「暗くて何も見えないんだけど!?」
「わわ、私は今どこに向かって歩いているんですか〜?」
『ここは私の領域。このままファイトをせずに貴様らを始末する事など容易い。だが、貴様の要望に応じて相手になると言ったからな。バディファイトで圧倒的な力の差を思い知らせとの命令もされた事だ。ファイトで決着をつけるとしよう』
暗闇の中に響いたグラディの声が止むと、目も開けられないほどの眩しい光が暗闇を払った。ケンヤと冥鈴は反射的に両腕で視界を遮り、しばらくして両腕を広げた。
「こ、ここは…?」
そこに広がっていたのは、真っ暗な空と真っ黒で形しか分からない建造物がどこまでも続く世界だった。今ケンヤがいる場所辺りだけは空間が存在し、その中央には枯木が1本立っており、その側に冥鈴が呆然と立ち尽くしていた。
『私が適当に生み出した空間だ。私が許可した者しか入る事はできない。何故か余計な者がいるが』
「……ほぇ?わわ、私の事ですか!?」
「他のみんなはどこに!」
『安心しろ、少なくとも死なない空間だ。貴様がこのファイトで負ければ分からんがな』
「くっ…!冥鈴ちゃんは下がってて!あと開始宣言お願い!」
「あ…は、はい…って私がですか!?」
「“数多の輝きが、新たな伝説の架け橋となる!”
ルミナイズ!【レジェンズ・ヴィジョン】!」
ケンヤはルミナイズすると同時に、カースを背中に回していた鞘にしまった。
『“無限の暗黒が貴様の世界を閉ざす”
ルミナイズ、【シャドウ・カイザー】』
グラディがルミナイズするとグラディの影の形が変わり、自身を覆うような円陣となった。そして、グラディの右側の影から黒い腕が現れ、その掌にはコアガジェットが埋め込まれていた。
「うぅ〜…も、もうやるしか…。ば、バディー……ふ、ファイッ…!」
「『オープン・ザ・フラッグ!』」
「レジェンドワールド!」
ケンヤがフラッグを公開した。
『マジックワールド』
続いてグラディもフラッグを公開する。
「ボクの先攻!ドロー!チャージ&ドロー!早速バディ装備!《無彩色の魔剣 カース》!」
ケンヤは灰色の剣を鞘から抜き出した。
ケンヤ
【ライフ 10→11】
【手札 7→6】
カース
『うむ。我が力、存分に振るうといい』
A3000 打1
「先に言っておくけど、カースは相手のカードの効果では破壊されず、場からも離れない上、能力を無効化されないからね!」
『完全耐性の武器か』
「それ以外に能力は一切無いけどねー」
「攻撃力3000、打撃力1、能力は効果耐性だけ。そそ、それって、あの…その…なんというか…よ、弱く…ないですか…?」
「はっきり言って弱いよ。でも、逆に言えば無限の可能性があるって事!《
ケンヤ
【手札 6→4】
【ゲージ 3→2→6】
エルルーン
『神意をお伝えしましょう』
S2 A6000 D2000 打2
「エルルーンでファイターにアタックして、能力で1ドロー!」
ケンヤ
【手札 4→5】
グラディ
『ほう…』
【ライフ 10→8】
「これでボクはターン終了だよ」
『私のターンドロー、チャージ&ドロー。キャスト、《ナイスワン!》で2ドロー。さらに《セフィロトの講義》でデッキの上から2枚をチェックし、1枚を手札に加え、もう1枚をゲージへ』
グラディ
【手札 7→8】
【ゲージ 3→2→3】
「うわぁ、マジックワールドでありがちな動きー」
『ゲージ2を払い、《影絵の奇術師 シルエット・ジョー》をドロップゾーンの魔法1枚をソウルに入れてセンターにコール』
グラディ
【手札 8→7】
【ゲージ 3→1】
ジョー
『ショータイムですゾ♪』
S2 A7000 D4000 打2 ソウル1
『キャスト、《ザ・シェイド》。このカードをシルエット・ジョーのソウルに入れ、ゲージ1プラス、1ドロー。さらに、《シルエット・マックス》をライトにコールし、能力発動。シルエット・ジョーのソウル2枚を捨てる事で2ドロー。そして、ゲージ1を払いドロップゾーンの魔法2枚をソウルに入れ、我が分身、《影魔竜 グラディ》をライトにバディコール』
