アイアンメイデン、別名、鉄の処女。起源は中世ヨーロッパとされ、主に刑罰や拷問に用いられた拷問器具。
若さを求めたある夫人が、村の処女の血を搾り取る為に作った、とされる逸話も遺されているんだとか...
少し話が逸れるが、皆さんは付喪神を知っているだろうか。元来、道具には八百万の神が宿るとされ、付喪神とはソレが悪い方向へと昇華してしまった者...いや、物の成れの果て。
性質としては、神というよりも妖怪に近しい存在になるという...
元より、誰かを閉じ込めるという役目を果たしてきたアイアンメイデン。しかし今回、少しばかり妙な方向に昇華してしまったようで...
「...可愛い娘をぎゅってしたい!」
これはとある付喪神の欲望を描いたおはなし...
「ふぅ...こんなもんかしらね」
一通り掃除が終わり一息吐く。綺麗さっぱり落ち葉の無くなった境内を見渡し...少しばかり虚しさを感じる。どうせ掃除なんてしても参拝客が来る訳でもなく、足を運ぶのは非常識人と魑魅魍魎。やんなっちゃうわね...
乱雑に箒を放り投げ、いつものようにお茶でも飲もうかしら...なんて考えるも、淹れるのが面倒ね、と結論が出てしまう。ひとまずは縁側に座って、うたた寝でもしようかしら。
私はよいしょっ、といつものように膝の上へと腰を降ろ...ん?膝?......ってあ?!しまっ
「つーかまーえたっ!ぎゅーっ!」
「ちょ?!アンタまた、って離しなさいよ!」
「むふー...くんくん」
「バッ?!ちょ、くすぐったいって!やめっ...もぅ」
「んー、良い匂いです。石鹸変えました?」
私はコイツの膝の上、後ろから抱きつかれながら、終いにはうなじの匂いまで嗅がれ...もう、いいや。こうなるとしばらくは動けないし、厄日ね今日は。ウチの神社ご利益無いのかしら...?
「はぁ...アンタも飽きないわね、ホントに」
「んふふ~、霊夢ちゃんが可愛いのがいけないんですよー」
黒い洋服、ロングスカートに身を包み、黒髪を肩の辺りまで伸ばしたソイツは悪びれもせず、そんな身体がむず痒くなるような台詞を吐いた。
あの異変の後、ちょくちょく神社に遊びに来るようになり、隙あらば抱き付いてくるのだ。誰彼構わず、人目も憚らず...
「んー...今日は魔理沙ちゃんは来ないんですかねぇ」
「アンタホントに誰でも良い訳?タチ悪いわよ...」
「あー!そんな人のこと尻軽みたいにー、可愛い娘だけですよ」
...滅してやろうかしらコイツ。とは言え、家事手伝ってくれたり、宴会の後片付けしてくれたりと、悪いヤツではないんだけれど...
「ん...ふあぁ...んぅ」
「んー?眠くなっちゃいましたか?」
一仕事終えて、時間も良い塩梅となり、日の光も心地よく欠伸が出てしまった。...それに、少し暖かい。
「良いですよ?寝ちゃっても」
「...ん」
甘い誘惑ともとれる言葉に成す術なく、私は意識を手放した...
「...眠っちゃいましたか」
私の腕の中で、少女はすぅすぅと可愛らしい寝息をたて微睡んでいる。華奢な身体は、少し力を込めると今にも砕けてしまいそうな...そんな儚さを感じてしまう。
昔の記憶。私がまだ道具だったころの記憶。私が抱きとめた人たちの苦悶の叫び、溢れ出る鉄の生臭い匂い...全てが残忍で、可哀想で...悲しかった。
私は目を閉じている少女の頭にそっと手を乗せる。うん、暖かい。冷たく、ない...それだけで救われる。手入れの行き届いた綺麗な黒髪...よしよしと、撫でる。
「...んぅ」
「おっと...ふふっ」
少しばかりこそばゆかったのか、くぐもった声が漏れる。膝の上で寝返りをうつような、そんな行為も私に捕らわれている今は、少し身体をくねらせる程度に留まる。
まあ、暗めな話はこの辺で...それにしても可愛いなぁ、霊夢ちゃん。仲良くなれてホントに良かった。あと、身長高くて良かったー...身長差万歳よホントに。くんかくんか
今までは可愛い娘抱っこしても、ぐさー、いやー!...終わり、だったのに...この身体になれて良かった。神様ありがとう、いやマジで。ふにふに...いや、流石に胸は触らんよ?常識は最低限ある、お手て柔っこいなぁ...ふにふに
「んふふー、起きるまでは堪能させて貰おうかな」
改めまして...これは残念系お姉さんアイアンメイデン付喪神が、幻想郷の可愛い娘たちを、ぎゅっ、てするおはなしである
ここまで読んでくださって感謝です。それでは、また