「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」 作:雨天 蛍
「フーリーさん……」
予想外の人物が立っていた。白衣を着て、大人の魅力を振りまくダウナー系美人。おっぱい大きい。
ついでに言うとこの人の存在すっかり忘れてたぜ。普段は三階にいるからな。俺のいる二階とは距離がある。
そして、普段はトールさんとばっかりつるんでいたからな。
「おや? あんまり驚いた様子はないね」
「特に驚く要素ありました?」
フーリーさんが幼女エルフの味方なのは理解出来る事だし。仲良かったの知ってるし。
俺もそっち行きたい。
「まあ、ここにいるって事は、色々知っているんだろう? 亜人達によって、エルフ達は絶滅寸前にまで追い込まれたということや、元々彼女達のものである機械文明の遺産が狙われていることとか」
フーリーさんが語ったのは、エルフ達側の主張だった。
生み出した存在に裏切られて、全てを奪われた自分達。そして、今や人間が数を増やし、彼らに紛れて過ごすしかないという事実。
「……元々私はね、彼女の味方なんだ。人間の世界は醜い。エルフ達の遺した物が無かったら、今まで以上に酷い世界になっていただろう。そして、そこに至るまでの時間も、もっとかかっていただろう」
「バカを言うな! たとえエルフの遺産を使って今の世界が成り立ったとして、どうしてエルフの時代を戻そうとするんだ! 最も多くの破壊と創造が行われた時代だと語られているんだ! 今は安定の時代なんだよ!」
フーリーさんの言葉に噛み付くイケメン。彼は本を構えて続ける。
「水龍プールの傷跡すら癒えぬこの星に、以前までの破壊と再生が行える力はない! このままでは星そのものが滅びるぞ!」
水龍プール。トカゲ達の言っていたドラゴンだろうか。
それにしても弱そうな名前である。全部繋げて読むと流れるプールになる辺り本当に弱そう。レジャー施設に本体いそうな名前じゃないか。
でもまあ、その力はエルフの機械文明を滅ぼして水に沈めたというらしいし、実力自体は本物なんだろう。
というか、この街で行われることが世界の命運を掛けるのは規模が小さくないか?
俺とトールさんは既に空気になっている。
「反省をして、今度は正しく星を守りながら運用していくとは考えられないの? 同じことをすればまた同じ結果が待っている。ならば次はいい結果を目指すのが普通でしょう?」
「信用出来るか!」
イケメンは会話をやめて本よ読み上げ始めた。
フーリーさんも白衣の裏からなにか瓶を取り出して投げつける。
飛来した瓶にイケメンの魔法がぶつかり合い、スパークが発生する。
俺達はどうすればいいだろうか。
ふと、幼女エルフに視線を移すと、目が合った。
今までの屈託のない笑顔から一転して、現在の彼女は真面目な顔をしている。
「……ミトさん。あなたの目的はなんですか?」
「……聞いたでしょ! 私は先祖の悲願を果たさなきゃならないの! 再び機械文明を取り戻して、エルフ達の安全を取り戻さなきゃいけないの!」
なんだか話が食い違っていそうな事を察した。
「エルフは、見目の良さと長寿で姿があまり変わらないから、奴隷にされているのも多いんだから! 全部助けるには機械文明の遺産が必要なのよ!」
そもそもエルフは頭がいいだけで魔力が使えないとの事だったし、今は無力なのだろう。
「……ギルドマスター。ああ言ってますが」
「……知らないよ。エルフ達を裏で虐げている人間がいるのは事実だ。だからこそ、今からエルフに力を与える訳にはいかないんじゃないか」
これは、どっちの味方をするべきだろうか。
幼女エルフか、イケメンか。
美少女か、男か。
「……トールさんはどうします?」
「んー……俺はなぁ。ぶっちゃけ今の世界が良いとは思わねぇよ。だけど下手な変化を与えるのも危険だっていうのも分かるんだよなぁ」
どっちもどっちといった印象。
だけど、他に選択肢なんて見当たらなさそうだし。
そもそもここにある遺産ってなんだろうか。
「ここにある遺産ってなんですか?」
「……詳しくは知らない。だが、エルフの遺産はかなり危険な物が多いのだ。小さく取り回しが効く物といったら兵器でしかないだろう。見た目は銃にそっくりだからな」
銃ってこの世界にもあるのか。
まあ、科学とかそれなりに進んでいるし、思い付きはするだろう。
兵器っていうのは平均化された暴力の一種だからな。誰でも扱えるというのなら絶対にいずれは発明されると思う。
俺、拳銃持って戦うのは強く見えないから使いたくはないな。スリップもぬるぬるしない摩擦係数を無くす魔法だった気がするし。
そもそも相手も銃を持ったら負けそうだし。的広いから。
異世界転生ではありがちな手段だけどさ。デブには使えない。
デブじゃないけど。ちょっと太いだけだけど。
「それで、その銃というのはどこにあるんですか?」
「ふふーん。もう回収済みさ。私が爆弾で上手くバリアを剥がしてね」
得意気にフーリーさんが遺産とやらを見せてくる。
ゲームとかで出てきそうなフォルムの、確かに銃だと言える見た目の物がフーリーさんの手にある。
『擬人化銃』
俺の識字チートから、その銃に書いてあった文字を読み取れた。
絶対欲しい。