「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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 三度目の森。ここに来る度に何か起きている。幼女エルフに出会ったり、トールさんの肩舐めたり、見抜きしたり。

 

 今日はネヴィアさんのポロリでも見れないかな。

 

「そういえば、魔法陣作成スキルはどれくらいあるの?」

 

 ネヴィアさんに尋ねられた。ああ、他の魔法陣とかが作れるかの確認にもなるのだろうか。

 

「えっと、レベルは2ですね」

 

「その年でレベル2かよ。本当に魔術師ギルドで専門の研究してんだろうな? 市井で売ってる本買って練習すればその程度にはなれるだろ?」

 

 フレイ君から嫌味を言われた。わかってはいたが、やはり魔法陣作成スキルのレベルは低いらしい。

 

 俺の最高レベルは交渉の7だからね。RPGなら序盤も序盤過ぎる。

 

「盾を持っているようだけど、その手のスキルもあるのかしら?」

 

「あ、いえ。これは護身用でして……」

 

「まあ……これは忠告ですけど、慣れないモノを扱うのは危険ですよ。少しでも自主的に鍛錬を積んでから実戦に登用すべきですからね」

 

「ああ、すみません。考えが至らずに……」

 

 実際その通りで何も言えない。下手に盾を持っていたから攻撃を受け止めて、逆に怪我をしていたら意味が無いのだ。

 

 せめて、使い方とか受け流し方とか、それくらいは勉強してくるべきだろう。

 

 ゲームみたいにスキルがあっても、勝手に脳に使い方が流れこんでくる世界じゃないのだ。自分で努力して覚えないと、スキルは身につかない。

 

 スキルレベルは、その人の技量の程度を示すだけだ。

 

「とりあえずは、後衛で回復の技量を確かめましょうか」

 

 早速空気が悪くなってきた。

 

 なんて言うか、使えない人が仕事に入ってきたような感じの雰囲気。

 

 新入りとかじゃなく、本気で使えない感じの。むしろ勝手に行動して問題起こすような。

 

 それを起こしているのが、俺だった。

 

 皆の後ろをとぼとぼとついて行く。時折着いてきているかチラリと確認される。

 

 明らかにお荷物な感じ。

 

 こっそり薬草を摘んで、彼らの後を追いかけた。最低限の仕事だけでもこなさなきゃって。そう思って。

 

「ハナダさん!」

 

 切迫した声をかけられた。気がつくと、フレイ君に庇われていた。

 

「チッ……自分で周囲の警戒も出来ねえのか!」

 

 敵は、カエル犬じゃなかった。もっと強そうな感じの敵。

 

「ゲロゲロ」

 

 カエル狼である。

 

「こんなところにカエル狼が!?」

 

 ネヴィアさんが驚いた様子で鞭を構える。というか、本当にカエル狼であっていたのか。

 

「フレイ、大丈夫ですか?」

 

「……問題ねぇ」

 

 俺を庇ったフレイ君は、カエル狼を弾き飛ばすと、俺の前で剣を構えた。ナタリアさんがフレイ君の怪我を気にしている。

 

 フレイ君は、俺を庇ったせいで、背中に酷い引っ掻き傷が出来ていた。

 

「すみません。回復します」

 

「いらねぇよ。この程度の傷、どうってことない」

 

 そうは言っても、痛そうである。何より、血を貰っておかねば乱戦になった時回復すら出来ない。

 

 使いにくいな。魔法陣。

 

 とりあえず、フレイ君の背中から流れ落ちる血を回収。薬草と一緒に魔法陣へ乗せた。

 

 そして発動。あっという間に回復。

 

「ちっ……感謝はしとく」

 

 こいつツンデレかよ。

 

 どうにか建て直した三人で、カエル狼に立ち向かう。

 

「おらぁ!」

 

 フレイ君は大きく剣を振りかぶって、地面にしならせるように叩きつけた。射程外から遠心力で伸びる一撃。

 

 しかし、隙の大きさから、カエル狼はあっさりと回避した。

 

「そこっ!」

 

 ネヴィアさんが、カエル狼の動いた先に合わせるような鞭を振るう。鞭の先端が痛烈に身体を叩いた。

 

 派手な音を立ててカエル狼が吹っ飛ぶ。

 

「……トドメ、いきます」

 

 素早くステップで近寄ったナタリアさんがカエル狼を貫いてトドメをさした。

 

 三人のコンビネーションは凄かった。全員が中距離くらいの武器を使うから、接近されたら勝てないんじゃねぇのって思っていたけど、そんなことなかった。

 

 三対一で、確実に仕留めにいってた。

 

 むしろ、ここに俺がいる要素がない。戦闘終了後に回復でもするのが仕事だろうか。

 

 部活のマネージャー的な。スポーツドリンクを手渡すのが仕事的な。

 

 普段は裏方だろうか。料理スキルとかあるし。交渉持っているし。

 

 それはそれでいい。ネット小説で戦闘に着いていけないから追放された主人公が実はパーティーを支えていたタイプの小説はそんな感じだった。

 

 隙間産業。異世界で有名な料理無双。

 

 でも俺、野良犬料理したことないや。

 

「お疲れ様。怪我はない?」

 

「あったけど、こいつが治した」

 

 ネヴィアさんが周囲を警戒しながら寄ってくる。フレイ君が自分の背中を指差すが、そこには傷は無く、ただ攻撃を受けた跡である服の破れだけが残っていた。

 

「へぇ……結構大きい傷でも治るのね」

 

 ネヴィアさんが感心したようにフレイ君の背中を撫でる。フレイ君は硬直してた。

 

「……うん。これなら合格よ。他は全然だけど、これくらいの回復能力があるなら十分採用できる」

 

 及第点だったらしい。

 

「今日はカエル狼の討伐で終了しましょうか。予想外の事態だったし、安全を優先してここまでにしましょう。帰ったら、ハナダさんには採用料の金貨一枚を支払うからね」

 

「ありがとうございます」

 

 やったぜ。これで当初の目標は達成だ。

 

「それじゃあ帰りましょうか」

 

 フレイ君を戦闘に、周囲を警戒しながら、傭兵ギルドに戻った。

 

「お疲れさまー。はい、これ約束の金貨一枚ね」

 

 ネヴィアさんから金貨を手渡される。それと、数枚の銀貨も。

 

「この銀貨は?」

 

「ああ、カエル狼の討伐報酬よ。本当はカエル犬の討伐だから、銀貨一枚だったんだけど、上位種の討伐に成功したから、四分の一の報酬でその枚数よ」

 

 俺はほとんど参加していないのに。

 

「さすがに受け取れません」

 

「いいから貰っておきなさい。今後の働きも期待しての分だからさ。気にしないで、これでお酒でも飲んで明後日の英気を養いなさいな」

 

「明後日?」

 

 何かあるのだろうか。

 

「あら、知らないの?」

 

 ネヴィアさんも首を傾げる。何気ない子供っぽい仕草が可愛い。

 

「明後日は傭兵ギルドで大規模な亜人討伐計画があるのよ。それで回復役が欲しかったのよね」

 

 え、なにそれ。知らないんだけど。

 

「あなたも、こんな時期に傭兵ギルドに入ったんだから、それが目当てだったんでしょう? 私達は功績が足りないから後衛の仕事だけど、それでも稼げるから頑張りましょうね」

 

 肩を叩かれる。

 

 今からでも、傭兵ギルドを辞めることって出来るだろうか?

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