アクタージュ 暗殺者(になるはずだった)ルート 作:朕好こう
さて、やって来ましたね。エキストラ。今回出演する作品の内容をサラッと説明すると、小悪魔系女子高校生が転校してきた強面男子高校生(ゴリラ)とイチャイチャするお話です。かーっ、ぺっ(唾吐き)。青春とか自分に無かったもの出されるとムカつきますね。そんな個人的なことは置いといて、何故か主演女優の名前が伏せられてるんですよね。なんで?
>貴女がセットを眺めたり、カメラの位置を把握していると、誰かが近づいてくる気配を感じる。『気配察知Lv1』を獲得した。
『気配察知』ktkr!『気配察知』のいい所は視線に対して敏感になれる点ですね。俳優においてカメラがどこを撮っているのかが瞬時に何処にあるか分かるのは強みですし、暗殺者には言うまでもなく必須な技術です。近づいてくるのは誰でしょうか。一応、気付かないふりをしておきましょう。何かイベントが見れるかも知れませんし。
>目を手で覆い隠され貴女は驚いた。ほのかに甘い香りが漂い、耳元で囁かれる。
だれぇ…
「だーれだ」
>クスッと笑う声が聞こえるが、その言葉節にはまだ怒りを感じる。
あっ…(察し)
>貴女は声からその人物の名前を言い当てる。
「バレちゃった、頭鬼さん鋭いね」
>目を覆っていた手を離され、貴女が後ろを振り向くと、可愛らしく悪戯がバレてしまった子供のように舌を少し出す百城千世子が立っていた。
ぐっ、可愛い…というか、千世子ちゃんが何故ここに?好感度が高いとかでないと応援は無いと思うんですが…特に千世子ちゃんの場合は特定の人と親しくしているところを周囲に見られるのを嫌います。何がスキャンダルになるかわかりませんからね。
>どうしてここに?と貴女が尋ねると、百城千世子は笑顔で答える。
「主演だもの、当たり前でしょ?」
あー終わった。これは失踪案件ですわ。前回の挨拶はそういうことですか。千世子ちゃんにめちゃくちゃ嫌われてませんか?恋歌ちゃん。用意周到ないじめですよこれ……
>貴女が驚くと、百城千世子は嬉しそうに頑張ってねとだけ告げ他のキャストとの打ち合わせに行ってしまう。
エキストラだからこれ以上、千世子ちゃんと関わることは無いですし、今日限りの出演なので問題はありませんが、何処かで好感度調整必要ですね。友人は無理でもビジネスライクな関係を目指しましょう。
監督から指示があり、始まりましたね。恋歌ちゃんは教室で真面目に勉強するAちゃんになりきりましょう。知力低いですが頭いい風の演技は出来ますよ。
このシーンでは千世子ちゃんがゴリラとご飯を食べてイチャイチャするシーンですね。割と終盤に近いです。もう殆ど結ばれているのに近いですね。それにしても…ゴリラも演技は主演として素晴らしいですが、千世子ちゃんは群を抜いてますね。今のカメラの切り替えで入りかけた他のエキストラをあーんすることで隠しました。自分も千世子ちゃんにあーんされたいです。
前回も言った通り、ここでは空気を読みましょう。千世子ちゃん主演の作品で暴れていいのはデスアイランドくらいです。しかもこの好感度だと余計な恨みを買いかねません。じっとして置くが吉です。
よし、演技にガバは無く、滞りなく終了しましたね。千世子ちゃんに見つかる前にコソコソ帰りましょうね。才能があり過ぎるとここで主演を霞ませてしまい、周囲の好感度を下げたりするので、俳優ルートでも天才な方はそこを注意しましょう。実際、買ったばかりの頃は嫉妬に駆られた主演に殺害ENDとかあったので…
おっ、あそこにいるのは源真咲くんですね。デスアイランド編ではお世話になった方もいらっしゃると思いますし、彼を乙女ゲーのごとく攻略した方も居ると思います。今回はエキストラですね。恋歌ちゃんと同じです。話しかけてみましょうか。
>貴女は椅子に座って電車を待つ青年に話しかける。
「ん、あぁ…誰かと思えばアンタか。スターズの奴だったよな」
>少しダルそうにしながらも話してくれる。源真咲と名乗る青年と電車から降りるまで話した。
彼基本的にお人好しなんで好きですねぇ…あと殺しやすいです。好感度も上がるので恋人にでもなれば即殺せますよ。
そう言えば、再評価された演技ステータスを確認してませんでした。えっと『メソッド演技』A-評価、『百式演技術(改)』C評価。メソッド演技が上がってるのはなんでですかね!?いや、マイナスも付いているので実質B+よりちょっといいかな程度ですが……あと、『百式演技術』が『百式演技術(改)』になってます。なぁにこれぇ……
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頭鬼恋歌と喋ったのは帰りの電車を待っていた時だった。スルッと隣に座って自然に喋りかけてきた。めんどくさかったが、スターズに新人が入ったのはホームページで把握していたからパイプ作りじゃないけど少しだけ話そうと思った。
喋っていると何年来の友達かと思うくらいに話が弾んだ。あいつは人の懐に入るのが上手かった。SNSを交換しようと持ち掛けられ、つい交換してしまった。
家に帰って、初対面なのに色々ぶちまけてしまったことに恥ずかしさを覚えた。自分の方が演技は上手いのにルックスだけで役を取られた話とか、そういうのを話してしまった。
恥ずかしさを紛らわす為にテレビを付けて忘れようとした。何か映画でも見よう。そう思ったらシチューのCMが始まった。
思わず見入ってしまった。繊細な表情を出す彼女に勝てないと思った。名もしれない女優だが、きっと化けるだろうなと。だけどそれが悔しくてしょうがなかった。
暫く俯いていると、カレーのCMが始まった。そこには今日会話した頭鬼恋歌の顔があった。快活な少女だが目立つタイプではなく、俺でも演技力で、経験で、技術で勝てるかもしれないと思った彼女は化け物だった。
勝てないとかそういう次元じゃなかった。技術が違う。百城千世子のあの惹き付け方を少しアレンジしていて、周囲との差がまだあるが慣れてくればもっと上手く人の視線を集めるだろう。先程の女優のようなリアリティも兼ね備えている。見る者にカレーを食べたいと思わせ、この商品の名前を印象づけるだけではなくきちんと自分の主張をする。
唖然とした。こんな、演技があるのかと。そして自分を省みて笑った。いや、笑うしか無かった。経験も努力も無駄なのだ。彼女達のような天才には自分のような凡人が追いつく隙など無くて、他者を見下すことでしか自分を保てない自分が憎くてしょうがなかった。
「おれは…」
何になりたかったのだろう。演技ですらないものを振り回して、役者を目指して。
かくして、源真咲はこの瞬間に死んだ。これから彼を演じるのは“源真咲”だ。凡才な自分で追いつけないなら、自分なんてものは殺してしまえばいい。
それだけが天才に追いつく唯一の解だと思ったから。