~数日後~
「え~っと…右だっけ?」
「いやいや、左でしょ…」
「え?だってこの建物、見覚えあるよ?ここで確か曲がって…」
「地図をちゃんと見た?ここから左へ行くと、むしろ近道になるのよ。」
「え~そうだっけ…」
「そうなの、さあ早く。」
「ああ、はいはい…」腕を引っ張られ、ソーラはルーナの指定したをいくことになった。
今日は、二人が働くこととなるだろう、トラベラー事務所へと足を運ぶ。もうすでに、新入りとして入ることは確定して、実際の仕事は始まらないはずだが、参考としての見学を許可されてる。そのチャンスを逃さず、ホール双子は早速事務所へ向かって、事務所での仕事を見ることにした。
もちろん、トラベラーは、ほとんどいないだろう。なぜなら、事務所外…というより、インフィニ島のいたるところにいるからだ。
インフィニ島は平和だけれど、時々どこかで揉め事や事件が起こっても不思議はない。それを解決するのは、黒野の巫女、レイの仕事だが、彼女はただ一人。同時に複数の場所に行くことはできない。それでできたのが、トラベラーと言う職業。島を飛び回り、各地の事件を解決していくものたち。人々は、トラベラーたちを頼りにしており、いつも呼びにいく習慣になった。
反面、よっぽどのことがなければ巫女のレイは仕事ができなくなったのだが、それは別として。
「あ、あれじゃない?」
ソーラが指差した建物は、周りの店より高くより目立つ、黄色い建物。「スターブレイズ」という看板をぶら下げてる。
「なんだ、やっぱり私の言ったとおり…」
ルーナがいい終わる前に、ソーラは飛び出していた。子供がお菓子屋を見つけたような目つきをして。
「…やれやれ。本とまだ子供ね。」
そういうルーナも、少し好奇心を露わにしながら、建物に入ってゆく。
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~スターブレイズ事務所、入り口~
「…うーん、やっぱ落ち着くよね~ここ。」
建物のインテリアは、とてもシンプルなもの。木材の壁と床で落ち着いた雰囲気を生み、頑丈な岩で囲まれたアーチは安定感を感じさせる。奥の部屋からパチパチと火花の音がする。暖炉があるのだろうか。
向こうのデスクに、一人の女性が、入ってきた双子に目もむけずに、なにやら書き込みをしている。黄色い瞳を覆う丸い眼鏡をつけ、灰色の髪の毛をした、ビジネスウィマン…みたい。さっそくソーラは
「あの~すみません。」
無反応。女性は眼鏡を直して書き込み続ける。
「僕たちは新入りなんですが。」
カキカキ。
「ちょっと見学へきたんですが。」
完全無視。
「…なんか小石になった気分…」
「ほら、どいてソーラ。」気力をなくしてしまったソーラを右に寄せ、今度はルーナが話しかける。
「すみません。」
「…」
「…ねえ。」
「…」
「…」ルーナは彼女をたたこうとするが、ふと、机の上に鈴がおいてあることに気づく。ルーナは試しに、それを鳴らしてみると…
チリーン
「…ん?あれ?」やっと彼女は顔を上げる。と同時に、ソーラとルーナの存在に気づいたらしい。
「あらあら。用こそわが事務所へ。何か御用かしら…」
「…」あえて突っ込まないことにして、ルーナは答える。
「私たちは、トラベラーとしての新入りですけど…」
「新入り…」思い当たることがあるらしく、女性はさっき書き込みをしていた書類を検索した。
「えーと…もしやソーラとルーナなのかしら?」
「!はい、そうです!」ソーラは元気よく答える。ルーナも静かにうなずく。
「ふふ…元気いいわね。頼もしいわ。でも、まだ仕事は始まってないみたいだけど…」
「見学しに着たんです。」ルーナはさらっと答える。
「まあ…ずいぶんと熱心ね。うーん、でも…」
「?どうしたの?」
「現在、すごい事件が発覚しまして…ここの事務所に所属してるトラベラー方は現在、出かけてるのです。」
「え…ええ!そんなに!」
