「お帰りなさいませご主人さ──痛っ!? ちょっと、止め!」
シックなメイド服を着て、部屋で出迎えると無言で殴られたのでガードすると杖で顔を押し付けられる。
「元の服に着替えて」
「わ、わふぁりまひゅた、ごひゅひんひゃま」
「敬語はいらない。それにタバサでいい」
「わかったよ、タバサ」
しかし解せないな。胸をモロだしにしていないどころかミニスカでもないのに注意されるなんて。胸をモロだしにしたミニスカメイド服を僕が着ると奥さん達がケダモノになって僕を襲撃するというのに。
『坊主も染まってんな。昔の坊主なら進んで女装なんてしなかったぜ?』
……確かに。次期国王としてのストレスが貯まっていたからそのストレスを解消する方法が女装して奥さん達に構われるようになったんだよ。
『昔の坊主が見たら錯乱しているな。あの変態の血を受け継いでいるってな』
……何も言い返せない。
「これで良いかな?」
「ん。そこに座って」
元の服に着替えて終わり、それを確認させると言われるがままにベッドに座るといきなり杖を向けてきた。
「貴方は何者?」
先ほどの怒りとは別の感情を入り混ぜたタバサの声がその場に響く。
「僕はただのマルク。スクエアメイジの傭兵だよ」
「その青い髪はガリア王族の証。つまり貴方はガリアの王族。だけど現在ガリア王族に男は一人しか存在しない」
「オルレアン公と一言で言えばわかるかな?」
絶対に理解出来る訳ないけどからかうには丁度いいや。間違いでもないし。
「オルレアン公は王弟等の王族関係者がつく役職。貴方がそれを名乗るということは王族関係者ということになる。だけど私の知る限りオルレアン公に就いた貴族の中に貴方はいなかった」
「歴代のオルレアン公の肖像画が間違っているかもしれないよ? 君のお父さんとか美化10倍増しで──」
「ウインディ・アイシクル」
殺意入り混ぜた氷の槍が僕に向かってくるが僕はそれを魔法を使うことなく地下水の刃を使っていなす。
「流石に人を殺すような魔法はよしてよ。僕だって人間なんだからこれを受けたら死んじゃうよ?」
「何故貴方が私の素性を知っているの?」
「無視は良くないよ。そのせいで様々なトラブルに巻き込まれるんだから」
「答えて!」
今日一番タバサが感情をむき出しにして杖を向け僕に問い詰める。
「タバサ、聞けば何でも答えてくれるって勘違いしてない? ましてやこんな脅しでね」
タバサの杖を弾き飛ばし、逆に地下水をタバサの首に突きつける。
「……っ!」
「少し頭を冷やした方が良いよ。普段のタバサなら答えに導けるはずだからね」
僕が地下水を引っ込めるとタバサは少しは冷静になったのか杖を拾うような真似をしなくなった。
「……」
さあ地下水出番だよ。僕の素性をほほめかす程度に話して向こうの情報を抜いて来るんだ。
『雑な使い方だな。まあいいか』
「それで納得ができなかったら僕をそのナイフで刺して欲しい」
まあナイフで刺された程度じゃ死なないけどね。
『まあ坊主の生命力はどんなに死にかけても不死鳥の如く蘇り、パワーアップしてくるからな。絶倫になったのもそれが原因なんじゃないのか?』
それとこれとは関係ないと思うよ。……あの変態とデブを思い出すとそうでもないのかな? いやあの二人とは違う。そうと願いたい。
『女装マゾのくせに?』
女装マゾじゃないから! ……でもあの二人は女装していたよね。デブは痩せれば女顔だし、あの変態はもはや美女そのものだった。それを考えると……いや考えるのはよそう! そういうことだから宜しく!
