迫っていた。

 ユーロガイツに榴弾が突き刺さり、爆発しユーロガイツの起動を停止する。

 

「なっ・・!?」

 研究員が混乱しながらうめくようにいったとき。

 C2Sの右肩の巨大砲が輝き、ユーロガイツⅡに発射した。

 

 そのユーロガイツⅡの少女が即座に反応、シールドを最大エネルギーで展開した。

 だがC2Sの超高速炸薬弾がユーロガイツⅡのシールドを突き破って炸裂し、そのユーロガイツを停止させた。

 コアを2つ直列励起させたC2Sは出力において完全にユーロガイツⅡを上回っている。

 

「実験は中止だ!ISをとめろ!!」

 男が叫んだとほぼ同時に、ユーロガイツⅡがC2Sに向かって榴弾ライフルを発射した。

 

 高エネルギーの榴弾がC2Sに向かう。

 

 CS2は右腕をそちらに構えると、構えた右腕のまわりに赤い光球が発生し、榴弾の爆発を防いだ。

 

「あれはC2Sのエネルギー兵器です」

 研究員の男がつぶやくように言った。

「光球でシールドを強化し、また両肩の高出力砲台に加え攻撃にも使えます」

 

 研究員が言った次の瞬間にはC2Sがユーロガイツに両腕を掲げ、いくつもの赤い光る球が嵐のようにユーロガイツを襲った。

 ユーロガイツⅡは数十発の光弾に被弾し機能を停止した。

 

「そ、そんな。ISが、ユーロガイツⅡが・・・」

 男がうめく。

 3機のユーロガイツは、C2Sとその随伴機によって絶対防御が発動し、戦闘機動不能状態に陥ってしまった。

 

 千冬はまずいと思った。もうこの場に兵器はない。

 

 C2Sはあたりをうかがい。壁のひとつを見据えると、そちらに左肩の巨砲を放った。

 その爆風で壁をやぶると、一方向にむかって飛び去った。

 

「あ、あの方角は・・・」

 研究員がつぶやくようにいった。

「あの方角はシチリアIS学園のほうだ。ISに対する攻撃命令は生きてるんだ!このままではシチリアIS学園が壊滅する!!」

 男が叫ぶ。

「し、至急シチリア学園に連絡しろ!!まだ何人かは助かるかもしれん!!」

 緊急事態だ。そういった男は次に千冬を見て、この事態にもかかわらず、千冬が平静を保っている様子でいることをいぶかしんだ。

 

 

 

 #

 

 

 

 シチリアIS学園

 

 海上のコンクリートのグラウンドに向かって1機のユーロガイツが飛んできた。

 

「大変です!!シチリアIS学園都市で試作無人ISが暴走!!シチリアIS学園のISを標的に高速で接近中とのことです!!みんな速やかに避難してください!!」

 

 それを聞いて、セシリアがシチリアIS学園都市のほうの空を見ると、すでに三つの黒い影が飛行してきているのが見え、次に陸地のほうから2機のISが飛び立つのが見えた。

 

 全員に通信が入る。

 

『こちらユーロガイツⅡのツーバディ!私たちがあれを止めます!みなさんは避難してください!!』

 

 逃げるにしても、標準ISではC2Sの速度から逃れることはできない、となれば学園のシェルターに避難することになる。それも、迅速にである。

 

 シチリアの上空で、時間稼ぎのためにC2Sに向かったユーロガイツⅡが黒いISにライフルの銃口を向けた。

 そのとき、すでにC2Sから放たれていた数多の赤い光球がそのユーロガイツⅡに突き刺さり、後方に吹き飛ばした。

 

『アマンダ!』

 

 もう一機のユーロガイツⅡの少女が叫んだとき。そのユーロガイツⅡを黒い影が覆った。

 

 高速でユーロガイツの上に移動していたC2Sがユーロガイツの真上から右肩の高圧砲を発射した。

 超高速で榴弾がユーロガイツに突き刺さり、炸裂してユーロガイツを真下に吹き飛ばした。

 

