「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」 作:雨天 蛍
翌日。寒さに耐えきれず、コンと一緒の箱で寝た。
人生初の身内以外の添い寝は、生きた女の子がよかった。
俺のヒロインはコンしかないな。
路地裏で必死に探したボロ切れを纏って、今日はどうするかと考えた。
まず、魔術師ギルドには行かない。この格好で行きたくない。あまりにも情けなさすぎて。
そして、昨日借りた本を早速失ってしまった。それをどうにかしなくてはいけない。
早急に、お金がいる。
手段は偉んでいられない。せめて、今日中に纏まった金が手に入らねば。
無断欠勤とか、致命的だ。どうにか遅刻で済ませたい。
手早く金が欲しいなら、行くしかないだろう。
「傭兵……なるか」
いざ、傭兵ギルドへ。
傭兵ギルドは、すぐに分かった。冒険者ギルドとは違い、より血の匂いがしそうな施設があるのだ。
いわゆる、こっちの方がネット小説で見るような冒険者ギルドだった。
両開きの木製扉を開ける。ギィと音がなり、周囲の注目が集まった。
「こんにちは! 依頼ですか? 傭兵の登録ですか?」
「登録でお願いします」
「かしこまりました!」
ここも、受付嬢だった。魔術師ギルドの受付は男だというのに。
「こちらの水晶玉に手を当ててくださいね。こちらでステータスの確認と登録を行います」
魔術師ギルドでもやったように、水晶玉に手を当てる。
名前:花田 山太郎
性別:男
種族:人間
レベル:1
職業:中間管理代理
犯罪歴:不法侵入、無銭飲食
スキル:『機械操作Lv4』『異国言語Lv1』『読書Lv4』『算術Lv5』『釣りLv2』『交渉Lv7』『料理Lv4』『水泳Lv2』『運転Lv4』『歴史Lv1』『医学Lv2』『魔法陣作成Lv2』
地味にスキルレベルが幾つか成長していた。一番高いのは交渉だった。
値引きとか、したことないけどな。いつの間にそんなに成長したのだろう。
そして、これだけ色んな事を経験しても上がらないレベル。
経験値は殺さねば増えないのだろうか。害虫駆除でもした方がいいのだろうか。
「はい。登録完了しました。こちら傭兵タグとなります。血を垂らせばステータスを確認出来ますよ。ステータスの更新は一回銀貨一枚必要です。ちなみに、これは身分証にもなりますが、身分レベルは乞食以上奴隷以下ですのでご注意を。民間人及び奴隷への窃盗暴行は犯罪になります」
まあ、誰でも持てそうな身分証だしな。貰える身分は最底辺だろう。
「依頼の受注制限はあります。初心者は主に物々交換の依頼や、配達などがメインの仕事になります」
いくつかの注意点を聞き、傭兵になった。
「おい、待て。ここは丸腰のおっさんなんかが来るような場所じゃないぜ」
早速背後から声がかけられる。振り返ると、赤ら顔の傭兵がこちらにからんで来ていた。
本当にこっちが冒険者ギルドって感じがする。
「その年でボロ切れ纏ってるってことは、傭兵になって金を稼ぐことを夢見て来た感じだろ? 悪いことは言わないから辞めて帰った方がいいぜ」
いや、なんか真面目に忠告しているっぽい。
調子狂うわ。この世界のおっさんは良い奴が多すぎる。
「ご忠告ありがとうございます。ですが、私は大丈夫ですので」
少なくとも、回復と解毒だけは使えるから問題ない。
ヒーラーとしてどこかに雇って貰いたいところだ。
いや、それでは間に合わない。積極的に声をかけに行かねば。
「ちなみに、複数人でパーティーを組んで依頼を受けることも可能です。その場合は基本的にここのボードから募集や参加をしてください」
カウンター脇の掲示板はパーティー募集しているらしい。早速確認した。
数は多い。そして、今気付いたのだが、傭兵にランクは無さそうである。
そして、全体的に回復不足っぽい。解毒と回復が使える俺は引く手数多だ。
おっさん、この世界に来て今が一番求められているよ。
普段なら受けの姿勢で行くところだが、今日は攻めの姿勢で挑まねばならぬ。
全ては金のため。
争い事は苦手なので、何か戦闘にならなさそうな依頼や、パーティー募集を探す。
回復役は戦闘で欲しがられるから、どうしても依頼数が減った。
「おっ、いいのあるじゃん」
そんな中で、一つだけちょうど良さそうな依頼があった。
『パーティー募集 回復役 固定でパーティーを組むので、最初は確認として森でカエル犬の討伐を行います。報酬は等分。採用の場合は金貨一枚を加入量として渡します。 均衡の首輪』
固定パというのが不安だが、今回だけの参加でも報酬は貰えるだろう。加入出来たらもっと貰えるし。
まあ、回復以外出来ないおっさんとかいらないだろ。
「すみません。このパーティー募集に参加したいのですが」
「はい……チーム『均衡の首輪』ですね。少々お待ちください」
受付嬢に声をかけると、彼女は募集の紙を持ってカウンターの奥に引っ込んだ。
しばらくして、出てくる。
「お待たせしました。既にギルド内部の酒場で待っているそうなので、こちらを持って五番の席に行ってください」
俺のステータスとかが書かれた紙を渡される。
なんというか、しっかりしているよな。テーブル番号とかあるし。おっさん傭兵は優しいし。
「あ、少々お待ちください」
「なにか?」
受付嬢に引き止められた。今夜は空いてます。毎晩空いてます。
「中古品になりますが、傭兵ギルドで貸し出している装備品を着けて行った方がいいですね。依頼の報酬からレンタル料引いておきますので、着替えてから向かってください」
「あ、ありがとうございます」
そういやそうだったね。俺服でもないボロきれ纏って箱を背負ってたんだわ。
受付嬢に感謝して、レンタル装備を身につけに行った。