「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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「あら、今日は遅かったわね……って! どうしたのよその格好!」

 

「ああ……いえ。なんでもありません」

 

 傭兵ギルドでの一件以降。俺は逃げるようにして魔術師ギルドへやってきていた。服とか全く気にしていなかったので、レンタルした装備を返せばボロ切れのままである。

 

「だ、誰に襲われたの!? 服くらいなら用意出来るから、何かあったらすぐに魔術師ギルドに来るのよ!」

 

「ありがとうございます……」

 

 こちらに来てからずっと良くして貰っている幼女エルフには頭が上がらない。

 

 流石に彼女に俺が勝手に行動して起こした問題を手伝って貰うのは気が引ける。

 

 魔術師ギルドのローブを貰って、身につける。ボロ切れは脱いだ。

 

 全裸に擦れるローブの生地が最高に背徳感を生み出している。少しでも開けば俺の生まれたままの姿が幼女エルフに晒されることになる。

 

 偶に思うことあるよな。

 

 人生で一瞬だけ最高に輝けたらそれで終わってもいいんじゃないかって。

 

 まあ、童貞を捨ててない時点で今この瞬間おっぴろげになった所で輝けやしないだろう。

 

 俺は我慢の出来る男なんだ。

 

「困ったことがあるなら言いなさいよ? なんだっていいから」

 

 ん? 今なんでもするって言ったよね。

 

 くだらない妄想が繰り広げられそうになるが、そんなことをしている場合じゃないと、気を取り直す。

 

 彼女はあまり戦闘が強いわけじゃないだろう。これは、多少ながら戦闘が出来る人に頼らねばならないのだ。

 

 カエル犬に負ける幼女はお呼びじゃないんだぜ。魔術師ギルドで笑って過ごしてくれ。

 

 借りた本を返してくる。と偽って、研究室を後にした。

 

 図書室。借りた初日に本を損失したことを報告すると、受付の人の視線が絶対零度になった。

 

 一応弁償代は支払えたが、多分もう利用しないか本を借りることは無いと思われる。

 

 そこまで厚顔無恥にはなれない。それ以上踏み込んでしまったら、老害まっしぐらである。

 

 謙虚に生きねば。

 

「あ、おーい。何やってんだよ?」

 

「これは、どうも。トールさん」

 

 いつ見ても目立つ赤い髪の美少女がこっちに駆け寄ってきた。

 

 犬っぽいとかって、ラノベでは表現しそう。俺もこんな可愛い後輩とか欲しかった。

 

「実は本を借りたその日に無くしてしまって……。先程弁償したばかりなんですよ」

 

「そりゃ災難だったな!」

 

 快活に笑うトールさん。男っぽい言葉や仕草が見えるが、彼女は先日トカゲ人間に襲われたばかりだったはずだ。

 

 彼女も誘えないな。

 

「そうだ。聞いてくれよ。傭兵ギルドでさ、亜人討伐の計画があったんだよ」

 

 そう思っていたら、まさかのトールさんから話題を振ってきた。

 

「私さ、あの時はかっこわるいところ見せちゃっただろ? 明後日リベンジするからさ、おまえもどうだ?」

 

 そしてまさかのお誘いである。

 

 アグレッシブ過ぎだろトールさん。任侠モノにも出演できそうな精神してやがる。

 

 不意打ちで矢を刺されて毒で殺されかけたのにトラウマにすらなっていないとは。

 

「私もその依頼を受けておりまして、既にパーティーも組んでいたんです」

 

「え? おまえ傭兵ギルドにも入ってんの?」

 

「今日入ったばかりですけどね」

 

「ふーん……。それで、もうパーティーも組んでるのか」

 

「ちょうど回復役を募集されておりまして」

 

「なあ、私もそこに入れるか?」

 

 トールさんソロだったのか。

 

「聞いてみないとわかりませんが……」

 

「じゃあ早速聞きに行こうぜ。私はおまえと違って魔法使えるし、回復も出来るんだ」

 

 トールさんを連れて、傭兵ギルドにまで戻った。ネヴィアさんだけが傭兵ギルドで犬の手入れをしていた。

 

「あら? また加入希望者?」

 

「そうだ。トールっていう名前だ。回復も攻撃も出来るぜ」

 

「ふーん……。訓練所に行きましょうか」

 

 連れてきた俺をちらりと見たが、特に何も言われずに傭兵ギルドの奥に向かった。

 

 訓練所は、周辺を石畳で囲っているが、中央の訓練する場所は土になっている、闘技場みたいな場所だった。

 

 壁に向かって剣を振る奴とか、十分な空間を確保して剣を撃ち合う人もいた。

 

 その中には、蛇腹剣を扱う金髪の男もいた。フレイ君である。

 

「いたいた。フレイ! 今日の加入希望者二人目よ!」

 

「はぁ?」

 

 不思議そうにこちらを向いた彼は、俺の姿を見ると、露骨に嫌そうな顔をした。

 

「なんか、すみません」

 

「別にいい。気にすんな」

 

 顔つきの割に彼は優しい。

 

「でも、パーティーメンバーが5人は多すぎるのよね。役割的には欲しいんだけど、そうなってくると前衛が不足してきてるかなーって」

 

「そこに盾持ちがいるじゃねぇか」

 

 ネヴィアさんがフレイ君に相談していると、フレイ君が俺を指さした。

 

 盾持っているけどさ、使ったこと無いし回復役なんですけど。

 

「あ、はい。がんばります」

 

「……冗談だよ。気にすんな。回復役が前衛とか危険すぎんだろ」

 

 たまにある。職場での分かりづらい上司の無茶ぶり風冗談。

 

 笑って冗談だと流すと本気だったりするし、真面目に受け取ると冗談だったりする。

 

 そして、冗談の通じないやつって評価になる。これ、俺が悪いんだろうか。

 

「どうしよっか?」

 

「カエル犬のいる森は少し危険だからな。魔法も使えるってんならここにある殴り人形に打ってもらえばいいんじゃね?」

 

 殴り人形とかいうモノを攻撃することになった。まるでMMOのDPSチェックみたいである。

 

 スキル回しさえちゃんと出来れば難しくないんだけどさ、棒立ちだから実戦的かというとそうでもないよね。

 

「それじゃあ、やってみて」

 

「了解だ」

 

 早速木と藁で組まれた人形の前に10メートルくらい感覚を開けて立つトールさん。

 

 片手に本を構えている。なんかすげぇそれっぽい雰囲気。

 

 詠唱を始めると、彼女の服の裾が風もないのにはためいた。今日はスカートだったらしく、少しだけ健康的な太ももがチラリ。

 

 これは採用だな。そうじゃなくても俺のパーティーに欲しい。

 

 首になった時二人でパーティー組んで貰えないかな。

 

 追放系で後を追ってくれるヒロインとかいるし。

 

 ヒロインになってくれないかな。

 

「『サンダーボルト』!」

 

 詠唱が終わって放たれたのは雷撃だった。

 

 ドーンバリバリバリとつんざくよう音を立てて人形は黒焦げになった。

 

 赤髪なのに電気使いなのか。炎魔法使わないのか。

 

 いや、この世界の魔法だと、炎使いは同時に氷使いだった気がする。

 

 極大消滅魔法つかえるじゃんね。

 

「生物には極めて有効な最新の魔法だぜ!」

 

「これは、すごいねぇ」

 

 雷魔法は新属性らしい。すごい格好良かった。

 

「うん。最後衛での魔法役として採用かな。これからよろしくね!」

 

 無事にトールさんも参加することが出来た。

 

 ダメだったらどうしようとか思ってたけど、大丈夫そうだ。

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