「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」 作:雨天 蛍
防具を装備した。皮の鎧とかそんな感じのやつ。
鉄装備は無かった。あったとしても重くて装備しなかったと思う。
いいね。最高にファンタジーしている。
初心者冒険者って感じ。MMOの初心者装備。RPGの基本。
序盤のボスくらいなら倒せそう。
ちなみに、鱗で出来た盾だけ手に装備している。武器は持たなかった。重くておっさんには辛い。
しかも、ネット小説によくあるショートソードとか全くなかった。ナイフすら無かった。槍とかの長柄武器ばっかりだった。
かませ犬かな?
そういう事情もあって、結局盾装備だけで、パーティー募集をしていた人の元へと向かった。
均衡の首輪とかいうゲームの二つ名に出てきそうなパーティーはすぐに見つかった。
メンバーとしては三名。いつぞやの冒険者三人組を思い出す。
男子一人に女子二人だった。めちゃくちゃ若い。青春の為に冒険者やってるって感じの出で立ちにしか見えなかった。
一人はイケメン。俺より背が高く、自然な金髪で、細身なのになよっとした感じのない王子様系っぽい人だった。
関節部分に金属をあしらった布っぽい材質の装備をしている。攻撃を受けないで立ち回るのだろうって感じの装備だった。盾もない。
武器は、珍しく剣だった。途中途中で繋ぎ目のような部分がある様子から、伸びる剣だと思う。蛇腹剣とかガリアンソードとかいうやつ。
もう一人は、鞭を持った金髪のくせっ毛の美女だ。足元に犬が寝ている辺りから、魔物使いだと思われる。装備は動きを阻害しないような踊り子みたいな布一枚といった感じ。露出がすごい。ブラとかしてない。なのに胸が自然と綺麗な形をしている。異世界の勝利だ。
もう一人は、これまた槍持ち。しかし、盾とかは無く、槍も三又ではなくランス系の槍だった。服装は地味な感じで、青いローブを着込んで、頭もフードですっぽり覆っている。フードから見える顔立ちは、静謐で、凛とした美人さん。神官職でも殺しを専門にする人とかがこんな格好してそう。腕に鎖を巻いていたらきっとそうだ。
おっさんとしては、派手目な女子よりも、こういう大人しい感じの女の子が好きだ。世のおっさんはみんな好きだと思います。
「すみません、均衡の首輪さんですか?」
「はい。そうですけど……」
応えたのは魔物使いさんだった。首輪とか言ってるし、彼女がリーダーなんだろう。
「パーティー募集の張り紙を見て来ました」
「では、あなたは回復が使えると? 見た限り、神官崩れよりかは商人といった様子でしょうか……」
やはり、アイテム系の回復役でも良さそうだ。
「実は、魔術師ギルドの所属でして、魔法陣使いなんですよ」
「そうだったんですか。珍しいですね」
ひとまず受け入れて貰えたようだ。握手を交わして席を囲む。
イケメンは不服そうな顔をしていた。
「……立ち方が素人だ。本当にやれるのか?」
「こら! フレイ! ……ごめんなさい。この子人見知りなんです」
魔物使いさんは分かっていますよといった雰囲気を出している。
なんというか、二人の背後に見える関係性。
「フレイはネヴィアに片想いしている。二人は幼馴染で、ネヴィアが年上」
青ローブさんがコソッと教えてくれた。
ああ、なんか分かるわ。いつまでも子供としてしか見てくれない感じ。
幼馴染のお姉ちゃんとかこんな感じだった。俺にも優しくしてくれた珍しい人。人を見捨てられないようないい人。
パチンコ趣味の将来大物ギタリストを夢見るチャラい男とデキ婚してたけど。
あの人が唯一のチャンスだったかもしれない。
「私はナタリア。よろしく」
「ハナダと申します。今日はよろしくお願いしますね」
イイ趣味してんな。ナタリアさん。
俺もあんな青春送りたかった。
「……チッ。キメェ」
イケメン君……フレイ君は俺のニチャアっとしたにやけ顔を見て嫌悪感を示した。
いいさ。わかっている。
俺のブサイク加減くらい。どれだけ過ごして来たと思ってるんだ。
気にしてなんかないさ。
「……何か言い返したらどうなんだ」
「すみません」
「…………クソッ」
すみません。なんかこんなブサイクですみません。
不機嫌なフレイ君を置いといて、ネヴィアさんが続ける。
「ハナダさんはどれくらいの回復魔法陣を描けるのですか?」
「えっと、少なくとも肩に矢が刺さった傷くらいなら治せます。多少の毒も消せるはずです」
「随分具体的ですね。それくらいの回復能力があれば十分です。申告通りかの確認はさせていただきますが、私達のパーティーにぜひ参加してください!」
むしろ、参加されていただきありがとうございます。
若くて可愛い女の子と冒険とか凄い楽しみです。リーダーのネヴィアさんとか凄い薄い服だし。
ここ水辺多いし、水浴びとかするのかな。
ポロリもありそうだ。
そうでなくとも、今でも眼福です。
ぜひ、ぜひ入れさせてください。
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします」
しっかり九十度頭を下げる。深々と。心の中でも。
人生でこれだけ深く頭を下げたのは初めてだ。上司相手にする時は、基本心の中で中指立ててたからな。
「早速ですが、近場の森で、カエル犬の討伐をしようと思っているんです。それが最低限の力量チェックということで……。これから、大丈夫ですか?」
「問題ありません」
そうだった。ここからが本番だ。
最低でも借りた本の弁償代だけは稼がなくてはいけない。
一応、回復用の道具は現地でも調達出来る。もちろん薬草のことだ。
さすがに初対面で俺の相棒を抜くことは出来ない。
魔物使いさんのお犬様にがぶがぶされてしまう。
でもいつか、俺も調教してください。
「私達も、準備は出来ているので、早速ですが向かいましょうか」
そういうことで、またもや森へ行くことになった。