グラディの影がライトエリアに侵食し、マックスを飲み込んだ。しばらくしてその中からもう1体のグラディが姿を現した。
グラディ
【ライフ 8→9】
【手札 7→6→8→7】
【ゲージ 1→2→1】
グラディ
『貴様らに安楽死などありはしない』
S1 A3000 D3000 打2 ソウル2
ジョー
〈ソウル 1→2→0〉
『グラディの能力発動。登場時に私の場のカードのソウルの枚数分、貴様にダメージ1を与える』
ライトエリアにいるグラディが杖を掲げ、魔法陣を生み出した。その直後、魔法陣から紫のオーラを纏った禍々しい弾が2発放たれた。
ケンヤ
【ライフ 11→9】
「ソウル増えたり減ったり忙しいね…。ボクにはとてもじゃないけどそんなトリッキーな戦術はできないなぁ」
『この程度もできんとは貴様は実に小さな脳なのだな』
グラディは人差し指で自身の側頭部をコツコツと叩き、ケンヤを煽った。
「ッハァ!?ボクもみんなと同じサイズの脳なんですけどぉ!?」
『キャスト、《トリック・オア・トリック》。ドロップゾーンの魔法とこのカードをシルエット・ジョーのソウルに入れる。さらに手札の《影絵の芸術家 シルエット・オリバー》をシルエット・ジョーの、《影絵の音楽家 シルエット・フーゴ》をグラディのソウルに入れる。最後に《イリュージョン・ザ・シェイド》を設置』
グラディがケンヤを無視して使った魔法とドロップゾーンにあったザ・シェイドがシルエット・ジョーのソウルに入り、手札のモンスター2体がそれぞれシルエット・ジョーとグラディのソウルに入った。
グラディ
【手札 7→3】
ジョー
〈ソウル 0→3〉
グラディ
〈ソウル 2→3〉
「そっちから煽っておいてボクを無視するなよ!」
『気にするな、くだらん遊戯だ』
グラディはケンヤを嘲笑った。
「くっそう!エルルーンをセンターに移動!」
「ああ、あの…!れれ冷静にならないと、ぷ、プレイングミスを…しししてしまいますよ…!」
『落ち着け。相手のペースに乗るな』
「もう大丈夫!ボクは今冷静さ!そう!冷静だ!」
『イリュージョン・ザ・シェイドの能力により、デッキの上から1枚をグラディのソウルに加え、そのソウルからカード1枚を手札に加える』
グラディはナイスワンを手札に加えた。
グラディ
【手札 4→5】
『シルエット・ジョーでエルルーンにアタック。ソウルのシルエット・オリバーの能力でシルエット・ジョーはこのターン、攻撃力+3000、貫通、2回攻撃を得る』
「てんこ盛り能力!」
ケンヤが強力な能力に驚いている間に、シルエット・ジョーが手に持つムチでエルルーンを破壊した。
ケンヤ
「貫通痛い!」
【ライフ 9→7】
『さらに、2回攻撃!』
「キャスト、《エリネドの指輪》!攻撃を無効化し、手札1枚を捨ててライフ1プラスし、1ドロー!捨てられた《投影外郭 ルーク》の能力発動!ボクのデッキの上から2枚を見て、1枚を手札に加えて、もう1枚をゲージに置く!」
ケンヤ
【ライフ 7→8】
【手札 5→3→5】
【ゲージ 6→7】
『我が分身で、ファイターにアタック』
『自らの影にやられるがいい…!』
グラディが杖の先端を光らせると、ケンヤの影が動き出し、ケンヤの前に立ち塞がった。
「黒いボク!?」
『………』
影ケンヤは拳を握り、勢いよくケンヤの頬に衝突させた。
「痛ぁ!!」
ケンヤは影ケンヤの強烈なパンチを喰らい、吹っ飛んだ。
ケンヤ
【ライフ 8→6】
「け、ケンヤさん…!だだ、大丈夫…ですか…?」
『グラディの能力発動。ライフ1を払い、ドロップゾーンの魔法2枚までを私の場のカードのソウルに入れる事ができる。私はドロップゾーンの《セフィロトの講義》と《ソロモンの鍵 上巻》を自身のソウルに入れる』
グラディ
【ライフ 9→8】
グラディ
〈ソウル 3→5〉
『さらに、ソウルに入れたカードのソウル2枚につき貴様にダメージ1を与える。グラディのソウルは現在5枚。よって、2ダメージ受けてもらう』
