アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート   作:朕好こう

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咲き誇る花、散り行く花

 終わりましたね。制汗剤のCMって青春系のばっかなんで嫌になりますよ。部活とか屋上とかでイチャイチャしやがってよォ…

 

 そんなことは置いといて、竜吾くんの好感度上げが成功しましたね。スターズ内であまり目立つと仕事来なくなったりしますからね。出る杭は打たれるって奴です。気をつけましょう。その分、大黒天では才能さえあれば伸ばしてくれるので、そういう(しがらみ)を気にしないでプレイするなら自分で事務所を立ち上げるか、大黒天に入りましょう。あまりやったことないんで分からないですけど、wikiを見る限りではスターズよりはやり易いです。仕事が来るかどうかは別として。

 

 CM撮影が終わり次第、舞台稽古…と言いたいところですが、敵情視察です。景ちゃんと阿良也くんの現状を確認しに行きましょう。ちなみに原作での彼らの銀河鉄道の夜の評価はS-ですね。高ぇよ…何故マイナス判定があるのかと言うのは後で言いますが、これに勝つにはSかS+を叩き出さなければいけません。ですが、今のところB+がいい所でしょうね。Aにも届かないということです。理由はアキラくんや共演者だけのせいでは無く、恋歌ちゃんが死という概念を理解し切れていないこと、舞台という初めての経験に対応出来ていないことが挙げられます。

 

 つまり、今回の敵情視察では彼らの現状確認と舞台に必要な経験値獲得をしに行くわけですね。ちょうど良く死の概念が理解しやすい人も居るので、行きます。

 

 >貴女は劇団天球の稽古場に足を踏み入れた、誰にも見つからないように少し離れた場所から夜凪景と明神阿良也を観察する。

 

 あ、ずっと言い忘れていましたが『洞察力』を持っていないキャラが芝居を見ても何かを掴むことは稀です。なのでお芝居した方が掴むのは早いですね。あとはお助けキャラじゃないですが黒山墨字、星アリサなどの洞察力高めの人にアドバイスを貰った方が早いです。

 

 >夜凪景は以前より表現する力が高くなっているように感じる。明神阿良也もそれに合わせ、成長しているようだ。

 

 ちなみに彼らは洞察力も高ければ、芝居しても成長するので化け物です。俳優ビルドでガチガチに固めてやっと追いつくか越えられるかなので暗殺者ビルドも組み込んでる恋歌ちゃんが越えられるわけないんだよなぁ。銀河鉄道の夜終了時には景ちゃんと阿良也くんは演技ステータスがめちゃくちゃ評価高くなります。特に景ちゃん。伸びしろがあるってレベルじゃねーぞ!?ってキレ散らかすくらい伸びます。簡単に言えば、感情を伝播させられるんですね、何それ怖い…

 

 >貴女の近くに誰かがやってくる。『気配察知Lv3』の習熟度が少し上がった。

 

「おい」

 

 >巌裕次郎が貴女に話し掛けてくる、

 

 お、彼から来てくれるとは都合が良いですね。彼とお話しましょうか。では次回は彼とお話する所から始めます。ご視聴ありがとうございました。

 

 

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 夏の陽射しを腕で遮る。それでも涼しくなることは無くて、少しげんなりする。

 

「暑っつ…」

 

 暑さから逃れるように木陰のベンチに座る。空を見上げて、制汗剤を首に付ける。

 

「あ、竜吾くん!」

「よう、恋歌」

「夏休み、会えなくて寂しいなぁって思ってたから会えて嬉しい!」

「いや、この間も会っただろうが」

 

 ワンピースを着たあいつが笑顔で近付いてきて、当たり前のように同じベンチに座る。俺の手にある制汗剤を見るとまた嬉しそうする。

 

「同じの使ってるね。お揃いだぁ。もしかして私と一緒にしたのかな?」

 

 悪戯っぽく笑って話してくる。…確かに、部活で見たからお揃いにしたけど、それを認めるのは癪だから。

 

「偶然だろ。揶揄うなよ」

「偶然でも私は嬉しいけどなぁ。君と一緒で」

 

