「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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「止まれ……これから先は魔術師ギルドの管轄だ」

 

 塔みたいな場所に入ろうとしたら、いきなり引き止められた。

 

「魔術師ギルドに入りたいです」

 

「ほう? なら、魔術師としての素養を試させて貰おう」

 

 そう言ってローブのおっさんは水晶玉を取り出した。

 

「ステータス鑑定だ……!」

 

 やっと異世界らしい要素出てきたな。

 

名前:花田 山太郎

性別:男

種族:人間

レベル:1

職業:無職

犯罪歴:不法侵入

スキル:『機械操作Lv4』『異国言語Lv1』『読書Lv3』『算術Lv5』『釣りLv2』『交渉Lv6』『料理Lv4』『水泳Lv2』『運転Lv4』『歴史Lv1』『医学Lv2』

 

 俺、レベル1なのか。というか、思った以上にスキルあるな。

 

 肝心の魔法がないけど。

 

「…………魔法無いな。お前、今まで何してたんだ?」

 

「主にパソコンです」

 

 交渉レベル高いけど、多分上司に謝ったり飲み会の幹事とかしてたりするからだろう。

 

 企画発案も偶にやった。でも基本は書類作成とか整理とか。文書作成とか。電話対応とか。

 

 営業ではなかった。ブサイクだし。

 

「研究者って感じか……でも、魔法無いのか……」

 

 やっぱり魔法が無いのは問題らしい。

 

「ダメですかね?」

 

「うーん……、このスキル的にむしろなんで魔法覚えていないんだってレベルだぞ。しかもお前レベル1かよ」

 

 戦闘経験無いんで。あっても負けてる。

 

「戦えないもので……」

 

「どうやって街から出てきたんだ……」

 

「何とかなりませんか?」

 

 交渉レベル6だったし、ちょっと頼みこんでみる。

 

「難しいなぁ……そうだ。お前、金あるか?」

 

「銀貨一枚なら」

 

「なら本売ってやるよ。それ読んで魔法を習得しろ。何かレベル1になればいいから、上手いこと身につけろよ。お前のスキルなら研究者としてそこそこやっていけるだろうしな」

 

 銀貨一枚と交換で、魔法書を手に入れた。

 

「ちなみにそれは魔法書というより習得書ってやつだ」

 

 習得書だった。タイトルは魔法基礎。

 

「じゃあ、頑張れよ」

 

 背中を押されて魔術師ギルドの前から出された。手に持った本を眺める。

 

「俺、無一文になったわ」

 

 昨日から飯食ってないし、金も無い。宿にも行ってないわ。

 

「どうしよ」

 

 今日一日で、魔法を習得出来るだろうか。

 

 とりあえず橋の下に戻ってきた。本を開く。

 

『魔法とは、基本的に表裏一体の属性である。炎とは、何かしらの熱というエネルギーを生み出す魔法であり、それは、氷魔法と実は同じ原理で働く』

 

「ふむふむ」

 

 まあ、分子の移動が熱だからね。

 

『光魔法は、光があるという状態の魔法であり、それを奪う事で闇の魔法となる。一見正反対に見える魔法が、実は同じ分類の魔法であるというのが近年の解析で分かった事実だ』

 

 思った以上に文明がすすんでいるぞ。もっと胸の奥からパワーを出せって書いてあるかと思ってた。

 

 まさか理論からくるとは思ってなかった。

 

『それ故に、何かの魔法を極めると、同時に反対属性の魔法も引き上げられるように強くなる。よって、魔法は一つを極めていくスタイルこそが、現在最も効率のいい習得方法だと言われており、それぞれに特化したエキスパートを生み出す事に成功している』

 

 そうだったのか。魔法世界。ぶっちゃけ魔法の使い方じゃなくて魔法の歴史を学んでいる気がするぞ魔法基礎。

 

 いや、基礎だからこそ、こういう初期知識が欲しいのかな。

 

『さて、長々と説明したが、実際にどうやって魔法を習得するかという方法になる。基本的に魔法はその結果を引き起こす理論を知っていないと発動効率が大きく下がる。これは、科学知識に関係しており、ただの思い込みなどでは効率は一切変わらない。魔法は、科学に通じる技能である』

 

 現代日本の教育を受けた俺なら、案外やっていけそうだ。

 

『魔力を使って化学現象を引き起こすのだ! その方法は簡単。体の内側にある魂の力を感じ取り、扱うのだ!』

 

 ファッキンスピリチュアルマジック。科学知識どこいったよ。

 

 肝心の魔法を使うための力がスピリチュアルとは恐れ入った。どうしてそこを研究しないんだ。

 

 決めた。俺、魔術師ギルドに入ったら、魔力とは何たるかを研究するんだ。

 

 とはいえ、それも魔法を使えなければ出来ないこと。どうやって魔力を感じ取ろうか。

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 全身に力を込めてさけんでみた。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

 街行く人々がその場を急ぎ足で離れていった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 顔中に血が集まって血管ぶち切れそうだ。ストレスで高血圧なんだよ。そういうのは怖いんだ。

 

 結局、魔力を感じ取れた気がしない。

 

 諦めて、もう少し本を読み進めた。

 

 すると、気になる一文を見つけた。

 

『近年では、自身の魔力を使った魔法が主流だが、過去には、滅びた文明で触媒などを使って魔法を引き起こす事が主流だったそうだ』

 

 そうだ。これだよこれ。自前がダメなら他所から取ってこよう。

 

『他の生命を使うものも多いため、近年では禁止にする風潮が強い。とはいえまだ禁止されてはいないので、簡易的な回復魔法の魔法陣をここに記しておく。これに薬草を乗せて血を垂らすと、薬草の効果を瞬間的にして、自己を回復出来るようになるのだ』

 

 おお、それっぽいものを見つけた。

 魔法陣は結構簡単に書けそうなもので、これさえ使えば、魔法が発動出来るだろうと想像できた。

 

 薬草取ってこなきゃ。

 

 まだ見ぬ触媒魔法のため、俺は街の外へ出ることにした。

 

 まあ、薬草取るくらいなら大した事にならないでしょ。

 

 川を流れてきたつるつるした木の棒を装備して、俺は街から出たのだった。

 

 何の手続きとかもなく街を出れた。

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