「聞いてないわね…どんな事件?」
「え、まあ、えっと…」再び書類を調べる女性。「どうも、
「…へ、へえ。そんなことが。」ソーラは少しそのモンスターのことを想像してみた。「どんなモンスターだろうね?」
「今じゃ、親しいモンスターのほうが多いはずなのに…なにか不満でもあったのかしら?」ルーナは、不思議に思うばかり。
「まあ、それを解決するのも、トラベラーの役目のひとつです。さて…」女性は立ち上がる。「そろそろ話は終わりにして、少し事務所を見回りましょうか?」
「え…いいんですか、ここを離れても。」
「まあ、少し書類から離れた時間も必要ですし、用事ができたらベルさえ鳴らしさえすればいいんです。」
(…「鳴らしさえすれば」いいんだ…)
(「鳴らさなくても」気づいてくれてもいいのに…)
二人は思いを静かに胸にしまいこむ。
「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。」女性は眼鏡をすりあげる。
「私は、ソフィア・アッシュ。この事務所の管理人、みたいな人よ。」
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~会議室~
「そして、ここが会議室よ。」
「…」「…」
ここまで特訓室、食堂室、休憩室、ガレージを見回ったホール双子とソフィアは、事務所内一番大きい部屋である会議室へと訪れる。一目見て双子がそういったのは、無理がない。
まず、椅子がない。会議室と言う名前だから、座りながら話し合いをする部屋だと思っていたが、そもそも椅子がないんならやることができない。その代わりに座るのか、さまざま背の低いピンポンテーブルやカウンターがある。
それに、あまり整ってるともいえない。ところどころに紙やら武器やらほったらかしにされていて、かなり散らかった状態。これではまともな会議など期待できそうにない。
「…ああ、ごめん。ここだけいつもそうなんだ。」呆然と、呆れた顔つきをしたソーラとルーナを見て、ソフィアは慌てて弁解する。「うちのトラベラーたちは腕は確かだけど、整理整頓がちょっと怪しいのよ。」
「…ちょっと、なの?これ?」
「先輩のほうがちゃんとしてなきゃいけないんじゃ…」
「私もいつも言ってるんですけど、なかなかね…あら!」腕時計を見たソフィアは、
「もうこんな時間!もうそろそろ昼ごはんでもつくっとかなきゃ!よかったらあなたたちも食べる?」
「え?いいんですか?」空腹にうすうす気が付いてたソーラだが、気を使わせてもらってるのに抵抗を感じる。だがソフィアは気にすることもなく。
「いいですよ。このころ食料も少しあまってるし、むしろお願いしたいぐらいよ。」
「…じゃあ、いいですけど…」ソーラは、散らかった部屋を振り返る。整いが命の農家の癖だろうか。ルーナも同じように、ほっとけなくうずうずしてる。
「…じゃあ、先作っとくから、任せたね。」
「…え?」
「紙は、タイトルとページ数を頼りにして、私の机に置いといて。武器は、訓練室ね。ついでにピンポンテーブルも真ん中に戻して、それと床も拭いたら助かるわ。」
「…いいんですか?なんか勝手なきもしますけど…まだ、加入したわけでもないのに」ルーナは戸惑う。それに対し、ソフィアは眼鏡をすりあげ、
「…あら、入りたくないの?」
「い、いや、そういうことは…」
「じゃあ、ミッション、と扱ってもいいわ。」
「…!」
「それに、どうせ入るんだったら、先輩たちにいいとこ見せればいいじゃん?」ソフィアは優しく微笑む。「彼らは強いから、もうすぐ帰ってくると思う。それまでに仕上げなさい。」
そういい残して、ソフィアは部屋を後にした。残されたソーラとルーナは、何を言われたのかを整理した後、つぶやく。
「…ミッション、か。なんか小さい気もするけど…まいっか!千里の道も一歩からだし!」気合満々にソーラは腕上げをする。
