「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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 水路の街に全員で戻ってきた。辺りは戦闘の傷跡が残り、人々が復興作業をしている。

 

 瓦礫が一箇所に纏められて、大きなウシガエル犬がモーモーだかワンワンだか分からない鳴き方をしながら瓦礫を街の外へ運び出していた。

 

「よう! 無事だったか」

 

「あ、どうも」

 

 俺達に声をかけてきたのは、腕に包帯を巻いたおっさんである。背中には大剣を下げており、その下にはえんじ色のマントを付けている。顔にある傷が、積年の英雄といった雰囲気を醸し出している。

 

 この人最高に格好いいじゃんね。魔王様との戦いでもなんとか生きていたらしいし。

 

 負けはしても、生き残っていたのだろう。そこが確認できて安心した。

 

「なんだ。行きよりも帰りの方が大人数だなぁ。何があったんだよ」

 

「まあ、色々と」

 

「そうかい。お互い無事だったんだ。今度一緒に酒でも飲もうぜ」

 

 軽く手を上げておっさんと別れた。ああいうハードボイルドな生き方が出来る人っていうのは尊敬する。

 

「……あいつ、生きてたんだな」

 

 魔王様がポツリと呟いた。それは、少しだけ安心したような音色が乗っていた。

 

「止まれ……これから先は魔術師ギルドの管轄だ」

 

 魔術師ギルド前に付くと、急に門番みたいな事を言われた。俺は確か魔術師ギルドのメンバーだったはずなのだが。

 

「お前じゃない……そこの二人だ」

 

 狐耳幼女と尻尾幼女を指さすローブのおっさん。

 

「私の関係者なのですが」

 

「一応神秘の秘匿っていう名目があるんでな。悪いが入れることは出来ない」

 

 こういう所異世界なのにしっかりしているよね。

 

 しょうがないので魔術師ギルドのメンバーに入れるべきだろうか。

 

 だが、ステータス鑑定された場合、かなり面倒くさいことになる。

 

 一旦出直すとしよう。

 

「別の所で待ってて貰いますね」

 

「そうか。早くしろよ」

 

 こういう時は、箱に詰めて密入である。

 

 いつもの雑貨屋、いや、よろず屋へと移動する。武器屋の隣にあるから大変紛らわしい店だ。

 

「くそっ。防具屋じゃないのかよ!」

 

 今日もまた騙された人が怒りながら店を出ていく。奥からありがとうございましたーという声が聞こえてくるが、しばらくすると、店から出てきて塩を撒いた。

 

 強かな店員さんである。

 

「あっ! ハナダさん。いらっしゃいませ。本日は何をお求めですか?」

 

 この裏の性格の悪さをすっかり覆い隠したぶりっ子モードが最高に可愛い。悪女みたいで興奮する。

 

 いずれ、童貞を卒業したらお相手させてください。

 

「大きな箱を探しています」

 

「あ、なんか今日のハナダさん小さいと思ったら、いつもの箱を背負っていませんね。無くしちゃったんですかー?」

 

「そんなところです」

 

 時間を巻き戻し過ぎて箱は消滅していた。

 

 軽快なトークを楽しみつつも、どこからか店員さんは箱を持ってくる。

 

 武器と防具以外は大体揃う店なのだ。当たり外れ大きいけど。

 

「こちらは小さめの箱です。ハナダさんが中に何を入れているのかわかりませんが、この箱は中の重さを軽くする機能が付いているので、このサイズでも良ければ一番お得ですよー! お値段なんと金貨一枚のところを、銀貨二十五枚でいいです!」

 

「他には?」

 

「そうですねー。これはハナダさんの持っていた箱と同じサイズです。木製なので水に浮きますよ! ちなみに、この箱なんと、大聖国の聖女が入ってかくれんぼをしていたといういわく付きです」

 

 何それめっちゃ欲しい。大聖国というのも初耳だが、そんな情報と道具をどこで手に入れたのかも謎すぎる。

 

「キープって出来ます?」

 

「残念ながら」

 

 くっ。めちゃくちゃ欲しい。匂いとかついてそうじゃないか。

 

 だけど、今は幼女達を持ち運ぶ為の道具が欲しいんだ。

 

 俺は炭治郎に戻るんだ。

 

「他に、大きめの箱をお願いします」

 

「それならこれですね。なんと、遺跡で発見された凄い物質でして、中に入れると、空間が拡張されているという魔法効果があります! 本来こういう道具は魔道具にあたる物品なんですが、これは遺跡で出土したものなので、魔道具にはならなかったんですよ。ちなみに、大きすぎて持ち運びに不便なので、お値段は銀貨四十枚です」

 

 なんかタイムリーなアイテム出てきた。チート主人公なら簡単に使えるであろうアイテムボックスの劣化品。

 

 だけど、今の俺には喉から手が出るほど欲しい。

 

「いかがです?」

 

「……買います」

 

「まいどー!」

 

 全ては幼女のため。

 

 俺はほぼ全財産を使って、新しい箱を手に入れた。

 

 そして、魔術師ギルドへ戻る。今度はトールさんとの二人だけだ。幼女エルフは気まず過ぎて逃げ出した。

 

 箱の中には三人の幼女が入っている。意外と快適らしい。

 

 それなら買った甲斐もあるもんだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 明らかに人一人位は入れそうな箱を背負った俺を、ローブのおっさんがジトッとした目で睨む。

 

「……ほどほどにしとけよ」

 

「ありがとうございます」

 

 目を瞑ってくれるらしい。感謝しながら魔術師ギルドへと入っていった。

 

 魔術師ギルドの中は、ほとんどいつも通りだった。おそらく、世界が滅ぼうともここにいる研究者達は自分の都合を優先しそうな気がする。

 

「遅かったですね」

 

 そして、目を覚ましたイケメンが俺たちを待ち受けていた。

 

「冒険者ギルドから事情は聞きました。なんでも、襲来した魔王をSランク冒険者の人と一緒に退けたとか」

 

 この妙な静けさが不安を掻き立てる。

 

「まあ、色々言いたいこととかはありますが、とりあえずは無事に戻ってきていただけただけで十分です」

 

 ほっと安堵した。なんだ。このイケメンも良い奴だな。

 

 不憫系な印象しか無かったわ。

 

「とはいえ、ハナダさんの雇い主である副ギルドマスターがいなくなってしまい、更には次期筆頭候補も消えてしまいました」

 

 フーリーさんそんなに優秀な役だったのか。

 

「そこで、私は新体制を築くことにします。当面の間はその体制で魔術師ギルドを進めていくことになります」

 

 そう言って、イケメンはにこりと笑った。

 

「ハナダさん。あなたは副ギルドマスターの仕事を一部引き受けていましたね。良かったですね。これで立派な魔術師ギルドの一員ですよ」

 

 正社員のお知らせだろうか? もしかしたら、俺を副ギルドマスターにしてくれるとか?

 

「あなたは私の直属の部下になります。主な仕事は他ギルド員へのノルマの割り振りをしてもらいます」

 

 本格的な中間管理職への就職だった。

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