グラディは再び魔法陣から魔法弾を2発放った。
ケンヤ
「ぐああっ!」
【ライフ 6→4】
『シルエット・フーゴがソウルにあるシャドウシェイドの能力で貴様にダメージを与えた時、貴様のゲージ1枚を破壊する!』
ケンヤ
【ゲージ 7→6】
『ターン終了だ』
「ボクのターンドロー!チャージ&ドロー!キャスト、《マーリンの助言》!(あのカードを引かないと…!)3枚チェック!(まぁ、そう上手くいかないよね…)ボクは
《
ケンヤ
【手札 6→4】
【ゲージ 7→8→7】
ランスロット
S2 A3000 D3000 打2 ソウル1
「ランスロットはドロップゾーンの英雄属性のカードの種類分、攻撃力が1000プラスされる。今、ボクのドロップゾーンには5種類の英雄属性のカードがあるから、5000プラス!さらに能力発動!手札1枚を捨てて、相手モンスターを破壊できる!ボクはグラディを破壊する!」
ケンヤが手札を捨てると、ランスロットがグラディに対して剣を突いた。しかし、全く剣先が届いてない。
『グオオ!?』
だがグラディは破壊された。一瞬の突きによる衝撃波によって。
ケンヤ
【手札 4→3】
『ソウルガード』
グラディ
〈ソウル 5→4〉
「ランスロットはこの能力を使ったターン、2回攻撃を得るよ。そして、さっき捨てたのはアルヴィドル。ゲージと手札を増やすね」
ケンヤ
【手札 3→4】
【ゲージ 7→8】
「ランスロット!ライトのグラディに2回アタックだ!」
ケンヤが命令を下すとランスロットはライトエリアにいるグラディに、1回目は左肩下がりの方向で斬撃を与え、2回目はその逆の右肩下がりの方向で斬撃を与えた。
『ソウルガード』
グラディ
〈ソウル 4→2〉
「ボクも行くよ!はぁっ!」
ケンヤがカースを握り、グラディに下から上に向かって斬りつけた。
『まだだ、ソウルガード』
グラディ
〈ソウル 2→1〉
「ターン終了だよ」
『私のターンドロー、チャージ&ドロー。キャスト、《ナイスワン!》。さらに、グラディの能力発動。ドロップゾーンのソロモンの鍵とソロモンの盾をシルエット・ジョーのソウルに入れ、シルエット・ジョーのソウルがこれで5枚となるため、ダメージ2を受けてもらう』
グラディ
【ライフ 8→7】
【手札 6→7】
【ゲージ 2→1】
ジョー
〈ソウル 3→5〉
ケンヤ
「うぐぁっ…!」
【ライフ 4→2】
『ソウルのシルエット・フーゴの能力でゲージも破壊。キャスト、《トリック・オア・トリック》。ドロップゾーンのセフィロトの講義とこのカードをグラディのソウルに入れ、さらにもう1枚キャスト。今回は2つ目の効果、グラディのソウル2枚を捨てて《
「だったら、《
グラディ
【手札 7→5】
ケンヤ
【ゲージ 8→7】
グラディ
〈ソウル 1→2〉
ランスロット
〈ソウル 1→0〉
『ソウルから捨てられたシルエット・フーゴの能力発動。ランスロットを手札に戻してもらおう』
ケンヤ
「やばっ!移動するつもりだったのに〜!」
【手札 4→5】
『シルエット・ジョーの能力発動。ソウル2枚以上全てを捨て、ダメージ2を与える。ただし、5枚以上捨てたのなら6ダメージを与える』
ジョー
〈ソウル 5→0〉
「でもそのダメージは《
『その通りだ。だがこれで次からはダメージが通るようになる。シルエット・ジョーとグラディのアタックがあれば十分貴様を屠れる』
「くっ…」
『私のアタックフェイズ開始時、イリュージョン・ザ・シェイドの能力でグラディのソウルを追加し、そのソウルからセフィロトの講義を手札に加え、キャスト。手札とゲージを増やす』
グラディ
【手札 5→6】
【ゲージ 1→2】
『シルエット・ジョーでアタック!』
「キャスト!《
グラディの影から無数の腕が伸びて、血濡れの聖杯を飲み込み消滅させた。それだけで済むかと思いきや、その腕はケンヤの手札に伸びていき、5枚のカードの内3枚のカードを奪い去っていった。
「あ!ボクのカード返せー!!」
