「しっかり捕まれよ!」
「いや、早すぎない?!これ?!」
「もっと飛ばせぇ〜!」
「ソーラは黙れ!」
高速で空を駆け抜ける、三つの列車のように繋がった乗り物は、北に向かって飛んでゆく。先頭は虎にカウボーイハットを被った形のジェット機で、後ろのトロッコ型二つの乗り物とその乗客を引っ張ってなお、スピードを落とすこのない。
「くる前に説明したけど、おさらい必要か?」そのジェット機を上手に運転する虎男は、後ろに乗ったホール双子に問い掛ける。
「大丈夫!ちゃんと頭に入ってる!ね、ルーナ!」
「あ、あ、ああ、も、も…」
「問題ないって!」
「以心伝心かよ…よし!突っ込むぞ!」
「ちょ!せめて減速ぐらい…!」
「ガンガン行けぇ!」
「あんたは引っ込んで!」
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〜
「おい!向こうからくるだべ!」
「クソ!」海色の髪の毛の男の子は、トライデントを使って船に這い上がろうとするスクイッシー群を追い払おうとする。触手に刺すことで一時撤回するが、すぐ懲りずにまた這い上がる。
「スクイッシーごときに…こっちは怪我人がいるのに!」
「おい!上からくるぞ!」
「任せろ!レインボーレイン!」
口から上に水しぶきを発射する。その霧と日光で一本の虹が現れ、海から飛び込んできたブリッパー達を弾き飛ばす。
「オヤジ!舵はどうだ!」
「全然動かん!」
「ちくちょう!どうなってるんだ!」
普通ブリッパーとスクイッシーは大人しいモンスターで、他人を無闇に襲うことはない。しかも、あまり力を持たないはず。それなのに、こんなに凶暴な攻撃を仕掛け、しかも船の舵を抑えるこのモンスターは明らかにおかしい。
(ともかく、水属性の攻撃を受け入れないこいつらじゃ、オイラには抑えられねえ!早え所あいつら来てくれねーと…)
「オイ、カイ、あれを見るだべ!」
「あ?」スクイッシーとブリッパーの攻撃が止んだのを見計らって、前方を見る。そこには…
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「!虎男、あれ?」
「虎男先輩だ!」ソーラは、海に浮かぶ一隻の船を指差し、それを確認した虎男は、
「…ああ!あの船に違いない!」
「でも、変ね。」スピードに慣れたのか、ルーナは冷静に環境を確認する。「全然やられた後は見当たらないけど…」
「そうだな…ともかく、様子を伺うのも大切だ。ひとまず降り…」
ドッパァーーー!!
「おっと!」間一髪で海から打ち上げられた巨大な噴水を避ける虎男。後ろにソーラとルーナは命懸けでしがみつく。
「す、すごい威力!」
「まさか、海に潜っただけ!」
「…!ソーラ!あれは何だかわかるか!」
「え?」下をみると、何かが海から顔を突き出し、船の方向に鋭い牙を向ける。海のように青い鱗に、黄色く鋭く獲物を睨む細い目つき。その外見に合うモンスターの種類の中で、船ほどのその巨体を持つものは、たった一種。
「げ!ウオーターガルボロス?!」
「「げ」って何よ!」
「いやだって、火属性の僕じゃ…」
「おい!また来たぞ!」
ガルボロスと共に、再びブリッパーとスクイッシーが現れる。
「…完全に不利だぁ。」
「ソーラ!ルーナ!戦う準備を!」
「エ?飛びながら?」
「もちろん、船の上だ!」
「でも、こんな高度からどうやって…」
パカ
「…」「…」
「俺も後で降りるから、二人で頑張れよ!」
「「そんなあああぁぁあ…」」
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「?何だ?」
上からなんか聞こえたような…
「「…ぁぁぁあああ」」
「は?!」
どしぃぃぃーーん
「…うー、痛た…」
「あいつ…無茶すぎる…」
「でも、何か全然痛くない…?」
「おめえら…いい加減…」
「あ、ごめん!」
下敷きになった少年に気づいて、急いで降りるソーラ。
「何しやがる!勝手に人を布団扱いしやがって!」
「す、すみません!僕たちはトラベラーでして…」
ソーラは弁解しようとするが、火に油を注ぐ結果に。
「アァ!トラベラー!?今更来た上に、ひでえ扱いしやがって!」
「いや、その、なんてゆうか…」
「オラ、つべこべ言う暇があったら…」
「いい加減にしなさい!」
ルーナの怒鳴り声で、少年二人黙ってしまう。
「敵に囲まれてるのに、なに子供みたいに喧嘩してるの?」
「おい、子供ってなんだ!俺は列記とした…」
「言い争いをする暇があるんだったら…」
突然、ルーナは青い少年の頭上を飛び越え、上から降ってくるブリッパーに突入。
ジャキ…
「周りに集中しなさい!」
周囲を切り込む居合抜きで、すべてのブリッパーを氷の塊に閉じ込める。
「な!なんじゃありゃ!」
「おお!」
カイの驚きの声とソーラの歓声の中でルーナは看板に着地し、氷付けのブリッパーは小さい氷山として海に浮く。
「ソーラ!スクイッシーを!」
「分かった!」
カチャ!