「……」
「それじゃ僕は食糧の調達でもしてくるから宜しく」
僕は扉に手をかけ部屋の外に出ると地下水が情報を抜き取る。悪どいけどこのくらいは我慢してもらうよタバサ。
図書館に行き、資料を集めていると隣にキュルケが座る。
「はぁい、傭兵さん。何を見ているのかしら?」
「どうもキュルケ嬢。大したものじゃないよ。ここの状況を知るための本を読んでいるだけだよ」
「私を知っているの?」
「まあルイズ嬢の口から君の名前が出てきたからね。もちろんルイズ嬢の名前も君から聞かせて貰ったよ」
「へぇ……流石スクエアなだけあるわ。それで傭兵さんの名前は何ていうのかしら?」
艶っぽく、そして甘い吐息を出すように僕の名前を聞く。普通ならキュルケにメロメロになるけど僕の世界のキュルケが僕のツボに当ててきたのでこちらの世界のキュルケ程度では魅力されない。
「あの時自己紹介したでしょ?」
「遠くて聞こえなかったのよ。それに貴方の口から改めて自己紹介してくれると嬉しいわ」
「マルク。【氷竜】のマルク」
【氷竜】なんていかにも14歳の自己顕示欲の高い子供が名乗りそうな二つ名だけどそう名乗ったのには理由がある。僕が最近呼ばれる中でこの二つ名しかまともなのがないからだ。
その他の二つ名? 【絶倫】、【変態男の娘】、【女装王子】、【最強チ○コの持ち主】、【つーかあのおっさん、学院卒業から見た目変わらないんだけど】とか、もはや文章になっている二つ名まである。
ね? それならまだ【氷竜】の方がマシでしょ?
「氷竜のマルクね……そういえばマルク。貴方、タバサの使い魔よね? タバサはどうしたの?」
「そういう君こそタバサの何なのかな? これかい?」
僕がそう言って小指を立てるとため息を吐く。
「色ボケ扱いされることはあっても百合の花に興味を持たれていそうとは思わなかったわ。……あの娘とは友達、いえ親友の関係よ」
親友か。僕もそんな感じだったよね……懐かしいな。優しいのは今も同じだけどね。
「じゃあ薔薇には興味──」
「あるわけないでしょうが!」
薔薇──つまり、BLのことで腐った婦人達がそれに多いに興味を持つ。しかしそれに興味を持たないのはやっぱりこの世界はまともだ。僕の価値観はこちら側に近い……近いよね?
「それなら結構。何せ僕の容姿が女の子そのものだからね。僕を題材にして腐った小説やら漫画やらを書く人がたくさんいたから警戒していたんだ」
その中で特に人気を集めたのが僕が受け、ロレーヌが攻めのエロ漫画だった。ロレーヌは何でもマウントを取れればいいのか満足していた……それでいいのかと突っ込みたくなる。
「漫画って何よ……それに腐った小説って本が腐るの?」
そう言えばこっちの世界にまだ漫画はないんだっけ。漫画は才人こと彩人が持ち込んだ書物の概念で、絵が中心となって物語が進むから文字が読めない平民や貴族の子供達には大人気のものだ。
「腐った小説の意味は知らない方がいいよ。知ったら二度と戻れなくなるし」
「そうね……そうしておくわ。ところで貴方のルーンはどこにあるのかしら?」
キュルケが一息吐いて話しを切り替えた。
「正確に言えば僕とタバサはまだ主従の関係じゃない。スクエアメイジを使い魔にすると面倒事しか生まれないからって理由で保留されたんだ」
「それはごもっともね。あの子らしいわ」
「だけどあの娘のフォローはするよ。タバサは僕の娘みたいなものだしね」
「娘って、貴方一体いくつなのよ?」
「28歳だけど?」
「に、にじゅうはっさい? いやタバサの年齢を考慮してみても16歳でしょ?」
「失礼な。社交界デビューした息子や娘もいるよ」
「社交界デビューって、貴方傭兵じゃなかったの?」
そこを突っ込むか。なら仕方ない。
「僕の子供は優秀だからね、養子入りしてデビューしたんだ」
養子入りしたのは真っ赤な嘘だけどこうでも説明しないと説明がつかない。
「おかしいわね……そんな話あったかしら……」
ぶつぶつとキュルケが思考しているうちに席を離れる。
そして始祖ブリミル神の絵本を見つけ、手に取ると光が僕を覆い、気がつくとブリミルに保護されていた。
尚、女装シーンを書いている最中にマルクことタバサが貞操帯をつけてハーレムの女性達に振り回される18禁展開を二つの意味でそうぞうしてしまったのも遅くなった原因です。
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マルクの女装シーンはどのくらいの頻度がいい?
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なし
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数話につき一回
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2話につき一回
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1話につき一回
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上記以上