「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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 あのあとは、元気になったトールさんと一緒に街へ戻った。大急ぎで呼んだ応援によって、冒険者三人組もなんとか無事に生還した。

 

 俺は、魔法陣に俺の源をぶっかけるだけで触媒になりうるという発見をしたことで、それをメインに研究することに決めたのだった。

 

 とはいえ、役職は研究員ではなく中間管理職。幼女エルフのいる研究室がメインの職場なので、実験とかはできない。

 

 なので、魔法陣を覚えることにした。

 

 そう決めてから、二日後。

 

「トールも無事だったし、あんたも本格的に魔法陣の研究をしたいのね」

 

「はい。なので、魔法陣について詳しい本か、人物がいないかと思いまして」

 

「魔法陣って、コスパ悪いからウチの研究塔ではやってる人居ないのよね……とりあえず、図書室で本を探したらどうかしら?」

 

 幼女エルフに教えられて、図書室に向かうことにした。

 

 習得書にあった回復魔法陣と、トールさんに教えられた解毒の魔法陣を覚えるのに思ったより時間がかかった。

 

 正確に模写しないと、全く発動しないのだ。触媒は流石に人目のあるところでボロンするのはまずいので、薬草などを使って研究した。

 

 今から、新しい魔法陣を覚えるために図書室へ行くのだ。

 

「よう!」

 

「あ、トールさん」

 

 あの日から、トールさんとも仲良くなった。魔術師ギルドで会えば少しくらい談笑するようになり、夜には食事に誘われることもあった。

 

 日本じゃ美少女になんて縁がなかったので、大変ありがたい。毎日潤っているのだ。今晩も研究でお世話になります。

 

 あの日見た肩の白さを、俺は未だに忘れられない。

 

「珍しいな。一階で会うなんて。今日は図書室に用があるのか?」

 

「はい。そうです。ようやく回復魔法陣と、解毒の魔法陣を覚えたので、他の新しい魔法陣を覚えようと思いまして」

 

「そうか、頑張れよ! 私はこれから森に行ってくるぜ」

 

「お気をつけて」

 

 手を振ってじゃあなと去っていく美少女を見送る。

 

 ……いいね。いい感じだね。なんか最近充実してないかな。

 

 やることも見つかったし、美少女と仲良くなれたし、俺だけっぽそうな魔法陣の使い方見つけちゃったし?

 

 始まってきたんじゃない。俺の異世界生活。

 

 ここから無双していく妄想が捗る。

 

 狙うは領主の奴隷ハーレム。

 

 一国一城の長。

 

 意気揚々と図書室に入った。

 

「まだいたんですか」

 

 イケメンに出会った。

 

 と、いうか。ここに居ちゃダメだったんですか。

 

 はっきり言ってくれないと伝わらない。社会人でも多いミス。言葉の使い方は知性の差。

 

 勉強の全ては言葉の理解力読解力を元に学習するから。

 

 上手く使えないのは、問題だと思う。

 

「すみません。でも、他に行くところも無くて」

 

「ミトには上手く取り合えたでしょう。それを駆使して別のところで活躍しては?」

 

「偶然だったもので。あいにく、金も何もないので」

 

「そこを何とかしてきたのでは?」

 

「すみません」

 

 秘技謝り続ける。相手が主張を納めない場合、これ以上の問答を拒否するのに使える。

 

 全ては円満な社会のために。

 

 角を立てないように。

 

 俺は貝になりたい。

 

「……まったく。私は忙しいので、これで」

 

「はい、すみません」

 

「……アレはどこに行ったんだ? 時間がないというのに」

 

 小さくぶつぶつと呟きながら図書室を後にするイケメン。

 

 楽しい気分にさされた水。

 

 社会じゃよくある光景。

 

 やるせないなぁ。

 

「……本、探そ」

 

 とりあえず、魔法陣の本を探すことにした。

 

 

 

 図書館とか本屋に来ると、何となく気持ちが上向く。

 

 自分の頭が良くなったような。まだ見ぬ本の楽しさとか。見出しだけで色々興味が湧いてくる。

 

 何度も同じコーナーをぐるぐる回りたくなる。

 

「えっと、魔法陣、魔法陣……」

 

 独り身の生活が長くなると、一人言も増えてくる。

 

 そうじゃないと、あまり会話も声も出さなくなってくる。

 

 音の無い生活に耐えられなくなってくる。

 

「あった」

 

 初めての魔法陣。という書物。他にも上級者向けの本はいくつもあったが、初心者向けの本はこれしか無かった。

 

 手に取り、カウンターに行く。

 

「借ります」

 

「はい。期限は十日間、中身を消滅させたり、破損させた場合は弁償になります」

 

 本を借りれた。満足。

 

 日本にいた頃じゃ俺も結構本を読んでいた。趣味は読書とか言ってた。

 

 新入りの社員が同じ趣味だからって飲み会の時に声をかけてくれたのを思い出す。

 

 カフカの変身とか読んでます? あ、ご存知でない。海外系は読まない感じ? え、自己啓発本? セミナー書? ライトノベル?

 

 馬鹿にした顔だった。失望した顔だった。読書じゃないでしょってはっきり言われた。

 

 俺は自分から趣味は読書とは言わなくなった。

 

 無趣味になった。

 

 だけど、これでようやく俺も、読書家の一歩を踏み出せたような気がする。

 

 適当にペラリとページをめくる。イケメンに会いたくないので、まだ図書室にいた。

 

 内容は、魔法陣の歴史とか、文化とか。その有用性とかがあった。

 

 思ってたものじゃなかった。なんか、魔法陣図鑑みたいなの想像してたのに。

 

 水とか火とか出せたら、便利だなーって。

 

 チートは無いから、下級魔法で工夫していく物語を想像してた。

 

 女神様はいないけど。

 

 弓矢とか、使えないけど。

 

 借りたものをすぐ返却するのも格好悪いので、借りたまま図書室を後にした。

 

 魔法陣使いの道は遠い。だから、今できることをしよう。備えあれば憂いなし。

 

 異世界ファンタジー。なら、装備を買うべきでしょ。

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