アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート   作:朕好こう

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私にとっての普通

 ■には限りがある、らしい。私はそんな事無いと思うけれど、恋歌にとってはどうか分からない。だからこそハッキリさせないといけないのだ。私が恋歌を■しているかどうか。

 

 文化祭も終わり帰宅する道の途中で、私は立ち止まる。隣で歩いていた恋歌が、立ち止まった私を不思議そうに見ながらも私を待ってくれている。

 

 そんな彼女を見て、私は幸せな気持ちになる。私は…恋歌を、愛、している。ずっと前から自覚はしていた。けれど言葉にすることを恐れていた。(あいつ)のような軽い言葉になってしまうんじゃないかと怖かった。

 でもいつまでも逃げていたら、千世子ちゃんに奪われてしまう。その方が怖い。私の傍から恋歌が居なくなるなんて想像出来ない。それだけは嫌だ。

 

「景ちゃん?」

 

 今、心配そうに私を見てくれる貴女が好き。あの時、私を怒りから救ってくれた貴女が愛おしい。演じる時、普段と違う冷たい雰囲気の貴女も大好き。

 色んな恋歌が居て、その中でも私を見てくれる貴女を1番愛している。

 千世子ちゃんじゃなくて、私をずっと見ていて欲しい。

 

「恋歌、私は…貴女のことが」

 

 思わず、恋歌のことを抱きしめる。私の心臓の音が煩い。言わなきゃ、ダメだ。逃げてはいけない。私は貴女に伝えなきゃいけない。

 

「私は恋歌のことを愛しているわ」

 

 言ってしまった。体が熱くなって、心臓の鼓動も先程より煩い。もしかしたら嫌いと言われるかもしれない。けど、それでもいいから私の本心を知って欲しい。

 

 私の全てを貴女に知って欲しいの。

 

「…あ、愛しているって…あの愛、ですか…?景ちゃん」

 

 抱きしめているから、恋歌の横顔しか見えないけど顔が真っ赤だ。耳まで赤く染めあげて、動揺している。そんな姿が愛おしくて仕方が無い。

 

「えぇ、恋歌。愛してるわ」

 

 愛を抑えられない。愛していると言うだけで、理性のタガが外れそうになる。恋歌に知って欲しい。私がどれだけ貴女のことを見ているか。愛しているかを。

 

「け、景ちゃん、嬉しいけどね!?その…本当に……なんで、みんな…恥ずかしくないの…?」

 

 愛してるという言葉に弱いのか、口をパクパクさせては恥ずかしそうに私の腕の中で、もじもじと動く。その様子が可愛らしくて、彼女の顔を両手で包み、私の顔を近づける。

 

「あれ、凄い偶然だね。何してるの?」

 

 恋歌にキスをしようとした瞬間、背後から聞こえる可愛らしくも憎らしい声に邪魔される。ゆっくり後ろを振り向くと、笑顔の千世子ちゃんと困った顔のアキラ君が立っていた。

 

「その…邪魔するつもりは無かったんだが」

「告白して、私より優位に立ったと思った?…残念。私はもう告白を済ませてるし、今日だってメイド服デートを済ませたよ」

 

 メイド服デート!?恋歌には恥ずかしいから来ないでね、と言われ、私は私で映画を上映出来ずに落ち込んでいたのに抜け駆けされて居たなんて。

 私は拗ねて、頬を膨らませながら恋歌に問う。

 

「恋歌、本当なの…?酷いわ、私も誘ってくれれば良かったのに」

「告白の件はスルーなのか…!?」

「う、うん…でも本当にメイド服、恥ずかしかったし、景ちゃんに会うなら、もっと可愛い格好したいから……」

「でも恋歌ちゃん、私がメイド服褒めたら喜んでたよね?」

「あ、あれは千世子ちゃんが褒めてくれたからで…堀先輩に褒められてたら即着替えてたもん」

「……なんで僕はスルーされた挙句、罵られてるんだ?」

 

 恋歌のメイド服が見たい。見たすぎるわ。きっと安易な萌えとか言うものでは無い。写真とか無いのかしら。部屋に飾りたいし、恋歌秘蔵ファイルにも入れたいのだけど。

 そう考えた私は、千世子ちゃんにとある取引を持ちかける。

 

「千世子ちゃん…もしかして、恋歌のメイド服の写真って持っていたりするのかしら?」

「勿論。でもあげないけど」

「…恋歌の中学生時代の写真」

「っ!?」

「体育祭での恋歌は可愛かったわ…私たちの中学校は今どき珍しい、ブルマだったの。こんなレアな恋歌。なかなか見れないと思うけれど」

 

 あまりこのカードを切りたくなかったけれど、メイド服を手に入れる為なら致し方ないわ。更にダメ押しでもう1枚、カードを切る。秘蔵中の秘蔵。

 

「恋歌の競泳水着姿。撮るのに苦労したけど、恋歌を水泳部の助っ人にすることで達成したの。勿論、水に濡れた恋歌の写真付きだわ…まぁ、千世子ちゃんが必要無いと言うならそこまでだけれど?」

「…」

 

 千世子ちゃんがすっと手を出してくる。私も彼女の手を握り、笑顔を浮かべる。取引が成立した瞬間だった。

 

「…いいのか?恋歌君」

「うぅ…恥ずかしいに決まってるじゃないですか……デリカシーの欠けらも無い男は嫌われますよ……?」

「僕からすれば、デリカシーの欠けらも無いのは彼女たちだと思うんだけどな」

 

 愛らしく羞恥で顔を覆い隠した恋歌とアキラ君が仲良く喋っている。その遠慮が無い姿を見て、嫉妬してしまう。いくらアキラ君だからと言って、恋歌がひょんなことで恋してしまうかもしれない。…そうしたら殺すけど。

 

「恋歌、帰りましょう?千世子ちゃんとアキラ君は置いて」

「…恋歌ちゃん、今日、私の家どうかな?優しくするよ?」

「え!?ほ、星先輩、助けてください」

「ここで僕に振るのは間違ってると思うんだ…千世子君は明日仕事だろ?それに今日はもう遅いんだ。帰るよ」

 

 アキラ君、ナイスだわ!恋歌に手を出したらすぐさま仕留めるけれど、今はナイスだわ!

 私がアキラ君に称賛を送っていると、千世子ちゃんはこちらをちらっと見て溜息を吐く。

 

「分かったよ。けど、恋歌ちゃん達を家まで見送るのはありでしょ?アキラ君が送り届けてよ」

「そうだな。僕の車で3人とも送るよ」

「堀先輩、送り狼ですか?」

「やめてくれ…その話題は危険だから」

 

 家に帰ったら、何しようかしら。恋歌に愛を伝えた事だし、今日はいっぱい愛し合ったり出来るのかしら…?

 

「あ、夜凪さん。分かってると思うけど、告白したからって急に襲うと嫌われるからね?」

「千世子ちゃんに言われたくないわ…」

 

 明日が楽しみで仕方が無い。アキラ君や阿良也君、真咲君に茜ちゃん、武光君達のような役者仲間に、ひな、リョーマや新太という友達に、恋歌という愛する人が出来た。…おまけに恋敵(ライバル)の千世子ちゃんも。

 

 こんなにも夜が明けることが待ち遠しいなんて思いもよらなかった。

 

 こんなにも恋が身を焦がすほどの熱量だなんて知らなかった。

 

 …だから、ずっと私を見ていて欲しいの。恋歌。貴女にも私を愛して欲しいの。それが私の望みだから。

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