「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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 魔術師ギルドの塔の三階。人の少ない階層の階段横の一室が、俺に与えられた部屋だった。

 

 そして、この部屋は元々フーリーさんの部屋であり、本来は副ギルドマスターの部屋であるという。

 

 副ギルドマスターであった幼女エルフが何故二階で生活していたのかというと、イケメン曰く、監視のためらしい。

 

 そして、肝心の幼女エルフとフーリーさんがどこかに行ってしまったので、俺にこの部屋が与えられたということになる。

 

 いったいどこにいるんだろうね。

 

「おーす! 元気にしてるか!」

 

 とんとんとノックをするも、返事を待たずにトールさんが入ってくる。相変わらずの綺麗な赤髪が美しい活発な美少女である。

 

 一人慰めている最中に出くわしてそのまま勢いで合体させて欲しい。

 

 というか、最近のトールさんの来訪率が余りにも高い。ほぼ毎日やってきては、雑談したり本読んだりと、まるで自分の部屋のように振舞ってくる。

 

 そういうシチュエーション夢に見てたのでもっとやってください。

 

「お、今日はまだ誰も起きていないらしいな」

 

「皆さん幼いですからね」

 

 外見だけは。

 

 今なお幼女エルフとコンちゃんと魔王様は俺の箱の中で生活している。互いの種族が別々であり、魔王様と幼女エルフは敵対すらしていたというのに、随分なかよくなるのが早かった。

 

 幼女エルフの純粋さに魔王様が折れた結果である。

 

 そうして、身寄りの無い三人娘は俺の箱で同居しながら勝手に仲良くなっていく。

 

 俺の知らぬ間に百合百合空間作られてそうな勢いだ。出来ててくれないかな。

 

 俺は見てるだけで満足できるから。

 

 女の子同士って良いよなぁ。

 

「おっさん、朝飯は食べたか?」

 

「いえ、実はまだです」

 

 最近は残業もあってね。

 

 中間管理職に付いた俺は、日本にいた時よりかは楽な生活を送っている。福利厚生がそこそこ充実しているだとか、研究者達は頭がいいからか、無駄に騒がずに淡々とノルマをこなしてくれたりするので、人間関係では悩みは無い。

 

 上司がイケメンだけだっていうのもあるかもしれない。

 

 給料も増えて、今では結構な家具を買い揃えては、箱の中にしまわれていく生活を送っている。相も変わらず俺はホームレスだ。

 

 橋の下に金星人はいないけど、幼女のエルフとケモ耳美少女と、魔王様はいる。

 

 素晴らしい生活だ。これで持ち家のひとつがあれば、十分だったのにな。

 

 最近では、俺の住処になっている橋の下にトールさんが遊びに来るレベルだ。

 

 勝手に住み着いただけだから、目立ちたくないので、こっちは困る。立ち退き要請されると断れないので。

 

 ただ、偶に衛兵のおっさんが哀れんだ顔して銀貨を一枚くれたりするので、公認にはなっているのかもしれない。

 

「それじゃあ、今から飯食いに行くぞ!」

 

 トールさんに誘われて、街に出た。

 

 街の外は、復興も進んだ、かつての姿を取り戻している。今回の出来事を期に、少しだけ街を作り替えるとの話でもあった。だから、それの工事で街は新しくなっている。

 

「いらっしゃいませ! ハナダさん。トールさん。今もうラストオーダーなので野犬定食でいいですね?」

 

 すっかり常連になった野犬の店に入る。早速いつものメニューを作りにウエイトレスさんが行ってしまわれた。

 

 偶に他の料理が食べたいのだが、既に聞き入れられることは無さそうだ。

 

 トールさんと一席開けてカウンターに座る。トールさんは食事とかの時は、あまり男っぽさとか、粗野な動作を見せない。

 

 なんとなくだが、彼女は貴族とかそういうのなんじゃないかなーと思っている。

 

 割と上品だからね。

 

「お待たせしました! 野犬定食です!」

 

 料理が運ばれてきて、それと交換するように銅貨を渡す。これが異世界の料理店スタイルなのだろう。

 

 衛生面では日本は流石に負けなかった。

 

 最初は驚いた野犬定食だが、今や日常的に食べるものとなった。偶に夜にカエル犬のから揚げとか食べるが、案外美味しいのだ。

 

 カエル犬は高いので、奮発した時のみだが、それくらいの価値はある美味しさだった。

 

 ただ、おっさん的には栄養の偏りが気になるところ。

 

 そろそろ健康を意識してくる年代なんです。

 

「ご馳走様でした」

 

 そうこうしているうちに、野犬定食を食べ終わる。食後の礼までしっかりとこなした後に、トールさんがこちらを向いた。

 

「さて、朝飯も食べたところだし、傭兵ギルドに行くぞ!」

 

「あれ? 今日は休みでは?」

 

「なんか、ネヴィア達が呼んでいたんだよな。時間あるし話だけでも聞いてみようぜ」

 

 そういう事で、傭兵ギルドへ移動した。

 

「あ、こっちこっち!」

 

 傭兵ギルドにある酒場みたいなホールで、均衡の首輪は待っていた。魔物使いのネヴィアさんが手を振って俺たちを呼ぶ。

 

 ちなみに、暇な時は、ここに均衡の首輪のメンバーが集まっている。

 

 大金を得ようとか、一攫千金を狙うのではなく、安全な討伐依頼で確実に稼いでいくスタイルなのだ。

 

 よって、大体いつもここにいる。

 

「どうかしました? なにか話があると聞いたのですが」

 

「──隣の国まで旅行しない?」

 

 早速ネヴィアさんが切り出した。そこまでの経緯を聞こうと、他のメンバーを見る。

 

「またこいつの思いつきだ」

 

「……ネヴィアが隣国の奴隷商が持っているという魔物に興味を示している。それの買い物」

 

「なるほど」

 

 ぶっきらぼうな物言いのフレイ君は説明役に適しておらず、結局、一番無口なナタリアさんが説明してくれることになった。

 

 そうか。

 

 奴隷か、いいね。

 

 俺も昔は欲しいと思っていた。いつしかトールさんのような美少女やら、幼女エルフなどの美幼女と一緒に生活してすっかり忘れてしまっていた。

 

 いいね。奴隷。断然欲しくなってくる。

 

 最近はまったりしていたけど、俺はやっぱり奴隷が欲しい。

 

 ご主人様って呼んで欲しいし、そういうプレイしたい。

 

 そもそも童貞卒業したいっていうね。

 

「悪い、私は行きたくないかな」

 

 トールさんが早速断ってしまった。

 

 こうなると、俺もトールさんに合わせて断って、元メン三人で楽しんできてと言いたくなる。

 

 だが、しかし。奴隷である。

 

 かつては諦めた夢だったが、今なら渡航もできるし、奴隷を買える程度の蓄えはあると思う。

 

 何分生活で消費するお金少ないからね。ホームレスだからね。

 

 家賃もローンも無い究極の効率的生活を送っているんだ。金も貯まる。

 

 トールさんか、まだ見ぬ奴隷か。

 

「もう少しだけ、待ってください」

 

 これは一旦家族会議せんとな。箱の中の住人増やしていいのか聞かなくちゃ。

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