二週間後
~ソーラの日記~
今日もまた、忙しい日だった。
今度の依頼は、配達の手伝いだった。
メープル《Maple》・マノル《Manor》の家庭用木材を、コスモス《Kosmos》・キングダム《Kingdom》の新婚夫婦に送ると言う、比較的簡単な仕事だ。
幸い、木材を運ぶ乗り物があったからいいけど、途中モンスターとか現れたりしたから、ちょっとごたごた。
まあ、野生ワドルドゥとかコモとか、いわゆる雑魚だから、苦労はしなかったけど…
それでも、油断禁物。
もし、二週間前のガルボロスのような、いきなり変に強くなるやつが現れたら、もうたまらないから。
幸い、まだそういうのはあってない。でも…なんか最近になって、僕もルーナもやな予感が…
あ、それと。
そのときに出会った遭難者(?)コスモ・ステラは今…
「ソーラ。」
「うお!」振り向くと、手を伸ばしたルーナがいた。「びっくりしたな!てか部屋勝手に…」
「いいじゃないそれ。それより、またやばいことが…」
「え…?」
「コスモのことだけど…」
「!!」
コスモは…僕たちの家に滞在してる。
どうやらいく当てがないらしく、銭一文もない状態で宿に止まるわけにもいかず、結局僕たちが保護することに。
と言ってもずっとではない。彼女を引き取ってくれる人物を探すために、虎男たちは王国中を聞き込みしてくれてる。
コスモは…とてもいい子だ。少しおとなしく、礼儀正しい。しかも人よしで、しなくてもいいのに牧場の手伝いをしてる。お客には働かせてはいけないと両親の声に耳を向けず、ひたすら畑を肥えたり、牛たちの掃除をしたりと、結構がんばってる。僕たちホール家が引き取ってもいいぐらいだ。
…彼女の、ある「難点」を除くと。
「ま…まさか…」
「そう。そのまさか…」
「「…」」
急いで部屋を出て、階段を降り、台所へと走る。
…食欲さえどうにかなれば…
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~コスモス《Kosmos》・キングダム《Kingdom》、とある食堂~
「はあ…本当によく食べるね。」
「んっんんんん~んん(だっておいしいんだもん!)」
「飲み込んでから喋る。」
「ゴク…ぷは~、生き返る~!」
大盛りにつめられた皿に囲まれて、コスモは息をする。そしてすぐ後に、食べ物を掃除機のように次々とほおばる。ホール双子はボーゼンと見守るばかり。
「よくそれで太らないね…」
「し。ソーラ、それは…」
「んん、ん~んん~んん(それ、いつも言われて)…」
「だって、ほら!全部作物じゃないし!肉類もお菓子もまぎれてるよ!」
「う…それは、きっと、ほら。今日すごく仕事したから…」
「ん~、ん~んんん~ん~!(ん~、今日は働いた~!)」
「昨日聞いたよ、それ…本当に、この子の食費、国全体を破滅させかねない…」
「まあ、うちの出荷する食物に手を出さないことはありがたく思ったら?」
「確かに。お父さん、ただで爆発しそうだったから。」
「ん~、んん~(ん~、ごめん~)。」
「…だから。」
「…ゴク。」
「はぁ…」いつの間にか食べ物の山は大幅に減り、あと少ししか残らない。食べ終わるのにあと数秒かかるだろう。「まあ、これで満腹になっただろうし…」
「ん~…まあまあかな?」
「…(突っ込まないでおこう。ルーナのほうが爆発しそう…)」
「よお、探したぞ。」
突然ソーラ、ルーナ、コスモの座るテーブルの横に、新しい椅子が寄せられ、男の子が腰掛ける。
「あ、エクザビエルさん!」
「どうしてここに。」
「いや、お前らの親に聞いてここへ来たんだ。」ガンブレードを肩に背負って、黒と白の髪の毛の男はコスモに指差す。「この子に用があってな。」
「?もしかして…」
「…」エクザビエルは何も言わず、コスモをじっと見てる。コスモは少しはにかみながら、最後の一口をほおばる。
「…それ、払おうか。」
「え?いいんですか?」
「いやいや、私たちが一緒に来たんだから…」
「二週間経験の新入りを破産に追い込む気はねえ。大丈夫、金は残ってる。」
「…どうしても言うんだったら。」エライ借りをしちゃった…
「それより、だ。見つけたぞ。」
「え?何を?」
「コスモを引き取ってる人を、だ。」
「ホント!」グッと飲み込み、うれしそうに体を乗り出すコスモ。エクザビエルを目の前にして目をキラキラさせる。「どんな?どこ?優しい?料理の腕は?」
「落ち着け。」コスモの顔を押し付け、席に戻す。「今からソーラとルーナがあの方へ送ってくれる。期待できる方だ。それだけ言っとこう。」
「へ~楽しみ!」
一方、ソーラとルーナはとても不思議に思う。何せさっき見たように、コスモの食費はかなり高い。とても働き者にも関わらず、その額を耳にすると、拒否する人が多かった…というより、そういう人しかいなかった。そのコスモの食生活を支えられるほどの人がいるのだろうか?
逆に言うと、そのハードルを乗り越えればかなりのいい子と言うこともあるが…
「ほら、これだ。」エクザビエルは手紙を差し出す。
「?なにこれ?」
「紹介の手紙だ。」
「へ?必要なのこんなの?なんで…」受け取った封筒を裏返し、さらっと目を通すルーナは、ふと動きを止める。その目は、戸惑い、当惑、そして仰天と変える。
「?どうしたの?」ソーラはルーナの横から手紙を覗く。一瞬見るだけで、納得する。驚きを隠せず、エクザビエルに向く。
「本気?」
「コスモの食べ盛りが本気なぐらいにな。」
「…」
今日は…ホール双子にとって、人生をひっくり返すイベントの
始まりに過ぎなかった…
~次の日~
「来ちゃったよ…」
「来ちゃったね…」
「近くで見ると、すご~い。」
ソーラ、ルーナ、コスモはただ立ちすくむしか、できることはなかった。無理はない。
この光景を目にすると、さすがに誰も圧倒され、絶句するだろう。
「本当にこんな格好でよかったのかな…虎男はよかったって言ってたけど…」
「友達を引き取るだけだから、暑苦しい格好はいいんだってさ…」
「でも…相手を考えると…」
「う~ん…いいと思うけど…」
「コスモ、あんたは素人でしょ。」
会話する三人の前に、一人の男が現れる。
「失礼。ただいま許可を確認しました。どうぞこちらへ。」
「は、はい。」
「失礼します。」
「あ、あの、はい。」
三人は、槍と盾を構えた兵士の後ろを歩き、巨大な門の中へと入る。
コスモス《Kosmos》・キングダム《Kingdom》の真ん中にそびえる、王家の住む星の《Star》宮殿《Temple》の中へと…