 今日一番の笑顔で俺の顔を覗き込む。俺は夏の暑さじゃない別の熱さを顔に感じ、つい顔を逸らした。

 

 

「はいカット!」

 

 カチンコの音で強制的に現実に戻らされる。隣に座る頭鬼恋歌はもう立ち上がり、去っていく。また引き込まれた。普通に演技をしようとしたのに、あいつのせいで変な感情を持たされた。

 

 思えば初めて会った時から嫌いだった。ゲロおん…夜凪景と似た演技をすると和歌月から聞いた時から気に食わなかった。役者は輝くのが仕事だ。必要の無いことをして芝居に影響を与えるのは馬鹿だ。だからあの夜凪景みたいな奴なら絶対に関わりたくなかった。

 デスアイランド撮影18日目、あいつの演技を見に行った。シーンの内容はあいつが友人を殺そうとして、アキラが止める。だけどナイフを持ったあいつはアキラもターゲットにして逆に殺される。裏切り者役にはよくあるシーンだ。それをスターズの俳優がやるなんてな…

 

「何してるんだ!やめろ!」

 

 アキラが止めに入る。相変わらず正確だ。声の出し方も身体の動きも良い。現場慣れしているから緊張も無い。…つまらねぇ演技だがNGが出ない演技だ。

 そしてあいつは、一気に現場の雰囲気を呑み込んだ。

 

「何って…殺すんだよ。見ちゃったから君も殺さなきゃいけないんだ。なんでさぁ、協力し合おうとするの?殺しあってよ。私、困るんだよ」

 

 瞳孔を大きく開いて、ナイフをアキラに突き付ける。アキラはスレスレで避ける。その後、色々もつれあって、ナイフがあいつの腹に刺さる。

 

「…あは、刺さっちゃった。ねぇ、今どんな気持ちかなぁ?人を殺すってさぁ、どんな気持ち?」

 

 血が大量に出ているにも関わらず、不気味な笑顔で問う。アキラは自分の赤く染まった手を見て、顔を青ざめさせる。その演技は迫真の演技に見える。本当に殺してしまった様な顔をしているのだ。シーンが終わって、アキラの近くに行く。

 

「おい、大丈夫か?お前、体調でも悪いのか」

「…あぁ、大丈夫だよ竜吾君。体調が悪い訳じゃないんだ」

「でも顔、真っ青だぞ」

「…君は、人を殺したことがあるかい?僕は無い。ドラマとか映画では見たことあるけどね。なのに、あのシーンで僕は確実に人を殺したんだ」

 

 何を言っているかわからなかった。まるで夜凪と喋ってるみたいだった。いや、殺されかかった友人役の奴も震えていた。本当に殺されかけたかのように。

 理解出来ない。共演者にリアルな感情を与える演技なんて有り得るのか。それが出来るのは人間なのか。

 自分がその演技に取り込まれたらどうなってしまうのか。

 

 …だからなるべくあいつと共演しないようにしていたのに、制汗剤のCMで共演してしまった。久しぶりに会ったあいつは舞台の影響か髪を短くしていた。俺を見掛けると笑顔で話し掛けてくる。案外、多趣味らしく俺がやったことは大体知っていた。また何かやってみるか…なんて思っていたら冒頭に戻る。

 

 恋愛感情をあいつに持つことは無い。だからあのシーンで無理矢理その感情を持たされたことだけが不愉快だ。髪を掻き毟る。別に仕返しをしたりはしないが二度と共演したくないリストにあいつが刻まれたのだけは確かだ。

 

 

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 夜凪がウチの劇団に来た。思わず飲んでいた水を吹き出した。そして巌さんが口を開く。

 

「主演ジョバンニに明神阿良也、その友人カムパネルラに夜凪景…主演の1人だ」

 

 …納得がいかなかった。別に主演を俺が取れなかったことじゃない。いやそれも不満だが、力不足は分かっている。けど、他の人じゃなくて急に来た外部の奴が主演をやるのはどうなんだ。夜凪はリアリティのある演技をする。だけどそれは映画での話だ。舞台ではまた勝手が違う。

 

「ちょっとちょっとちょっと巌さん!?嘘でしょ!?この子がカムパネルラ!?」

 

 亀太郎が慌てて巌さんに話しかける。

 

