「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」 作:雨天 蛍
戦闘開始。俺は盾を構えて傭兵達へ接近する。一番近いし、盾持ってるし、前衛は俺だろう。
タワーシールドを構えて突進。大丈夫。最近は盾使いの評価は高くなる一方だ。
メガネの後輩も星条旗のヒーローも犬の騎士隊長もみんな強い盾持ちだ。
「エ〇スト〇ールドッ!」
「うらぁ!」
「へぶっ」
勇気を持って一歩踏み出したが、槍のなぎ払いで盾の構えを崩される。
そのまま槍は引き戻されず回転し、石突きで横っ腹を殴りつけられた。
痛みで崩れ落ちる。下手に脇腹やあばら骨を強打すると、痛みで呼吸出来なくなる。しばらく動けなくなるのだ。
戦闘不能。涙が押さえられない。痛い、痛すぎる。
痛いの嫌だからVITに振らせてくださいおねがいします。
ブサメンガチファイターは嫌だ。
背中に箱背負ってるし炭治郎でもいい。俺今非の呼吸してるから。
息吸えてないから。
「えっ……よわ……」
俺の使えなさに驚いたのか、一瞬傭兵の手が止まる。
その隙にイタさんが剣を抜き放ち加速する。打ち出された弾丸のような速度で接近し、槍の柄の部分を真っ二つに切り落とした。
さらに一歩深く踏み込み、腹を殴りつける。
一人がそれでノックダウンする。倒された仲間を見て、傭兵の片割れがイタさんを狙い始める。槍を構えて、突き刺そうとする。
「ライトニングッ!」
バチンと弾ける音が出て、トールさんから電撃が放たれる。それは突き出された槍に直撃し、傭兵を倒した。
倒れた後もビクンビクンしている。
男の事後の様子とか汚ぇな。
それにしても電撃は強力である。高圧電流とかに感電すると、運良く生き残っても半身不随とかになるらしいし、人間相手に使うものでは無いと思う。
「……ヨカッタノカ? ニンゲン。アレハオマエノドウホウダロウ?」
「別にいいよ。人間は誰も彼もが仲間なわけじゃない」
イタさんはトールさんを見直したようだ。敬意を表して剣を掲げている。
「ソウカ……タダ、カンシャスル」
「おう」
女の子達がハードボイルドな会話をしている。
それに比べて俺は一撃で倒され蹲るばかり。脳内では創作の主人公の影を追い求めて現実をかえりみない行動。
痛い。痛すぎる。
身体もそうだが、俺自身なにか気分が大きくなっていたみたいだ。
ブサイクデブは部屋の隅で大人しくしているべきだ。学生時代からのルール。
リア充が爆発するなら、非モテ童貞は縮こまるばかり。
日本で有名なアニメ映画でも言っている。
ブスは死ね。対義語。
ブサイクは生きてる価値がない。対義語。
森の姫も動く城も外見至上世界。
異世界でもそれは適用されるだろう。
奴隷買いたいなぁ。
「おっさん、大丈夫か?」
「大丈夫です……」
まだジンジンと痛むけれど、そこは見栄を張って我慢して立ち上がる。
これ以上の無様を晒すのも嫌なんだ。
「しっかし、魔王とかいう奴はいなかったな。どこに行ったんだか」
「さあ、下手に会っても危険ですし、何事も無くて良かったです」
「シタモイタコトダシ、チョウロウノモトヘモドルゾ」
イタさんの言葉に頷き、この場を離れた。
帰りの道では、シタ君を抱き上げたイタさんを先頭にして戻った。
俺は、結局身体の痛みがトールさんにバレたので、回復魔法をかけてもらった。
洞窟に戻る。入口では騒ぎが起きていた。
「亜人の群れがこんなところにいるなんて!」
「ハナダとトールはどこに行ったんだよ」
「……殺したの?」
「ニンゲン! ココガバレタノカ!」
一触即発の空気の中、俺達が戻ってきたのだ。
すっかりナタリアさん達の事忘れてた。洞窟の入口とは別の場所から出たからな。戻る時はそこが使えないから洞窟の入口から入ろうとしたのだ。
既にネヴィアさんやフレイ君も起きており、各々武器を手にしている。
しかし、顔色は悪く、足元はふらついていた。それが開戦を遅らせたのかもしれない。
「ママー!」
「シタ! コノバカ! アンタハイッツモムチャヲシテ!」
「ウワーン、ゴメンナサイー!」
亜人の中からシタ君のお母さんが出てきたことで、空気がシラケた。その隙に、ネヴィアさん達に説明をする。
「……にわかには信じ難いけど、少なくともあの亜人の親子を害する気にはなれないわね」
納得したとは言い難いが、ネヴィアさん達の矛を収めることには成功した。そして、全員で彼らの巣穴へ戻る。
「よくぞ戻ってきた。シタを救ってくれて、感謝する」
「いえ、私は何もしていません」
本当に。何も出来なかった。
「始祖もそうだった。けっして強くは無く、ただ、運がいいとでも言えるような亜人だった」
慰められた。俺は愛玩用亜人と同等レベルらしい。
そいつも精子から魔法陣を使う発想があったのかな。
「そんな話はいいわ。それよりも、その支配者が何者なのか、教えてちょうだいな」
「ああ、そうだったな。我らの真の敵。それは──」
その言葉は、俺にとって信じ難いものだった。
「エルフだ」
浮かび上がる情景の中では。緑髪の、小さな女の子が、笑っていた。