『魔皇帝の封魔術は私の場に帝竜がいる時、ターンの終わりまで相手の魔法を封じる…!』
「魔法を無効化するだけじゃなくて、そのターンの魔法の使用も禁止するの!?」
『そうだ。そして貴様は魔法を無効化されてシルエット・ジョーのアタックを無効にできておらず、防御手段の無い貴様は、終わりだ』
「ゲージ1を払い、ドロップゾーンの《投影外郭 ルーク》の能力発動!」
『何!?ドロップゾーンからの能力だと!?』
「ルークをデッキの下に置いて、ボクに対するアタックを無効化する!」
ケンヤが能力の説明をした後、ドロップゾーンから弓と剣を持った黄金の騎士が現れ、剣でシルエット・ジョーの攻撃を跳ね返した。
「さらに、ボクのライフを2プラスする!」
ルークは弓を引き絞りケンヤに放つと、ケンヤの周りに金色の粒子が漂い、すぐにケンヤに吸収された。その様子を見守ったルークはケンヤのデッキへと帰って行った。
ケンヤ
【ライフ 2→4】
【ゲージ 7→6】
『この死に損ないが…!我が分身でファイターをアタック!』
ケンヤ
「うぐっ…!」
【ライフ 4→2】
『所詮は首の皮1枚繋がっただけだ。次のターンで終わりにしてやろう。ターン終了』
「ボクのターンドロー、チャージ&…ドロー!カース、ようやく見せ場が来たよ!」
『うむ。ついに引いたのだな』
「その身を紅蓮の色に染め上げて、全てを焼き切るほどに燃え上がれ!装備!」
ケンヤがカースを両手で掲げた。するとカースはみるみる灰色から赤色に変色していき、完全にカースが赤色になると、刃から激しく炎が燃え上がった。
「《爆炎魔剣 レッド・バーニング》!!」
『我…いや、俺は!紅き炎の魔剣、レッド・バーニング!』
「な、なんかすす、すごく性格かか、変わりましたね…」
「色が変わると性格まで変わっちゃうみたい」
ケンヤ
【手札 6→5】
レッド・バーニング
A15000 打4
「せせ、性格だけではなく…けけ、剣の形状まで…!」
「これがカースの真骨頂!最初は色が無くて弱いけど、こうやって色を変える事で強くなる!」
「みみ、未知数…という…こ、事ですね…!」
「このレッド・バーニングは、1度に相手のモンスターとファイター全てにアタックができる!」
『何だと!?』
「おりゃああ!!」
ケンヤがグラディとその分身、シルエット・ジョーに攻撃できるようレッド・バーニングを横に振ると同時に炎が燃え盛った。2体のモンスターは破壊され、グラディ本体にダメージが与えられた。
グラディ
『グハァ…!』
【ライフ 7→3】
「2回攻撃!これで終わりだぁ!!」
ケンヤは攻撃を終えると、すぐさまグラディを斬ろうと飛んで行った。
『キャスト!《ソロモンの盾》!』
グラディの目の前に魔法の壁が現れ、レッド・バーニングの攻撃を防いだ。
『もう貴様にはアタックできるカードがない。ターンを終了する事だな』
「悪いけど、このアタックでファイトは終わりだぁ!キャスト!《ブレッフェン・ガルド》!ソロモンの盾を…無効化する!!」
ケンヤは蹴りでソロモンの盾を破壊した。
「けけ、蹴りー!?」
『な、何だと…!』
「だぁりゃあー!」
グラディ
『グォォォ!!』
【ライフ 3→0】
ファイトが終わってグラディの空間が消え、ケンヤと冥鈴は元の場所に戻って来た。他の人達もそれにつれて目を覚ました。
「ボクの勝ちー!ほら、ボク勝ったんだからヤイバ君を返してよ」
『いいだろう、約束は約束だ』
グラディの影が前方に伸びて、その中から気を失ったままのヤイバが姿を見せた。その直後、皐月が心配して飛んで来た。体のあちこちを確認してどこにも怪我が無かった事が分かるとほっと胸を撫で下ろした。
「ああ、あの…彼の手当てを…しし、しますね…!」
『お願いします…!』
「でで、では…作業に再び取り掛かるので、ドアは開けないでくださいね…?」
冥鈴はヤイバを引きずって別の部屋へと入っていった。
『貴様らは呑気だな』
「ん〜?どゆこと?」
ケンヤが少し考えて聞き返した。