「無理だって!ちんちんついてないじゃん!!」

「そこかよ…」

「分かんねーだろうが」

「!なるほど」

「なわけねぇだろうが!馬鹿!」

「うるせーな」

 

 こいつ馬鹿なんじゃないか?思わず亀太郎に突っ込んでしまう。その後は七生さんと巌さんの話し合いになる。役者は何を以てプロと素人を区別するか…か。なんだろうな…と俺が考えていると阿良也さんが口を開く。

 

「役者を名乗る覚悟があるかどうかだよ。言葉ってのは重く強いものだよ。だから俺は言葉を軽く扱う奴が嫌いだ。もう一度きくよ、夜凪」

「君、役者?」

 

 役者を名乗る覚悟。俺にそれは有るのだろうか。才能も努力も足りてない俺がそれを名乗る資格が覚悟があるのか。…いや、無いんだろうな。あるなら、事務所を辞めずに必死にしがみついてた筈だ。簡単に諦めて辞めてしまう奴がそれを名乗る資格なんて無い。

 

 黙っていると即興劇(エチュード)が始まった。七生さんと夜凪の即興劇。七生さんの気が立っている理由はわかる。巌さんの最後の作品を成功させたいからだ。巌さんはこの作品を以て終わりにするらしい。彼の作品を楽しみにしている人達は沢山いる筈だ。それに劇団天球は彼に舞台俳優としての人生を与えてもらった者たちだ。だから必死になっている。彼をもう一度やる気にさせる為に。

 即興劇のお題は汽車か。椅子に座った夜凪の身体が微かに揺れているのに気づく。皆はただ座っているように見えているようだが、何度もあいつの演技を見てきたお陰か気づく。逆に言えば皆のように夜凪の芝居を見た事ない奴らは気づかない程の揺れだ。相変わらず繊細過ぎる演技をする。

 七生さんが髪を下ろし、眼鏡を取る。そうすると元々綺麗だけど全く別人のように更に綺麗になる。夜凪は驚いた様だ。

 

「どうかした?」

「…ううん。他にも席が空いていたから驚いてしまって」

 

 今度は七生さんが驚く番だった。切り返しが上手いな。その後は夜凪を使う方に七生さんは立場を変え、亀太郎は罵倒されていた。

 

 話し合いも終わって帰ろうとすると夜凪に話し掛けられた。

 

「真咲くん、こんにちは」

「…よう」

 

 複雑な気持ちだ。こいつの才能は知っている。だからと言ってぽっと出の奴に主演を取られて嫉妬してないわけじゃない。役者を名乗る覚悟も無いのに、みっともなく嫉妬してしまう。

 

「真咲くんって茜ちゃんと同じ事務所じゃなかったかしら」

「あー…諸事情でな。辞めたんだよ。巌さんに拾って貰った…というか拉致られた」

 

 天才に俺の心は分からない。こうやって俺の心を抉ってくる。俺に関わるな。天才の癖に凡人に歩み寄るな。お前らはいつも笑顔で俺らを踏みにじる。恋歌もお前も阿良也さんも千世子も。皆、凡人なんかに目もくれない。

 

「ら、拉致られた?怖いわ…」

「なぁ、夜凪」

「?」

 

 俺に関わるな、と言おうとして口を閉ざす。傷つけたい訳じゃないから。一息ついて、窓を指す。

 

「今日はもう暗いし早く帰った方がいいぞ」

「そうね、そうするわ。またね、真咲くん」

 

 走っていくあいつを見送る。すると巌さんと阿良也さんが喋っているのが聞こえてくる。

 

「…“星の王子さま”?」

「あぁ、スターズの俳優の頭鬼恋歌と星アキラによる舞台だ。俺らの“銀河鉄道の夜”と同時開演する」

「…俺らが負けるって?」

「ねぇよ、そこは心配してない。だが頭鬼恋歌には気をつけておけよ。死臭がする奴なんて大抵やべぇやつだからな」

「わかった」

 

 あいつも舞台を?しかもアキラもか。恋歌は何を考えているんだ。星アキラの演技は確実にあいつの足を引っ張るのに。

 

 そんな事を考えながら帰路に就いた。 

 

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