「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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 魔術師ギルド。水に半分沈んだ街にある大きな塔だ。

 

 その二階の一室。最奥の部屋には幼女がいる部屋がある。

 

 扉を開く。

 

「あ、おかえりなさい! 聞いたわよ! あなたトールと一緒に傭兵ギルドで亜人討伐したのね!」

 

 待ち受けていたのは、くったくない笑みを浮かべて駆け寄る幼女エルフだ。本日もピコピコと動く尖ったエルフ耳が可愛らしい。

 

「ただいま戻りました」

 

 こんな幼女がかつての世界を支配した種族だとか。

 

 ……別にいいのでは? 長老から伝えられた時は、なんか悪役の黒幕が信じていた少女だったからショックだったのだが、思い返せば別に俺にとっては何の問題もないということに気がついた。

 

 元から上司だし。ゲームとかである老人共が上で机囲んで座りあって世界を手のひらに操っているよりかは十分マシな気がしてきた。

 

 誰しもジジババが世界の頂点よりも、可愛い幼女が世界を支配している方がよっぽどいいと思うだろう。

 

 幼女は世界を救う。イエスロリータ。ノータッチ。

 

 元から全世界あげて保護すべき存在なのだ。実質最強の存在であり、支配者だった。

 

 俺もミト様に支配されたい。バブみ感じたい。

 

 朝から晩まで全てを支配されたいぜ。夜は偶に反逆出来ればマンネリ化も防げるだろ。

 

 やっぱり何の問題もないな。

 

 俺、やっぱりトカゲよりも可愛い幼女を応援します。

 

 当たり前だよなぁ?

 

「今日は遺跡の調査結果をレポートにするわよ! 結局調べても全部投げ出したままだったからね!」

 

「承知しました」

 

 幼女と並んで座り、レポートを書き始める。

 

 俺の識字チートは、文字の読み書きにまで及ぶ。ぶっちゃけ見たことも無い文字なのだが、脳にするりとはいりこんで来て、欲しい結果を導き出してくれる。

 

 書類作成に向いたチートだな。

 

 実に中間管理職のおっさんに向いた能力である。

 

 もっと強力なチート欲しかったな。

 

 盾スキル欲しい。おっさん体格的に盾持ちに似合うと思うんだ。デブじゃないけどさ。でもそれなりに重量あるし、どっしり構えられると思うよ。

 

 でも痛いのは嫌だなぁ。

 

 どうしようもないジレンマである。

 

「結構書けたわね。そろそろ休憩しましょうか」

 

 久しぶりの事務作業だったからか、集中していたようだ。気が付くと、幼女エルフが背伸びをしていて、もうお昼だと教えてくれる。

 

 いつもの野犬定食を食べに行こうと思い、幼女エルフの研究室を出る。

 

「おや?」

 

「……どうも」

 

 廊下でばったりイケメンと出くわした。途端に表情が歪むイケメン。

 

「まだ、いたんですか。彼女は私のフィアンセなのです。こちらとしても彼女の事は信じているのですが、外聞が悪いので、ハナダさんには悪いのですが、早く出ていって欲しいのです」

 

 会えば出てくる忠告。まあ、自分の可愛いフィアンセに、俺みたいなブサイクデブのおっさんが近寄っていると知ったら気が気でないと思う。

 

 エロ同人誌でよくある展開じゃんね。少し前に急激に増えたNTR。そう寝取られ。

 

 俺実はおっさんだから取る側の気分であれ楽しめるんだよなぁ。今も取る側の立場だし。状況的に考えて。

 

 粗チンなんだろうなコイツ。

 

「……最近ではトールさんと仲がいいと聞きます。彼女はこの魔術師ギルドでも浮いた存在でしたし、二人が同意するのであれば、私の権限でトールさんの助手役にも出来ますが」

 

 ……それは。

 

「彼女が危険だからですか?」

 

「…………ええ、はい。彼女の身が危険だと思っているので、こうして提案しています」

 

 ああ、わかった。

 

「エルフは機械文明時代の支配者だそうですね」

 

「っ!? なぜ、それを」

 

 イケメンは行動もイケメンだわ。俺が女の子だったら濡れてたと思う。

 

 そうか。こいつ最初から俺と幼女エルフを引き離すのが目的だったよな。

 

 だけど、それは、幼女エルフが心配だからじゃない。

 

 むしろ俺の身を案じての言葉だったのだ。

 

 いきなり幼女エルフが危険だと言ったところで信じられるか分からないし、その事が幼女エルフに伝えられるリスクを考えれば、婚約者だと言って遠ざけた方がいいのだろう。

 

 それが本当の婚約者なのかは分からないが。

 

「……ええ、そうです。ここで話せることではないですし、塔の最上階で話しましょうか」

 

 イケメンに連れられて、塔の最上階まで登る。

 

 エレベーターが欲しかった。

 

「さて、ハナダさん。あなたがその情報をどこで手に入れたのかは知りませんが、今ここで話すことは他言無用です」

 

 どっかりと椅子に座り込んだイケメンが、紙束を取り出した。

 

「私は、この街の地下に沈む遺跡をエルフに渡さない為に活動している者です。他に仲間はいませんがね」

 

 さて、と切り出した。

 

「ハナダさん。あなたはエルフの味方ですか? それとも、敵ですか?」

 

「味方です」

 

 そう言い切った時の、イケメンは、あんぐりと口を開けていた。

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