『私はヴァルズァック様の命令でここを訪れた。他の帝竜も同じくヴァルズァック様から命令を受けて動き出しているだろう。ヴァルズァック様の目的の為に』
「ヴァルズァックの目的って何よ?」
真っ先にシノンが聞いた。
『全帝竜で地球を侵略し、我ら帝竜が支配する事だ』
「ち、地球を支配!?」
『ヴァルズァック様曰く、不平等の無い世界を新たに築き上げるそうだ』
「不平等の無い世界…ステキじゃないですか」
「あなたはどっちの味方なのかしら?」
「私はヴァルズァック側に入るとは言ってないですよ。ただ、不平等の無い世界という言葉に感銘を受けただけですよ」
『私はこの辺りで退くとしよう…。さらばだ、愚かな民共。精々束の間の幸せを堪能しているがいい。クックック…ハッハッハッハ!』
グラディは影となり、地面を這ってこの場を去った。
「や、ヤバイよ!このままじゃ地球が〜!」
「落ち着きなさい、リン。ヴァルズァックの部下って事は、ファイトでどうにかできるハズよ。帝竜に出会ったらファイトをして倒せばいいわ。リンならエクシードフォースを使ってボコボコにしてもいいわね」
「冷静に考えてみれば確かにそうかも…。じゃいっか!」
(リン、本当に分かってるのかしら…)
「あ、そういえばシノンちゃん、優勝トロフィーどこ?」
「トロフィーならJOKERがリンの家に置いて行ってくれたわ」
「失くしたと思ったから安心したぁ…。そうだ!シノンちゃん!」
「今度は何かしら?」
「カイト君が使ったカード、説明しとくね?」
「!…聞かせて」
シノンはいつになく真剣な表情で聞いた。
「え〜っとねぇ…」
リンはカイトがファイトで使用したカードの詳細を説明した。シノンだけでなく、その場にいた他の人も一緒に聞いた。
「フラッグや魔法を変える能力。そしてヴァルズァックは耐久力が優れている。なるほど…。教えてくれてありがとう、リン」
シノンは話を聞き終えると、リンにお礼を言ってベッドから降りた。
「もう大丈夫なの?」
「えぇ、もうすっかり平気よ。あなたにも一応お礼は言っておくわ、JOKER」
「いえいえ。それでは、私はもうここにいる理由が無くなったのでこれで。帝竜の事は、出会ったら追い払うくらいで協力させてもらいます」
JOKERはいつものごとく、パチンッと指を鳴らして姿を消した。ただ、シノンとリンには律儀にドアから歩いて出て行く様子が確認できた。
「ボクも今回みたいに帝竜退治に協力させてもらうね!それじゃあ、冥鈴ちゃんの様子でも見に行こっかな〜」
ケンヤは部屋からスキップしながら出ていった。
「全く…リンとそっくりね。私達も彼女の所へ行くとしましょうか」
「私とそっくりってどーゆー事?ねーねー?」
シノンはリンの質問に答えず歩いて行った。
「そろそろリンには7年前の事を思い出してもらいたいものですねぇ…。ヴァルズァックも本気で地球を支配するようですし」
冥鈴の隠れ家を出たJOKERは独り言を言っていた。ある程度離れた所で、誰かに電話をかけた。
プルルル…プルルル…ガチャ
「こんな時間に申し訳ないです。実は頼み事があって連絡したのですがよろしいですか?臥炎キョウヤさん」
シノン達は冥鈴が作業している部屋の前に到着した。ケンヤは部屋に耳を当てて中の音を聞こうとしているが、表情からして何も聞こえていないのだろう。
「くっそ〜。何も聞こえなーい。一体中では何が行われているんだ…?気になる〜!」
「そんなに気になるなら入ればいいじゃない」
「邪魔になるから入らないでって言われてるんだよー」
「だったら静かに待ってなさいよ」
「う〜ん、そうなんだけどぉ…」
ガチャ
「え?わぁ!?」
いきなり扉が開き、耳を当てていたケンヤが倒れた。
「あ!すす、すいません!急に扉をああ、開けてしまって…!」
「大丈夫大丈夫!耳当ててたボクも悪かったからね」
「耳を!?ももも、もしかして聞こえてましたか!?」
「なーんにも」
「よよ、良かったです〜…。もしも聞かれていたら消さなきゃいけないところでした…」
(そんなヤバイことしてたの!?)
