アイアンメイデンは「ぎゅっ」てしたい   作:微 不利袖

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8つ目です。今回はさとりさんのお話ですね。それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね


8、さとりをぎゅっ

 

 

「......ふぅ」

 

 

万年筆を走らせる手を止め、一つ息を吐く。あの異変以来、最近は地上との交流も増えた。中でも旧地獄観光ツアーはそれを代表する催しですね

 

仲が良いに越したことはないんですが...如何せん地霊殿に転がり込んでくる仕事も増えに増えた訳なんですよ。地上に出るための申請書だとか、観光参加の承諾書だとかに目を通したりするのも、いったい何度目になるのやら...

 

流石に根を詰めるのも良くないと思い、珈琲でも...と考えを巡らせるものの、今日はお燐が用事で留守なのを思い出す。まぁ、たまには自分で淹れるのも悪くは無いですかね

 

 

「ばあっ!やっほー、おねーちゃん!」

 

「ひゃあっ?!...こ、こいし...もう、驚かせないでよ」

 

「えへへー」

 

 

重い腰を上げ扉の方へ向かおうとすると、突然机の陰からこいしが飛び出して来た...まったく、心臓に悪い

 

 

「はぁ...どうかしたの?」

 

「んふふー、実はねー...はい!」

 

 

何か用があるのか訊ねると、勿体ぶるように手を後ろに回しニコニコとしている。いったい何かしら...ちょっと嫌な予感するけれど

 

 

「珈琲!疲れてるかなって思って、淹れてみたの!」

 

「え、貴女が?...そう、珍しいこともあるのね」

 

 

目の前に出されたのは、いつも私が愛用している珈琲セットの一式だった。...なんというか、珍しい、なんて言ってしまったけれど...良い妹を持ったわね、私

 

 

「もー、おねーちゃんはいっつも一言多いんだからー。あ、お砂糖いくつー?」

 

「もう癖みたいなものかしらね。二つ...いや、三つお願いするわ、あとミルクも少しね」

 

「はーい、ひぃふぅみぃ...と。はい、どーぞ!」

 

 

他愛もない話をしながら、こんな時間も悪く無いわね...なんて考えながら珈琲を待つ。カップに注ぐその手つきに拙さはあるものの、一生懸命なのがひしひしと伝わってくる

 

 

「ん...ありがと、こいし」

 

「えへへー。ほら、熱い内に飲んじゃって!」

 

 

受け取った珈琲を見ながら、唯一の肉親に感謝を告げる。照れ隠しのつもりか、少しばかり急かされるままに、一口......うん、美味しい

 

 

「...うん、美味しいわ」

 

「良かったー、自信なかったから安心したー!」

 

 

言葉にして伝えることの大事さは、ある意味私が一番知っているのだろうか。どこかほろ苦く、優しい甘さを含むそれを飲み下し、自然と口がそう告げていた

 

 

「ん...ふあぁ......ちょっと眠くなってきたわね...」

 

「お仕事で疲れてるんだよ、少しくらいなら寝ても良いんじゃない?」

 

 

温かな珈琲に身体が安心してしまったのか、はたまた仕事疲れからか、睡魔が私を襲う。...そうね、少し仮眠くらいなら良いかしらね...

 

 

「おやすみ、おねーちゃん」

 

「ん...おやすみ、こいし......」

 

 

心地よさに抱かれながら、私は意識を手放した...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恐る恐る、彼女の仕事場である書斎の扉をゆっくりと開く。少し古いのか、ぎぎぃ、という音に怖さを覚えつつも、そのまま開け放つ。

 

 

「こいしちゃん...いけた?」

 

「ふふーん、ばっちり!」

 

 

共犯者であるこいしちゃんにそう訪ねると、得意げな顔でさむずあっぷ。仕事机の方には夢見心地のさとりちゃん...うっし!ないす、こいしちゃん!そして流石永遠亭印のおくすり!

 

 

「いやー、ありがとね。こんなお願い聞いてもらって...」

 

「おねーさんの頼みなら良いよ!それに、面白そうだったしねー!」

 

「...今度ぎゅってしていい?」

 

「えへへー、良いよ!」

 

 

天使は旧地獄にも居た。なんてこった、幻想郷には一婦多妻制は在るんだろうか...。あ、式は洋式...いや、こいしちゃんの着物姿...でもドレスも捨てがたい......二回やろう、うんそれが良い

 

 

「それよりほら、早くしないと起きちゃうよ?」

 

「はっ、そうだった!ありがとね、こいしちゃん!」

 

「ごゆっくりー」

 

 

さて、それでは何故わざわざこいしちゃんに薬を盛ってもらってまでしてさとりちゃんを眠らせたのか、だけど...こんな心読まれたらもう、ね...嫌われちゃうもん、お嫁いけなくなっちゃう!...っておい誰だ行き遅れって言ったヤツ顔覚えたかんなおい。あ、こいしちゃんは退室しました、はい

 

 

「すぅ...すぅ...」

 

 

すやすややんけ。はー、寝顔可愛くない訳がないが?妹が天使なら姉も天使か?姉妹丼か?おいおい、睡姦は趣味じゃ......失礼、気が触れてました

 

 

「それじゃ、失礼して...よっ、いしょっと」

 

「んっ...んぅ......すぅ...」

 

「んふふー、暖かいなー...すりすり」

 

 

起きないように細心の注意を払い、ゆっくりとさとりちゃんの身体を持ち上げ、椅子に座りそのまま膝の上へ。うんうん、よーく寝てますねー。すーりすり

 

 

「きれいな髪やんなー、なでなで」

 

「んぅ......ん...」

 

 

髪の色は薄く桃色がかった紫色。なんとも幻想的な色合いだなー。勿論さらっさら、私も髪質良い方だと思うけど、ちょっと自信無くしちゃうなー...うりうり

 

 

「こんなでも、地底の一番偉い子なんだなー...すんすん」

 

 

私の両腕に抱かれ、寝息を立てているのはこの旧地獄を管理する重鎮。この地底のトップ...こんなちっちゃな身体で良く頑張ってるなぁ...おねーさん感激よ、良い匂い

 

 

「まぁ、今くらいはゆっくりおやすみ...」

 

「ん...すぅ...すぅ......」

 

 

ま、今日くらいは...ね

 

 




心読まれないようにするのに前フリ長かった...筆が乗った。さとりさん難産でしたねー、まあ、私は満足です、はい。まだまだ活動報告の方でリクエスト募集中ですので、良ければどぞ!それでは、また
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