 ユーロガイツが真下に吹き飛ばされているときにさらにC2Sの左肩の高圧榴弾が着弾し、

 さらに吹き飛ばされて地面に激突した。

 その衝撃波が洋上のグラウンドにまで空気の振動で伝った。  

 

 そのときC2Sの脇を二つの随伴機が高速で飛翔し洋上のグラウンドに向かった。

 

 

「無人ISが二機来ます!」

 叫び声があがる。二機の無人ISが目前の空を加速してくる。

 その目的はISの徹底的な破壊である。

 

 そのとき叫んだ少女の横を黒い影が通った。

 

「私が出るよ」

 そういったのは黒い全身鎧のようなISグラビティカに身を包んだサラだった。

 

 サラは加速してくる二機の無人ISに向かって駆け出し、重力子ブレードを抜いた。

 

ダンダンダンダンダンダン!

 

 走り、グラビティカが加速する。次の瞬間、サラはグラビティカの片足に力をこめ、

強力な脚力で跳躍した。

 

 サラのグラビティカが高く弧を描き高速で2機の無人ISと交錯する。

 

 サラのグラビティカの黒い重力子ブレードが、目前の無人ISの胴をバターのように切り裂くと、その後ろでヒートブレードを振りかぶっていた無人ISの斬撃を、頭を中心に体を持ち上げ、頭をしたにしたまま避けて体を回転させ、そのままの勢いで重力子ブレードの黒い刀身で無人ISの首を切り飛ばした。

 

 それとほぼ同時に、その後方にいたC2Sがサラのグラビティカのほうに両腕を掲げると、その両腕から発生した数多の光球と両肩の巨砲を嵐のように放った。

 それらの砲弾の嵐がサラのグラビティカに吸い込まれる。

 

「サラさん!?」

 

 高出力のエネルギー掃射を全段まともに受けてしまった。

 それを見ていたセシリアが青ざめてうめくようにつぶやいた。

 

「サラさんは大丈夫ですよ」

 ハリーが狼狽するセシリアを安心させるようにいった。

 

 C2Sが放った砲弾はすべてサラのグラビティカの手前で静止していた。

 正確には静止しているのではなく、グラビティカが前方に発生させた三つの重力球のまわりを衛星のように高速で回転している。

 

「私のグラビティカに遠距離兵器は効かない」

 

 サラのグラビティカは重力球の回りを衛星のように回転するすべての砲弾を回転がC2Sのほうを向いたときに開放し、C2Sにすべての砲撃を跳ね返すと、同時に脚部に斥力球を発生して、強力に蹴ってC2Sに加速した。

 

 砲弾の嵐がC2Sに着弾する。

 C2Sはそれらをシールドで防御した。

 

 そのときC2Sの眼前にサラのグラビティカが高速で接近し、重力子を発生させたグラビティカの右腕を振りかぶり、C2Sに放った。

 

 高密度の重力子の超質量の右腕がC2Sの胴部にめり込み、C2Sを後方に吹き飛ばした。

 

 同時にサラはグラビティカの両腕に重力子を展開し、それぞれ振りかぶると目の前を何発も殴りつけた。

 

 グラビティカから拳大の重力子がいくつも疾走し、それらがいくつもC2Sに着弾しさらに吹き飛ばし、グラビティカの脚部にさらに斥力球を発生させると強力に蹴って超加速してC2Sに迫った。

 

 グラビティカはC2Sに加速しながら背部のビットを3つ前方に展開、C2Sの手前の空間の重力を超加速し、3重展開された加速重力場がC2Sの前半分を瞬間にこそぎとった。

 前半身を失ったC2Sは大破してそのまま地面に墜落した。

 

「ふぅ、こんなもんかな」

 空中にただよいながらサラがつぶやいていった。

 

 

 

   #

 

 

 

 サラのグラビティカがゆっくりと海上のグラウンドにもどってきた。

 

「ふー、それじゃぁ続きをやろうか」

「いや、続きじゃないですよ」とハリー。

 

 え、と言ってサラが指導教員に確認する。これだけの騒ぎがあったのだからハリーの判断のほうが正しかったが、無人ISの回収は専門機関が行うということだったので、その後はそのままISの格闘訓練が続行された。

 

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