「千里も歩くきか…でも、確かに私たちが入るからには、このままではいられない。」ルーナもにっと笑い、腕を組みながら、部屋を見回す。
「さて、何からはじめるか…」
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~食堂~
(なんて、かっこよくまとめたけど…大丈夫かしら、あの二人)
鍋でグツグツと煮るカレーをかき混ぜながら、ソフィアは思いふける。頼もしそうな印象は受けたが、彼らはまだ子供。ちょっと無理なことを頼んだのかもしれないと、少し後悔した。
(何しろわたし一人で一時間はかかるもん、後片付け。まあ、彼らが帰ってくるまでなら、もしかすると…)
「お、うまそうだな、おい。」
「ミギャ!」ストーブで火をやけどするのを何とか回避し、驚いて振り向く。
「もお、帰ったらベル鳴らして、っていったじゃん!」
「ははは。だって、おまえ机にいなかったじゃん。」
「余りにも不思議だったんで、黙って入り込んできたわけだ。」
「いやあ、ひどいよ、ソフィアちゃん!せっかく必死に帰ってきたのに出迎えなしで~!」
「こっちはこっちで忙しいから!」ソフィアは目の前の三人組…黒と白の混じった髪で、片方赤、もう片方緑の瞳の
「へいへい。」早速イベッタは棚の皿などを取り出す。ふと、ソフィアは思い出したように。
「あ…そして会議室にもいっといて。」
「え~また俺たちが片付けるのかよ。」
「違う。新入りたちが今日見学しに来たの。」
「へえ…」興味深そうな虎男。「新入りか。そりゃいいな、最近来ないし。」
「あんたたちの後片付けも頼んじゃってるんだけど…呼んできてくれない。」
「後片付け…」エクザビエルは足を運ぶことにする。「なんなら今度から彼らに頼んどけば…」
「馬鹿なことを言わずに、さっさとやる。」
「へいへい。」エクザビエルは会議室へ向かった後、虎男はさらに追及。
「で、どんなやつらだ、その新入り?」
「ん~、熱心だったわよ、トラベラーになることが。なんか双子みたいだよ。」
「双子…ああ、もしかしてこの前の勧告案に書いてた二人か。」
「そうそう。とうとうここへ来たのよ、あの二人が。」
「ああ、そりゃ期待できそうだな。で、印象は?」
「ん、男の子はとても明るかったよ。素直だけど、少しオーバーな気がした。もう一人、女の子だけど、静かで暗かったけど、ちゃんとした熱心もあるし、しっかりしてる感じよ。」
「へ~。ちょっと自分も話して。」
「おい。」ふとエクザビエルは再び食堂へ戻る。「誰もいなかったぜ、会議室。」
「え…ほんと、それ?」
「その代わり、ずいぶんと片付けられたぜ。」
「片付けた…って?」
「そのままの意味。テーブルも整ってるし、床もぴかぴかだし、何も散らかっていなかったぜ。なかなかやるんじゃないのか?」
「へえ…でも肝心の二人は見当たらないのか?」
「ねえ、「散らかってない」って…」虎男の質問をさえぎって、イベッタは恐る恐る質問する。「まさか、私の武器も、そこには…」
「…ああ、見たときはなかったが…」
「追うのよ、あの二人!」バンとテーブルをたたき、イベッタは顔を引きつって立ち上がる。「あのガキ、私の武器を勝手に扱って…!串刺しにしたるわ!」
「いや、でも彼ら、そんな悪いやつには…」
「甘いわよソフィア!最近のガキは、かわいい顔して、頭はどれだけ腐ったのかわからないのよ!じゃなきゃ、この世に悪党なんか存在しないわ!」
「いやいや、言いすぎだろ…ソフィア、心当たりは?」イベッタを無視し、虎男は冷静にソフィアはを問い詰める。
「そうね…会議室じゃないなら、たぶん、武器庫で…」
バキ!ガラガラガラガラ…
ソフィアの応答は、奥から聞こえる騒ぎによって、さえぎられた。少し間を開け、大急ぎで武器庫へと走りこむ。
そこには、壊れた武器の置き場所と、大量の大型武器の下敷きになったソーラとルーナがいた…
わあ、長いわ…予想以上にかかったな…