アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート   作:朕好こう

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【幕間】世の中には月夜ばかりは無い/天使のこころ

 噂に拠れば愛には対価が必要らしい。なら私は恋歌に対してなにをすれば、彼女は愛を授けてくれるのだろうか。

 

「景ちゃぁん、これわかんない」

 

 私に抱きついてきて、助けを請う。私達はまだ学生だから仕事ばかりではいけない。勉学をきちんとしないと芸能活動を停止させられる。

 

「恋歌、自分で解かないと駄目よ。昨日も私に聞いてばっかりだったわ」

「いーじゃん、わかんないのは聞いた方が早いの!だから景ちゃん教えてください」

 

 可愛らしく目を潤ませて懇願してくる。あまりの可愛さに頷きたくなるが、彼女の為を思って首を横に振ろうとして止める。愛の対価として、お世話をするというのはどうだろうか。

 

「景ちゃん…?」

 

 名前を呼ばれて停止していたのに気づく。なんでもないわ、と返すとまたじゃれついてくる。その様子が犬みたいで可愛くて頭を撫でる。本当に■してる。片時も離れたくない。千世子ちゃんに渡すなんて以ての外だ。あの日のことを思い出して、ぎゅっと恋歌を抱き締める。そして首筋を少しだけ食む。ぴくっと反応する様子に思わず笑みがこぼれる。

 

「蚊がいたみたい、恋歌」

「え?本当?やだなぁ、腫れないといいけど」

「大丈夫、制服なら襟で隠せるわ」

 

 困ったような顔も■おしい。そっかぁと何も疑わない貴女の素直さも■してる。デスアイランドの撮影が終わってから、日に日に彼女への■が増しているのを感じる。少しの動作にも目が惹き付けられてしまう。■らしいと感じてしまう。

 

「もう夜も深いし、お風呂に入って寝ない?」

 

 彼女がそんな提案をしてくる。最近は一緒にお風呂に入るようにしている。ルイとレイとも入るが、2人が成長したら2人きりで入るのだ。千世子ちゃんには一緒に暮らすこともお風呂に入ることも出来ないだろう。自分に優る点があると直ぐに愉悦の笑みを浮かべてしまう。恋歌に対する感情が抑えられない。独占したい、ずっと誰も居ない場所で■し合いたい。特に千世子ちゃんが居ない場所が望ましい。

 

 この■情が歪んでいるなんて分かりきってる。でも、抑えられなくなっていく。千世子ちゃんに取られたくない。

 

 お風呂に入っている時も、寝ている時も、ご飯を食べている時も、お芝居の時以外ずっと恋歌のことを考えている。

 

「これって幸せなことよね」

 

 大好きなお芝居と恋歌のことだけを考えていればいいのだから私は幸せなのだろう。だからこの幸せを奪おうとするなら誰であろうと容赦はしない。お風呂に入って、眠そうな恋歌の髪を乾かしながらそんなことを思う。

 

 ■してるの、恋歌。最初は気持ち悪いって思ってしまうかもしれないわ。けど必ず私だけを見て貰えるように努力する。貴女が幸せで居られるように、私が幸せで居られるように。永遠に、一緒に居ましょう?

 

 完全に寝てしまった彼女を起こさないようにうなじに顔を埋めて、優しくキスする。これが私のものだという証拠。この行為が私の中にある激情を抑える唯一の方法。

 

 夜は更けていく。月の光は雲で覆われ、一切の光を通さない。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 スターズの事務所に来ると、今日、仕事が無い筈の恋歌ちゃんがソファで眠っていた。制服なのを見る限り、学校から直接来て疲れて眠ってしまったのだろう。少し思いついたことがあったので、誰も居ないのを確認した後やってみる。

 足音を立てずに静かに近づき、髪を触る。さらさらした黒髪は触っていて飽きない。頬を突っついても起きない。

 

「…恋歌ちゃん、起きないとしちゃうよ」

 

 ソファが2人分の重量で少し軋む。今の私を客観的に見ると寝ているいたいけな少女を襲おうとしている暴漢だろうか。まぁ、鍵を閉めているし、他の人のスケジュールは完璧に把握しているから今日事務所に誰かが唐突に来ることは無い。顔を彼女に近づけ、デスアイランドの打ち上げでしたようにキスをしようとすると恋歌ちゃんの目が開く。

 

「ち、千世子ちゃん!?って痛ァ!?」

 

 勢い良く起きるので、彼女の頭と私の頭がぶつかる。

 

「…なんだ、起きたんだ。おはよう、恋歌ちゃん」

「な、なんだじゃないよぅ。千世子ちゃん」

 

 ビクビクと小動物のように痛みを堪える姿が可愛らしい。少し涙目なところもポイントが高い。すると、彼女の首筋の痕に気がつく。襟で隠されているが、それは。

 

「蚊に刺されたの?」

「ん?うん、なんか昨日刺されたみたい」

 

 恥ずかしそうに首に手をやって隠す。その姿を愛らしく思うと同時に夜凪さんへの憎悪も増す。一緒に暮らしていることをアドバンテージに早速手を出したのか。あの時、恋歌ちゃんとキスをした時、わざと彼女の目に留まるようにしたのは間違いだったか。

 

「ふぅん…恋歌ちゃんも役者なんだから気をつけた方がいいよ。邪魔な虫には」

 

 恋歌ちゃんにこの感情が伝わらないように微笑む。

 

 デスアイランドでのあれは決意表明だ。私が“天使”を止めて新しい私へと羽化することと、恋歌ちゃんを夜凪さんから奪うことへの決意表明。私の演技は今も進化している。夜凪さんの演技も、恋歌ちゃんの演技も学習して物凄い勢いで。今まで停滞していた分を取り戻しつつある。

 

「今日、仕事無いよね?どうしたの?」

「んー、堀先輩とお喋りしに来ただけ」

 

 …アキラ君は何をしているのだろうか。いくらそういう感情も関係でも無いからって懐かれているのは、癪に障るなぁ。喋るだけなら私でもいいじゃないか、なんでアキラ君なのだろう。

 

「私じゃ…ダメ?」

 

 目を潤ませながら、恋歌ちゃんに抱きつく。少し甘えたいとかそんなことはひとつも考えていない。涙も演技だ。

 

「え?駄目だよ〜」

 

 彼女はふにゃっとした笑顔でそんなことを言う。

 

 私のブラックリストにアキラ君が載った瞬間だった。




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