「うぅっ…、少し頭が痛いな…」
冥鈴に続いてヤイバが頭を押さえながら部屋から出てきた。
「おお、お疲れ様でした…!」
「あぁ、助かった。おかげでまたあの2人を……どこだここは?」
「ヤイバ君助かって良かったね〜!」
「フン。貴様程度が私の心配をするな。藤丸ケンヤ」
「相変わらず素直じゃないね〜」
「面識あるの?」
「ネオABCカップで知っただけだよ?」
「ネオABCカップで知っただけだが?」
ヤイバとケンヤが同時に答えた。
「なーんだ。てっきり友達だと思ったのに」
「じゃあ今から友達!」
「シノンと関わっているなら信頼してもいいか…」
「もうちょっと信頼してよ〜」
「私はお前を信頼していないワケでは…「はいはい!そこまで!ストーップ!」」
リンは2人の会話を無理矢理止めた。
「ヤイバ、そんなにボロボロになってるって事は、秘剣奥義使ってもカイトには勝てなかったって本当なのね」
「ん?あぁ、そうだ。今回ばかりは何かしらの施しが無ければ、今頃私の命は無かっただろう。また戦えるように治療をしてくれた事を私は感謝しているのだ」
「いい、いえ!ここ、これしかわわ、私にはできませんので…!」
「人の命を救うのは立派な事だ。影下冥鈴」
「ああ、ありがとうございま……わわ、私って、ああ、あなたにななな、名前…言いましたっけ…?」
「言ったぞ。3年前にな」
「ささ、3年前!?って…もしかして…」
「なになに〜?顔見知りなの〜?」
「影下冥鈴は相棒学園の生徒だ。しばらく姿を見せないと思ったらこんな所にいるとはな」
「そう言えばいたような…いなかったような…もう覚えてないなぁ」
「影下冥鈴。私にはお前が何故こんな所にいるのか分かる」
「そそ、そんなはずは…」
「人間が怖くなったのだろう?」
ヤイバは全てお見通しのような目で冥鈴を見て言った。
「今日もやってく今日の最強カード!今日だけに!」
「ギャグとして成立しないようなレベルのギャグを入れないでくれるかしら?」
「と、とりあえず…!」
「「今日の最強カードはこれ!」」
「「《爆炎魔剣 レッド・バーニング》!」」
爆炎魔剣 レッド・バーニング
アイテム|レジェンドW|英雄、魔剣、火
A15000
打4
◻︎【装備コスト】君が装備している「無彩色の魔剣 カース」1枚をソウルに入れる。
◻︎このカードは、攻撃力と打撃力が減らず、レストされない。
◻︎このカードが攻撃する時、かわりに相手の場のモンスター全てと相手に攻撃する!
『2回攻撃』
「ケンヤ君のバディ、カースの赤色形態だね!」
「なんで知ってるの?」
「それは……天の声さんが教えてくれたから?」
「天の声……まぁいいわ。この武器は1度のアタックで相手のモンスター全てと相手に同時に攻撃できるわ。攻撃力15000、打撃力4とかなり高いパワーを持つから大量展開型のデッキやセンターでモンスターを固めるデッキは大体苦戦するわ」
「でも実は攻撃を自分に向けるモンスターがいれば、そのモンスター単体が攻撃を受けてくれるらしいよ」
「2回攻撃もあり、ソウルにカースがあれば完全耐性に加えてソウルを捨てられない耐性も付くわ」
「レストやステータスダウンもできないし、防御できる手段がかなり少ないよ〜!」
「今日はここまでよ。さようなら」
「またね〜!」
ーーーーー
今回で2章『ネオABCカップ編』は終わり、次回から3章突入ー。
もうネオABCカップ終わってんじゃん、だって?お家に帰るまでがネオABCカップだよ。
ではまた次回お会いしましょう!