「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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「お待たせしました」

 

 銃を手に持つ。最初見た時とは大きく違い、様々な装飾まで付いた擬人化銃。かつてはこれほど美しい銃だったのだろう。

 

 本来の姿を取り戻し、最強の力を手に入れたみたいで興奮する。

 

 というか、擬人化銃だから、魔王に当たっても擬人化するだけなんだよな。それでワンチャン気絶とかを狙っているのだが、それでも撃退する訳では無い。

 

 どうするんだろう。今までノリで来たけど、ぶっちゃけこの作戦が成功しても、どうにかなるとは思えない。

 

「この銃で、あなたを倒します」

 

「いいからさっさと撃て!」

 

「あ、はい」

 

 前衛を務めているフレイ君からお叱りの言葉が届いた。格好つけたかったが、これ以上任せるのも悪いので、チャチャッと片付けさせて貰おう。

 

 銃を構えて発砲。

 

 相手は巨体。なあに、下手くそでも的が大きけりゃ当たるさ。

 

 気楽に一発。理性を失った魔王にあっさり直撃する。

 

 そして、魔王はみるみる元気になっていった。

 

 更に巨大化しておられる。

 

 なんで????

 

「──魔王は魔力を吸収出来る能力があるのじゃ」

 

 背中から声をかけられる。振り向くと、先程まで倒れていた幼女が起き上がってこちらを見ていた。

 

 誰? なんとなくわかるけど。

 

 大きな狐耳、流れる金髪。紅い瞳。もふもふの尻尾。かつてミイラだったとは思えないようなみずみずしさを取り戻したようだ。

 

 俺のヒロイン、コンちゃんである。

 

「ようやく会えたな。妾の旦那様よ」

 

 既に好感度がクライマックスである。

 

 確かにミイラの時に色々あったけど、生きている状態では何もなかったはずだ。それなのに、もう好感度が最高に高い。

 

 人生の墓場に行こうとしている。

 

 俺を連れて行ってください。

 

 結婚したい。

 

 三十過ぎると身を固めたい気持ちが強くなるんだよ。一人暮らしをしていて、仕事で疲れて帰ってくると、誰もいない部屋をみてふと思うんだ。

 

 寂しいな。って。

 

 抗いようのない孤独が身を包むんだ。そして、それを紛らわすように自然とテレビとかに手を伸ばす。

 

 自分以外の音がない生活って、かなり辛いんだよな。

 

 そして、ひとりごとが増えていく。そうしないと、喋り方を忘れてしまいそうだから。

 

 そういう経験があるからこそ、結婚させてくれるなら、めちゃくちゃしたいです。

 

「ちょ、ちょっと待て! おっさん、その子供どこから出てきた!? 旦那様ってどういうことだ!」

 

 トールさんが慌てて俺に聞いてくる。まあ、普通に考えればその反応が妥当だと思うよ。

 

 でもさ、ロリ美少女じゃん。ケモ耳っ娘じゃん。

 

 もう結婚していいんじゃないかなって。

 

 お互いのことは新婚生活で知っていこうよ。

 

「……そこの子供は、魔術師ギルドに保存されていた、亜人のミイラよ」

 

「……エルフの子供に子供なんて言われとうないわ」

 

「はぁ!? 私は既に11歳だから! 外見上の成長が遅いだけだから!」

 

「それを言ったら妾だって死後の年数合わせれば数千年生きておるしー! 体が巻戻り過ぎて子供になっただけだしー!」

 

 幼女が取っ組みあって争い始める。そこに、シリアス組から文句が飛んできた。

 

「そんなことはいいから、どうにかならないの? 街から離す事には成功しているけど、このままじゃ私達全滅するわよ!」

 

「……ふん。魔王は大抵の物理攻撃を弾くバリアと、魔力を吸収する肉体を持っている。倒すなら、関節技や窒息が有効なのじゃ」

 

