アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 作:朕好こう
前回のあらすじを簡単に説明します。臭いフェチストーカー男に粘着プレイされました。犯人は明神阿良也です。捕まえてください。
ちょっと興味持って欲しいと思ったら、あの異常な興味の持ちようとかこのゲームは0か100しか知らんのか。クソゲーめ…!
顔見せは成功したので、知り合い程度には認識されたと思います。舞台には参加する予定無いんで銀河鉄道の夜編はつまらない暗殺術上げとそろそろ“暗殺の天使”ENDに向けて走り出します。今日はアキラくんとお仕事みたいですが、全然内容がわからんのですよね。やっぱりクソゲーじゃないか!
>貴女は稽古場に着く。そこには和歌月千、星アキラなどスターズの俳優だけではなく色んな者たちが居る。椅子に座っていた天知心一がこちらを見て、にこっと笑う。
天知さん!?しかも和歌月ちゃんと他の舞台俳優ですね。劇団天球ほどではありませんがそこそこ有名な劇団員も居ます。なんだこれ。まるで舞台をするみたいな配役ですね。
「やっと来たか、恋歌君。稽古が始まるよ」
な、何のですかね…なんか聞ける雰囲気じゃないんですけど。
>天知心一がパンっと手を鳴らし、全員がそちらを見る。
「主役も揃ったことですし、“星の王子さま”をかの巌裕次郎率いる劇団天球に負けないように頑張りましょう。私は貴方達に期待しています」
……“星の王子さま”?いや、そんなまさか。“銀河鉄道の夜”にぶつけて舞台公演をするってことですか!?馬鹿か!?こちとら映画俳優ぞ!?しかもキャスト一覧を見る限り、恋歌ちゃんと堀くんが主役。恋歌ちゃんは頑張ればどうにかなるかもしれませんが…星アキラは原作でも主役としての才能はありません。もう嫌だァ、失踪するんだ………
なんて絶望している場合じゃありません。こうなったらまた予定変更です。“星の王子さま”に参加するということは舞台に出るということ。そうすると“羅刹女”も開放されます。というかそこに行ってしまいます。運命に抗えないって奴ですね。因みに“羅刹女”のどちらサイドに就くかは自分の中で決まってます。景ちゃんです。当たり前だよなぁ!?天使負かさないと天使になれないので。後、共演者として景ちゃんの演技を見れるのはうま味です。暗殺者ルートから離れていってないかこれ?
…そんな訳ないだろ!いい加減にしろ!!
やるなら全力です。八つ当たりも兼ねて、“銀河鉄道の夜”を超えます。初めて景ちゃんと本気で演技を競う場ですが、負ける気はありません。RTAでも無いので時間のロスとか気にしないで行けますし、“星の王子さま”をやると言うのも初めて聞いたルートですのでゲーマーとしては盛り上がってますね。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私、和歌月千が呼ばれたのは“星の王子さま”と言う舞台のキャストとしてだ。最初は私の努力が認められたからだと思った。だが、稽古部屋に入るとそこには有名な舞台俳優たちが談笑しており、入口付近には星アキラさんが居た。アキラさんは私に気付くと近づいてきてくれる。
「やぁ、和歌月君。今回は宜しく」
「宜しくお願いします」
「固くならなくていいよ。それにしても遅いな、彼女。いつもは早いんだが」
少し緊張しながらアキラさんに挨拶する。そして彼の言う、彼女という言葉に首を傾げる。
「彼女、ですか?」
私が入ってきた扉が開く。皆の視線がそこに集まる。容姿は可愛いが、千世子さんとは比べものにならない。だが、彼女の雰囲気に呑まれる。彼女から視線が離れない。彼女が私達の視線を離さない。
「やっと来たか、恋歌君。稽古が始まるよ」
アキラさんと天知心一だけがその場で動けた。アキラさんが普段通りに彼女に話しかけ、天知心一が手を鳴らしてその場の雰囲気を元に戻す。
アレはなんだ?以前の彼女じゃない。彼女は目立たない存在だった筈だ。演技は優れていても、落ち着いた雰囲気だった。 あんなに他者を惹き付ける者だったか。
「初めまして、皆さん。私が頭鬼恋歌です」
その彼女の名前は、頭鬼恋歌。私の同期だが、遠い場所に居ると感じた。あのサスペンスの時より更に進化した彼女がそこに立っていた。さっきまで笑っていた筈の舞台俳優たちの顔が研ぎ澄まされているのが分かる。彼女に当てられて、負けてられないと思ったのだろう。
「舞台は初めてですが、私は必ずこの作品を成功させます。皆さんと共に“星の王子さま”を作り上げたい」
一つ一つの言葉がストンっと自分の中に入ってくる。絶対に成功させなきゃ行けないと
「同じ時期にあの巌裕次郎氏が演出する“銀河鉄道の夜”があると不安に思われるかもしれない。私が主役であることに不満を抱いている人も居るかもしれない。だから私は実力で魅せます」
笑顔で言葉を紡いでいく。洗脳されているかのように気分が高揚していく。天知さんが言っていた巌裕次郎の作品と同時期であることに不安がっていた者がもしかしたらかの作品を超えられるかもしれないと思い始める。頭鬼恋歌に不信感を抱いていた者が、彼女の声に耳を傾け始める。
「見せつけましょう。我々の演技が誰にも劣らぬということを」
ここにいる役者の中には前は売れていたが、今はそんなにという者もいる。その者たちが希望に満ち溢れた顔をし始める。
拍手喝采が鳴り響く。熱気が稽古場を包み込んだ。私も、彼女の元であれば変われる。そう思った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
…相変わらず規格外だ。演技で舞台俳優たちの潜在能力を引き出すだなんて夜凪君と彼女以外この日本で見たことが無い。
先程まで喋っていた和歌月君の顔を見る。恋歌君に心酔しきった顔だ。つくづく、恋歌君が宗教勧誘の人じゃなくて良かったと思う。神を信じさせるのは彼女の得意分野だろう。演じるだけで他者に自分の思想を共有させられるんだから。彼女に掛かれば、人心を掌握するのは簡単だ。彼女は他人の望むモノに成りきれるのだから。的確に人の弱い所を突いてくる。求めるものを与える。そんな救世主のような存在が彼女だ。
星の王子さまの舞台は、前々から舞台俳優たちは稽古をしていたらしい。自分達もしていたが、全員の顔合わせは母さんからの許可が下りるまで出来なかった。それをどうにかしたのが、恋歌君と天知心一。何をしたのかは聞いてもはぐらかされる。ただ彼女は僕の為にこの舞台を用意したとだけ伝えてきた。ならそれに応えない訳にはいかない。
僕の演技はデスアイランドの時より遥かに伸びた気がする。恋歌君曰くまだまだ足りないとの事だが。
僕の望みは“本物の役者”になることだ。この作品で僕は更なる進化を遂げる。
彼女となら、それが叶う気がした。