マグナスを構え、船のレールに向ける。白くとがった頭が見えた瞬間…
「ソーラーフレア!」
次々と命中させ、焦げたスルメを海に浮かばせる。どんどんとルーナはブリッパー、ソーラはスクイッシーを撃破し、敵の軍隊を消滅させる。
「すげえ…」
「そういえば、君!名前は?」
「カイだ!何か用か?」
「君、ウォーターガルボでしょ?モンスターは僕たちが引き受けるから、溺れかけた人を助けてくれない?」
「…!確かにできるが…いいのか?」
「大丈夫!」最後のスクイッシーを撃ち落とし、ソーラは拳をあげる。「あと一匹ぐらい、やっつけてやるよ!」
「…ちっ!分かった、任せたぜ!」
船の中に去ってゆくカイを見て、ルーナは最後のブリッパーを切り落とし、ソーラにつぶやく。
「素直じゃないね。」
「いやあ、分かるんだよね、なんとなく。」
「…めんどくさいわね、男の子って。」
ズシィィーーン!
「で、どうしよっか、こいつ。」
船に這い上がったガルボロスにルーナは雪桜を向ける。ソーラもマグナスを構えて、
「ん〜、口の中を撃てば、何とかなるかな?」
「こっちが囮?」
「できれば、お願い。」
「…仕方ないわね!」
素早く切り込むルーナ。しかし、ガルボロスの鱗は固すぎて、少し霜が残った程度。それでもガルボロスの集中は、すべてルーナに向けられた。
ゴガァァ!!
ルーナを噛み付こうとするが、ルーナはそれを飛び越え、後ろに回り込む。突然の動きでガルボロスは戸惑い、ポカンと口を開ける。
その一瞬を、ソーラの目と引き指は見逃さない。
「食らえ!」
強力な炎の弾丸を口に撃ち込む!余りの熱さに喉を火傷し、ガルボロスは暴れてしまう。
「吹ノ刀!」
再び繰り出されたルーナの斬撃は、今度は大きなダメージを与える。冷気で火傷は無くなるが、大きく傷付いてしまったガルボロスは、レールを飛び越え海に沈んでゆく。
「…?やったの?」
「いや…あれでも頑丈なモンスターでしょ?流石にあれじゃ…!」
ルーナの声は、突然の低温により止まってしまう。ソーラもゾクッと体を震わせる。
「…まだ、だね。」
「まずい…ともかく、早くしないと船も危険な…」
ザッパァァ!!
再び水しぶき。ただし、前より高く、威力の高いもの。その頂点に立つのは…
「え…同じ、なの?」
「姿を変えた…そして、この気迫…」
ガルボロスの水色の鱗は完全に消え、代わりに藍色の鱗に、血のように赤い腹の、ガルボには存在しないはずの色と化していた。同じ黄色の目は、凶暴さと共に、双子にはわからなかった何かが込められたようだった。
唖然とした双子に、ガルボロスはとがった牙を開き…
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「しっかりしろ!」
「う…げ…ゲホ…」
「やっただべ!どんどんと水を吐いていくだべよ!」
「ああ!ったく、モンスターさえいなければ、すぐに出せたのに!」
「まあ、これで舵さえ使えば、無事保護できるだべ!」
「さあ、それはどうかな?」
「?何のことだべか?」
(さっきの気配…すごく暗かった。あの二人が無事だったらいいけど…)