「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」 作:雨天 蛍
明後日に備えて今日のうちから準備する。
もしかしたら明日一日は移動とかに使われるかもしれないし。
トールさんも誘って街に出た。
「で、何買うんだよ。俺も金貨1枚貰えたからそれくらいなら奢ってやってもいいぞ」
金貨1枚はおよそ銀貨100枚分の価値がある。銅貨100枚で銀貨1枚分。
銅貨は大体3、3枚で野犬定食が食える値段。
銅貨1枚200円くらいだろうか。ランチの値段的には大体そんな感じだと思う。
レンタルの装備は傭兵ギルドの中古品である。いざと言う時には頼れない気がする。
まずは、防具を買うことにした。
「いらっしゃいませー!」
残念ながら防具屋など知らないので、武器屋の隣にあるよろず屋へ入る。
今日も店員さんの笑顔が可愛い。
「あ! ハナダさんいらっしゃい! 今日も色々入荷してますよー!」
「ここ、常連なのか?」
「ええ、色々揃っていて面白いですよ」
普通の道具屋も知っているんだけど、ここの店が一番好きだった。店員さん含めて。
なんというか、いわく付きの商品を集めて来るのだ。大概は偽物だったりレプリカだったりするが、その情報収集力と共に、商売以外に才能があるような気がしてならない。
いつか奴隷を入荷してくれると思ってる。
「盾とかありますか?」
「武器は資格が要るので取り扱ってないんですけど、盾なら確かいくつかありましたね。少々お待ち下さい!」
無資格の雑貨屋というのがまた素晴らしい。武器は全部武器として使えないものならば売っているのだ。とりあえず刃は全部潰れている。そういった風に、使用用途を変えてグレーで通しているお店屋さんである。盾も多分そういうの。
そして、カウンターに適当に並べてくれた。
「これは亜人さんの盾ですね。石をまるまるくり抜いて作る構造の丸盾です。手に持つには、皮で十字に縛って持つらしく、極めて原始的な構造をしています。綺麗なままで入荷出来たので、お皿としても使えますよ! 銀貨5枚でどうですか?」
「とりあえず他も見せてくれます?」
「それじゃあこの儀式用の騎士盾なんてどうでしょう? 貴族様が昔使っていた盾なんで、歴史的価値とかありますよ! 装飾も綺麗です!」
こういう時は、耐久力とかに自信が無いと思われる。
「他で」
「それじゃあこのタワーシールドはどうですか! 魔法陣時代の都市からの発掘品で、軽くて大きいのに丈夫なんです! 実は歪んだ横開きのドアじゃないかって言われているんですけど、この見た目的に絶対盾だと思います!」
長方形の大きな盾を見せてくれた。手に持つと、結構軽い。
ドアでもいいや。
「これ買います」
「毎度ありです! 銀貨10枚です!」
盾としてまともに機能する分高かったが、払えた。
本の弁償代が銀貨10枚。残り銀貨75枚。5枚は傭兵ギルドのレンタル装備。
「鎧とかありますか?」
「本物は資格が欲しいので取り扱ってないですよー!」
無かった。壁には真っ白な全身鎧とか吊り下げられているというのに。
「アレは隣の国の重装兵の鎧のレプリカです」
隣国に鎧の技術バレてんぞ。
あとは料理道具や野宿の道具を買って店を出た。包丁は、この国のお姫様が料理を趣味にしようとして、最終的に婚約者を突き刺したといわれる伝説の包丁だった。
トールさんも、一つだけ本を買っていた。
「これ、魔法効果の失った魔術書らしい。本来は自動で魔力を抜いてバリアを貼るらしいけど、今は読んで自分で発動させる必要があるんだとさ。前の持ち主は魔力切れで死んだとか」
そういうのもあるのか。また今度来た時に聞いてみよう。
ひとまず準備は整ったので、魔術師ギルドに戻った。
「やあやあ」
「フーリーさんじゃないですか。どうかしたんですか?」
魔術師ギルドでトールさんと別れた後、幼女エルフの研究室の前でフーリーさんと出くわした。
「ん、ミトちゃんに少し外に出ようかって誘ったんだけど、断られちゃってね」
フィールドワークをしたかったようだ。
「ところで、だ。中間管理職くん」
「はい」
人のこと役職で呼ぶの珍しいと思います。しかも騎士とかじゃなくて中間管理職。
「最近仕事のノルマどうかね?」
フーリーさんから告げられた言葉に胸がズギュゥゥンと貫かれた。
ノルマ。それは仕事で付きまとう悪魔の言葉だ。
外回り新規開拓営業職とか毎日死にそうな顔でノルマを満たそうと頑張ると思う。俺は営業職じゃないけど、部署が近かったので、見たことはある。
業績をグラフにして貼り付けするとか公開処刑にも近い所業だと思う。
「私にもノルマなんてあったんですか……」
「研究員は知識の探求として、魔導書を毎月必ず一冊読むことになっているよ。君は中間管理職だけど、確かミト君から言われた仕事があるんじゃなかったかね?」
そう言われて気付いた。そういえば遺跡調査してなかったな。
幼女エルフはマメだから毎日少しの時間でも行ってたっぽいし。
俺も行かないとまずいかも。
「そこでだ。君の遺跡調査に合わせて私の錬金術の材料集めに付き合って貰えないだろうか?」
戦闘が苦手な二人だけど、大丈夫なんだろうか。
「私にはカエル犬や野良犬を追い払う香水爆弾があるのでね。念の為ってだけだよ」
例のキノコから作ったのであろうここからでも薄ら匂いのするボールを手に持ってちゃぷちゃぷと鳴らす。というかアレは錬金術師的に正しい運用だったらしい。
「どうやら君は盾も持っているし、少しくらいなら戦いも出来るんじゃないかね?」
「あ、これは護身用といいますか……使ったことは無いんですよね」
「あっ……」
「……」
非常に気まずい。
フーリーさんは、少しだけ気まずそうな顔をしたが、すぐに表情を正して俺の腕を掴んだ。
「まあ、行こうか」
強引に連れていかれることになった。