「俺だってチートが欲しかった〜ブサイクデブなおっさんの魔法陣」   作:雨天 蛍

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「魔術師ギルドって神秘の秘匿という目的もあるし、冒険者が人気だから人員は少ないのよね」

 

 幼女エルフの後を追いかけながら話を聞く。既に何人かは挨拶をしたが、全く興味を示されなかった。

 

 顔を見た瞬間にそっぽを向いた奴もいたし、はなから無視してくる人もいた。

 

 俺の高校生活みたいだった。無視されてばっかり。

 

「それに、研究者が多いから、基本的に他人に興味無いの。気にしないでね」

 

 幼女に励まされながら三階に移動する。二階の住民は無惨な結果に終わった。

 

「お邪魔するわ」

 

「おー? いらっしゃい。元気にしてるかいミトちゃん」

 

 白衣の美女がそこにいた。気だるそうな野暮ったい、いかにもな化学者系美女だった。タバコが似合いそうな感じの人だった。おっぱい大きい。

 

「これが話に聞いたミトちゃんの直属の研究員かい?」

 

「そうよ! 森で出会ったの!」

 

 まるで俺がクマさんみたいな紹介をされた。

 

「よろしくお願いします……ええと」

 

「フーリーだよ。よろしくね」

 

「よろしくお願いします。フーリーさん」

 

 なんだか普通に会話が出来ている。まさかの常識人枠なのだろうか。

 

 いや、こういうのはナチュラルに毒を吐くマイペースな女子だろう。何回か目が合うとキモイんだよって言われるんだ。俺は知っている。

 

「粘度の高そうな笑顔だねぇ」

 

「性分なもので」

 

 にちゃぁっとした笑みは残念ながら生まれつきだ。赤ちゃんの頃のアルバムの時点で変わらなかったんだ。

 

「私は主に錬金術系の研究をしているんだよ。怪しい薬とか作ってそうだろ?」

 

「ああ……そうですね」

 

 その外見は狙ってやってるそうだ。

 

 いいと思います。この歳になってくると、あざとい系も愛せるんだよ。むしろ可愛いと思う。そうなろうと演技してくれるのはありがたいからね。

 

「戦闘は不向きだから、そこら辺はよろしく」

 

 遺跡調査には誘えなさそうだ。残念である。

 

「それじゃあ、他のところにも行きましょうか」

 

 フーリーさんの研究室から出る。ちょうど、焦った様子のイケメンが階段を降りてきた。

 

「あ、マスター!」

 

「む? ミト君じゃないか。どうしてこんな所へ?」

 

 幼女エルフが笑顔で駆け寄った。無邪気な様子になんだかグサリとくる。

 

 なんというか、当たり前なんだけど、俺よりも仲のいい人がいるんだなっていう。

 

 仲良しグループだと思っていたのに、俺だけハブられていたり、幼馴染の誕生日プレゼントに、昔から好きだったものを用意したら、他のやつは今好きなものを用意してたような感じの。

 

 置いてけぼりの感情。知り合いの女子に知らないうちに彼氏が出来てたような感覚。

 

 寝取られエロゲで良く味わった感情だ。

 

「紹介するわ。この人がここの魔術師ギルドのギルドマスターよ」

 

「ん? ……見かけない顔だな」

 

 メガネをかけているイケメンが俺を訝しそうに見る。

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ……よろしく」

 

 それだけ言うと、俺を視界から外し、イケメンは幼女エルフとだけ喋りだした。

 

「この者は?」

 

「昨日森に行った時助けてもらったのよ! それで、無一文だって言うから雇ったの」

 

「神秘の秘匿をする魔術師ギルドの副ギルドマスターとは思えない軽率な行為だな。捨ててきなさい」

 

「だ、大丈夫よ! 身を呈して庇ってくれたんだから!」

 

「……そうか。まあ、いい。私は今忙しくてね。この話は後にしよう」

 

 イケメンは足早に去っていった。去り際に俺を睨みながら。

 

 ここに俺の居場所はないとでもいわんばかりに。

 

「どうかした? 疲れたの?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 そういう扱いはもう慣れっこではあるが、傷つかないわけじゃない。

 

 適当に誤魔化して、この場は切り抜けた。

 

 

 

 

「ふぃー。疲れた」

 

 挨拶回りも終わり、荷物を背負って帰路につく。研究室で徹夜しそうな勢いだった幼女エルフには、今日の給料だけ渡されて追い出された。

 

 この給料どうしようかな。銀貨よりは少ないから、貯めるべきだろうか。

 

 というか、これの価値がわからない。宿を取るにしても、どこら辺にあるのだろうか。

 

 一旦戻って聞いてみよう。そう思い、踵を返す。

 

「……おや?」

 

「どうも」

 

 途中でイケメンと出くわした。軽く会釈する。

 

「そういえば、名前を聞いていませんでしたね」

 

「あー、ハナダと申します」

 

「そうですか。では、ハナダさん」

 

 グイッと、キスでもされるかと思った。

 

 胸ぐらを掴まれただけだった。

 

「彼女は僕のフィアンセでしてね。若く、価値観も違うエルフなので、あなたにも優しくしているだけなんです。思い上がらないでください」

 

 それは、一度あったことのあるシチュエーションだった。

 

 幼馴染に告白した数日後のことだった。幼馴染の事を意識しているという先輩から呼び出された時にあった。

 

「おまえ、昔から付き合いがあったってだけだから、チョーシ乗んなよ?」

 

 仲間を連れて殴る蹴る。俺の青春の一ページ。

 

「彼女に近寄らないでください」

 

 おまえ、あいつにもう近寄んなよ。

 

 付き合ってもないのに、彼氏面。

 

 でも、目の前のイケメンは、幼女エルフと婚約者であって。

 

 どん。と突き飛ばされる。尻もちをついた。

 

 見下した表情で、去っていった。

 

「…………奴隷、欲しいなぁ」

 

 裏切らない、奪われない。絶対的な愛情が欲しい。

 

 吸ったことないんだけど、なぜだかタバコが吸いたかった。

 

 やるせないな。って。

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