「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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「倒した……のか?」

 

「それにしては、変な人が倒れているのだけど。ねぇ、ハナダさん?」

 

 戦闘で魔王を相手にしていた均衡の首輪が全員こちらを向いた。

 

「説明してくださる?」

 

 威圧的なネヴィアさんの催促に、俺はもう逆らえなかった。

 

 流石はモンスターテイマー。魔物使い。圧倒的な女王様の気質を感じ取ったぜ。こんな雰囲気で鞭をふって調教してきたのだろう。

 

 俺も従順なマゾ奴隷に調教してください。股間のモンスターはいつだって準備出来ています。

 

「あの銃は、撃った対象を擬人化させるものです」

 

「つまり、相手を倒したり出来るものでは無いと?」

 

「副次効果として、対象の気絶が起きるのだと思います。それを狙っていました。同時に、魔王に有効な攻撃手段は密着状態での拘束技です。ならば、人と近しい姿になってもらうべきだと判断しました」

 

「ふぅん……。まあ、理解は出来るわね。ごめんなさい。私、ハナダさんが趣味で魔王をあんな姿にしたんだと思っちゃった」

 

 趣味で間違いないです。全部後付けの理由です。でもまあ、それで大体上手くいったのだから、驚きである。

 

 俺の無実が証明されたところで、均衡の首輪の人達は、戦いが終わったといわんばかりに伸びをしたり、構えを解きはじめた。

 

 魔王が起きたらどうするのだろうか。

 

 フレイ君だけは、剣を手に持ったまま、魔王へと近づいて行く。

 

 そして、剣の柄頭に手を添えると、魔王の首に剣を突き付けた。

 

「何をしているんですか?」

 

「見りゃ分かんねぇのか。今のうちに首切り落として殺しておくんだよ」

 

 フレイ君は亜人が嫌いらしい。幼女の姿になった魔王ですら手にかけようとしている。

 

 だけど、それだけはやめてください。幼女の時点で彼女は守るべき存在だ。俺の人生よりも価値のある存在なのだ。

 

 それをころすなんて、とんでもない!

 

 フレイ君と魔王様の間に割って入る。そして、魔王様を背に両手を庇うように広げる。

 

 フレイ君が剣呑な雰囲気で俺に剣を向けた。

 

「庇うのか? そこを今すぐ退くなら、殺さないでやる」

 

「すみませんが、それには頷けません。既に脅威は去りました。街を破壊した罪を償わせるのならば、生かすべきです」

 

「そいつの力が失われたわけじゃないんだろ?」

 

「確かに、魔王としての力は健在でしょう。ですが、その力は大きく削られました。次に暴れても、対処は可能です。ですから、見逃してくれませんか?」

 

 頭を下げる。土下座に移行する。全ては幼女のため。俺は命をかける。

 

 流石にここで幼女になった魔王様が死ぬなんて、後味が悪過ぎる。

 

 今まで、カエル犬以外は全員生きているのだから、なんとか平和に行きたいじゃないか。

 

「……また街を破壊した場合は?」

 

「私が全ての責任を負います。そして、同時に、私が彼女の面倒をみます。だから、この場を見逃してください」

 

 本当の狙いを口にする。目指せ合法的ロリとの同棲生活。俺、パパになります。

 

 言うことを聞かせて毎日幸せに生きます。

 

「……チッ、今回だけだ」

 

「ありがとうございます」

 

 やっぱりフレイ君はツンデレだよね。イケメンの癖に可愛い過ぎる。

 

 土下座のまま感謝する。

 

「帰る」

 

「あ、ちょっと待ちなさいフレイ! ごめんなさい。先に戻るわね。まだやる事は多いもの」

 

「……この事は黙っておく。好きにすればいい」

 

「ナタリアさんも、ネヴィアさんも、ありがとうございます」

 

 チーム均衡の首輪は亜人に肯定的では無かったはずだ。それでも見逃してくれる優しさがある。

 

 ありがとうございます。こういう何気ない人の優しさで、俺は生きています。

 

 いなくなるまでずっと土下座のままでいた。ここは平坦な場所が多いから、ずっと土下座だった。

 

 おかげで足が痺れている。

 

「き、貴様! こんなことで感謝すると思ったら大間違いだからなっ!」

 

 なんと、魔王様の意識が戻っていたらしい。ピリピリした雰囲気をまといながらも指をつき刺して宣言してくる。

 

 この妙な小物っぽさが最高に愛らしい。

 

 そして、そのまま大人しく座っている。首を傾げると、憤慨した様子で話し出してくれた。

 

「な、なんだ! 我を責任取って面倒見るんじゃなかったのか!? こんな姿になって威厳も失ったんだから、山に帰れる訳ないだろ!?」

 

 どうやら着いてきてくれるらしい。魔王様も見栄とか気にするんだね。

 

「ふう、一件落着だな」

 

 全て終わった気になっているトールさんが笑顔で言う。俺としては、まだ不安があるのだが。

 

「……私は、どうすればいいのかしら。魔術師ギルドを裏切って、機械文明の遺産だって奪っちゃったし」

 

「妾はもちろん旦那様について行くぞ」

 

 俯く幼女エルフと、にっこり笑顔の狐耳幼女。

 

 魔王様を含めて三人の幼女がここにいる。

 

 正直に言うと、俺の魔術師ギルドの収入だけでは、三人全員養えたりは出来ない。魔王様かコンちゃん、幼女エルフの誰かだけならギリギリ大丈夫だろうけど、そもそもホームレス生活していたりする。

 

「あー、おっさん家無かったよな。しょうがねぇな」

 

 トールさんが頭を掻いて、恥ずかしそうに提案してくる。

 

「俺の家に来るか?」

 

 流石に四人全員養えはしないでしょう。トールさん。

 

 まだ独身女性だというのに、こんなブサイクデブを家に入れてしまったら、彼女の今後が真っ暗になってしまう。

 

 よって、その提案にはやんわり断るのだった。

 

 しょうがない。まだ傭兵ギルドとして活動は続行するようだ。

 

「帰りましょう。この後のことは、一度戻ってから話し合いませんか」

 

 人、それを問題の先送りという。

 

「で、でも! 私もう街に戻れないわよ! あんな犯罪者同然の事をしたんだし……」

 

「まあ、魔術師ギルドは辞めることになるかもしれません。ですが、色々計画して実行したのはフーリーさんでしょう? フーリーさんなら多分街にいると思いますし、戻ってみましょう。大丈夫です。私もミトさんが償いたいと言うのであれば、手伝いますし、ここを離れるというのなら、ついて行きます」

 

「そんときゃ私も一緒に行くぜ。副ギルドマスター!」

 

 俺とトールさんが笑って手を差し伸べる。かなり悩んではいたが、最終的に幼女エルフは俺達の手を取ってくれたのだった。

 

「帰りましょう。あの水路の街に」

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