 しかし、あの巨体では関節技など決められそうにない。

 

 ……そこで、この擬人化銃か。

 

 だが、今の擬人化銃は魔力で動くため、魔王に吸収されてしまう。

 

「そこで、妾とエルフの出番よ」

 

 得意気に胸を張って言うコンちゃん。その服から尖った部分をつつきたい。

 

「妾には、機械文明を魔力で稼動するものから、電気で動く物に戻すことが出来る。しかし、そうなれば、エルフにしかもう機械は使えなくなるぞ」

 

「何故ですか? 電気なら、誰でも使えると思うのですが」

 

「認証機能にもあるが、エルフは自身の微弱な体の電流を操れる。それを使う事で、エルフはエルフなら誰でも使える機械文明を築いたのじゃ」

 

 この世界のエルフは電気属性らしい。本来は真逆なイメージなのだが。

 

 森とか、自然にいる種族って印象が強いよね。知恵があり、長寿な種族なら、人間よりも高度な知的生命体になるのもわかるけど。

 

 タコって、寿命が長ければ知的生命体になれる可能性があったって話だし。

 

 エルフなら、高度な文明を築くのも不可能では無いでしょ。イメージは森の引きこもりだけど。

 

「本来の電気で動く銃に戻せば、魔王にも届き、効果をもたらすじゃろう。だが、それは、エルフに機械文明を返すということになる」

 

 それでもいいかの? とコンちゃんは笑った。

 

「はい、お願いします」

 

「──ほう! 即答とは、予想外だ! エルフの真相を知る旦那様なら、少しは迷うと思ったのじゃが」

 

「他のエルフを信用しているわけではありません。ですが、ミトさんになら、任せてもいいと思ったのです」

 

 この純粋無垢な幼女エルフになら。

 

 森で出会ったあの時から、彼女の優しさは理解していた。寂しそうな様子も知っていた。

 

 彼女は本質的に孤独だ。異世界にやってきた俺と同じ、周囲にいるのは人間だけのエルフ。俺にとっては異世界人ばかりの生活。

 

 さみしいんだ。飢えているんだ。温もりに。

 

 そんな、変な共感が、彼女を少しでも助けたいと思わせた。

 

 だから、幼女エルフになら任せてもいい。

 

 俺みたいなブサイクに心を開いて笑いかけられるような人なのだから。心の底から心配してくれるような人なのだから。

 

「ミトさん。任せましたよ。これで、魔王を倒してください」

 

 擬人化銃を渡す。俺が使えなくなるのは悔しいが、他の男が利用する訳でも無いので、あっさりと渡せた。

 

「で、でも! あなた、私が裏切るとは思わないの?」

 

「そんなことしないと信じているので」

 

 そうなっても、俺は別にいいと思う。

 

 幼女エルフの元で生きる奴隷生活だって、きっと幸せさ。

 

 無知なのに強がって、俺の上に跨ってもらうんだ。

 

 そんな生活も、最高だろう。

 

「……わかった。やるわ」

 

「決まったか。では、その銃を元に戻すぞ」

 

 コンちゃんが、擬人化銃に手を伸ばす。幼女二人で掴む大きな銃。

 

 まるで魔法少女の必殺技みたいだ。

 

 思わず応援したくなる。

 

 ぷいきゅあー! がんばえー!

 

「性質変化、物質分解、再構成、固定化」

 

 コンちゃんの手から溢れる光で銃が包まれる。

 

 必殺技の貯め撃ちみたいだぜ。最高に格好いい。

 

「撃てるぞ!」

 

「いっけええええええ!!!」

 

 幼女達から一際大きなビームが放たれる。

 

「ギャアアアアア!!!」

 

 魔王に直撃し、絶叫をあげる。ドーンという音に、真っ白な煙が立ちこめる。

 

 煙が晴れたそこには、毛の無いつるりとした尻尾を持つ、白髪の幼女が倒れていた。

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